SAO-七つの魔剣~ギルド風林火山の狂戦士~   作:うおさ123

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本当にすみませんでした……。確たる用も無いのにサボってしまい、気付けばこの有様でした。
前回の反省で文字数を増やそうと考えたのですが、ロクに増えてない上に二か月もサボってしまいすみませんでした。

では第三話です



第三話 踏むのが怖いタイプのフラグ建設

――2022年11月6日午後2時31分――

 

 

 ガンッ! と腰が地面と衝突する。

 

「いって! ……ってあれ? 全然痛くねえ。どういうこった?」

 

 先程10メートル程のフリーフォールを体験して来た筈だが、おかしな事に痛みが全くない。

 でもまあ、ここは現実では無くゲームの中なのだ。モンスターに咬まれた時なんかに痛みが有ったら、ゲームとして売れなくなるだろう。主にPTA的な意味で。

 

「リアルに思えても、所々違うんだな」

 

 俺はそう呟いて、この世界がゲームの世界である事を初めて強く認識する。

 

 視線を戻すと、目の前のゲージが七割近くまで減っていた。高所落下のダメージだろう。その辺のお決まりは外さないのな、と思いながら俺は立ち上がって腰をパンパンと叩く。

 多分、現実と違って砂埃はついていないと思うが、コレは半分癖みたいなもんだ。意味が無かろうと構いはしない。

 

「にしても、どうやって帰ろう? 困ったな~、クライン達との約束も有るのに」

 

 俺は崖を目の前にそう呟く。崖は約二十メートル、ロッククライミングしようにも完全に直角な上、手や足の置き場が無い。詰まる所、ここから上るのは不可能。

 クラインがベータテスターの書き込みで見たという《始まりの街》にある《黒鉄宮》という所で6時半に、あの時の六人で集合する予定なのだが、このままだと《始まりの街》に帰る事すら危うい。《黒鉄球》は蘇生場所らしいので、時間になったら自殺するという選択肢もあるのだが、リアル過ぎるこの世界で流石にそれは最後の手段だ。

 

「とにかく、まずは上に帰る道を探さねえと」

 

 多分、この手のRPGには下から上にまともに這い上がる方法がある筈だ。俺は言う程やっていなかった怪しげなゲーム知識からそう考え、周りを見渡しながら堂々と歩き出す。初期装備の剣を失ってしまったなら、普通はもうちょっとビクビクしながら歩くだろうが、見つかったらアウトと腹をくくってしまえばどうしたことも無い。

 

 すると、それ(・・)はすぐに見つかった。

 

「ん、何だ?」

 

 俺が落ちて来た崖の壁面に、大きめの裂け目……いや、洞窟が在った。

 

「これは……入っちゃうしかないよな」

 

 どうせ後四時間もあるのだ。少し位、寄り道したってバチは当たるまい。寧ろゲームなのだからここで怪しげな洞窟に入らないのは、開発スタッフ一同に土下座もの。

 そんな適当な考えで、俺は屈みながら洞窟内へ入っていった。

 

 

――1時間後――

 

「な、長い……! 果てしなく長いっ!!」

 

 俺が声の限り叫ぶと、そこら中から音が反響して耳を叩く。

 

「うッ! てか、ホントにどこまで続くんだこれ……?」

 

 人が一人やっと通れるぐらいの一本道で、モンスターも襲ってこない。その上、暗いし、ジメジメしてるしで、こんな所を1時間も歩かせて何がしたいんだ開発スタッフ。

 いい加減帰ろうかな、という思考までたどり着き始めた俺の視界に、ぼうっと薄明るい僅かな光が見えた。

 

「お、やっと出口か?」

 

 くぐもった心に光明が差す、という言葉を具現化したかの様な光を見て俺は歩幅を広げるが、どうも出口という訳では無さそうだ。普通、外から見える光というのは、もっと青く明るいモノだが、ここから見える光はむしろ旧式のランタンの様なボヤっとしたオレンジだ。

 歩いている途中から、カーンカーン、と甲高い金属音が洞窟に反響して聞こえてくる。

 

「はっ、この音……!? ………………………………って、解んねえよ、俺は……」

 

 何と無く一人でボケてみるが、当然の如くツッコミは無く、俺は一人淋しくツッコミを入れる事となる。

 その後、数秒ばかりの沈黙が流れるが、金属音は常に規則的に俺の耳に入り続ける。

 

「……とにかく、行ってみない事には始まんねえな」

 

 不意に襲う寂しさを振り払う様に、俺は屈んだ体制のまま音の方へと再び歩を進める。その間は俺の足音と金属音が重なって僅かなハーモニーを奏でる……訳は無い。というか普通にうるさい。

 

 等と思いながら光の方を見ると、少し広く部屋の様になっている空間が見えた。と、認識したが早いか、何かにつま先が引っ掛かった。

 

「ふぇ!?」

 

 ゴン!

