秋の日のヴィオロンの...もう一つの物語   作:メトロポリスパパ

2 / 22
サンダース大学付属高校 戦車道 隊長ケイに大洗女子学園生徒会長 角谷杏から急な知らせとお願いが入る。


【Steep news サンダース】

陽が沈みかけた頃

サンダース大学付属高校 戦車道 隊長室

隊長のケイは背部から西日が差すなか、いかにもな椅子に腰かけ足を組み

両の手も後頭部で組み、前後にユラユラと揺れながら天井を見つめていた。

机の上には大洗の地図と赤、青、黄、白の戦車の駒が散らばっている。

ケイの席から向かって左側と右側、ちょっと離れた所に机と椅子があり、それは副隊長の席となっている。

右側の席で副隊長のナオミは難しい顔をしながら書類にペンを入れつつ左手で頭を掻いている。

ナオミの後ろには同じく副隊長のアリサが書類を覗き込み、指を差しながら何かアドバイスをしているようだ。

 

ポロンコロン♪ポロンコロン♪

 

ケイの携帯電話が鳴り画面に目をやる。

 

「アンジーから?」

 

アンジーこと大洗女子学園生徒会長「角谷杏」からであった。

アンジーと呼んでいるのはケイだけであるが・・・。

携帯電話に直接かかってくるという事は

まったくどうでもいい話か個人的な話のどちらかであろう。

なんとなくではあるが、ケイは席を立ち廊下に出た。

 

「ハァーイ!アンジー」

 

「やぁやぁ!おケイ」

 

「そうそう!エキシビジョンね、テレビで見てたわよ!エキサイティングな試合だったわ!

私たちもうちの大学との練習試合がなかったら絶対参加してたのに!」

 

「ははは・・・あんがと。ところでさぁ~お願いがあるんだけどいいかなぁ?」

 

ん?

なんかいつものアンジーと違うような・・・・直ぐに本題に入ろうとするし・・・。

ケイは片方の眉毛を下げながら聞く。

 

「なに?どうしたの?」

 

「実はさぁ~、うちの学校、今月末で廃校になっちゃうんだ・・・」

 

「・・・・・・・・・Whhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhy!!」

 

廊下中に、もちろん隊長室の中に居るアリサとナオミにも聞こえた。

二人はビクッとして顔を見合わせ扉の方に行き聞き耳を立てる。

 

「なんで?!どうして?!大会に優勝して廃校は免れたんじゃないの?!」

 

恐らく誰が聞いてもこの反応であろう。

 

「そのつもりだったんだけど・・・・」

 

杏は事の経緯を説明する・・・。

 

「Oh・・・Shit」

 

「それでさぁ~戦車もすべて文科省預かりになってしまうんだよね・・・それは避けたくて・・・戦車だけはどうしても守りたいんだぁ・・・移動先が決まるまでの間でいいから、戦車・・・預かってくれないかな・・・ケイ」

 

「・・・OK・・・わかったわ。うちで大洗の戦車預かるわよ。で、何時行けばいい?」

 

「明日の朝には退艦しなくちゃいけなくて・・・だから、出来るだけ早くお願いしたいんだけどいいかな?それと・・・戦車は紛失したという事にして書類を作成したから・・・」

 

さっきまで試合をしておいて戦車を紛失したとはえらく強引な話ではあるが

それぐらい切羽詰まっているという事だろう。

 

「という事は今日中にか~・・・OK!任せといて!出来るだけ早く行くわ!輸送機で行く事になると思うから、着陸地点の確保、誘導灯の設置と管制役を用意しておいて」

 

「わかった・・・ありがとね・・・ケイ」

 

「フフ・・・困った時はお互いさまでしょ。文科省に戦車は絶対渡さないわ!それじゃすぐ行くから!また近くまで来たら連絡するね」

 

「うん・・・わかった・・・」

 

お互い電話を切り、ケイはしばし沈黙の後・・・。

 

「ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

廊下中にFワードが響き渡る。

 

ドア越しに聞いていたナオミとアリサもビックリしてのけ反る。

 

「ハァハァ・・・・フゥ~」

 

落ち着いたようだ

ナオミとアリサが顔を見合わせている所にドアノブがガチャリと動く。

二人はビッと直立する。

ケイが隊長室に入り扉を閉めると・・・。

 

「聞いてたわよね・・・。」

 

「は・・・はい」

 

ケイはすまなそうな顔をして

 

「今から大洗に行くけど・・・付いて来てくれる?」

 

ナオミとアリサは一瞬お互いの顔を見て軽く微笑み

 

「Yes,ma'am!」

 

「ありがとう。よし!行くわよ!Here we go!・・・・と言いたい所だけど・・・」

 

いくらサンダースと言えどいきなり輸送機を飛ばすというのは通常なら無理な相談である。

アリサが電卓をたたきながら話す。

 

「戦車8両を積むとなるとC‐5Mになる思うのですが、それでも恐らくペイロードギリギリです。出来るだけ搭載燃料を減らして戦車を積んで離陸の後、空中給油をする算段になるかと思われます」

 

つまり空中給油機にも随伴してもらわないといけないであろうと・・。

ケイはしばし腕組みをして思案した後

 

「わたしは校長の所に行ってくるわ。アリサとナオミは燃料搭載量の算出と、今出来るだけの準備をしておいて」

 

「Yes,ma'am!」

 

サンダース大学付属高校学園艦 校長室前

 

ケイは校長室の前に居た

フゥ・・・と一呼吸入れてノックをする

 

