SAO-七つの魔剣~ギルド風林火山の狂戦士~   作:うおさ123

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 なんだか副題が段々ネタになっている気がする。まあまだシリアス入ってないからしょうがない。

では第四話です。


第四話 死亡フラグを跳び越えると、そこには死と等価の苦しみが待っている

――2022年11月6日午後4時11分――

 

「どうぞ、こちらへ」

 

 淡いベージュの中世的な服を着た、NPC老婆がカンテラを持っていない右手で洞窟の最奥、僅かなオレンジの光が差し込んでくる巨大な洞窟の切れ目へ、俺を促す。

 このオレンジの光はどう考えても、外から入ってくるタイプの疑似陽光では無く、この世界観にマッチした、そこの老婆の持っているカンテラの光と同じものだ。

 

「あっ、はい」

 

 少し奇妙な光景に少し気圧された俺は、綺麗に返さなければいけない筈のNPCへの返答を、かなり適当なものに済ませてしまう。

 とにかく、今はその中へと進むことが先決だ。俺は自分でも疑問に思う程、足を速め、その裂け目へと入った。

 

「何だ……コレ……?」

 

 一瞬だけ橙の光に包まれた視界が晴れ、いきなり巨大な黒い歯車が目に入る。その歯車は、ゆっくりと回転しており、下の小さな歯車と上にある中ぐらいの歯車と連動してその下にある、明らかに使用方法を考えれば大きすぎる《溶鉱炉》があった。

 それは、縦幅、横幅二メートルちょっと。奥行きは、圧倒的高温で――システム上の設定だろうが――熱せられた中を見る事は出来ない為解らない。

 恐らく、この世界の剣を作る為のシステムオブジェクトだろう。しかし、それにしては明らかに大きい。剣用の溶鉱炉なんて精々、横幅と奥行きがあればいい。縦幅なんてものはどう考えてもそこまでいらない。

 

「お客様なんて久しぶりですね~」

 

 後ろに立っていたNPC老婆の柔らかくもしわがれた声で、思考の奥底へ入っていた俺は一気に現実――と言っても仮想世界なのだが――に戻った。

 

「はぁ……どうも」

 

 どうも距離感が掴めない。あっちから何か言って来たとしても、こちらの返答が全部帰って来る訳ではないというのは、まだ可能性の話だという事でも、やはり話しづらい物がある。

 それに、この老婆がいきなり、「はっはっは! 人間の肉など久しぶりだ!」等と言いだして俺を襲ってくる可能性もまた、皆無ではない。

 

「はぁ……。前途多難も良い所じゃねぇか」

 

 少しばかりため息をついて、溶鉱炉から目を離し、洞窟の最奥……というよりもはや洞窟に見えるこの空間の全景を見渡す。

 

 部屋の一番奥はさっき見た通り、溶鉱炉が陣取っており、そのすぐ横にはこれまた巨大な白い石の台と、その上に堂々と置かれる堅そうな鉄板、そしてその上に陳列されている金槌や名称の解らない鍛冶道具。

 鍛冶屋の秘密基地みたいな感じがして少しばかり興奮を覚えたが、その横に置いてある俺の身の丈よりも巨大な大刀を見た瞬間、軽く血の気が引いた。

 

 俺は、他にもある明らかに凶悪そうな武器類を見て、完全に腹をくくると、最早ビクビクするのも馬鹿馬鹿しいので、隅に置いてあるベンチの様な簡素な椅子に、許可元有らずに乱暴に座る。

 

 来るなら来いってんだ。

 

 心の中でそう宣言しつつ足が笑っている事には、本気でノーコメントを貫く。

 

 そうこうしている内に、NPC老婆が台所からお盆と言うよりトレイの様な物に、これまたおかしな、ティーカップでも無ければ湯呑でも無い不健康そうな灰色の入れ物を載せて来た。取っ手が無い所を見ると、どうも湯呑に近い様だが、どうしても違和感がデカい。

 

「どうぞ」

 

 丁寧にトレイからお茶の入った容器を、俺の座っている椅子の前にある机に置く。

 

「どうも有難うございます」

 