 

 どこぞのドジっ娘並みにマヌケな声を出しながら、そのまま俺は地べたにヘットバット。さらに音が乱反射してあらゆる所から耳をサンドバックにする。

 

「イタイ、いたい、痛い! ホントは痛く無い筈だけど痛い!」

 

 耳を押えて俺は思いっきり呻く。

 実際この世界はさっき思った通り、直接的な痛覚は無い。しかし、痛みの代わりに妙な痺れがあるらしく、お蔭でさっきから耳が痺れまくっているのである。

 

「いてててて……やっと痺れも止んだな……」

 

 俺は痺れが収まった所で、少しだけ残る鈍痛を感じながら立ち上がろうとした。

 

「お兄さん、こんな所へ何用ですか?」

「はい?」

 

 突如頭上からしわがれた女性の声が聞こえた。俺はその呼ばれ方に違和感を覚えつつも、この《仮想体(アバター)》の事を指しているのだと思い直し、頭を上げる。

 

――元々、俺のアバターは、ナーヴギアでのアバター作りを完璧に忘れていた事により、男性用アバターの基本体、一番ノーマルな物を身長だけ合わせて使っている。普段の俺の姿は、少々(と言うより、かなり)お兄さんという呼び方があっているとは思えない為、違和感を感じた訳だ――

 

 そこにふらついた足つきで立っていたのは、60近いであろう緑のローブを着たお婆さんだった。

 

「お兄さん、こんな所に何用ですか?」

 

――さっきと同じこと言ってきたー!!

 

 二度も同じ、しかも一字一句違わず口調まで全く同じとなると、驚きを抑える事が禁じえなくても仕様が無かろう。

 と、そこまで考えた所で、ある事に気付いた。

 

 この人、さっきから表情が変わってない。

 

 いくらゲームの中といえど、人の表情が全く変わらないなどあり得ない。何故なら三時間ほど前のゲームスタート時に、メニュー画面の中に入っていた僅かな装備の中から《スモールソード》だけを取り出して適当な方向にレッツダッシュしたせいで、その道中迷いまくった。だがそれ故に見た、色々な人たちの顔は様々だった。

 

 不思議な世界に来て戸惑う人、待ち望んでいたこの世界に来れて喜ぶ人、何故か気持ち悪そうに何かを吐こうとするイケメン(多分中身は二日酔いのおっさん)。

 そんな、表情には現実並み……いや、それ以上の機微があった。そんな人々を見たならどう考えてもコレは人ではないと一目でわかるだろう。

 

 と、そこまで思考が回った時、未だに地べたに這いつくばっている俺は、ある事を思い出した。

 

「お兄さん、どうかしたのですか?」

 

 どうも二度も無視したためか、『新しい発言パターン』が追加されている様だ。

 

「あ、いえ。何でもないです……」

 

 冷静さというか、ある種一つの悟りを開きつつ俺はそう答えた。そして小さくため息を吐きながら、口中で呟く。

 

 (そうだった。《NPC》だ、この人)

 

 NPC、当然ながらNPC(ノートパソコン)の略称では無い。《Non Player Character》の略称。確か、βテスターがやっていたブログなどに「リアル過ぎて告っちまった」等と書いてあった記憶があるが、当然その時は「何を馬鹿な」と一笑に付した。

 しかし、クラインの様な人間を見ていると(かなり失礼だが)あり得ない話に思えなくなって来るし、実際この老婆はかなりリアルにできている。台詞に不自然なところが無ければ騙されていた所だ。

 

「そうですか。で、お兄さん。こんな所に何用ですか?」

 

 あ、結局その発言パターンに戻るのね。

 俺は半ば興味深いモノを感じつつ、今度こそは、と思って立ち上がる。

 

「えっと~、迷い込んでしまってここに来たんです」

 

