「もっと酒よこせよ!」
「ちょっと魔理沙!それ私のお酒!」
「まだあるんだからいいだろ?」
「ふざけないで!」
「落ち着けって霊夢…。」
「うっさい!じゃあ持ってきなさいよ!」
「はいはい。」
先程から霊夢と魔理沙が揉めている。そのやり取りを見て周りの者は笑ったり、呆れたり、様々な反応をしている。
「…俺はあまり人がいるところは好きじゃないんだが。」
「あらぁ?人見知りってやつかしら?」
「お前はいちいち人の言葉を揚げ足とらないと気が済まないのか?」
「あら、本当のことを言ったまでだけど?」
「…なんで俺が人見知りなんだ。人が沢山いるところが嫌なだけで。」
「だって、居心地が悪いってことはそうじゃないの?」
「はぁ。もういい。」
「すぐにそうやって逃げる。ずるいわよねぇ。」
「そういうあんたもさっき俺が他のところに行かないのかって聞いたら"さあ"なんていって答えなかっただろう?」
「そうだったかしら。でも、貴方が一人じゃ寂しいだろうからここにいてあげるわ。」
「別に寂しくなんかない。俺はもともと一人だ。」
「そうやって強がるのもよくないわよ?」
「強がってるわけないだろう。」
「クスクス。本当なのかしら。もしくは相当なツンデレ?」
「鬱陶しい。」
「酷いじゃないの。」
「なんで俺はあんたから質問攻めにあわないといけないんだよ。」
「そりゃもちろん貴方が隠し事をしてるからよ。」
「俺が隠し事をしてようがしてまいがあんたには関係無いだろ?」
「それが関係あるのよねぇ。」
「…何処が?」
「だって、秘密も知らないんじゃ仲間になんか出来ないでしょ?」
「俺は仲間なんて要らない。」
「ほんとかしら?また強がりじゃないの?」
「違うといってるだろ?いい加減に何処かへいってくれ。鬱陶しい。」
「もう。冷たいわね。」
「冷たいからどうした。」
「べーつーにー?」
「…。」
黙り混んじゃったわね。しょうがないわ。ミスティアに話しましょう。
「ミスティア?」
「紫さん?どうしたんですか?」
「貴女、クレイのところに行かないの?」
「…!なんでですか?」
「だって貴女の好きな人ってクレイじゃないの?」
「それは…。」
私はコップを握りしめながらうつむいてしまった。
「ふふ。当りって感じね。顔が赤いわよ?」
「!?」
慌ててコップの中のお酒をみつめると、映っている自分の顔は確かに赤かった。
「紫さん。からかわないでくださいよ。」
「あら。でも本気で好きなら想いを伝えた方がいいんじゃない?」
「でも…。」
私なんかが告白したら迷惑に決まっている。だから、この想いには蓋をしようと思っているのに…。
「ほら、くよくよ悩まないで行ってきなさいよ。」
「…///」
「紫、ミスティアをからかうのもいい加減にしておきなさいよ。」
「別にからかってなんかいないわ、アリス。」
「そのつもりはなくても周りからはそう見えるものよ。」
「うふふ。わかったわよ。じゃあ、後は貴女に任せるわ。」
「アリスさん。ありがとうございます。」
「いいのよ。でも、想いは伝えた方がいいわ。」
「で、でも、私なんかじゃ迷惑…。」
「そんなことないと思うわ。始めからそう思ってるなら貴女と会話なんかしたりしないと思うもの。」
「そう、ですか…。」
「私も、告白されたときはそう思ったわ。神と妖怪が恋なんかしていいのかな、って。でも、真剣に告白してくれたのを振るなんて出来ないもの。真実の想いは、全く悪いものじゃないのよ。」
「…。」
優しくいってくれるアリスさん。そうなのかな。私にもお二方のような関係になれる可能性はあるのかな…?
「貴女なら大丈夫よ。」
「わかりました。行ってきます。」
「頑張って。」
「…。」
どんちゃん騒ぎの宴の中、端っこにいるクレイさんを見つけて、そばに座る。
「ああ、あんたか。ミスティア。」
「あ、お久しぶり、です。」
緊張して、何を話したらいいのかわからない…。すると、クレイさんが話しかけてくれた。
「なんであのとき俺をかばったんだ?」
「え?」
「俺は…あんたの友達を傷つけた張本人だ。俺のことを恨んでるんじゃなかったのか?」
「…。最初はそうでした。だけど、お店でクレイさんに会う内にその、何て言うか、気持ちが変わったんです。」
「気持ちが変わった…?」
「はい。私が泣いていたのを慰めてくれて、しかも相談とかに乗ってくれた貴方を見てたら私…。」
「…?」
一世一代を懸けた告白。うまくいきますように…!
「私、ミスティア・ローレライはクレイさん、貴方の事が…すっ、好きです!」
「…!」
ど、どうしよう。言っちゃった。もう後戻りは出来ない。後はクレイさんの返事を待つだけ…!
