「……っふぅ……」
これで何杯目だろう、そう思いながらも、霊夢は酒をぐい飲みに注いでは空けていく。
「どうしたのさ、今日は随分乱暴に飲むじゃない」
二本の立派な角を生やした少女こと伊吹萃香がそう問うと、霊夢はやや回らなくなった舌で答える。
「でも、ちょっと飲みすぎだね」
胸糞の悪くなる話があった、そう言う霊夢のぐい飲みは萃香に奪われる。
「返ひなさいよ」
「だーめ、酒は美味しく楽しく飲むもんさ、今の霊夢は美味しそうでも楽しそうでもない」
いつになく真剣に止める、流石にたじろぎそれでも後一杯と食い下がる霊夢に、萃香は自身が持つ瓢を傾けて酒を注ぐ。
「うにゅ……うむ……ん」
「ほら、ぐいっといきな」
アルコール度数90云%を誇ると言われる伊吹の瓢箪から注がれる酒を、霊夢は一気にあおる……が、当然むせて吹き出し、気絶してしまう。
「ま、これで良いか」
一息に潰した霊夢を置いて、萃香は霊夢の布団を敷きに席を外した。
「うぐ……」
鬼の酒で潰された翌朝、霊夢は痛む頭と心地の悪い胸をおして、顔を洗い縁側で風に当たる。
「あー……ヤバい……死ぬ……」
柱の冷たさが心地良い。
「霊夢さーん」
境内の方から名前を呼ばれたのでそちらを見ると、ウサギのみみを揺らして、薬師の弟子が寄ってきていた。
「なに、どうしたのよ?」
「萃香さんに二日酔いの薬を此方にとお願いされまして」
わざわざ有難い事である。
「お代は……ちょっと取ってくるわ……」
悲鳴をあげる体を圧して立とうとすると、代金は既に貰ってあると教えてくれた。
(萃香に借りが出来たわね)
優曇華院を縁側で見送って、貰った薬を飲む。
暫くすると眠気が襲い、うとうととし始める霊夢。
そのまま眠るわけにはと、どうにか部屋に戻って横になると、そのまま眠りに落ちた。
「おーい霊夢ー」
遠慮無く開かれた障子から顔を見せたのは馴染みの、普通の魔法使いの少女、霧雨魔理沙。
少女の目的である霊夢は、布団も敷かずに眠っていた。
「ありゃ、また随分珍しい光景だなこりゃ」
「二日酔いの薬を飲んだからね」
声に振り向くと、そこには瓢を傾ける萃香が居る。
「二日酔い?尚更珍しいな、何があったんだ?」
「んー私も詳しくは訊いてないけど、なんかヤな事があったみたい」
「ってことは、相当嫌なことだったんだろうな、じゃなきゃ酒に飲まれるまで飲むなんてやらないし」
「そうだね、まあ……巫女だって酒に飲まれるまで飲みたくなる事だってあるって事だねー」
言うと萃香は昨日と同じく霊夢を抱き上げて、部屋へと向かう。
魔理沙は、途中の襖や障子を開けて行く。
「明日は、元気になってて欲しいもんだぜ」
「そうだね」
ーー終り