SAO-七つの魔剣~ギルド風林火山の狂戦士~   作:うおさ123

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 えー、こちらの方で期末テストがあった事をお伝えするのを忘れてました。お蔭で一週間以上更新が遅れた事を、ここにお詫び申し上げます。

では、第五話です。


第五話 デスゲーム

――2022年11月6日午後5時30分――

 

「何だよ、コレ……?」

 

 周りには、数千人のプレイヤー――驚いた表情からNPCで無い事は確か――が立ちすくんでいる。さらに、この《始まりの街》に青い光が幾度となく点滅し、千人以上に人がこの場に召喚されていく。

 もしかしたらSAO全プレイヤー一万人が集められているのかも知れない。まあ、いくら売り切れ筆頭の超人気ソフトだったとはいえ、流石に全員がプレイしている訳でもあるまい。精々、九千人前後だろう(それでも十分凄いが)。

 

 それにしても何故、プレイヤー全員を集めるなどという真似をしたのか、と正しい疑問を抱いて耳を澄ませると、二人の男性プレイヤーの声が聞こえた。

 

「ログアウト出来ねえってどういう事だよ!」

「どうせこれからソレの説明でも済んだろ。すこし考えたら解る事だろ」

「でも俺、この後バイトあんだぜ!」

「しらねーよ! 俺だってとっととレポート仕上げなきゃいけねぇのに!」

「つーか、GMコールも意味ねぇってふざけてるぜ全く」

 

――ログアウトできない……?

 

 俺はその事にかなり驚いた。今現在、俺の身体は家のベッドでナーヴギアをかぶったまま寝っ転がっている。プレイヤーは、自分の脳が出す電子パルスを完全にナーブギアでカットし、それを変換してSAOのホームサーバーに送り込むことによって、俺はここで走ったりジャンプしたりした時も、現実世界ではただ寝ているだけの状態でいる事が出来るのだ。今の説明は完全にナーブギアのHPの内容そのままだが。

 つまりゲーム内のコマンドでログアウトできないという事は、自分の意思では現実世界に戻れない事を意味する。危機的状況に戦慄してもおかしくは無いが、何故だかそこまで俺はその事を問題視する必要性を感じなかった。

 

 それにしても妙だ。ログアウトできないとなれば、ホームサーバーごと切って一度プレイヤー全員を仮想世界から排除すべきだろう。どう考えても、勝手にゲームが中断された時のクレームよりも、ゲームから出れなくて重要な用事に遅れてしまったり、出れなくなってしまった人が出た時の損害賠償の方がデカいだろうに。

 

 それとコレは完全な妄想だが、SAOサーバーそのものが奪取されたという可能性もある。サーバーさえ落とせばすぐにナーブギアの安全装置が作動して全員自動ログアウトする筈なので(停電対策として説明書に書いてあった)、不味けりゃコンセントを引き抜くだけで万事解決なのだ。この状況で仮想世界から出れないという事は、ナーブギアの故障か、さっき言ったSAOサーバーの奪取以外あり得ない。ナーブギアの故障に関しては、何度か再販されているのでこれだけの人数に同じ事が早々起こる訳…………

 

 ……待てよ。ナーブギアの根本的構造の欠陥とかだったらどうなるんだ? もしかしてマジで出られないとか……

 

 おっと、流石にその心配は無い。誰かがナーブギアを外から取り外してくれれば、当然この世界とのリンクは切れ、勝手に現実世界に戻れる筈だ。よって、現実に帰れなくなるとかいう事は無い。メカに魂が抜かれるとかいう恐ろしい小説が有ったような気がするが、本日2022年11月6日だけは出版停止で。

 別にナーブギアが俺達を逃すまいと、全力全開で固定されている訳じゃない。軽くハーネスで固定されていても、家の剛腕姉御に任せれば安心♪

 

 ……何故か悪寒がするな。

 

