そして、遂に終末の時計が動き出してしまう。
「俺は…いったいどうしたっていうんだ!」
草木も眠る丑三つ時の空に向かって俺は一人叫んだ。なんであんな妖怪ごときにこの俺が…
「同情や憐れみをかけているんだ!!」
あいつが側で泣いてる時、よくわからないが本当にほっとけなくなって気が付いたときには頭を撫でていた。自分でもよくわからない気持ちで。
「だが…悪い気分ではなかった、気がする…。」
ミスティアが泣き止んでくるのを見ていると、なんとなく安心したような不思議な感覚に襲われた。そして温もりを感じると、どことなく心が満たされていくような心地よい感じに浸ることができた。一度もなかったことで、内心驚き戸惑ったが、今までにはないほど穏やかで安らかな時を得られた。まるで、自分の中で氷付けにされていた何かが溶け去ったように。
「だとしても、だ。」
このままでは駄目だ。自ら抱いた野望ともいうべきものは達成できなくなる。…この幻想郷を滅ぼすという目的が。だが…。
「…この満月が沈んで日が昇るまでの僅かな間だけでいい。もう少しだけ、この感覚に浸らせてくれ。明日の俺はきっと元の俺だろうから…。」
見上げている空には雲間から満月と僅かな星々が静かに煌めいていた。その中で一人、彼は佇み、感傷に浸っていた。この時の彼は普通に感情を持つ妖怪にすぎなかったが、次の日この幻想郷を壊滅的にまで追い込む終末の時計を動かす存在となるとは誰も知らなかった…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ねえ。」
「うん?」
「今日の夜、私妹紅と慧音と飲みに行くんだけど大丈夫?」
「別に平気だよ。」
「ならよかったわ。」
いきなり何を言い出すかと思えば、飲みに行くとは…。珍しいこともあるな。あれ?でも今日は…
「今日授業あるはずだぞ?」
「そんなに長引かないから平気みたい。」
「それは知らなかったな。」
そういうことなら一言いってほしいな、慧音。
「ところで、そろそろいかなくて大丈夫?」
「そうだね。行くよ。」
出ていった、か。
「ふう…。さて、紅魔館に行くか。」
紅魔館に行くのは訳がある。もちろん図書館というのも半分あるけど、一番はフランに作った人形を届けに行くこと。ずっと前から頼まれてた紅魔館メンバー全員の人形が完成したからね。飛んでいると目の前に見えてくる紅魔館。降りて美鈴に挨拶をする。
「美鈴。起きないとまたやられ…」
「ヒュッ!いたぁ!?」
「また寝ていたのね?美鈴。」
あぁ…。咲夜の笑みが氷の微笑になってるわ。これは危険ね…。
「す、すみません。」
「いいこと?次やったら倍に増やすわよ?」
「は、はいっ!」
「あら?アリスさん、今度は何のようですか?」
「フランに会いに来たわ。」
「妹様にですか?わかりました。アリスさんはわかってると思いますので館内を自由に歩き回っていただいて結構です。一応お嬢様にも伝えてはおきますので。」
そう言って一礼すると姿を消す咲夜。さすがね。
「妹様に会うんですか?きっと喜びますよ。あ、あと前回は私の花畑を見ていきませんでしたよね?今回は絶対見ていって下さいね。」
「ふふ、わかったわ。美鈴。」
一応図書室に向かう。すると、
「あら?アリス?何のようかしら。」
「ちょっと本を借りたいのだけどいいかしら。」
「いいけど。どんな本?」
「そうね…。妖怪とかについて詳しく載っている本ってあるかしら。」
「あるわよ。こあ!」
「はい!パチュリー様。これですね。」
「この本なら詳しく載っていると思うわ。他にもあるけどどうする?」
「いえ、まずはこの一冊でいいわ。」
