「暇だなー。霊夢とアリスの見舞い…は昨日行ったしな。紅魔館にも用はないしなぁ。」
私は霧雨魔理沙。「普通の魔法使い」だぜ。今の状況を簡単に言うと、やることのない私は部屋の中で何をしようか考えてるところなのぜ。
「よしっ!決めた!にとりのとこにいこう!」
考えていて思い出した。この前こーりんから妙な道具を手に入れていたことを。こーりん曰く"おるごーる"とか言うものらしいが用途が全くわからない上に壊れている代物だ。きっとにとりなら直してくれるだろうし、使い道を教えてくれるだろう。そう決めた私は早速自慢の箒に乗って、妖怪の山に向かう。適当に飛び回っていると目的であるにとりをみつけた。
「おおーい!にとりー!」
「ん?ああ!盟友魔理沙じゃないか!どうしたんだ?」
「ちょっとお前に見てもらいたい道具があるんだぜ。」
こいつは河城にとり。名前からわかるとは思うが、河童だぜ。機械いじりが得意で、外来品の用途もあっさりわかってしまう。他にも河童達はいるが、そいつらの紹介はまた今度にしておくのぜ。
「これは…」
渡した"おるごーる"をひっくり返したり、取手を回したりして調べる。コンコンと外側を叩いて音を確かめたりもしている。
「魔理沙、ちょっとこれを分解してもいいかい?中に何か入ってるようなんだ。」
「別にいいぜ。」
「オッケー。ちょっと待ってくれよっ…と。うん、外れた。これは…鈴?」
中から出てきたのは銀色の丸いもの。振ると「シャンシャン」という音がなる。にとりは"すず"と言っているが何に使うものなのか、さっぱりわからない。
「んー。これは、音がなるものらしいね。今はネジが外れていて回らなくなってるけど。これをつけて、ここを取れば…ほらっ。回るようになったよ。」
「おおっ。ありがとーな。にとり。」
「いや、いいんだよ。人間は盟友だからね。ところで、それを回してみるといいよ。何の曲かわからないが、流れるはずだからね。」
「へぇ。なら早速やるか。」
取手を回すと、綺麗で優しい音色が流れ出す。静かで厳かだが幸せに満ち溢れた、思わずこの私も感動してしまうメロディーだった。
「なんとも言えない綺麗な音色だね。やっぱりこういったものを作り出す人間は凄いよ。」
「ふぅん。こーりんから貰ったものだけど、随分良いものじゃないか。でも、私には必要ないな。」
「うーん…。今回ばかりは私にとっても必要じゃないな。同じ様なものなら簡単に作れるし。なら、誰かにあげればいいんじゃないか?まあ、誰かにあげたりするのは魔理沙の自由だけど。」
「そうだな。私の好きにするぜ!」
「それが君らしいよ。私は研究に戻るけど、どうするんだい?」
「地霊殿に行こうかと思う。たまにはあいつらにも会いたいからな。」
「そうか。じゃあね、盟友!」
「おう!」
再び箒に乗り、今度は地霊殿に向かう。すると、入り口でヤマメ&キスメコンビに会う。名前を黒谷ヤマメ、土蜘蛛だ。キスメはそのまんま。釣瓶落しだぜ。
「お!ヤマメにキスメ!元気か?」
「魔理沙じゃない!久し振りねー!」
「…魔理沙、久し振り。」
「お前らも相変わらずだな!ところで、さとり達はいるかー?」
「いるよ~?珍しくぅ~。」
「…ヤマメ、変。」
「ちょっ!?キスメ地味にひどい!」
「…当たり前の事、言っただけ。酷くない。」
「魔理沙ぁ~!キスメが苛めてくるぅ~(泣)。」
「ははっ。でも確かに変だぞ、お前。」
「魔理沙まで~!皆してひどーい!うわーん!」
「…あ、ヤマメ、泣いてる。てか、いなくなった。」
「この無機質な喋り方が心に刺さるよなぁ。本人に自覚はないみたいだが。」
「…魔理沙、バイバイ。私、ヤマメ、探す。」
「おうよ!」
気を取り直して中に進むと、すぐそこに橋が見えた。そして、その上には…