 こちらも丁寧にお礼を言い、白い湯気の上がるお茶をゆっくりと持ち上げる。

 それにしても、こっちの世界でも湯気が上がるとは思わなかった。この分だと降雪ステージなんかに行ったら、白い息でも出てきそうだ。リアル描写も体外にしろ。

 ゴクリ、と少々警戒しながらお茶を口に含む。温過ぎず熱過ぎないちょうどいい温度に、ほっこりとした何かを感じたが、いかんせん味が良くない。紅茶と緑茶を足して二で割り、うまみ成分を激しく下げたような味。ハッキリ言って不味い。たしか百層近くステージがあった筈なので、料理や飲み物の味もそれで上がっていくに違いない。一体百層に行った頃には、どれだけうまい飯が出て来るのかと考えてよだれが出そうになったが、俺本来の世間的体面の問題で堪える。

 

 まあとにかく滅茶苦茶に不味いので、文句の一つでも言ってやろうかと思い、NPC老婆へ視界を移すと、頭の上に黄金の?マークが浮かんでいた。

 

「……?」

 

 それを見た俺は、NPC老婆と同じ様に頭の上に?マークを浮かべる。一体なんだろう? よく解らないものは徹底的に追及する主義を持つ俺は、老婆の顔を見る眼を鋭くする。すると、明らかと言うよりかは、誇張された様に大きく困った表情をした。

 

 しかし、それについては一つ思い当たる事があった。《クエスト》の発生だ。

 確かこんな感じの?マークが、ぴょこんと出るというのは、小学校の頃友達に勧められてやった、ド○クエとかでよくあった。そう考えれば納得がいく。

 つまり、さっき洞窟に入って気長に一時間程歩くというのも、クエスト発生条件の一つだった訳だ。悪い趣味してやがる。下手すりゃ一番最初に俺を突き落した《フレンジーボア》もこのクエストの一環だった可能性もある。

 とにかく、コレがそういうイベントだという事を理解して安堵するのもつかの間、ここまで七面倒くさい事をやらせたこのクエストとは一体何なのかが激しく気になった。

 

「何か困りごとでも?」

「はい、そうです」

 

 即答だった。いや、そんなに即答だと怖いぞ、おい。

 

「しがない旅人ですが、話したい事があるなら話してください」

 

 ……何かおかしな感じになった。てかヤバい。言った後で超恥ずかしくなった。

 マジでこういうマニュアルとか無いの? 事前の説明書、しっかり読んどくべきだった……。

 

「では、話させていただきますね」

 

 そうして老婆は喋り出した。

 

 本当にめんどくさいレベルで。

 

 

――一時間後――

 

「――という訳なんです」

 

 なげぇよ!! 超なげぇよ! 一時間とか語り過ぎだろ! ていうか途中の英雄譚、百%無駄だった! 

 

 と、文句はいくらでもあるが、ここで話を切ると一時間の努力――寝ない為の(ていうかまた眠り我慢をしなければならないとは思わなかった)――が無駄になる。よく解らない内容ではあったが、どうもこういう事らしい。

 

 昔はこの老婆にも夫が居たらしく、その人が凄い鍛冶屋だったそうな。で、その人が生涯を賭けて叩き上げた七本の名剣――といっても、剣以外もあるそうだが――があるらしい。しかし、その名剣もずっと前に魔物達に奪われてしまい、食べられてしまった。という訳で、そのままでは剣達が可哀想だというこの老婆は、別に自分に返して欲しい訳では無く、ただ剣をちゃんとした人に使わせてあげたいと願っている。つまりは、剣はやるので魔物から剣を取り返せ、というクエストの様だ。

 どうにもいけ好かない内容ではあるが、これらの名剣を装備できれば、後々の戦いで優位に立てるのだろう。

 それより、ほら? コレちゃんと喋ったところで一分超えないでしょう? なんで一時間も掛かるんだよコンチキショウ!