「そう。じゃあね。アリス。」
「ええ。」
図書館をでて、今度は地下牢に向かう。何故かというと、フランがそこにいるから。
「フラン?いるかしら。」
「アリス?どうしたの?」
扉を開けて中に入ると、不思議そうな顔をしながらフランが出迎えてくれた。
「ほら、この前約束したお人形よ。」
「…!」
可愛いわね…。貰ったとたんに目をキラキラさせちゃって。こういうのって作ったかいがあるわよね。
「アリスありがとう!大好きー!」
「キャッ!もう、フラン…。」
しばらく人形を抱き締めてたと思えばいきなり抱きついてくるなんて。でも、それだけ喜んでくれてるってことよね。
「えへへ。アリスって優しいよね。」
「そうかしら?」
「うん!だって、私の頼んだお人形作ってきてくれたじゃん!しかもこんな綺麗なの!」
頭を撫でてあげていると笑顔そのものといった顔でこちらを見上げてくる。ほんと癒されるわね…。
「あっ!お姉さまと咲夜だ!ねえ、みてみて!アリスが作ってきてくれたんだよ!」
「ふふ、良かったわね、フラン。」
「良かったですね、妹様。」
「ほら!お姉さまと咲夜のもあるし、フランとパチュリーとこあとめーりんのもあるよ!」
そう言って両手に抱えたお人形を咲夜とレミリアに見せる。咲夜は微笑を浮かべ、レミリアは満面の笑みで妹の笑顔をみている。なんだかんだ言ってやっぱりフランのことが可愛いのね。
「ねえ、お姉さま!めーりんにも見せてきてもいい?」
「美鈴に、か。咲夜、美鈴は起きてたかしら。」
「ええ。さっき起こしましたので。」
「そう。ならいってきてもいいわよフラン。ただし!」
外出の許可が出て目を輝かせていたフランが不思議そうな顔をする。
「アリスと離れないこと!これが条件よ。守れるわよね?フラン。」
「うん!お姉さま!フラン、アリスといる!」
言った瞬間、私の手をとって繋いでくる。
「えへへ。こうすればはぐれないでしょ。」
「そうね。ふふ。」
不思議ね。フランと一緒にいると自然と笑顔になってくるわ。これがこの子の魅力なのかもね。…あれ?なんか、二人の見る目がすごい穏やかね。と思ったら咲夜はハンカチで目を抑えてるわ。レミリアは…相変わらず笑みを絶やさないけど。
「妹様…本当に明るくなられて。」
「咲夜、貴女フランに関して泣いたのこれで4回目よ?飽きないわね、全く。」
そんな軽口を叩けるようになっているということは心から嬉しいのね。
「あれー?なんで咲夜は泣いてるの?お姉さまは笑ってるのに。よいしょっと。」
先程まで私の肩の上に座っていたフランが咲夜に近付き変顔をしていた。
「いっ、妹様!?そんな顔なさってどうしたんですか!?うふふ、でも面白い顔ですわね。」
「あはっ!咲夜にはやっぱり笑顔が似合うよ!」
「妹様…。」
「フランは優しいのね。」
「そりゃあ、私に似てるもの。」
ふふ、とレミリアが妖しげに笑う。彼女が冗談を言っていることはまるわかりだった。なら、のってあげないとね。
「あら、でもレミリアってそんなに優しかったかしら。この前なんか、あっさり見捨てられちゃったしね。」
「だって、アリスが私のいうことを信じてくれないんですもの。だからちょっとだけいじわるしただけよ。」
「だとしたら、本当に優しいとは言えないんじゃないの?」
「そういう貴女こそ、嘘つきじゃない。」
「私のどこが嘘つきだっていうの?」
「いつになったら貴女の胸の内に秘めた熱情を伝えるの?」
思わず慌てそうになる自分を冷静に沈める。どうせまたレミリアのからかいでしょう。
「その手にはのらないわよ?レミリア。」
「あら残念。いつもなら真っ赤に照れたかわいいかわいいアリスが見られたのに。」