「はぁ、妬ましい。魔理沙、そんなに自由にしてるのが妬ましい。」
「よっ!パルスィ。元気そうだな!」
こいつは水橋パルスィ。通称橋姫とか言うらしいが私にはよくわからん。
「その能天気さも妬ましいわ。いるわよ、さとりなら。」
「サンキュー!」
「快活さも妬ましい。あぁ、妬ましいわ。」
「フンフーン♪」
色んな奴に会って楽しかった私は鼻唄を歌いながら、箒にのって飛ぶ。
「ん?魔理沙か!久しぶりだな!」
「おおっ。勇義!酒飲んでるなー、相変わらず。」
「はっはっはっ。これがなきゃやっていけないよ私は。」
星熊勇義。萃香と同じ鬼で強いやつが好きらしい。私もたまに弾幕ごっこをするが、はっきり言って本人も強い。
「魔理沙、暇なら私と弾幕ごっこをしないか?最近腕試しができなくて退屈してたんだ。」
「私もやりたいのは山々なんだが、今回ばかりはさとりに用があるから勘弁だな。」
「そうか。残念だな。さとりなら居るはずだからすぐに会えると思うよ。」
「おう!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「まーしかし、色んな人に会うな。流石地底だぜ。」
実際、ここはあまり広くない。しかし、狭いせいで情報が拡散しやすいのだ。
「やっと着いたな。地霊殿。」
「誰かにゃ…って魔理沙じゃないか!私だよ!お燐だよ!」
「お燐か!久しぶりだな!お空は一緒じゃないのか?」
火焔猫燐。火車とか言う種族でさとりのペット。死体が大好きだが、何故なのか理解できない。
「にゃ?お空はなんかこいし様のところに居るよ。」
「ふーん。とりあえず、さとりに会わせてくれないか?」
「さとり様?わかったよ。連いてきて。」
お燐に連れられてさとりの部屋に入る。
「お燐?何のよう?」
「さとり様、魔理沙が訪ねてきました。」
「わかったわ。出ていっていいわよ。」
一礼するとお燐は出ていった。
「久しぶりだな!さとり!」
「久し振りですね。それと、"相変わらず小さい"は余計です…あと、"ピンク色"とかも!本当に余計なことしか考えていませんね。」
「お前が心読むからそう感じるだけだよ。私は別に普通だぜ?」
「…そういいつも内心は若干焦ってますね。ちょっ!?だから身長が低いのは関係ありません!」
グフフ…あー、面白ぇ。こいつは古明地さとり。覚妖怪で心を読むことが出来る。さっき身長について扱ったが、まな板になっている。
「なんで説明口調…わっ、私はまな板じゃありませんよ!ちゃんとあります!」
「いや、ないだろ(笑)」
「あ、ありますよ!そりゃ紫さんや貴女達に比べたらありませんが、こいしよりはあります!」
「妹と比べんなよ。どうせ似たり寄ったりだろ?」
「!なら見せてあげますよ!後で温泉に来てくださいよ?いいですね!?」
「あはは、わかったぜ。さとり。」
「絶対ですからね!」
顔を真っ赤にして怒るさとりを後にしてこいしに会いに行く。
「こいし、お空?いるか?」
「あれ?魔理沙?どうしたの?」
「うにゅ?魔理沙?」
「いや、お前達に会おうと思ってな。」
「珍しいね、地霊殿に来るなんて。」
「確かに。」
「これでもけっこう来てるんだよな。まあ、お前らには全然会わねーけど。」
古明地こいしはさっきのさとりの妹。お空は霊烏路空という名前だ。因みに地獄烏とか言う種族らしい。前、守矢神社の神によって核融合を操れるようになった。
「それは会いに来ないからだよ。」
「魔理沙に会うことは少ないしね。」
「なんなんだよお前ら…。あっ!そうだこいし、これやるよ。」
「なにこれ?」
「"おるごーる"っていうやつだぜ。そこのレバーを回してみろよ。」
言われた通りに回しているこいし。そして、さっきの音色が流れる。
