幻想郷の空を一人の女性がのんびりと漂っている、このところ異変もなく平和で怠惰な日常を満喫するだけの日々。
事件の一つあれば、彼女はすっ飛んでいくだろう。
「ま、そんな事件あるならこんな退屈はしていませんか」
彼女は射命丸文、人ではなく天狗、種族としての天狗である。
本来、彼女は気ままに空を飛べる程度の存在では無いと言われている……が、彼女自身をして大天狗等といった役職に興味はないのか、椅子を蹴っているのだそうな。
風の向くまま気の向くまま、東奔西走事件を探して幻想郷の空を飛ぶ。
「おや、博霊神社に参拝客ですか、これは珍しい」
人里から離れて暫くの小高いその場所に建つ神社、基本的に参拝などはされないその神社に、人影があった。
その神社の巫女ではなく、友人の魔法使いでもなく、半居候の鬼でもない、かといって迷い込んだ外来人と言うわけでもなさそうだ。
「事件の臭いがしますよ」
早速取材をと思いはしたが、少し考える。
コレが異変に繋がるのであれば、後にした方が面白い記事になるかもしれない。
果たしてどうすべきかと悩んでいると、参拝客が博霊の巫女に頭を下げているのが見えた。
頼み事をしているのか、はたまた何かの礼なのか、巫女が呆れるほどには頭はしつこく下げられる。
「ふむ、帰ったら聞きに伺いましょうかね」
ここで眺めていようかと考えていると、参拝客は帰っていった、どうやら満足したようだ。
「ではでは」
気だるそうに境内を歩いていく巫女に向かって文は突撃する。
「どーもどーも霊夢さん、先程はお困りのようでしたね、あの参拝客はいったい何故此方に?」
「ふぅ……まあ良いわ、別に特別なことじゃない、偶々街道を歩いていたら、偶々彼女が居て、妖怪に襲われていたから助けた、それだけのことよ」
心底鬱陶しそうに、言葉早く語り終えた巫女は、もう用はないでしょと、犬でも払うように手を振るう。
「なるほど、然して異変に繋がるようなことでは無いですねぇ」
「んなことでいちいち異変が起こってたまるもんですか」
ですよねぇと相槌を打って、文は博霊神社を後にした、長居をして、何処かで起きるかもしれない事件を逃す手など在りはしない。
「さて、次は……魔法の森にでも行きましょうか」
そのついでに、色々寄るところも出来るだろう、紅い館とか、霧の湖とか。
門番の様子でも伺いに……と思ったが、どうせ平和な最近の情勢である、居眠りがばれて、ナイフでも刺さっていることだろう。
そんなことは然して珍しくもない。
が、内部ではどうだろう……と、思い立ったが吉日である、文は何かを期待して紅魔館へと向かうのだった。
ーー終り