「ふう。まあ、こんな茶番は置いておいて。フラン、行きましょう。」
「う、うん。アリス。」
尚も呆然としてるフランの手を握ってその場を後にする。咲夜は微笑んで…いたと思う。
「ねえ、咲夜。」
「なんですか?お嬢様。」
「この間運命を覗いたら見えなかったという話しはしたわよね?」
「ええ。今回で12回目ですわ。」
「…まあ、それはいいとして。今度は貴女や私、フランの運命を見てみたのよ。そしたら、同じ様なことが起きていた。」
「そうですか。だとしても別にお気になさることでは…。」
「アリスの運命…。」
「はい?」
「あの運命だけが気になる。黒い霧の奥から化け物のようなものが忍び寄っていた。そして、アリスを切り刻もうとしていた。肉体的なダメージは無いにしても、精神的な苦痛を味遭わせていたわ…。」
「お嬢様…。」
「だから、私は心配で堪らない。はっきりとわからない運命の渦に巻き込まれている彼女がどんな悲劇を歩んでしまうのか。この頃感じるあの嫌な気もそれの余韻なのかもしれない。恐らくアリスに起ころうとしている悲劇は、幻想郷全土を巻き込むわ。私が運命を見ることができなくなるという状況はいつも最悪な出来事しか生み出さない。油断できないこの状況を一刻も早く解決しなければ、その被害は計り知れないわ…。」
「…例えどんなことが起きようとも、アリスさんは一人ではありませんわ。それに、もしも彼女に危険が及んだならあの龍が放っておきませんよ。」
「それもそうね。あいつがついている限りアリスも安全よね。」
地下牢でこんな会話が行われていたことを当の本人達は知るよしもなかった。そして、この会話で語られていた人物による行動こそがアリスに及ぼうとしている悲劇だということは、運命を見ることができるレミリアでさえわからなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「まずはパチュリーとこあに見せに言ってもいい?」
「いいわよ。」
「アリス、ありがとー!」
あらあら、さっきからはしゃいじゃって。でもそれだけ嬉しいのよね。そんなこんなで図書館には直ぐ着いた。
「アリスと…フラン?珍しい組み合わせね。」
「ねえ!パチュリー!こあ!これ、アリスが作ってくれた二人にそっくりな人形だよ!」
「あら…。本当にそっくりね。」
「凄いですねぇ、アリスさん。一瞬もう一人の私が小さくなっているのかと思いましたよ。」
「ありがとう、二人とも。」
「じゃあ次ぎはめーりんのとこにいこ!」
「あ、ちょっと待ってフラン。」
「なぁに?パチュリー。」
「貴女、たまには人里とかにいってきたらどうかしら。」
「えー。でもお姉さまが駄目って。」
ぶー。とほっぺたを膨らましながらいう。相当不満に思っているのよね…。
「今回は私が許可するわ。レミィには私から言っておくから大丈夫。」
「ほんと!?ありがとう、パチュリー!」
まさに狂喜乱舞といった感じで飛び回っているフラン。とても嬉しそうね。
「あ、ちょっと降りてきてちょうだい。今日1日だけ日差しが平気になる魔法をかけるわ。ただ、日没と共に効果を失うからね?」
「はーい!」
パチュリーがぶつぶつと呪文を唱え、淡く白い光がフランを包み込んだ。
「ふう。これでオッケーよ。」
「わーいわーい!」
「ほら、フラン?降りてこないといけないわよ?」
「はーい!」
返事だけはいいわね。まるでどこかの誰かさんみたい。
フランを連れて館の外に出る。
「いっ、妹様!?ひ、日傘をささなくて平気なんですか!?」
「うん。今日1日だけパチュリーが平気にしてくれたんだ!」
「そうですか。なら安心です。」