「ふーん。綺麗な音だね。でも私には要らないや。お空は?」
「私も別にいいですね。」
「そうか。残念だな。私はそろそろ行くぜ。じゃあな。」
「じゃね。」
「さよならー。」
こいし達と別れて、温泉に向かう。さとりが待っているらしいからな。
「…魔理沙?なんで貴女がいるの?」
「アリスこそなんでいるんだ?」
暖簾をくぐって中にはいると、何故かアリスと永琳がいる。
「私は湯治。ある程度楽になるのよ。」
「そっか。ショウはいないのかぁ~?」
「べっ、別に関係ないでしょ?貴女には。」
狙い通り顔を赤らめてそっぽを向いてやがる。あー、面白ぇ。新参のカップルの片割れをからかうのは。霊夢ん時も面白かったが、
「ふふん。そんな反応ってことは来てるんだな?」
「別に来てないわよ。寺子屋とかあるし。」
「そうかなぁ~?アリス、お前を放っておく程あいつは野暮じゃないぜ?」
「魔理沙、いい加減にしなさいよ。アリスが言っていることは本当なの。それに、温泉に入りに来たならさとりがさっきからまってるわよ?」
「あっ、そっか。よし、じゃー入るか。」
さっさと受付を済ませて脱衣場に入って服を脱ぎ、タオルを巻く。永琳とアリスは少し遅れて入ってきて同じ様な格好をした。
「あっ!来ましたね!魔理沙さん!ほら、私はまな板じゃありませんよ!」
既に浸かっていたのか、少し顔を上気させたさとりがタオルを少しずらして見せてくる。んー。あるっちゃあるんだろうけど、やっぱり小さ…
「やっぱり小さいってなんなんですかぁ!」
「くっくっ。あるよあるよさとり。こいしと同じくらいな。」
「はぁ!?私とこいしを比べないでください!絶対にこいしよりはあります!」
「はっはっはっ。わかってるぜ。」
「絶対わかってませんよね!?」
「さとり…。貴女何をやってるの?」
「えっ?あ、アリスさんに永琳さん。実はですね(少女説明中)なんです。」
「魔理沙…貴女そんなことばっかりしてるの?いつか殺されるわよ?」
「人の心を勝手に読むこいつが悪いんだよ(笑)。」
「DA・KA・RA☆!いい加減にしてください!」
「…さとりも少し落ち着きなさい。そこに立たれているとかなり邪魔よ。」
「そ、そうでしたね。すみません。」
永琳の一言にそこを退いて温泉に再び浸かる。勿論、私も永琳もアリスも一緒にだが。
「ふー。やっぱり気持ちいいぜ。」
「そうね。ゆっくり休むには丁度良い場所よね。」
ほんのり顔を上気させたアリスが言う。傷はほとんど治っているが、右足がまだ折れたままらしい。余談だが、タオルの上からもくっきりとアリスがまな板とは程遠い証拠があらわれているぜ。永琳に関しては言うまでもなく、いつもの看護服から余裕でわかる。ひとつ言い添えるならタオルからははち切れんばかりなのぜ。私か?まあ、それなりにはあるぜ?え?何をいってるのかって?そりゃあ勿論む…いてっ!ゴホン。まあ、私達にとって大切なものだぜ。しかしいてぇ…。作者の殴る力強すぎだろ。あとで覚えてろ。
「…なんで3人ともそんなにあるんですか…。」
「そればっかしはしょうがないわよ。それに、貴女はそろそろ上がらないとのぼせるわよ?」
「むぅ。そうですね。」
さとりは大人しく出ていった。さてと、私も出るか。
「んじゃ、私はこれで!」
「じゃあね、魔理沙。」
「気を付けなさいよ。」
「わかってるって。」
再び脱衣室で服を着替えて外に出た。髪は濡れたままでストレートになっているが、そのうち乾くので放っておく。こうして地霊殿をでた私はミスティアの屋台に向かった。すると何故か店の外で空を見ながらボーッと突っ立ってるミスティアがいたのぜ。
「ミスティア?」
「…。」
「おいっ!ミースーティーアー!」
「…!あ、ま、魔理沙さん。」
「どーしたんだ?夕方なのに空を見上げてボーッと突っ立ってるなんて。」
