お気に入りの紅茶を、お気に入りのカップで飲み、お気に入りのお菓子を頬張る。
その視線の先には、魔法で太陽光に耐性を得た愛しい妹が遊ぶ姿。
その遊び相手となっているのは、門番である美鈴とメイドの咲夜の二人。
遊び相手と言えど、以前であれば命を賭けたものだった。
(ホント、霊夢と魔理沙……そしてあの絵描きには感謝だわ)
今のフランであれば、咲夜か美鈴を一緒にすれば好きに出掛けさせても良いだろう、紅魔の皆で幻想郷を巡ってみても良い。
そう、あの絵描きのように。
絵描きが紅魔館に来たのは春のころ、湖を描こうと来てみれば、この館が目にはいったので来てみたと言っていたか。
絵を描きに来る度、フランは絵を習っていた。
次第に狂気はなりを潜め、本来のあの娘の笑顔を見られるようになる。
レミリアも筆を振るったものの、コレがまた難しい。
何から……もそうだが、何処から描いて良いのかが解らないというのもあった。
絵描き曰く、初めは好きなようにすると良いと言ってくれた。
(……好きに描いて、出来上がったのが緑と紅の塊だったわね)
フランに大笑いされはしたが、フランが描いたと言うパチュリーは、紫の何かだった事もあり、大笑いで返すとケンカになったのは記憶に新しい。
今、紅魔館には優しく、穏やかな空気が流れている。
あの絵描きは、秋を前にこの世を去ったと、買い物に出た咲夜から聞かされた。
一枚の紅魔館の絵。
その絵の庭で、レミリアは咲夜の給仕でお茶を楽しみ。
フランは美鈴と遊び。
パチュリーは小悪魔に本を運ばせ、読書を楽しむ。
仕上がったその絵を、絵描きの妹と言う里の住人が持ってきたのは、つい先日の事。
「お嬢様」
「何かしら?」
咲夜を見れば、フランがその後ろから覗き見る。
「ふむ……そうね、たまには皆で出掛けましょうか」
その言葉にフランは笑顔を輝かせ、レミリアに抱きついた。
「こ、こらフラン」
「色々なところに行きたいな」
「そうね、色々なところに行きましょうか、この庭の景色の参考にもしたいし」
狭いようで広い幻想郷。
見るべき所は少なくない。
何処からいこう。
これは能力を使わずに決めてみよう、フランと一緒に。
「いっぱい花が咲いてるところが見てみたいわ、お姉様」
そうなると、無名の丘か太陽の畑、再思の道や無縁塚の彼岸花はまだ先か。
白玉楼の桜と言う手もあるか。
「……そうね、桜でも見に行く?」
「うん!」
「決まりね、咲夜」
「白玉楼に赴かれるのですね、八雲紫から先方に伝えて頂いておきます」
本来、それは難しいだろうが、何故か咲夜であれば出来る気がする。
「準備次第、向かう事にしましょうか」
「うん!」
ーー終り