心底ホッとしたような表情を浮かべる美鈴。それもそうよね。大事な主の妹だもの。
「あとみてみて!アリスが作ってくれためーりんの人形!そっくりでしょ!」
「へえ。そっくりですね。驚きました。」
美鈴は興味深さげに人形を見つめている。自分とそっくりだとしたら尚更でしょうね。
「でしょでしょ!あとね、お姉さまと咲夜とパチュリーとこあとフランのもあるの!」
「ふふ、良かったですね。嬉しそうで何よりです。」
そういう美鈴も満面の笑みだ。
「じゃあ、めーりん、行ってきまーす!」
「行ってらっしゃいませ、妹様とアリスさん。」
「ねえねえアリス!」
「なあに?フラン。」
「私、博麗神社に行きたい!」
「いいけど…どうして?」
「霊夢に会いたいから!」
「ふふ。わかったわ。行きましょう?」
「うん!」
数分程度で着いた。そこには魔理沙もいたためフランは大はしゃぎだった。
「魔理沙ー!」
「うお!?フ、フラン!?お前日傘なくて大丈夫なのか!?」
「うん!パチュリーが魔法で1日だけ大丈夫にしてくれたの!」
「あ、ああ。そうか。安心したぜ。」
魔理沙に抱きついたままのフランは突然の光景に呆然としている霊夢の方に体を向けて…
「霊夢ー!」
「キャッ!?ビックリした。」
飛び付いていた。
「アリス?なんでフランを連れてきたんだ?」
「レミリアから頼まれたのよ。」
「なるほどな。」
「霊夢!高い高いしてー!」
「わ、わかったわよ!わかったから、ちょっと離れて!
…いくわよ?それ!」
「キャーハハハッ!」
「うっ…それ!」
「キャハハハッ!」
「ぜぇ…それ!」
「アハハハッ!」
「はぁっ…。も、もういい?フラン…。」
「うん!霊夢ありがとー!」
「ははっ!霊夢は好かれてるな!」
「フランは霊夢が好きだものね。」
「ねえ霊夢!みてみて!アリスが作ってくれたお姉さま達の人形!」
「あら、そっくりね。」
「でしょー!」
「へえ、これはそっくりだな。あいつらによくにてる。」
「でしょ!魔理沙!」
「お、おいおい、いきなり抱きつくなよ!ビックリするだろ!」
「むー。いいでしょー!」
「はいはいわかったぜ。よし!特別に箒の後ろに乗せてやるぜ!特等席だぞ!」
「やったー!」
「よっ…と。ほら、振り落とされないようにしっかり捕まってろよ!」
「うん!!!」
「しゅっぱーつ!」
あっという間に遠い空の彼方へ消えていく二人。
「相変わらず早いのね。」
「そうね。
「それは…可哀想としか言いようがないわね。」
「可哀想も何も、その度に異変解決をやらされる私の方が可哀想よ。」
「確かにそうね。」
「あら?帰ってきたみたいよ。」
「本当ね。」
何か様子がおかしい…。!フランがいない!それになんであんなにボロボロになってるの!?霊夢もその事に気付いたのかやはり驚きを顔に浮かべた。
「魔理沙!何があったの!?」
「いや、フランを乗せて妖怪の山の麓付近を飛んでたんだ。そしたら急にフランが…」
「「フランが?」」
「お願い魔理沙!私をおろして!最近感じなくなってた狂気が…蘇ってくるの!このままじゃ魔理沙を傷付けちゃう!早く早く!」
「って言ってきたんだ。はっきりいって信じられなかったが、フランの目が…大妖精の時と同じようになってきていて、その場で下ろしたんだ。すると、木の影から人らしきものが見えて、いきなり私にスペカを喰らわせてきたんだ。反撃しようと思ったが、何しろ暴走直前のフランがいたから無理だったのぜ…。」
「そう、なのね…。アリス、魔理沙の傷の手当てをお願い。」
「ええ。」
