SAO-七つの魔剣~ギルド風林火山の狂戦士~ 作:うおさ123
第一話 仮想世界へ
――2022年11月6日 午後2時15分――
銀色の、仮想の反射光が中空より煌めき、俺の手に握られている長剣《スモールソード》が、青きイノシシ《フレンジーボア》の鈍調な体躯を捉える。
「プギッ!」
ソイツの突進を横っ飛びで躱しながら、首筋にクリーンヒットさせた俺の攻撃が、その上に見えるゲージを二割程削る。
「おっかしいなぁ。アレHPゲージなのかね? とにかく全然HP減らないし、強すぎだろコイツ~」
モンスター相手に悪態をつくのは自分でもどうかと思う。しかし、そう言っても仕方がない位このイノシシの強さはかなりのものだ。
この青イノシシは、結構俊敏に動いてくる上に二度も首筋に攻撃しているが、ほとんどHPが減っていない。この世界のルールはまだよく解らないが、最初の街を出てすぐに現れるモンスターなどドラ○エのスライムレベルであって然るべきだ。流石にここまで強いモンスターなど想定外もいいところ……
「プギャー!」
などと考えていると、俺の攻撃を受けてバランスを崩していた青イノシシが突進してきた。
「しょうがねえ。だったらどこが一番利くのか試してやるっ!」
こうなったらヤケクソだ。所構わず斬りまくって弱点を確かめる! ――などと、子供じみたとても簡単な決意をし、俺は剣を肩に構えてシンプルなモーションをとる。
すると、いきなり剣が青く光り始めた。何やらよく解らないが、なんとなく威力が有りそうだったので、そのまま最初にしようとした斜め斬りをタイミングを合わせて繰り出そうとした。
「うおっ!」
その瞬間、俺が剣を振るうと体が剣に引っ張られた。いや、体が勝手に動いたと言うべきか。どちらにせよ、俺の身体が見えざる何者かの手によって操られると、青い剣閃と共に青イノシシこと《フレンジ―ボア》の首筋二つに切り裂かれた。
「ぷぎー……!」
イノシシの上に見えるゲージはみるみる減っていき、そのゲージが消えた瞬間、パアンッ……! という破裂音と青イノシシの断末魔が耳に入り、そのイノシシは青い硝子片の様な物になって爆散した。
「おっしゃー! ……って、今の何だ!?」
俺は一瞬だけ感じたおかしな身体の硬直から抜けると、両手を振って思いっきり叫んで歓喜する。その後、自分を不思議な感覚へ誘った剣に思わず問う。当然の事ながら俺の握った剣《スモールソード》は何も答えない。
――これが片手長剣用基本ソードスキル《スラント》だという事を知るのは、少々後の話だ。
「まあ、答える訳ないよな」
いくら現実では無いとはいえ、剣に喋りかけるという子供っぽい事をしてしまった俺は、自分に軽く呆れながら苦笑する。
「にしても、ホントにリアルだよな~。どこ見渡したって、全くブレがねえや」
俺は適当に周りを見渡すが、もう見えなくなりそうな程遠い《始まりの街》が薄っすら見える程度で、他は風になびく背の低い草達が俺の視界を埋め尽くす。
などと思っていたら、少し先へ行った所に小高い丘が見えた。俺はこの余りに綺麗な世界の新たな景色を見ようと、全力で走ってそのてっぺんまで一気に登りきる。
現実なら息切れの一つでもしよう運動量だが、筋力地と俊敏値という力で管理されたこの世界の肉体に、疲労という概念は無い。
「すっげぇ……!」
だが、そんな現実的な考えを巡らせていながらも、俺は眼前に広がる景色に感嘆の声を漏らす事しかできなかった。
その景色の美しさは言葉では形容し難いが、流れる滝や、大自然を思わせる森や山の数々。そして無限に広かるかの様に思えるほどの青い空。とてもゲームの世界とは思えない。
そう、ここはゲームの世界。ついに来たんだ、剣が織り成す世界《ソードアート・オンライン》の世界に。
――2022年11月5日 午前6時05分――
ゲーム欲しさに列に並んで、三度目の日の出を迎えた。秋葉原という人工の光が支配する都会でも、日の出の美しさは山で見る物と結構大差なかった。
日の光というのはどこでも変わらず降り注ぐものなんだなあ、などと感心していると、他の行列に並ぶ極度のゲームマニアと思われる人たちが目に入る。
現在並んでいる人は百人ちょうどでまず間違いないだろう。何故そこまでキリのいい数字が並ぶのかと言えば、店側が大量の行列が起きる事を見越してSAOの入荷数を事前に発表、およびその数を超えた行列の排除を行っていたからだ。排除というと聞こえが悪いが、要は行列のできる店なんかで「本日はここまでで完売でーす」と言って最後尾以降の人に配慮してくれている様なものだ。
