「ご主人、これで何度目か覚えておいでか?」
ナズーリンに怒りはなかった。
「ええっと……」
指折り数えて間に合う事など無いだろうと、ご主人こと寅丸星に聞こえぬように、心で溜め息を吐く。
「戻ってきたときはあったので、それ以降なのは間違いないのですが……」
どうやら数えるのは諦めたようだ。
「出先で無くすことは多々あれど、ここで無くすことも………多々ありましたね」
命蓮寺の住職、聖白蓮も一旦手を止めて、話に加わる。
「うう、ごめんなさい……」
「ショボくれるのは後にして、今は探すのを優先しないと。ほらご主人、行きますよ」
ナズーリンはダウジングを行いながら、境内を歩いていく。
途中、一輪やぬえ、響子とも情報交換しながら、ダウジングを進めていくと、村紗も合流。
更にはマミゾウも加わるが、宝塔は見つからない。
「どどどどうしましょう……!?」
焦りだけが募っていく星を落ち着かせるように、ナズーリンは大丈夫と笑う。
ここまで、すべて意識的にダウジングを行ってきた、だが、更に深くダウジングを行うことも出来る。
そう、意識と無意識の間で行うダウジングを。
すると、早速引っ掛かる、宝塔探しに加わっていなかった人物が。
「……ご主人、こっちだよ」
その墓は、最近立てられたもの。
供えられた花もまだ新しい。
「お兄さん、どうかな? 賑やかでしょ?」
墓に話し掛けるのは古明地こいし、その手には皆が探す宝塔があった。
何故墓参りに宝塔か、それに意味はない、ただ無意識の内に星から預かって、本殿に戻していないだけである。
ただ、そうする前に、何となく墓参りをしておきたい、無意識ではなく自身の紛れもない意志で。
とは言え、何となくと言う辺りは何時もの自分らしいなと、こいしは小さく笑みを浮かべる。
「こいし」
「あ、ナズ」
声に振り向くと、ナズーリンと星の姿。
どうやら宝塔を探しだしたようだ、とこいしは手にある宝塔を星に差し渡す。
「すぐ本殿に戻すつもりだったんだけどね」
今回命蓮寺には一週間近く滞在していた、姉も居場所は知っていても心配するだろうと、一度帰ることにして暫くは姉の傍に居ようと思い、この絵描きの墓にお参りしておこうと、こいしは語った。
「そうですか、聖はこの事を?」
「私が帰る事は知ってるよ、宝塔の事は無意識だったから知らないと思う」
「すぐに発つのかい?」
「うん、皆にも伝えてあるから」
「ではこいし、また今度」
「うん、じゃあね」
こいしが命蓮寺を後にしてすぐ、宝塔は本殿に納められ、命蓮寺は静けさを取り戻す。
尤も、すぐに騒がしくなりはするのだろうが。
ーー終わり