フランが暴走…?あり得るわけがない。狂気は完全に消し去られたはずなのに。もしかして…パチュリーに教えて貰った妖怪のせいなのかしら。殺意はある意味狂気と似ている。行き過ぎた殺意は時に周りだけでなく己をも傷つける凶器となり得る。魔理沙の傷を回復呪文で癒しながら、一人考え事をしていた。
「魔理沙、だとしてもよく暴走直前のフランと謎の人らしき者から逃げ出せたわね。」
「いや、途中でショウに会ってな。「フラン達は引き受けるから、早く逃げろ。霊夢とリョウにも伝えろ。」って言われたんだ。あいつが来なければ私がもしかしたら死んでいたかも知れないのぜ。」
「…まずいわね。フランはともかくとして、その人間?の力は計り知れないわ。」
「見に行かないと。何が起こるかわからないわ。」
「そうだな!」
「そうね。でもフランはどうするの?あの子はレミリアの妹よ。レミリアにも伝えておいた方がいいんじゃない?」
「そうか。なら私が伝えてくるから二人は先に行ってくれ!私も直ぐに追い付く!」
「気を付けてね、魔理沙。」
「わかってるぜ!」
「私達も行きましょう。現場にいってみないと何もわからないわ。」
その頃…クレイside
「吸血鬼か…。にしても何故人間と共にいたんだ?こいつらは日光に弱いはずだから普通昼間は出歩かないはずなのに。まあいい。今までの中でも一番いい手駒だ。こいつは。目に入るもの全てを破壊している。あのよくわからない男も時期に殺す…なに!?」
巨大な炎の剣…禁忌レーヴァテインと呼ばれる吸血鬼のみが操ることのできる魔剣を使って圧倒的有利だったのに倒された、だと!?なるほど。あの男も実力者と言うわけか。チッ。役立たずの吸血鬼が。こうなれば見付かるのは時間の問題になる。なら、あの男を終末の時計の針にしよう。あれだけの力を持っているのなら、いとも容易く幻想郷を滅ぼすだろう。
「フラン!しっかりしろ!おい!」
ふん。いつまであの
「お前か。この異変を引き起こしているのは。」
怒りに燃えた目をしている。恐らく神龍だな。こいつの種族は。なるほど。それならあの破格の強さも納得できるな。
「だからなんだっていうんだ。」
「フランに何をした!」
「別に。殺意を増幅させただけだ。」
「そうか。つまり貴様の能力は殺意を操る物なんだな!」
「さあな。そんなもの自分で考えろ。
「貴様…ふざけるな!!龍符・鳳凰天翔!」
「邪符・狂イ咲キシ華ヲ散ラス。」
多量に迫ってくる火炎弾を爆発で相殺する。相手が火炎弾を放たなくなったところでまだ残っていた5,6発の拡散弾をあてる。
「っ!ぐっ!?」
クリーンヒット、といったところだな。これだけの重傷ならだいじょ…
「龍符・祝福の光。」
体力回復か。小賢しい。
「邪符・黒雷・零。」
「龍符・彗星落花!」
大振りな分潰しやすいな。あの2体の龍が発生源か。あれを潰すか。彗星を消していた力を2体の龍に向け、消失させる。
「なっ!?」
「邪符・悪夢の断片~ナイトメア~」
「消え…た?」
正確には消えていない。お前の真正面にきただけだ。術を解除し、姿を現す。
「…!」
「その意思を破壊に染めろ。堕神龍となってな。」
「ぐっ!?何をす…る…。」
ん?こいつの中にも封印された性格があるな。それを目覚めさせればいいのだろう。
[おい、目を覚ませ。堕神龍。お前がこいつの狂気と殺意だな?]
[ソウダ。俺ガコイツノ"本質"ダ。オ前ガ解放シテクレタノカ?]
[殺意を操ってお前の封印を無理矢理砕いた。]
[ククッ。アリガトウヨ。ニシテモ退屈ダッタ。意思ハアルノニ行動ガデキナイ。破壊ノタメニ手ニ入レタコノ強大ナ神力モアイツノセイデ制御サレテテ、500年ノ間ズット使エナカッタ。]
[お前からは神龍の力を感じるが、本当は違うのだな?]