「実は…その…私には、好きな人がいるんです。」
「!!!!」
私は思わず口をあんぐり開けてしまった。あのミスティアに好きな人が出来たなんて前代未聞だ。でも、この少し赤く染まった頬と恥ずかしげな仕草は嘘をついてない。正直だからな、ミスティアは。
「そんなに意外ですか?」
「あ、うん。勿論だぜ。それで、誰が好きなんだ?」
「あるお客さんです…。不定期にしか現れない人。」
「どんな人なんだ?」
「そうですね…第一印象はイケメンといった感じなんですが、結構素っ気ない人なんです。だけど細かな優しさとかがあって、私のことを心配してくれてるんです。本当に…たった2回しか会ったことないのに…。」
「そうか。まあ私は応援するぜ!頑張れよ、ミスティア!」
それ以上その場にいない方が良いと思った私は迷わず家に帰った。オルゴールを渡し損ねていたのは帰ってから気付いた。
ミスティアside
「応援する、か。優しいですね、魔理沙さんも。」
でも、彼とは違う。はあ。駄目だ私。誰が来てもどんな話を聞いても彼と比べてしまう。これは、相当重症よね…。気が付けば彼のことを考えていて次はまたいつ来てくれるか、そしていつ会えるか、そればっかりだ。
「なんで…。私は貴方に恋してしまったんですか?クレイさん…。」
彼の名を呼んでみる。大好きな、人の名前を…。
「ミスティア?今は暇かしら。」
「えっ?あ、はい。」
突然の来訪者で私の物思いは中断された。そしてそれは八雲紫さんだった。
「どうかしたんですか?」
「いえ、貴女にも一応注意を呼び掛けようと思って。」
「注意…?」
紫さんが直接言いに来るなんて珍しい。どうしたのかな?
「最近起こっている異変のことなんだけど、貴女全身黒い服に身を包んだ妖怪を知ってる?」
「!?」
もしかして…クレイさんのこと…?
「その様子だと知らなそうね。気を付けてちょうだい。その妖怪が今回の異変を引き起こしているの。」
「…妖怪達が狂い死にするものですよね?」
「そうよ。」
やっとのことで声を絞りだした。まさか、嘘でしょう…?そんなはずはない。クレイさんが犯人だなんて…。
「もしも見かけたりしたらすぐに教えてちょうだい。一刻も早くその妖怪を退治しないといけないの。」
「はい。わかりました…。」
そういって紫さんは消えていった。私は心の整理がつかなかった。あの人が犯人なんてあり得るわけがない。第一そうだとしたら何らかの危害を私に与えてるはず。あり得ない。そうよ。そうにきまってる。強引に決め込んだ私だが、心には限りない不安が黒雲のように沸き上がってきた。
紫side
絶対に何かミスティアは隠しているわ。そうじゃなきゃあんなに動揺したりしない。何とかして聞き出さないと…!
クレイside
ミスティア…不思議な奴だな。彼奴の傍にいると、時間が早く感じる。そして、帰り際に見せたあの物凄く寂しげな顔が俺の心に何かを訴えてきた。悲しいような、幸せなようなよくわからない謎の気持ち。考えてはいるがさっぱり思い付かない。この満月だからこそこの状態だが、明日の俺はもうもとに戻っているだろう。恐らく2度と訪れることはないだろう。あんなに俺の心に入ってきて気持ちをかき乱すような奴といるのは危険だからな。だが、何故か心残りがある。もう一度だけで良いから会いたいと言う謎の欲望が。
今度は空を見上げて彼奴の顔を知らず知らずの内に考えていた。あいつ…ミスティアの笑顔を―
ミスティアの純粋な想いは、正体を知ることによって乱された。そして、紫は何らかの情報を握っているミスティアから聞き出そうとする。一方クレイはミスティアの想いのせいで自らも相手を愛し始めていた。しかし、それに気づくはずもなく、非情な運命は終末へと動き出す…!