語るに相応しい者なのでしょう。
森を生きる者がいる。
記すに相応しい者なのでしょう。
森を生かす者がいる。
語り始めたのは誰なのでしょう?
森の騒めきが耳を打つ。
通常とは違う空気の変化を、聞き耳を立てながら警戒に当たっていたルクルットは、敏感に感じ取った。
「なにかが来るぞ!」
その声に漆黒の剣は即座に武器を構え、モモンガもグレートソードを両手に握る。
バトラは、薬草採集をしていたンフィーレアを背中に隠す様に移動した。
「……森の賢王でしょうか?」
ンフィーレアの不安そうな声にバトラが答える。
「どっちにしろ、お前は下がってな」
「は、はい」
「……マズイなぁ、こりゃ」
その真剣な呟きに、皆の視線がルクルットへと集まった。
「猪なんかよりもデッカイのが向かって来てやがるぜ。なんで蛇行しながら動いてるかは理解出来ないが、もうすぐこっちに来るな……ただ……森の賢王かまでは判別出来ねぇ」
「撤収しましょう。それが森の賢王かは兎も角、残るのは危険だ。仮に森の賢王でなくとも、この辺りがテリトリーだとすれば追われる可能性もある」
ペテルはすぐさまチームへ指示を飛ばすと、モモンガとバトラに向き直る。
「モモンさん、バトラさん。しんがりを……お願いしても宜しいですか?」
「えぇ。任せて下さい。後は我々でなんとかしましょう」
漆黒の剣の面々から口々に声援が送られ、早々と離脱の準備が進められた。
「バトラさん、御武運を」
「モモンさん、無理はしないで下さいね」
そんな言葉を最後に、一行は木々の向こうへと消えて行く。
―もし、迷ってたらアウラにでも気付かれない様に誘導させよう……あ……
そう考えたモモンガだが、問題が1つ残されている事に気付く。
「しまった……今の奴が森の賢王だって判断されてないじゃないか……ナザリックに連れて行くなら、追い払った証拠は必要だし……」
「足とか尻尾でも切り落とせばいいんじゃね?」
「それだけじゃ、インパクト足りなくない?」
「モモンさんはインパクトが欲しいのか?」
「あった方が良いだろうとは……!……」
話込んでいた2人の視線の先。
離れた木々の間に巨大な影がある。
枝や幹に隠れ、その姿は判別する事が出来ず、特徴とされた白銀の体毛も確認出来なかった。
「お客様のご登場だぜぇ、モモンさん……とっ!」
見た目では一番装甲の薄いであろうバトラに、なにかが迫る。
空気を裂く音とともに来たソレは一見、鞭の様にも見えた。
普通なら為す術もなく、倒れ伏していただろうが、相手はバトラ。
普通の範疇に入る存在ではない。
その場で跳ね上がり、迫る攻撃に回転蹴りを放つ事で威力を相殺した。
パァン!という小気味良い音の後、蛇の鱗を思わせる異常に長い尻尾が木々の間へとゆっくり戻っていく。
―おぉ! バトラやるなぁ! それにしても、相手は尻尾を鞭みたく使うのか……目算で射程は20m程……割と面倒だけど、どうやって森の中で生活してるんだろう?
そんな疑問を感じたモモンガだったが、前方への警戒は崩さない。
何時でも追撃に反応出来る姿勢へと構えた所で、木々の後ろから静かな声が響いた。
「ほぅ? それがしの初撃を完全にいなすとは、見事でござる……これほどの相手は……もしかすると初めてお目にかかるやもしれぬな……」
「……それがし…………ござる……?」
ない筈の頬が引き攣った感覚が、モモンガを襲う。
「さて、それがしの縄張りへの侵入者よ。今すぐ逃走するならば先の見事な技に免じ、それがしは追わないでおくが……どうするでござるか?」
「……愚問だな。お前を倒して、我々は利益を得たいのだ。それより何故、姿を見せないんだ? 自信がないのか? それとも恥ずかしがり屋さんかな?」
「きっと乙女チックな面なんじゃぁねぇの?」
「……言うではござらんか、侵入者よ! ではそれがしの威容に瞠目し、畏怖するが良い! それがしこそ、森の賢王!! 我が名を姿を! とくと刻み込むでござる!!」
ゆっくりと、森の賢王が木々の間から姿を見せる。
柔らかそうな体毛は……なるほど。
話に聞く白銀に見えなくもない。
途中で色が異なる毛によってグラデーションがかかり、奇怪な文字にも似た紋様を浮かび上がらせていた。
体は馬ほどの大きさはあろうか。
しかし体高は低く、手足は短い。
横に広く、うすべったい印象。
まん丸の瞳はクリクリと輝き、髭の生えた頬はポテッとしている。
長い尻尾をくねらせ、森の賢王と称されたモンスターが、その全貌を現した。
「え……」
「ぶふっ!! マジかよ!? は、反則だぜ! ぶっ……!……」
困惑するモモンガの隣でバトラは盛大に噴き出した。
―え? いや……え? えぇー?