[半分正解ダガ、半分違ウ。確カニ俺ハ神龍ダガ、役目ガ違ウ。元々世界ヲ破壊スルタメニ俺ハ生マレタノサ。ナノニ、龍神ノ野郎ガ破壊ノ意思ヲ持ツ俺ダケヲ封印シテ、表ノ俺ダケニシヤガッタ。ダガ、ソレモモウ終ワリダ。全テヲ無ニ帰ス、ソレガ俺ノ
[なるほどな。ちなみに直ぐ近くに誰か来ている。俺は隠れるが後はお前の好きにしろ。]
[モチロンダ。]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「アリス!あそこよ!」
「ええ!でもショウしかいない…何故?」
「わからないわ。ともかく行ってみましょう。」
気のせい…かな。いつもと雰囲気が全く違う気がするのは。殺意と憎しみを合わせたような危険な感じは…どうしたのかしら。
「ショウ!大丈夫だったの?」
「誰だ?俺の名前を気安く呼ぶのは。」
「…!どうしたの!?おかしいわよ!アリスよ!」
「ふん、魔女風情が俺に話しかけるな。」
「ちょっ!?あんた何言ってるのよ!私達が分からないわけ!?」
霊夢が詰め寄る。!危ない!
「霊夢!危ない!」
「えっ?」
「キャア!…っ。」
「アリス!?」
霊夢が詰め寄った瞬間キラリと光るものが見えたため慌てて突き飛ばしのはいいけど、腕が…動かない。肩の辺りに当たって出血が激しい…。
「あんた早く治療しないと!ここは私に任せ…」
「そんなことをしていたら…!先に私達がっ、殺られてしまう、わ。」
「どういうことよ?」
「多分…貴女の力でも殺されてしまうわ。いつものショウじゃない。力を全開にして襲いかかってくる神龍を貴女の霊力や神力では防ぎようがないわ…。」
「なら、どうしろっていうのよ!だとしても、私は戦うわ。例え勝てる確率が1%でも私は諦めないもの!」
「くだらん友情ごっこだな。そんな一縷の希望なんて俺が破壊してやろう。」
残忍な笑みを浮かべてスペカ宣言をしてくる。
「龍符・鳳凰天翔・改」
「霊符・二重結界!」
「人符・上海人形!」
霊夢は私達を包み込む結界を張り、私は弾幕を相殺するための人形を召喚した。まって、あのスペカ…様子がおかしい!まるであの龍が丸ごと襲いかかって来る姿勢をして…まさか!
「霊夢!あの龍は…」
「おかしいわよ…。あいつのスペカはあんなんじゃないはず。」
「っ!くるわ!備えて!」
「ええ!」
沢山の人形から放たれる光線が燃え盛っている龍に当たる、が…。
「効いて…ない?」
まるでそれを気にも止めないように、猛然と迫ってくる。なら…これはどうかしら?人形達に光を纏わせて直接ぶつけた。
「そんなもの効かない。俺はあの軟弱物じゃないからな。」
突っ込んでいった人形達は燃えて消えていく…にもかかわらず全くもって弱った形跡は見られない。
「アリス!?」
どうやら霊夢にとっても想定外だったようだ。それもそうよね。私にだって想定外だもの。
「消えろ。人間と魔女。」
「くっ…。勢いがっ、強すぎて防ぎ切れな…キャァァ!」
霊夢の二重結界に当たり、少しは削れたようだが、それでも威力はほとんど変わらない。
「っ!キャァァァァァ!」
想像を絶するような熱さと痛み。そして私は意識を失った…。
自らの手で愛する人、物、場所を壊してしまう破壊の運命を背負いし神龍。このままでは幻想郷は滅びてしまう。しかし、その彼を説得すべき人物は重傷を負ってしまった。全てを壊す、堕神龍の毒牙にかかって…。