 にしても、こんな事になったら『ナーブギアの回収』とか起きてSAOも出来なくなるとか無いよな。三日間も並んで買った身としては、かなり悲しい物が有るのだが。

 まあ、その時にはクラインおすすめのネトゲにでも浸ってやろう。ロンにも勧められた物があったが、あの重度のネガティブ症候群の原因かもしれない物を嬉々としてやる程、俺は命知らずでは無い。

 

「おい、あれ見ろよ!」

 

 突如、集まっている数多のプレイヤーの中から誰かが叫んだ。俺はその声に反応して周りを見渡そうと、首を動かす。

 

「何だ……アレ……?」

 

 反射的に見上げた空が真紅に、秋のもみじの様に染まっていく。そのあり得ない空の紅葉の原因は、横長の六角形型のパターン表示と、そこに書かれた真っ赤な【Warning】と【System Announcement】という二つの文字だった。

 確か【warning】は《警告》、【System  Announcement】は《システム》と《発表》なので、精々運営者側からの《お知らせ》といった所なのだろう。

 掛け合わせて『システム側からのバッドニュース』か? 本当にゲームハードの構造的欠陥とかじゃないよな。《警告》などと聞かされれば、少々反応過敏になってもしょうがなかろう。

 

「ヒッ! な、何だよアリャ!?」

 

 そこまで考えた所で、隣に居た男性プレイヤーが急に怯えた声を上げた。男の癖に怖がっちゃって。何なんだ一体? そう考える脳を所持する頭をもう一度上げると、六角形の集まりの中央部分から、血にも似た生理的嫌悪感をもたらす様な赤黒いドロリとした液体が流れ落ち、形を変えていく。

 液体が集まってできた姿は、その液体と同じ真っ赤なローブを羽織った巨人……いや、ローブの中に何も見えない所から、正直巨大なローブが宙に浮いている様な感じがする。

 

 それにしても趣味が悪い。赤は興奮作用があってうつ病などに効果があるとされており、勇気・行動力・情熱などを表すという。中々ポジティブな意味に聞こえるが、この興奮作用は軽いパニック状態に陥っているプレイヤー達にとっては、憎しみ・怒り・恨みを表す意味となる。

 このネガティブなイメージは人間の血の色から来るとされ、人間の血が青だったならこの意味を表す色は青だったであろうとすら言われる程だ。つまり、さっきの人間の血液の色や粘度に似たあの液体は、どう考えても逆効果。危機感を煽るにしたってやり過ぎな気がする。

 

 「GMか?」「早く出してくれよ」「何々、どういう事?」と、口々に言い合う人達が居たが、どうにも赤いローブのフードの内側に広がる虚空に、そんな『普通』の事は感じられず、一抹の不安を覚える他なかった。

 

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

 

 は? 何を言ってるんだコイツは。私の世界? 何を言いたいんだ?

 

 赤ローブの言葉に俺の頭の中がこんがらがっている間に、赤ローブは次の言葉を告げる。

 

『私の名は茅場晶彦(かやばあきひこ)。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

 

 茅場晶彦!? SAOとナーブギアの両方の開発者である人物が、何故こんなおかしな事を言っているんだ? 確かに「私の世界」という言葉は、彼が使うなら何らおかしくない筈なのだが、常識的に考えて言動が余りにも異常だ。よく理解はできないが、嫌な予感しかしない。

 

『プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしゲームの不具合では無い。繰り返す。これは不具合では無く、《ソードアート・オンライン》本来の仕様である』

 

 仕様という事はつまり、意図してこの状況が作られたという事だ。意図して、というのはこの茅場晶彦という男の意図なのか、それともコイツの所属する組織の意図なのか。愉快犯なのか集団誘拐なのか(実際は自宅のベッドに寝ているので、誘拐という言葉に若干の違和感があるが)。

 意外に冷静に働いた脳みそが、状況を整理しだす。

 

『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることができない』

 

 結論、愉快犯。

 

 茅場晶彦の事などテレビで見たことが一度たりともないので、性格についての参考資料など、SAOの最新情報が書かれた月刊誌の僅か1ページ足らずのインタビューだけだ。

 『城』という言葉の意味は解らないが、ゲーム関係の何かだろう。ログアウトさせずにゲームでもさせる気か? 馬鹿な考えだ。ナーブギアを外せばこの世界なんぞすぐに出られるというのに。天才量子物理学者も落ちたもんだな……って――