 

「このお願い、受けて貰えますか?」

「あー、はい。受けます受けますよろしくお願いします」

 

 疲労のせいか完全に棒読みだが、NPC相手に気を使う必要性は一切ないと俺は考えている。と言うよりも、長ったらしい話をお聞かせ下さりやがったこの老婆に限ってかもしれんが。

 

「ではよろしくお願いします。魔物が居る場所は、剣の声に従えば、必ずやその場所へと導かれるでしょう」

 

 なんだかよく解らんが、ある程度の範囲に入ったら自動的に話が進むか、その剣とやらを食べた、魔物ことモンスターの居場所が知らされる様になって居るのだろう。何にせよ、これでクエストの受注は完了した。

 

 と、そこまで考えた所で心臓が止まりそうになった。右下に表示されるデジタルクロックが、「17:29」を表示したのを見たからだ。

 クライン達との約束は六時半。洞窟に入ってからここに来るまでは、歩いて一時間もかかった。疲労の概念が存在しないこの世界で全力ダッシュしても、三十分はかかるだろう。何しろ洞窟が狭いから走り辛い。

 しかもそこから崖の上へあがる手段が必要だ。少し前までは自殺もやむなしだったが、死んだらここでのクエスト受注も取り消しになる可能性がある。

 

 ここは、早く帰らないと。

 

「やべっ……! と、とにかく失礼しましたっ! 」

 

 と、老婆に勝手に言い放ち、席を立って走り始めようとしたその時だ。

 

 急にリンゴーン、リンゴーン。と、鐘の音がした。

 

「は……?」

 

 どういう事だ? 洞窟が少し坂道気味になっていたのを思い出すと、この洞窟は地下にある筈。音は上方へ響く物であり、こんな外から遠く離れた場所に鐘の音が届く事はあり得ない。

 まあ物理現象を無視したゲーム世界、という事で納得は行くが、どうにも腑に落ちない。さっきまで物理現象を無視した事態は、痛みが無い事以外何一つ起きていない。崖から落ちた時の重力加速度の正確さは、子供の頃のジャングルジム天辺から飛び降りた経験から折り紙つきだ。

 

 となると、ここまで物理法則完全無視のこの鐘の音は一体何なのか? 

 

と、妙に冷静な思考がそこまで行った所で、寸止めの如く俺の体を青い光が包んだ。

 

「なんじゃこりゃ!」

 

 そう叫んだが、青い光は収まることなくさらに発光を強める。視界の端に無表情で佇んでいるNPC老婆を見て「なんか反応無いの?」などと考えたその瞬間、いきなり視界が切り替わり、夕焼けの緋色に染まった。

 

「……どういうこった……?」

 

 目の前の景色は、ログインした時にいた《始まりの街》。そして、そこにたむろする何千人ものプレイヤー達だった。

 

 

 

――2022年11月6日午後0時46分――

 

「――あ……朝……では無いなー、多分」

 

 目が覚めると、少し埃っぽい白い天井が目の前に在った。頭を不用意に上げれば天井に強制ヘッドバッドする位置だが、慣れているのでそんな心配は無用の長物だ。

 

「やっと起きたの? もう正午は過ぎてるけど」

 

 受験勉強の最中なのか、高校三年生の姉は勉強机の上に置いてあるデジタル置時計をこちらに翳した。そこに書いてある「00:47」という文字を見て、俺は絶句する羽目になった。

 

「えっ!? 何で起こしてくんなかったの!」

「あんたねぇ、アレだけけたたましい目覚まし鳴らしといてよく言えるわね」

「ごめんなさい……」

 

 俺はそのまま頭を上げ過ぎない様に、二段ベッドの上で正座をして綺麗に土下座。我が姉に逆らってロクな事は無い。大体、昨日までSAOを買う為に某電気街に行っていたと親にばれれば、俺は確実に出禁&SAO取り上げの処分を受ける。

 つまり、その生命線ともいえる所を握る姉に口答えなどあり得ない。よって土下座確定。

 

 まあ実は、二段ベッド故の上から目線なのだが。

 

「はいはい。で、あのゲーム一時から配信始まるんでしょ。無駄話してる暇あんの?」

「え、何で知ってんの?」

「なんか、ニュースでカウントダウンまでやってんのよ。どんだけ今の日本にはネタが足りて無いんだか」

「というか受験勉強真只中の癖して随分と余裕でございますね姉君……って、うわっ! 鉛筆飛ばさないで危ないから!」

「だったらすぐにでもそこで永眠してなさい」

「姉ちゃん、永眠の意味辞書で調べてお願い!」

 

 新たに、よく尖った鉛筆を右手の五本の指間に装填するマイ・ビッグ・シスターを、全力全開の父秘伝《猫の手》でなだめる。にしても、大学受験生で鉛筆なんて使う奴いるんだろうか? 今時、筆記ではなくパソコン試験も珍しくないのに。

