秋の日のヴィオロンの...もう一つの物語   作:メトロポリスパパ

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寺本から電信の知らせを聞いた西隊長。
大洗の試合が決定したことを知り何を思う。


【知波単・ウォー】

知波単学園学園艦

 

戦車道隊長の西絹代は日が昇る少し前、愛機のウラヌスに乗って早朝ツーリングをしていた。

バーナーとクッカー、水、袋ラーメンを持って艦首まで行き、朝日が昇るのを見ながらラーメンをススるのが良い気分転換になるのである。

ツーリングから帰ってきた西は、隊舎横の小屋にウラヌスを仕舞おうとしている時、寺本に声をかけられた。

 

「西隊長、おはようございます!」

 

西は振り返り片手を軽く上げて挨拶をする。

 

「おお寺本か、おはよう。早いじゃないか、どうした?」

 

寺本はビシッと敬礼し答える。

 

「は!お知らせしたい事があります!」

 

西の顔つきが変わる。

 

「もしや・・・大洗の事か?」

 

「はい、おそらく」

 

「おそらく?・・・わかった、隊長室に行こう」

 

二人は隊長室に向かった。

隊長室中央のソファーに西が座り、寺本にも対面に座ってもらう。

寺本は紙切れを一枚出して西に報告をする。

 

「昨晩、東校舎第33学科の得た情報によりますと。聖グロから戦車道のある高校へ電信を用いた文が送られているとの事です。聖グロがよく使う乱数を用いた発信で、33学科が解読した結果がこれです」

 

寺本は紙切れを机の上に置いた。

西はそれを手に取り読む。

 

「ヒガシノカゼアメオオアライノテンキセイロウナレドモナミタカシ」

 

西は、ふむう・・・と腕組みをして寺本に聞く。

 

「大洗の事なのは間違いないな、大洗は何処かと戦争でもするのだろうか?寺本、どう思う?」

 

「そうですね、恐らく何かが決まったのだと思われます。それと・・・もう一つ情報が」

 

「なんだ?教えてくれ」

 

「同じく33学科からの情報なのですが、サ校とプ校からとある周波数で無線交信が行われていたと。しかしデジタル通信の秘匿コードの為内容は分からないとの事であります」

 

西は腕組みをしながら首をひねる。

 

「つまり・・・どういう事なんだ?」

 

寺本は右手を顎の下に置き、机に置いてあるメモを見ながら答える。

 

「多分ではありますが、電信での呼びかけでサ校とプ校が答えたという事でしょう。しかしあまり公にはできない事なのではないかと。」

 

寺本は続ける。

 

「恐らく、秘匿コードも何かしらで伝わっているのではないでしょうか?・・・しかし、秘匿コードを公にするのはまずいので他の方法で・・・あ・・・」

 

「あ?」

 

西は首をひねる。

寺本は何かひらめいたようだ。

 

「電子メールではないでしょうか?」

 

西も、なるほど、と相槌を打つ。

西は隊長席の机のパソコンを立ち上げる。

しかし、西は普段パソコンを使わない、いや、使おうとした形跡はあるのだが・・・。

西がパソコンをこねくり回したせいでとても使いにくい状態になっていた。

 

「て、寺本、ちょっと見てくれないか?」

 

恥ずかしそうにに西は寺本に助けを求めた。

寺本はなんとかメールを開くが、何百件とメールの受信が始まる・・・。

 

「隊長・・・・」

 

「いやぁ~・・・ははは!すまん・・・」

 

やっと受信が終わると、最後のほうでサンダースからのメールが有るのを発見した。

そこには電信文と数字が書かれていた。

寺本が言う。

 

「これですね!数字は周波数と秘匿コードと思われます。どう致しますか隊長、連絡いたしますか?」

 

西は、しばし何かを考えた後、寺本に言う。

 

「寺本、福田を呼んで来てくれないか?私は先に無線室に行っている。頼めるか?」

 

寺本は敬礼をし

 

「かしこまりました!隊長!」

 

「頼んだぞ」

 

寺本は駆け足で福田を呼びに行く。

西は無線室に向かった。

 

 

無線室で西が待っていると、寺本と福田がやってきた。

二人は敬礼をし無線室に入った。

西は福田に向かって話し出す。

 

「福田、突然呼び出して申し訳ない。話は寺本から聞いたか?」

 

福田はビシッと敬礼しながら

 

「は!大洗の事について聖グロより連絡があったとお聞きしました」

 

西は頷き

 

「ふむ、そうなのだが、詳しい事は今から無線通信をして聞くことになる。福田も知りたいだろうと思い呼んだのだが、一緒に聞くか?」

 

福田は更に背筋を伸ばし

 

「は!是非、聞かせて頂きたく思います!」

 

「わかった。寺本、無線の準備をしてくれ」

 

「かしこまりました」

 

寺本が準備を済ませ、西は交信を始めた。

 