「なんだ。そんなことか。」
「え…?」
思いがけない言葉に思わず顔をあげて彼を見つめる。すると、彼の目には今まで見たことがない優しさが浮かんでいた。
「あんたが随分切羽詰まった顔をしてるから、何を言い出すのかと思えばそんなことだったのか。」
「…。」
どう返したらいいのかわからなかった。バカにされてるのか、それとも呆れられてるのか、わからなかったから。でも、それは杞憂に終わった。次の瞬間、彼が顔に微笑を浮かべたからだ。
「俺らしくもないだろう?笑顔を見せるなんて。でも、お前にだけは特別に見せてやりたくなるんだ。」
「…!」
私はハッとした。つまりそれは…。
「俺も、あんたの事が好きだよ。ミスティア。」
「…。」
視界が涙で歪む。"俺もあんたが好きだよ"―その言葉が頭にこだまして離れない。少々ぶっきらぼうな言い方だけど、優しさがこもっている。
「泣いてるな。そんなに嬉しかったのか?
「え…?」
「だから、嬉しいのかって聞いてるんだよ。」
涙を拭いて真っ直ぐに彼を見つめる。その時の彼は今まで見たことがない程人懐っこいとも意地悪そうともいえる笑みを顔に浮かべていた。
「もちろんっ…!嬉しいに…決まってますぅ!」
もはや歯止めの聞かなくなった自分の感情が思うままに彼に抱きつくという行動に移った。笑みを絶やさない彼は私の顔に手を添えて―
「チュッ。」
と口付けをした。
「へ…?」
「あんたが俺に抱きついてくるからだろう?意外と大胆なことをするんだな、ミスティア。」
ま、まってまって!私、今彼にキスされたの!?呆然とする私を尻目に彼は思いがけないことをする。
「ん?今俺が何をしたのかわからないのか?なら、もう一回してやるよ。」
少々乱暴に私の腕を掴んで引き寄せ―
「チュッ。」
もう一度。しかも、さっきより少しだけ長めに。
「これでわかっただろ?俺があんたを愛してる証拠。」
「ふ…」
「ふ?」
「ふえぇぇぇ!?///」
思わず密着していた体を離して奇声をあげながら辺りを走り回ってしまった。へ?なんでって?そりゃ、好きな人から2回もキスされればそうなるでしょ!!!
「異変の首謀者熱愛!お相手はミスティア・ローレライ!これはいい記事になりそうですねぇ。」
「あああ文さん!?」
「あ、ミスティアさん。お二人の熱愛はバッチリ"文々。新聞"に掲載させていただきますよ~!」
どどどうしよう!?み、皆に知られちゃ…
「ふふ。良かったわね。ミスティア。」
「ラブラブだな!ミスティア!」
「うまくいったでしょ?」
「みみみ皆さん!?」
そ、そっかここは宴会。つまり…
「お前らがイチャイチャしてるとこ、バッチリ見させてもらったぜ?」
「キャー!///」
もう既に全員に伝わっているということ。わっ、私はどうすれば…。
「あら、妖夢。顔が真っ赤よ?」
「ゆ、幽々子様。り、理由はお分かりでしょう?」
「そうねぇ。初な貴女には少々きつかったかしら。あの熱愛ぶりは。」
「わっ、わかってるならイチイチ言わないでください!恥ずかしいんですよ!?」
「されたのは貴女じゃないのに?それとも自分がされるところを想像しちゃった?」
「えっ、いや、あの、その、キャー!」
妖夢さんが取り乱して木にぶつかって倒れた。その近くで幽々子さんは「初ねぇ。」といいながら笑っている。
「お嬢様?どうかなされたのですか?」
「な、なんでもないわ。咲夜。」
こっちではレミリアさんが必死になって妹の目を手で塞いでる。フラン本人は"お姉さま!いきなりなにするの~!"といってもがいている。
「映姫さま。」
「なんですか?小町。」
「良かったんですかね。この結果で。あそこまで幻想郷を引っ掻き回した異変はありませんよ?」
「…。確かに普通は許されることではありません。しかし、遥か昔の巫女が残した願いを達成するのはこうするしかありません。」
「そういうもんですかねぇ?あたいは少し納得がいきませんが…。」
「貴女の言うことは間違っていませんよ。けれど、せっかく愛してくれる純粋な想い人のことを裏切る方がよっぽど黒です。」
「へえ。映姫様にしてはロマンチックな理由じゃないですか。」
「どっ、どういう意味ですか小町!」
「つまり、愛し合ってる二人を引き裂けないって事ですよね?それならあたいでもわかりますよ。それに、さっきから顔が赤いのもバレバレです。」
「…!///人をからかうのもいい加減にしなさい小町!」
「ちょ、映姫さま!