 

――待てよ、仮にもナーブギアの開発者がそんなミスする筈が無い。つまり、それをさせない何かが……

 

『……また、外部の人間の手による、ナーブギアの停止あるいは解除もあり得ない。もしそれが試みられた場合――』

 

 一瞬の静寂。一万人近いプレイヤーが誰一人喋ることなく、次の言葉を待った。

 

『――ナーブギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』

 

「……」

 

 恐らく、ほぼ全てのプレイヤーがその言葉に凍りつくしかなかっただろう。俺も一切の思考が働かない。

 は? 生命活動の停止? 死ぬって事か? 何だよ……。

 

「何だよ、それ……?」

 

 そもそも電磁波によるマイクロウェーブで脳を焼くなんて事が出来る訳が……

 ……マイクロウェーブ……? 

 

 そこで俺の頭には、ある一つの物が浮かんでいた。

 

――電子レンジ。英語名を《microwave oven(マイクロウェーブ・オーブン)》、直訳は『マイクロ波オーブン』。

 

 そう、今や一家に一台以上無い人の方が珍しい超定番家電。その機能は、マイクロウェーブの性質によって水分子を激しく震わせる事で、その摩擦熱から物を『温める』。ただ、出力さえ強ければ、物を『焼く』事も可能。

 だが問題は、それを可能にする電源が有るかどうか……しかし、『この事』を否定できる根拠を、俺の頭はすぐに潰してくる。

 確かに、コンセントさえ抜けば基本的な電気機器は止まる。しかし、ナーブギアの重量約三割はバッテリセル、これではコンセントを抜かれても一時間以上ナーブギアは動き続ける。頭部ごと焼くレベルでフルに使えば、恐らく十分も持たないだろうが、人体の最大急所である脳のみを焼くだけなら何ら問題ない。数秒でお陀仏は確定だ。

 

 明らかに言っている事はおかしいのに、無駄に理論の通った事を言う赤ローブは、次の言葉を放った。

 

『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーブギア本体のロックの解除または分解または破壊を試み――以上いずれかの条件によって脳破壊シークエンスが行われる。この条件は、すでに外部世界では当局及びマスコミを通して告知されている。ちなみに現時点でプレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーブギアの強制除装を試みた例が少なからずあり、その結果』

 

 一呼吸の間。焦らす様なその行動が、既にパニック状態になりつつある俺の脳をさらに追い詰める。

 何が起きたんだ? ほぼ既に答えが出ている様な疑問を、無意識のうちに気付かないふりをしながら赤ローブへ投げかける。

 

『残念ながら、すでに二百名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』

 

 永久退場……? ……死んだ……人が……

 

――――死んだ……!?

 

『――置いたきた肉体の心配をする必要は…………危険はすでに低くなっていると………回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され…………厳重な介護態勢のもと置かれる筈…………安心してゲーム攻略に励んで…………――』

 

『――諸君にとって、《ソードアート・オンライン》はただのゲームでは無い…………あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間…………――』

 

『諸君らの脳は、ナーブギアによって破壊される』

 

 最後の一言で、俺の頭に軽く飛んでいた意識が戻ってきた。ふらふらした脳細胞をフルに使って理解した事は一つ。《ナーブギア》と《ソードアート・オンライン》の開発者である茅場晶彦は、その二つの物を用いてこの仮想世界に命がけのゲームを、俗にいう『デスゲーム』を作り上げようとしている。

 

『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べたとおり、アインクラッド最上部、第百層まで辿り着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう』

 

 他のプレイヤーは沈黙を露わにしたが、『城』を極めるだのとのたまっていた事とログアウト不能という事に、赤ローブの「この世界をコントロールできる唯一の人間」という言葉から浮き出る個人的犯行という事を複合して考えれば、アインクラッドという『城』の第百層の攻略完了、つまりはゲームクリアが脱出条件だと容易に予想できる。

 