「あー、あー、こちら知波単学園戦車道 隊長の西絹代でございます。御聞こえでしたら応答願います」

 

「こちら聖グロリアーナ無線室、西様ですね。オレンジペコ様にお繋ぎ致しますので少々お待ちください」

 

「了解でございます」

 

西は寺本に向かって言う。

 

「オレンジペコ殿とはどなただったかな?」

 

「は!確か、隊長車の装填手の方だと思われます」

 

「そ、そうか・・・」

 

なぜか西は緊張している様子である。

 

「お待たせいたしました、オレンジペコです。知波単学園戦車道 隊長の西様ですね。先日の試合、お疲れさまでした。この無線で通信されているという事は電信を見ていただけたのですね」

 

「オレンジペコ殿、こちらこそお相手頂きありがとうございました。電信を受信致しまして、大洗の事と理解しご連絡差し上げた次第であります」

 

「はい、実は、大洗の試合が先日決定致しました。この試合に勝てば大洗の廃校は今度こそ撤回されます!」

 

西はガタッと立ち上がり、福田と寺本も顔を合わせて笑顔になった。

 

「それは本当でありますかオレンジペコ殿?!・・・して、対戦相手は如何?」

 

「はい・・・対戦相手は大学選抜で・・・車両数は30両です」

 

「な!!」

 

西は愕然とした。

寺本も西に駆け寄り言う。

 

「大学選抜と言えば社会人をも打ち負かす実力の部隊です!それに大洗の車両は8両。これは余りにも・・・鬼畜文科省め・・・」

 

福田もうつむき両手を握りしめていた。

西はPTTボタンを押して話し出す。

 

「オレンジペコ殿、それは余りにも大洗が不利というもの。しかし大洗はこの試合を受けたのですね?」

 

しばし間を置き答える。

 

「はい、大洗は無理を承知で受けました。ですがこれは大洗には不利すぎます。そこで我々高校側も大洗に増援を出すことにいたしました。現在、聖グロリアーナ、黒森峰、サンダース、プラウダの4校が参戦を表明しています」

 

西は福田を見た。

福田も西の方を凝視している。

寺本も傍らで西の目を見ていた。

西は、福田が友の為に泣いていたのを思い出し、その時何も出来なかった自分を思い出していた。

そして、何かを決心したのかPTTボタンを押して話し出す。

 

「オレンジペコ殿、その試合、我々も参戦する事は可能でございますか?」

 

「ありがとうございます!もちろんです!しかし・・・負ければ大洗は廃校になります・・・」

 

西の顔が引き締まる。

 

「昨日の敵は今日の盟友、友の危機に駆けつけるのに理由など無いのではないでしょうか?オレンジペコ殿」

 

「そうですね・・・ありがとうございます!絶対勝ちましょう!それと、これは極秘作戦なので内密にお願いいたします」

 

「かしこまりでございます!」

 

「では、本日午後よりダージリン様より作戦の内容に関するブリーフィングを行いますので、この周波数でお待ちください。くれぐれもこの作戦は極秘でお願い致します。書類などはすぐにメールで送らせて頂きますのでご確認ください」

 

西は首をかしげる。

 

「オレンジペコ殿、少しよろしいか?」

 

「は、はい、なんでしょう?」

 

「ぶりーふ?とはなんでしょう?」

 

「あ・・・えと・・・ブリー・・・フィングでしょうか?作戦会議みたいな・・・」

 

「あー作戦会議ですね!かしこまりました!本日一二〇〇時、作戦会議の為、この周波数で待機いたします!」

 

「あ・・・はい、よろしくお願い致します」

 

「了解いたしました!では失礼いたします!」

 

西はマイクを置き椅子から立ち上がり福田の方を向いた。

 

「隊長殿ー!」

 

福田は西に走り寄り抱き着いた。

寺本はそれを見て。

 

「こら!福田!隊長に失礼だぞ!」

 

西は寺本に手を向けて言う。

 

「いや、いいんだ」

 

続けて西は福田に言う。

 

「福田、喜ぶのは今ではないぞ。この試合に必ず勝って友と皆で喜ぼうじゃないか」

 

福田は西から離れ、ビシッと敬礼し

 

「は!了解であります!西隊長殿!」

 

西は腕組みをし、ニッコリ顔でうんうんと頷いた。

寺本もジャケットの袖を捲り

 

「こうしちゃおられませんな!号外を打たねば!」

 

とバタバタと駆けて行った。

 

しかし、西はまたも不安に駆られていた。

我々の戦車道が大学選抜に通用するとは思えない。

だが、この試合・・・大洗の命運を分けた試合になる、絶対に負けるわけにはいかない。

西は福田を見る。

福田は敬礼をしたまま決意を決めた目で西を見ている。

もしかしたら・・・この試合で知波単は変わるかもしれない・・・。

福田を見てそう思う西なのであった。




次回
【アンツィオ・ウォー】
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