 

「冗談よ。で、もう十分前だけど?」

「ゲッ! ちょっとトイレ言って来るっ!」

 

 時計を見せて時間を示す同室の姉に、適当に言葉を投げつけてアクロバティックに二段ベットを飛び降り、化粧室へと駆ける。後ろから「あんた、もうちょっと言葉づかい気を付けなさいよ」と呆れ声が掛かるが、三年以上言われている事なので最早無視できるレベルだ。

 

 トイレを済ませた後、残り五分の時間で最低限の量を食える様に棚の奥から某有名栄養調整食品を取り出し、水道から出した水をコップに入れる。

 その二つを持ってリビングに出るが、日曜日にも拘らず誰もいない。

 

「父さんと母さんも居ない。……兄貴は勘定に入れる必要はないな、うん」

 

 そう言って、カ○リーメ○トを貪り食いながら水を喉の奥へ放り込む。

 

 我が家庭は、父母に兄、姉、俺という家族構成だ。

 父、母は昨日帰っていた筈(既に俺は爆睡中だった為仮定形)だが、父は日曜はフラフラとどこかに出かけてしまうし、母はお茶会だろうか? 買い物中という可能性もあるが、今更関係ない。

 え、兄? 兄貴は現在は大学の寮に住んでいる。今頃、あっちで作った彼女とでもよろしくやってんだろう。顔だけは良いしな。

 

「やばっ、後五分」

 

 中央の時計を見上げて、右手の欠片を自分の口へ放り込み、水で押し込む。米好きの俺からすれば水分と悲惨な朝食兼昼食だが、体の構造上そこまでメシが要らないのは、この時ばかりは好都合。

 

「晩飯はぜってーいっぱい食う!」

 

 どうでもいい決意をどこぞの麦わら帽子並みのノリですると、台所の流しに水を飲んだコップを洗いもせずに置く。これで罪悪感が湧くのは日ごろの家事の賜物か。

 

 

 そうして自室に駆け込むと、姉が携帯音楽プレイヤーのイヤホンを両耳に突っ込んでカリカリと鉛筆を走らせている。うちの姉貴は音楽を聴いていると集中できるらしい。ちなみに兄貴は全くの無音でないと集中できないという厄介な体質持ちで、受験勉強の時には劇的なビフォーとアフターを見てしまった。アレ、改修工事にいくらかかったの?

 俺はその二つのハイブリットという便利体質をゲット。いつの日も末っ子がいいトコ取りをするのは世界の真理らしい。

 

 と、どうでもいい思考を巡らせている間に二分経過。ヤバい、早くしないと。

 

 いつもならイヤホンを片方はずして大声で叫ぶぐらいはするのだが(当然、鉛筆ダーツの的にされる刑の執行が確定する)、降りた時と同じく横に掛かった木製梯子を無視してとっとと上る。ついでに上るときも降りる時も手すりに頼りっぱなしなので、いい加減折れるのでは無いかと思っているのだが、二年以上使っても中々折れない。流石はお値段以上。

 

 そして、俺のベッドを見渡すと、その枕元に置いてある一台のヘッドギアが目に入った。VRインターフェース《ナーブギア》。軽くお年玉貯金全部を使い切るその値段には、購入する時にかなりの意志力を必要としたものだ。

 新品同様で、ネットワーク接続の為に一度しか使っていないそれは、黒い光沢を放ち綺麗な流線型を描いていた。

 

「今日は頼むぜ」

 

 余りこういう実益の無い事はしない主義なのだが、初めてまともにコイツを使う日だ。少しくらいよかろう。

 そうして俺はナーブギアを頭部に装着して寝っ転がり、秋過ぎの季節に風邪を引かぬ様自らに布団を掛ける。

 

「リンクスタート」

 

 そうして俺の唇は、地獄行き列車の合言葉を紡いだ。

 

 

 

…………この後《仮想体(アバター)》作りが終わっていないのを知って、慌てて作るのにもう五分かかる事となるのだが。前途多難だ、やれやれ。

 

 




これで、現実世界との平行進行は終わります。テンションの変わり方がめんどくさいので。

後、お気に入りが十件超えました。どうも有難うございます。
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