 無難な答えとしてはこんな所だろうか。こういうRPGのNPCとの会話って、ゲーム側が出した選択肢を選ぶモノだろうが、今現在選択肢がでる様子は無い。

 

なら、適当に答えよう! 至極簡単な話だ。

 

「なら、特に何もないですがお茶でもいかがですかな?」

「じゃあ頂きます」

 

 よし成功。掴みは心得た。

 

 恐らく日本伝統の遠慮合戦が通じなかろうNPCに俺が即答すると、そのNPC老婆はゆっくりと洞窟の奥へと歩き始めた。どうも、この奥に住処が在るらしい。

 

ん、アレ? 洞窟に住処が在って……老婆が人を招き入れるって…………

 

――――なんか嫌な予感しかしない…………!!

 

 日本全国の小学校で必ず教える由緒ある動き、《回れ右》を駆使して、正体が化け物の危険性がある老婆から逃げ出そうと、後ろへ歩を進めようかと思ったが……やっぱ止めた。

 ここまで一時間も掛けて来たし、どうせ洞窟往復したら集合時間までギリギリだ。だったらいきなりイベント発生で化け物に殺られるのもまた一興。

 

「もうヤケクソだ…………」

 

 今日、目が覚めてからのあらゆる事を嘆くような台詞を吐いて、俺は前を歩く老婆について行った。

 

 

 

――2022年11月5日10時00分――

 

「はいはーい、皆さん笑ってー」

 

 無駄にナイスバディのお姉さんアナウンサーが、ソードアート・オンラインの購入に成功してご満悦のクライン達を含めたゲーマたちに向かって呼びかける。ゲームが買えた喜びだけかどうか怪しい所だが、実際その姿は軽く嫉妬の炎が燃え上がるレベルだ。

 

 まあそれは良いとして(ちっとも良くないが)、俺とロンは外野で待機。俺は親に極秘出来ている為、テレビに映るのはガチでマズイ。

 ちなみにロンは「ここで調子のってSAO構えながらテレビ映って、しかも無駄に満面の笑みだった為にギリギリで買えなかった皆様の恨みを買って、夜道を歩いていたら闇討ちされる可能性が…………」と、いつものネガティブシンキングによりアウト。

 

 しかし実際問題、テレビで取り上げられる程の社会現象と化しているソードアート・オンラインは、その人気に反比例するように初回ロットが一万しかない。正直、スポンサーもうちょっと出せなかったのかよ、と三日間徹夜した事を考えるとそう思う。お蔭様でロンの言う通り襲われかねない。

 後ろで「アレ? 逆に映らなくなった事で盗まれた時に「これがお前のだって証明するモンあんのかよ?」とか言われたら対処できないんじゃ……。よし、途中からだけど映りに行こうかなぁ。いやでもそうすると逆に……」とか言い出した馬鹿を放って置きつつ、二十分前に買ったソードアート・オンラインのパッケージを弄りながらクライン達の撮影終了を待つ。

 

「にしてもなー、コイツ一個手に入れるのに三日か~。まあクライン達とも知り合えたし時間無駄にしたとか思うつもりはねえけど、宿題がな~」

 

 名ばかりとはいえ、そこそこ偏差値が高かった私立なので、三日も休むと後がヤバい。明日の一時は折角のSAOのサービス開始だし、今日と明日の午前中で三日分の宿題を終わらせなければならない。

 

 コレはキッツいなー……。

 

 パッケージを握りしめたまま空を遠い目で見つめていると、後ろからそれを覗き込む影。ボーッとしていたので、その事に少しギョッとして後ろを見る。

 

「あ、すみません」

 

 後ろに居た、見るからに「オタク」といったぐるぐるメガネと機能性重視のザックを背負った小太り男性が謝りながらも覗きこんでくる。さらにその後ろには、別の中年男性もいる。恐らく、三日間も行列に並ぶことができなかった人たちなのだろう。その視線が少し羨ましそうだ。

 それにしても、数秒見ていただけで二人も野次馬が寄って来るとは。恐るべきソードアート・オンライン。

 

「ノガラや~い。こっちは終わったぜぃ」

 

 後ろに並ぶ人たちへの対応を決めかねていた俺に、赤いスカーフにチョロヒゲのヨージンが声を掛けてくる。

 

「おっ、終わったみたいだな」

 

 これ幸いと、クライン(・・・・)とロンを抜いた三人のところへ飛び出す。

 