 ここまで聞いて、この男のしたい事が完璧に解った。

 

――茅場晶彦が作りたいのはデスゲームそのものでは無い。この仮想世界に浮かぶ天空の城、アインクラッドに一つの『世界』を作り出す事……いや、この《仮想世界》を、プレイヤーにとっての『現実』にする気だ。

 そこまでする理由が一つ思い当たったが、余りにも馬鹿らしい理由だった。

 

 子供の頃、マンガやアニメを見て「この世界に行ってみたい!」と思った事が無いだろうか? ファンタジーの世界へ行って、出てくるモンスターを勇者みたいにカッコよく倒したいと思った事は無いだろうか?

 

 そんな単純な理由。現実的にそれを実現できる世界、それこそがVR世界。そして世界は人がいなければ成り立たない。それを集める為の手段であり、自らが作った世界(目的)そのものが、

 

 《ソードアート・オンライン》。

 

「……狂ってる……」

 

 認めたくは無かった。それが茅場晶彦の子供のころからの夢だとするなら、本来一人一人専用の物が必要のVRマシンを多人数に対応できる用に作ったVRマシン《ナーブギア》も、一般普及を進める事でいち早くVRMMOというジャンルを作る為の策にすぎない。

 つまりは、今まで行われてきたSAOやナーブギアの開発スタッフも、彼の掌の上で転がされていたに過ぎない事を意味し、脳破壊システムなんて物が組まれていた事さえ知らない外部の人達には、プレイヤーの死を恐れてナーブギアのセキュリティロックを解こうとする事さえままならない。

 ソレが示す答えは、この仮想世界からの脱出が困難を極める、という単純なものだ。

 

 見事だ。全く持って見事だ。惜しむなくは、ここまでの計画力と技術力が有りながら、彼には危険な一歩を踏みとどまる事ができなかった事だ。

 

「はっ……ははははは」

 

 俺の口から、テノールのかかった(・・・・・・・・・)乾いた笑い声が零れる。

 馬鹿馬鹿しい。まったくもって、バカバカしい。俺の『身体』は今、東京西部の自宅に居て、その姉と共有している二段ベッドの上で、ゆったりと寝そべっている。なのに、なのに……

 

――俺の『魂』はそこには無い。

 

『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ』

 

 俺の心は、もう赤ローブの言葉に対して反応する事すら諦めたのか、何も考える事無く右腕を振った。

 出現したメインメニューのアイテム欄を、ゲーム開始から間もない頃に使用した時よりも圧倒的に早く叩くと、その一番上に有ったのは《手鏡》というアイテムだった。俺は無心のままそれを叩き、小さな効果音を奏でながら現れた小さな四角形の鏡を右手に握る。

 

 ソレが何を表すのか。少し前の俺なら答えにたどり着いたやも知れないが、今の俺にそんな思考力は残っていない。力のこもらない右手で、良い訳でも悪い訳でも無い微妙な容姿の男の顔が映った手鏡を握り続けると、突如視界がホワイトアウトした。

 

 ほんの一瞬だけ、この白い幕が取れた後にいつもの部屋の少し汚れた白い天井が見えるのではないか、と淡い希望を抱いたが、約二秒後に俺の目に映ったのは、一万人近いプレイヤー達と中世ヨーロッパ風の建物、そして最低の赤ローブ。手に持つ手鏡には、さっきと同じ男の姿が映る……

 

――違う。

 

 手鏡に映っていたのは、ギリギリ肩まで伸びた黒い髪を生やし、少々大きめの瞳を持つ。すらっとした鼻が、白さの残る僅かに焼けた肌を纏った一人の少女(・・)

 彼女は一体誰なのか? 考えるまでも無く解る。

 

――それは、俺が十六年間使い続けてきた現実の身体、辰川那奈(たつがわなな)の姿だった。

 




そう、ノガラの性別は女だったのさ! 気付いた人は居たかな?

…………すみません、一回やってみたかったんです。ホンの出来心だったんです…………

という訳で、気になった人は色んな所に散りばめたフラグを見つけてみてください。
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