それにしても、百人もの人間がこうして一列に並んでいるというのも中々不気味なものがある。全員どんな事をして三日間もの時間を潰してきたのかも気になる。
ある人は、携帯ゲーム機にずっと向かって二日目あたりで電源が切れたり、またある人は、ずっと一枚の二次元美少女のポスターを見て瞑想していた。雑念しかねぇな、おい。
因みに俺は、と言えば、
「おい、次おめぇの番だぞ」
「ほいほい。んじゃ俺はハートの6とクローバーの6の二枚出し」
トランプ大会である。ちなみにゲームの種類は《大富豪》。
「ゲッ! 《縛り》かよ~」
俺の出したカードのせいでパスする羽目になったクラインが、悔しそうに声を出す。
「甘いね、クライン。僕はこういう状況も読んで温存していたのさ。ハートの7とクローバーの7! これで《縛り階段》。これなら誰も出せないよ」
「んじゃ、俺はハートの8とクローバーの8な。これで《8切り》」
「何で持ってんの、ノガラ!?」
優男風の少年が自信たっぷりに出した一手を、俺が一手で伸して彼は悲痛な叫びを上げる。彼のプレイヤーネームは《ロン》。茶髪のくせ毛が特徴で高校二年生らしいのだが、結構童顔なので身長さえ低ければ小学生でも通るだろう。
ちなみに俺に呼びかけられる時に使われた《ノガラ》とは、俺がプレイヤーネームを聞かれた時、咄嗟に答えた
「はんっ、温存していたのはお前だけじゃ無いって事さ」
「ヤバい……このままじゃ、一気にノガラが上がって、クラインも上がって、大貧民になって、最初の手札からジョーカーが引き抜かれて、またもぼろ負けして、このまま僕の勝率がどんどん下がっていって、あと四時間の間にノガラに抜かれて、クラインにも抜かれて……」
『って、なげえよ!!』
ネガティブオーラを体中から垂れ流しながらブツブツ言いだしたロンに向かって、俺とクラインがツッコむ。
――一度、話をまとめよう。
三日前にクラインと合った俺は、クラインの恐ろしい程の人の良さに、すぐに敬語を忘れてタメ口で話せるようになった。彼の年齢は22だそうなので、16歳の俺はかなり失礼だったりするのだが、クライン曰く「ネトゲで敬語って変だろ」らしいので、俺は遠慮なく敬語を外した。因みに同じネットゲームをやる人と本名を教え合うのはタブーらしい。つまり、自動的にプレイヤーネームで呼び合う事になる訳だ。
そうしてクラインと話していると、彼の友人達も(この日のために急きょ用意したであろう)寝袋から這い出してきて、トランプ大会をやろうなどと言いだした。全く、唯の一度もあった事の無い他人相手に何というフレンドリーな奴らだ。それも、同じゲームという土俵あってのことかも知れないが。
この超ネガティブ少年ロンも、四人いるクラインの友人の1人で、残り三人の友人達も中々にキャラの濃い連中ばかりだった。
にもかかわらず、現在トランプに参加しているのは俺を含めて三人だけ。その理由は簡単明瞭。このトランプ大会、唯のトランプ大会では無く、
《SAO発売まで耐久トランプ大会☆》なのだ。
つまり、この三人は三日間一睡もせずにトランプをして来た馬鹿共……ではなく猛者達なのである。裏を返せば俺とクラインとロン以外は既にダウンしているのだが、発売日にもなったし、もう朝なのでそろそろ三人を起こした方がいいのに、睡眠不足で思考回路がマヒしている俺達はその事に気付いていない。
ちなみに順位は、1位はロン。2位は俺(ノガラ)。3位はクラインである。僅差ではあるが、順位そのものは序盤とほとんど変わっていない。
――ネガティブつえー、等と言う事を考えたがそういう問題では無かろう。
「か~ら~の、スペードの2とクローバーの2の二枚出し!」
「ちくしょー、パスだぜ」
「僕もパス……。ここからさらにノガラに上がられて、クラインに上がられて……(以下略)」
「相変わらずなげえっての。んで、クローバー、ダイヤ、ハートの5の三枚出しで上~がりっと!」
「な、三枚ぃ! ノガラ、おめぇそんなん隠し持ってやがったのかよ!」
「やっぱり僕は駄目なんだ、どうせこの後ボロ負け……(以下略……てかしつけえ!)」
そんな事をしながら時間は経っていった。
俺達に最悪をもたらすゲーム《ソードアート・オンライン》が発売する、その時間まで。
中学生という身分から四月の中旬頃まで余り時間がありません。もうちょっと投稿スピードを早くしたい所です。