「…………1つ聞きたいんだが、お前の種族名はなんだ?」
「それがしは、人間が言う森の賢王。それ以外に対外的な名は持たぬでござるよ」
―でも……コイツって……
モモンガは息を飲み込んで、目の前の魔獣へと問いかけた。
「お前の種族って……ジャンガリアンハムスターとか言わないか?」
そう。
森の賢王の姿は、モモンガが知る所のジャンガリアンハムスターという生き物に酷似していたのだ。
白銀……というよりはスノーホワイトの毛並み。
丸く円らな瞳に、大福の様なフォルム。
勿論、モモンガの知るハムスターはあれほど巨大ではない。
だが、それ以外に喩える言葉が見つからなかった。
150人いれば、インタビュアーを含めた151人が間違いなく、ハムスターと答えるだろう。
―え? 突然変異なの? 水爆でも受けたのかお前? ビーム、ビームは出ますか!?
内心、冷静とは言い難いモモンガの目の前で、森の賢王は可愛らしく顔を傾げた。
「さて……以前にそんな事を言ってきた者もおったが……同族を知らぬが故に答えようがござらん。……そなた、それがしの種族を知っているのでござるか?」
「う……む……知っていると言って良いのか……かつての仲間にお前によく似た動物を飼っていた人がいてな……」
溺愛していたペットのジャンガリアンハムスターを寿命で亡くし、1週間近くユグドラシルにインして来なかったギルメンの事を思い浮かべた。
「なんと! それがしに似たものをペットにするとは!!」
気分を害したのかは分からないが、森の賢王はぷくっと頬を膨らませる。
だがどう頑張って見ても、モモンガには餌を溜め込む仕草にしか見えない。
「ふむ。しかし、その話は興味深いでござるな。それがしも生物として種族を維持しなくてはならないのでござる。もし同族がいれば、子孫を残さなくては生物として失格でござるが故に」
―あー。そういう考えかぁ……俺はもうナニすらありませんが? 同族? その辺から湧いてくんじゃないの? けっ!
思わず心の内で荒れるモモンガだったが、脳内に閃くものがあった。
―……アンデッドって生物じゃなくね? ほら、生きてないもん! つまり、その理論は俺には適応されない! ふふ…ははははは! ……はぁ……
大きくやる気を削がれながら、モモンガは力なく言葉を繋いだ。
「……お前程……大きくはなかったぞ」
「そうでござるか……もしや幼子でござるか?」
「……違う。大人でも掌サイズだ」
モモンガの言葉にしょんぼりしたのだろう。
森の賢王の髭が僅かに垂れる。
「それはちょっと無理でござるなぁ……やはり、それがしは1人なのでござろうか……いやいや……それがしにも友達位……」
ブツブツと呟きだした森の賢王に、少しだけ同情するモモンガだった。
暫くなんとも言い難い光景が繰り広げられたが、復活を果たした森の賢王によってそれも終わる。
「……まぁ、気にしても前には進めないでござる! 無駄話は終いにして、命の奪い合いを始めようではござらんか。さて……侵入者よ。それがしの糧となるでござる!」
「……う……む…………?……」
ノリノリの森の賢王。
対するモモンガは、どうにもやる気が起きない。
―……なにが悲しくてハムスターと戦闘なんて……もし死体を突き出しても、絶対に生暖かい目を向けられるじゃないか……
どう好意的に考えても、そうとしか考えつかないのだ。
ならば、倒すのではなく捕縛しようとモモンガは思い至った。
「バトラ、下がってろ」
「……ぶっ……くひっ……りょ……っ……」
バトラといえばツボに嵌り過ぎたのか、腹を抱え込んで頷いた。
よろよろと後ろに下がる。
「うーむ。2人同時でも構わないでござるが?」
「……ハムスター相手に2人がかり…………そんなん、恥ずかしくて出来るかぁあ!」
色々な思いを振り切る様に、モモンガが武器を構える。
それを合図と見たのか、森の賢王の全身が沈んだ。
「その選択を後悔しても遅いでござるよ! いざ参るでござる!」
ドン!と大地を蹴って森の賢王が巨大な肉の弾丸となって迫ってくる。
それに対してモモンガは、防ぐ訳でも避ける訳でもない、第三の選択肢をとった。
片方のグレートソードを手放し、地面に突き刺す。
残った方を両手でしっかりと握り絞め、腰を落とし、体をズラした。
―……会社帰りに培ったバッティング能力を! ……見るがいぃわぁぁぁあああ!!