「懺悔です。」
「そんなぁ…。」
そしてこちらでは閻魔と死神がいつものやり取りをしている。
「良かったわね。ミスティア。成功して。」
「ゆっ、紫さん!?」
今一番会いたくない人ナンバーワンの人が目の前に現れた。
「ふふ。これで彼もようやくここの一員になるわ。貴女という恋人を得て。」
「…///」
「ほら。彼のところにいってあげなさいよ。もう充分騒いだでしょ?」
「は、はい。」
ゆっくりと歩いて再び彼の側に座る。すると、さっきより大きな笑みを浮かべて私を見つめていた。
「やっぱりあんたは面白いやつだな。」
「そ、そんなこと言わないでください!///」
「フッ。そんなによかったか?俺のキスは。」
「は、はいいい!?///」
あっ…。どうしよう。今更ながら思い出した。この人、物凄いドSだってことを…。
「別に見られても困るもんじゃないだろ?これで、お前は俺のだって示しがつくんだから。」
「だっ、だとしてもいきなりで大胆すぎです!」
「ん~?聞こえないな。」
「いっ、いじわるぅ…。」
思わず涙目になってしまう。あぁ、私は結局この人には力でも……好きな気持ちでも勝てないんだなぁって思う。だってこんなにも愛してくれてるから。
「というわけで、だ。」
「はい!?」
急に体を引き寄せて顔を近づけてくる。顔近い~///
「毎回毎回あんな風に発狂されたら手に負えないからな。今のうち慣れてもらうぜ?(ニヤリ)」
「へっ!?ちょ、ちょっと……ん!」
本日三度目のキス。前回と前々回の二回よりも全然長くて深い。不意に口を離して―
「まあ、今日のところはこの辺にしておいてやるよ。あんたのその反応を見てると、止まらなくなりそうだからな。」
「ふぇぇぇ!?///」
つ、つまりその先のことをしたいってこと!?うわー!?///身をよじって逃げようとするが―?
「おっと。もう離さないぜ?」
ガッシリと抱き締められてしまった。
「ははは離してくださいよ!///」
「嫌に決まってるだろ?あんたはもう俺の物なんだから、さ。」
そういってイタズラっ子な笑みを浮かべてウインク。あ、どうしよう。ますます彼の虜になっちゃう……。
「あんたは俺だけを見てればいいんだよ。周りがどう言おうと関係無い。わからないなら…もう一回体に教えてやるだけだぜ?(ニヤリ)」
そして、顔を近づけてくる、が…?
「流石に4回は駄目ですぅ~!!!///」
断固拒否の私。でも、お構い無しの彼。
「抵抗するところも楽しいな。」
「はい!?ん…。」
結局はキスされてしまう私。でも、これでやっと平和になったんだな~と実感できた。…まあ、物凄く恥ずかしいけど。
「ん~。お二人ともいい写真ですねぇ。」
「あ、文さん!?」
まだ拘束されたままで身動きはとれないけど、会話は普通にできる。
「烏天狗か。」
「ええ、まあそうですよ。ところでお二人は「文!」はい?」
「はたてさん。早く引っ張って!」
「わかってますよ、椛!」
「ん~?なにやってるんだい?」
「あ、にとりさん。手伝ってください!」
「よくわからないけど面白そうだからいいよ。」
「あやややや!?」
「(二人の邪魔をしちゃダメでしょ!)」
「(あ、そ、そうでしたね)」
「(はたてさん、もっと引っ張って!にとりも!)」
「(はいはい。)」
三人の少女にもみくちゃにされながら文さんは引っ張られて行った。
「気を使ってくれた、といったところだな。」
「…///」
「安心しろ。今日はもうしない。」
「…。信じていいんですね?」
「まあな。嫌なのか?」
「べっ、別にそんなことはありませんが、恥ずかしいんです!」
「…。」
「もう…。」
ふと、近くに彼の手があり、握ってみた。驚いたようだったけど、私の手を握り返してくれた。その手は温かくて、優しいものだった。
「愛してるよ、ミスティア。」
「…///私も、です。クレイさん。」
晴れた日―その宴の中で、私たちは結ばれた。そして、最近の私は思う。確かにクレイさんがしたことは許される訳じゃない。でも、その人の影の姿を知らなくて仲良くしていくことは難しいんじゃないかと。表の面だけしっていれば、裏を知った瞬間人は幻滅したり、離れていってしまう。だけど、始めから裏を知っていて表を知れば、こんないいところがあったんだ、と思って仲良くなるはずだから。そういった意味でも、今回の異変は悪いところだけじゃないものだったと思う。
「なにぼんやり考え事してるんだ?」
「ふふ。なんでもないです。」
空を見上げながら、願う。どうか、この幸せが永久に続くようにと―
えー。これで最終話になります。ここまで読んでくださった方々、そしてお気に入り登録をしてくださった方々、本当にありがとうございます。これからは他の作品を書いていくことになりますが、もしよろしければ読んでくれたら幸いです。あまり長いことを書くのもあれなので、これくらいにしておきます。
それでは、また別の作品でお会いしましょう!