 ん、待てよ……? クラインとロンを抜いたって事は……

 

「……なあ、ヨー。クラインの奴、まだ来てないのか……?」

「おうっ! クラインはもうチョット残るって言ってたぜぃ。……って、あ゛……!」

 

 どうやらヨージンも気付いた様だ。元々、ロンの奴はネガティブ故にどちらかの選択肢で迷い続けて、その辺をウロウロしている事だろう。

 大問題はクラインを一人にした事だ。いや、もっと言えば『奴』を女のいる空間に放り込んだ事だ。随分な言い方の様な気がするが、これだけは絶対の自信を持って言える。

 

「あんの、ボケたれ――ッ!!」

 

 言うが早いか、俺はその場を飛び出していた。

 

 

 

「つ、壺井遼太郎、二十二歳独身現在彼女募集ちゅ……ゴベハッ!!」

 

 結論から言えばぎりぎり間に合った。ピッタリ直角の綺麗なお辞儀から入るクラインのナンパ行為(?)にドロップキックを入れる事に成功。こういうギャグっぽい事には再生力がどこぞの錬金術師のホムンクルス並みに溢れているクラインが、完全に再生しきる前に後ろ襟首を引っ捕まえてズルズルと引きずる。この際、それを目の当たりにしていたナイスバディな女子アナがどんな顔をしていたのかについては、ご想像にお任せしよう。

 

「おいノガラ、おめぇ何しやがる! オレの一世一代の愛の告白を!」

「お前は、昨日もインタビューしに来た人にしてたじゃねえか! 節操の無さが限界超えてんぞ!」

「バカ野郎……恋愛はなぁ、躊躇なんかしていちゃ始まらねえんだよ!」

「引きづられながらカッコよさげな事言ってんじゃねぇぇぇ!!」

 

 結構な声量で叫んだのだが、周りもSAO購入成功でテンションが上がっているのか、こちらを向く人はあまりいない。

 

 ちなみに、この「美人に会ったら速攻ナンパ論」が生まれた過程を話そう。二十歳を超えたのにゲームばかりして、「年齢=彼女いない歴」を貫き続けるクラインに業を煮やした親夫婦が、いい加減孫の顔が見たいと仰られた事から始まる。六十歳を超えて老い先長くない親に早く孫の姿を……と、女子に話し掛けるとフリーズするという特性持ちのシャイボーイクラインはなりふり構う事を止め、ラブコメ主人公よろしくのフラグスルーをせぬ様にと、毎度の速攻ナンパを試みる様になったのだ。

 

 ……まあそんなふざけた戦法を使った戦いは、クラインの尊敬する武田軍の、皆さんご存知長篠の戦いの如き結末をもたらす事になるのは、最早言わずとも解る事だ。

 

「おお、大丈夫だったかノガラ……ゴホンゴホン! 大丈夫だったぜぃか、ノガラ?」

 

 心配してきた四人が駆け寄る。当然目下の心配事は、クラインが警察のお世話になるかどうか程度の最低限の物だろう。酷い訳では無い。普通にクラインが悪いから。

 それにしてもヨージン「ぜぃ」の付け方間違ってるし。ていうかやっぱりキャラ作ってたのな。わざわざ言い直してまでとは……。こいつら全員芸人志望なのか……?

 

「クラインはいい加減、その癖直した方が良いと思うよ」

「自分もそう思うっす」

「クラインやい、ナンパはもうちょっと方法と場所を考えた方が良いぜぃ」

「うんうん。クラインは僕を見習って常に最悪のケースを想定すべきだね」

「同意しておくが、ロンに関してはもう少し希望を持て」

 

 ぽっちゃりアフロのポッツに玉ねぎ頭のアルベルトことアル。それにヨージン、茶毛くせっ毛に童顔のロンの後に俺が続く。

 

「なんか、おめぇらのオレへの評価がすげぇひでぇ気がするだけど!」

「「「「「よく解ってる(ね)(っすね)(ぜぃ)(よね)(な)」」」」」

「聞いた結果がこれかよぉ――ッ!!」

 

 いい加減可哀想になって来るクラインの空しき悲鳴が上がったが、今回ばっかしはクラインが完璧に悪いな、うん。

 

 




前回の話で、ノンアクティブモンスターである筈のフレンジ―ボアがいきなり突撃して来たのは完全なるフラグです。

七月十六日(火) 修正
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