「……遅い……遅すぎる……お前には圧倒的に……速さが足りない!!」
「むぅ!? な、なんとぉぉおおお!?」
「ぶふぉっ!? ちょっ……!……くひゃっ……~!!」
モモンガはあろう事か、飛びかかってくる森の賢王の巨体を思いっきり撃ち返したのだ。
これには森の賢王も度肝を抜かれる。
今まで味わった事のない衝撃が体を巡り、地面にぼてっと落下した。
しかも。
―当たった時、キン!ってなったんですけど!? お前フカフカじゃねぇのかよ!? 詐欺! 詐欺だよそれは!
そう。
ヒットの瞬間、モモンガは確かに聞いたのだ。
甲高い金属音を。
つまりそれは、森の賢王の外皮等が下手な金属よりも固い事を意味する。
更に、今のモモンガはユグドラシル換算で約30lv程の戦士職に匹敵するのだ。
使用する魔法や装備品である程度の変動はあるものの、基準的にはその位である。
―つまり、森の賢王は低く見ても30lvか……
モモンガは兜の下でニヤリと笑った。
「丁度良いな。近接戦闘の実地テストには最適だ」
モモンガは手放したグレートソードを拾うと、両手に構えて突撃した。
右の袈裟上げ、左の捻り突き…連続して振り回していく。
油断は出来ないハムスターだが、前衛訓練の相手には十分過ぎた。
対する森の賢王も、ただでは転ばない。
器用に巨体を捻らせ、時に飛び跳ねては攻撃を躱していった。
モモンガの脳裏に浮かぶのは、かつての仲間達の戦闘。
剣と盾を駆使して戦った、全ユグドラシルプライヤー最高峰の剣士だった、たっち・みー。
『天照』・『月詠』という二刀を振るい、ギルド最高峰の攻撃力を誇った弐式炎雷。
『二の太刀いらず』その実現を目指して大太刀『斬神刀皇』・『建御雷八式』を使い分けた武人建御雷。
そして、最後にどうしてか王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフの姿が浮かんだ。
―……何故……ギルメンではなく……あのガチムチが……
モモンガには思い当たる理由が全くなかった。
最高の戦士、剣士の姿をモモンガは間近で見続けて来たのだ。
今更、どうしてガゼフの姿を思い出すのか。
―って、戦闘中になにを考えてるんだ俺は……ハムスターとはいえ、相手に失礼だろう……ハムスターだけど
幾重にも交わされた攻撃の果て。
モモンガの切っ先が森の賢王の体を浅く裂き、森の賢王の尻尾の一撃が、モモンガの鎧を擦った所でお互いに膠着する。
「その鎧、凄まじいでござるなぁ。そなたの腕力も剣も、実に見事でござるよ。人間の社会でも名の知れた御仁でござろう?」
「……戦士にしか見えないのか?」
「なにを言ってるでござる? 戦士以外のなんと見ようか。いや、もしかすると騎士とかでござるか?」
―……外れだなぁ。そもそも巨大ハムスターの時点でアレだったけどもさぁ……賢王とか付けたの誰だよ、全く!
