苦しい―皆が苦しんで死んでいく。この病のこの熱で老若男女問わず村の人たちが亡くなっていく。そして、俺も同じ病に侵されている…お願いだ、早く来てくれ!ショウさん…!
「な、なんだこの風景は!?」
外に出てきて、思わず呆然としてしまった。10年前は緑が溢れ、川は澄みきっていた。なのに、今のこの村や山は全く違う。草木は荒れ果て、川は干上がり、水があっても黒く濁っていた。何かあったのか?いや、何かがあったのだ。そうなると、嫌な予感しかしない。
「頼む、無事で居てくれよ…!」
少し先に見える村に僕は走った。活気に溢れていた村が見るも無惨に荒れ果てている。道端には、人々が死んで倒れていて、生存者はいないかのように思われた、が、
「うぅ…」
奥の方の家から聞こえてくる微かな呻き声。その声にハッとなり、そこにむかった。すると、
「ショ…ウさ…ん。俺、です。リョウ…です」
「!リョウなのか!?しっかりしろ!」
そこには顔面蒼白で痩せこけたリョウがいた。毒か病のどちらかに侵されているようだった。
「まってろ!今治療してやるから!」
リョウの体に手を当て、力を手に込める。すると、その部分が光り、みるみる内にリョウの症状が良くなっていった。
「これでもう大丈夫だ。」
「ありがとうございます。」
ゆっくりと体を起こしたリョウ。さっきとは違い、健康的な顔立ちと体つきになっていた。
「ところで、この村に何があったんだ?お前以外の生存者はいないようだが…」
そう聞くと、一瞬黙りこんでしまった。
「実は、妖怪に襲われたのです。」
「なんだと…!?」
嫌な予感が的中してしまった。しかし、大いなる疑問もある。自分でいうのもなんなのだが、神(特に竜)は強く僕自身としてもかなりの妖怪達を退治し、それなりに実力をつけ、睨みをきかせられるようになったと思う。そのお陰で今まで村は全く襲われず、しかも村人達も妖怪に対抗できる札や武術などを体得していた。だから、襲われて殺される可能性は極めて低い。それにこの村は―いや、やめておこう。ん?そういえばリョウは襲われた、とは言ったものの、殺された、とはいってない。なぜだろうか。
「リョウ、村人は妖怪に殺されたのか?」
「いえ…。妖怪自体は簡単に倒せたのです。中級の妖怪で全く強くなかったので。けれど、その妖怪は死ぬ直前に何かを体から吹き出したのです。黒い煙のようなものを。それを吸ったり、浴びたりした村人は一瞬で絶命してしまいました。俺は、その時の退治には参加していなかったので、後から風に乗ったのを浴びて、あの状態になりました。俺なりに色々考えましたが、やはりあれは一種の毒かウイルスだと思います。とても強力な。村人だけでなく、草木や川にまでその煙は浸透し、今の荒れ果てた状態になってしまいました。」
「中級の、妖怪…。」
ますます変だ。その程度なら、僕に恐れをなして逃げるはずなのに。
「その妖怪は、何かを言っていなかったか?」
「聞いた話では、ショウさんを苦しめてやる!といっていたそうです。」
「そうか…。」
驚きすぎて、そんな反応しかできなかった。
「なんてやつなんだ…。」
「えっ?」
「私一人を苦しめるために、何故ここまでしたんだ!」
驚くリョウを横目に思わず大声で叫んでしまった。
「何故、何故なんだ。村の人々やリョウはなにもしていない!なのに!なのに!何故なんだぁぁぁぁ!」
しんと静まり返った村のなかに僕の絶叫だけが響いた。
「ショウさん…泣いてますよ。」
リョウが僕を見て静かに言った。本当だ、自分の目からいつの間にか涙が溢れていた。しかし、それはリョウも同じだった。考えてみれば、リョウの方が辛いはずだ。
たった一人で、他の人が死んでいくのを眺めていたのだ。辛くないはずはない。
「すまない、リョウの方が辛かったな。」
「いえ、俺はそんなことないです…。」
「いや、無理をするな。そして、ありがとう。」
「え…」
「村の人たちを看取ってくれて。僕は来るのが遅すぎたのだよ。僕のせいだよ。もっと早く来ていれば、治っている人が他にもいたかもしれない。なんにせよ、それはもう叶わない望みだけどね。」
そう言って寂しく笑う僕をみてリョウが
「ショウさん…!ショウさんは全然悪くないです!俺たちをずっと守ってくれて、俺たちに自分自身を守る術を教えてくれて、数えきれないほどの恩があります!」
「リョウは優しいんだな。」
「いえ、そんなことないです!当たり前のことですよ!」
「ありがとうな」
「でも、どうしても負い目として感じるなら、俺を稽古してください!」
「えっ?」
いきなり何を言い出すのかと思えば、稽古とは…。でも負い目として感じているのは事実だからな…。しょうがない、稽古をつけてやるか。
「わかったよ。」
僕が苦笑混じりにいうとようやく笑顔を見せてくれた。「じゃあ、早速…とその前に。」
僕は今度地面に手を当てて力を注いだ。すると、草木や土は元気を取り戻し、川も澄んだ色になって再び流れ出した。そして、この日から僕とリョウの修行が始まった―。日増しにリョウは強くなっていった。剣術と、体術を一通り教えるとすぐに吸収し、最初は全くもって粘れなかったのに、僕相手に粘れるようになった。
半年後―
「だいぶ強くなったな」
「そうですか?」
僕が誉めると嬉しそうにしていた。実際、誉めてもいいほど上達していたので僕としては珍しく誉めていた。
「リョウ、悪い話なんだが…」
「なんですか?」
のんびりと聞いてきた。半年前とは大違いだ。
「実は、この村はもう再建できない…。」
紫に会ったときにいわれたのだ。人がいない村に一人ですむことは危険きわまりないと。結界をはったから平気だとは言ったのだが、そんなものはすぐに壊れると言われた。いくらなんでも酷すぎるぞ、紫バ…ゲフンゲフン
紫。
「そうですか、やっぱり…」
リョウは、僕の態度から薄々感づいていたようだ。
「それで、幻想郷に行ってほしいんだ。」
「幻想郷…ですか?なぜ?」
「いや、紫に誘われたし、それがいいと思う。お前にとってもな。」
「うーん。」
悩むのは当たり前だと思う。僕や紫以外は一度入ってしまうと出られないからな。
「俺、行きますよ。」
「おっ!そうか。おーい紫ー!」
とりあえず、拒否されなかったので安心した。そして、紫を呼び―
「呼ばれて参上、八雲紫よ♪ゆかりんって呼んでね♪」
「リョウ…呼ばなくていいぞ。」
「あ、ハイ…わかりました。」
リョウは呆気に取られている。
「まあ、酷いわね。」
全くこいつは…
「用件としてはリョウを幻想郷に連れていってほしいのだが…。」
「わかったわ。人間一人ごあんなーい♪」
「え…?うわ!?」
突如としてリョウの足元にスキマが開き、リョウは落ちていった。いつもながら強引なやり方である。
「それじゃあねー♪」
そして、紫も消えていった。
「しょうがないな…。」
それからというものの、一人になった僕は、他の場所へ行って自然を直したり妖怪退治などをしていた。その内にあっとゆうまに半年が過ぎてしまい、そして、半年経った後にアリスとの約束を思い出して大慌てで幻想郷に帰っていって紫に会い霊夢に会い魔理沙に会い、そして、アリスの少々暴力的な歓迎を受けたわけである。
なんだかグダグダになってしまいました。すみません。次回はリョウの悲劇兼リョウと霊夢の出会いについても書いていきます。