モモンガは内心、結構ご立腹。
賢王とか名乗るんだから、自分の幼稚としか言えない剣技に違和感を感じるとか、なにか気付く予兆を感じさせるとかをして欲しかったのだ。
少し位は、名の通りの姿を示してくれても良いのにとさえ思う。
「……止めだ。お前には少しだけ期待していたんだがな……<絶望のオーラⅠ>」
剣先を地面に向けながら、右手を森の賢王へと突き出した。
本来は<絶望のオーラⅤ>を使用しているモモンガだが、流石に即死効果は強すぎるだろう。
強度を弱め、恐怖効果のみまで威力を落とした。
モモンガを中心に冷気が沸き起こる。
それを浴びた瞬間、森の賢王は全身の毛を逆立てながら凄まじい勢いでひっくり返った。
「こ、降伏でござる! それがしの負けでござるよ!」
「……はぁ……所詮、獣か……ホント、賢王って付けたの誰だよ……」
「えー? そうですか? 結構、賢こそうな感じですけど。あ! もし殺しちゃうんなら、皮を剥いでもいいですか? ポーチとかにしたいなぁって」
何時の間にやらモモンガの隣にアウラが立っていた。
しかも物騒な事まで口にしている。
どうしたものかと考えるモモンガと、丸い瞳を濡らして震える森の賢王の視線がぶつかった。
―……っく! その円らな瞳を向けるな……! 俺、動物のドキュメンタリーとか弱いんだよ……やめて! 見ないで!
暫く無言の時間が流れる。
迷ったモモンガは、無意識の内に<メッセ―ジ>を繋げていた。
『はぁ……ベルンさんならどうしてたかなぁ…………』
『なにか用?』
『え!? ベルンさん、なんで!?』
『……なんでもなにも、<メッセージ>を送ってきたのモモンガさんじゃない』
『あ』
―恥ずかしい! そして言えない! 無意識で繋いでましたなんて……絶対に言えない!
取り繕う様に、モモンガは言葉を繋いだ。
『えっと……ベルンさんってハムスター好きですか?』
『? ハムスター?』
『はい。実は超巨大ジャンガリアンハムスターと戦闘になりまして』
『…………慣れない土地で疲れてるのね』
―ぐっ! そうだよね! 普通、ハムスターと戦闘なんてしないもんね! めっちゃ優しい声なのに、心が痛いぜぇ! ふぇぇぇえん!!
『……冗談でもなくて、ガチなんですよぉ。森に行ったらなんか出て来ちゃいまして。殺すのもあれだし、どうしたものかと…』
『適当にバラして他の魔獣の餌にしたら?』
『あれ、俺の話聞いてました?』
『聞いてたわよ? モモンガさんが責任持ってお世話するなら、ウチに連れて来ても構わないわ』
『あれ? さっきと言葉が違いませんか?』
『気の所為よ。途中で投げ出したらお仕置きだから。それじゃぁね。私、今忙しいの』
『あ! まっt』
普段通り、無情にも<メッセージ>が終えられた。
だが、これで腹は決まったのも確か。
モモンガは決断を下す。
「……私の真なる名前はモモンガだ。この姿の時はモモンという偽名を使っている。私に仕えるのであれば、汝の生を許そう」
「あ、ありがとうでごさるよ! 命を助けていただいたご恩! 絶対の忠誠にてお返しするでござる! この森の賢王、この身を偉大なるモモンガ様に!!」
「森の賢王というのも些か名前としては面倒だ。これからは…………ハムスケと名乗れ。後、私への呼び方も考える様に」
「おぉ! なんと勇ましき名でござろう! 殿! これからどうかお頼み申すでござるよ!」
「殿……まぁ、良いか」
「ちぇ……」
妥協して頷くモモンガの横で、アウラが残念そうな視線を送っていた。
その後ろ。
「ぐっ……は、腹が……いひひ……」
「お前笑い過ぎ!?」
「? バトラどうしたの? お腹痛いんだったらポーションあるよ?」
「大丈……ぶっふ!……!……!……」
「!? バトラ! しっかり!」
笑い過ぎて過呼吸を起こすという、旅の相棒の姿があった。
結局、モモンガとバトラが森から出るのは少し遅れての事となる。
森から出ると、2人の生還を待ち望んでいた面々に無事を祝いながら取り囲まれた。
そして、特に気にする事もなくハムスケの紹介をしようとした時、空気が変わる。
―まぁ、ジャンガリアンハムスターっていっても、これだけ大きいと圧迫感あるよね
どう見ても規格外の大きさだろうし、モモンガは努めて柔らかい声を出した。
「ご安心下さい。私の支配下に入っておりますので、決して暴れる事はありません」
そのまま見せつける様に、ハムスケの体を撫で回す。
「正に殿の仰る通りでござるよ。森の賢王改めこのハムスケ、殿に仕えともに道を歩む所存! 殿に誓って、皆々様にはご迷惑をおかけしたりはせぬでござる!」
巨体とはいえ、外見は可愛らしいハムスターだ。
慣れてしまえば警戒もなくなるだろう。
しかし、このハムスターが森の賢王と信じて貰えるかが、唯一の懸念であった。
だが、そんなモモンガの心配も杞憂に終わる。
「……これが森の賢王! 凄い! なんて立派な魔獣なんだ!!」
―……Nun, was sagst du?(今、君はなんて言ったのかな?)
驚きの余り、封印していたドイツ語が脳内で再生された。
からかわれているのかと声を出したニニャを見るが、その表情は驚愕に彩られている。
決して冗談めいたものではない。
「……いや……これが森の賢王とは……その名に相応しい偉大さなのである! こうして見るだけでも強大な力を感じるのである!」
―えぇ!? 偉大!? 強大な力ぁ!?
「いやはや。こいつは参った! これだけの偉業を成し遂げるたぁ、流石だぜ!」
「これ程の魔獣……私達では皆殺しにされていたでしょう。お見事です、モモンさん、バトラさん」
漆黒の剣の面々からあり得ない称賛の声を浴びたモモンガは、ハムスケへと向き直った。
超巨大ジャンガリアンハムスターの姿がそこにはある。
それ以外の感想など、ある筈もなかった。
「……皆さん、こいつの瞳、可愛らしいとは思いませんか?」
「「「「「!?」」」」」
その瞬間、ンフィーレアを含めた全員の方の瞳が、あり得ないものを見たとでも言いた気に見開かれる。
「モ、モモンさん! 貴方はこの魔獣の瞳が可愛らしいと!?」
―それ以外にあるの!? まさかコイツ、魅了のパッシブスキルでも持ってるんじゃ…
「信じられません……流石はモモンさんです。ニニャ、君ならどう思う?」
「……深みある英知を感じさせ、魔獣としての強大さを感じます。どう余裕の態度をとっても、決して可愛らしいとは思えませんね」
「…………!?」
―なん……だと……
モモンガは言葉を無くした。
全員を見渡せば、それが共通認識である事は明白。
まるで自分一人が、鏡の国にでも迷い込んだ様な錯覚さえ覚える。
―そうだ! バトラ! アイツなら…!
「バトラ! お前はどう思う?」
斜め後ろでは、過呼吸から脱したバトラの姿が。
あの後、アウラの持っていた上位ポーションのおかげでなんとか腹筋の崩壊を免れたのだ。
むしろ、下位ポーションでは効き目がなかったという不思議。
最後の希望を託して、バトラに問う。
「ん? 普通に可愛くね?」
「「「「「!?」」」」」
―そうだよね!? 俺、間違ってないよね!?
その後も、似た様なやり取りが続いた。
ンフィーレアがモモンガのチームに入りたいと頭を下げたり、それをモモンガが断ったり。
断るといっても、濁った感情ではなく、もっと穏やかな感情で、だったが。
周りの視線が、当初の予想とは違う生温かさを漂わせて所で、バトラが口を開いた。
「実は森の賢王を従えたモモンさんに、ちょっとした提案があるんだけどさぁ?」
モモンガは、その歪んだ笑いに危機感を感じる。
止めようとしても、既に遅い。
「おい、m「偉業達成者ってのにはさぁ。凱旋パレードって……必須じゃね?」……」
バトラのその提案は、彼らの耳に届いてしまった。
これより後。
意外にも、トブの大森林の周囲に魔物がこれまで以上に流れたりする事はなかった。
森の賢王という大きな存在が抜けたにも関わらずだ。
御伽話に語られるその森は、今も静寂を守る。
語り部が現れるまで。
新たにページを捲る者はいない。
第21話『伝説と現実』如何でしたでしょうか?
ハムスター回です。
まさかの長さとなりました…
ご感想を下さいました、『鳳凰院凶真』様、『絶望』様、ありがとうございました。
『couse268』様、『炬燵猫鍋氏』様、『ナナシ』様、『月輪熊』様、
いつもご感想をありがとうございます。
ご評価された方にも感謝を。
お読み下さっている皆様。
これからも当作品をお楽しみ下されば嬉しいです。
ご感想、ご考察、いつも楽しみにさせていただいております。
それでは次話にて。
祥雲