コンコン

 

「高等部3年、戦車道隊長ケイです」

 

中からダンディーな声が聞こえる

 

「入りなさい」

 

「失礼します」

 

ケイが扉を開けて中に入る。

 

校長席で書類を眺めていたその人は書類を置きケイの方を見て話しだす。

 

「どうしたんだい?」

 

何時ものケイじゃない事にすぐに気づく

 

「校長・・・お願いがあります!」

 

サンダース大学付属高校 校長 ハーリング

ケイの性格はよく知っている。

小さいころから納得いかないことがあると直ぐに行動に出る。

今でもちょくちょくと胃が痛くなる話も入って来るのだが、今回は少し事情が違うようだ。

いつもなら事後報告で頭を抱える事が殆どだが、直接切実なお願いをされる事は今回が初めてである。

 

「・・・・言ってごらん」

 

「何も言わずに貸して頂きたいのです。C-5MとKC-10を1機づつ、今すぐに」

 

「今からかい?・・・納得できるだけの説明はあるのかな?」

 

ケイは迷った

適当な”ウソ”をついて誤魔化すのか・・・すべて本当の事を話すのか。

ゴクッと生唾を飲み話し出す。

 

「大洗女子学園の戦車8両を預かりに行きます」

 

ん?と眉をひそめるハーリング

 

「なぜ、大洗から戦車を預かるんだい?」

 

「御存知だと思いますが、文科省は大洗と約束をしました。高校戦車道全国大会で優勝すれば廃校を撤回すると。しかし、文科省はその約束を反故にし、先程大洗に廃校を宣言したそうです。戦車も接収されるとの事・・・だから・・・友達を助けたいの!角谷生徒会長・・・アンジーから頼まれたの!戦車を預かってほしいって!戦車だけは守りたいって!彼女達は戦車で学園を救ったの!それを理不尽に廃校にされ、更に戦車まで没収される事にあの子たちも・・・私も耐えられない!お願い・・・ダディ」

 

ふぅ・・・

ハーリングは机に肘をつき鼻の下で指を組み考え込む・・・・。

 

「・・・おやっさんには伝えておく」

 

ケイの顔がパッ明るくなる

 

「ありがとうございます!あと・・それと・・・」

 

え?まだなにかあるの?という顔をするハーリング。

 

「多分・・・文科省から問い合わせが来ると思うから」

 

はぁ~・・・ため息を付きつつ、目をギュッと瞑りうなだれるハーリング

 

「わかった・・・やってみるさ。まったく・・・困った娘だ。」

 

「仕方ないじゃない・・・ダディの娘だもん」

 

またふぅ・・とため息をつきつつ軽く微笑むハーリング

 

「行ってきなさい」

 

「ありがとうダディ!愛してる!」

 

ケイがバタバタと出て行った後、ハーリングは電話をかける

 

トゥルルルルル・・・・ガチャ

 

「はい、サンダース空輸課です」

 

生徒であろうかわいらしい声での応答である。

 

「ハーリングです。おやっさんはおられますか?」

 

「少々お待ちください」

 

「はい、ビーグルだが・・・どうしたんだい?珍しい」

 

渋い声である。

彼はピーター・N・ビーグル

空輸課の整備顧問である。

整備生や教師からは敬意を表し「おやっさん」と呼ばれている。

 

「今、娘がそっちに向かっていると思いますから、彼女にC-5MとKC-10を貸してやってもらえませんか?」

 

え?と驚くおやっさん

 

「今からかい?・・・・フフ・・・またケイがなにかしたのかい?」

 

「いや・・・今からするんですよ」

 

とハーリングは苦笑い。

 

「フフ・・・ははははは!わかった。まだ生徒も居るから準備してもらうとしよう。エクステンダーの方も乗員が居るから飛んでもらうよ」

 

「ご迷惑をおかけします」

 

「いいさ・・・また、飲みながらケイが何をやらかしたか詳しく話を聞かせてくれよ、君のおごりでね」

 

「ははは、わかりました。では」

 

ハーリングは電話を切り、受話器に手を乗せたまま電話機を見つめている。

そして、どこか誇らしい顔をしていた。

 

バタバタと隊長室に戻ってきたケイ。

 

「ナオミ!アリサ!校長からOKが出たわ。おじさんにも今会ってきて空輸課で準備をしてくれるって。こっちの準備はどうなってる?」

 

ナオミが答える

 

「燃料の計算と必要であろうラッシング等のリストアップはした」

 

「わかったわ。空輸課にすぐに連絡して準備してもらって!」

 

「わかった」

 

「後は駐機場でやりましょう!行くわよ!Here we go!」

 

駐機場までの移動中に連絡を終え、彼女たちはC-5Mスーパーギャラクシーに乗り込み航路のセットアップ等各自が手順を実行している。

 

KC-10エクステンダーは指定空域で待機するために先に離陸していた。

しばらくしてC-5Mも給油とセットアップを終え誘導路をゆっくりと滑走路に向かって動き出す。

滑走路に入り、管制より離艦の許可をもらう副操縦士のケイ。

 

「ワイルドグース8492、離艦許可」

 

「こちらワイルドグース8492了解」

 

機長のナオミはスロットルを開け、ブレーキを解除すると機は一瞬揺れた後、前進を始め加速していく。

ケイは大気速度計を見ながらチェックする。

 

「・・・V1・・・ローテート」

 

ナオミが操縦桿を引くと少し間を置き機首が上がり、高度計の高度も上がっていく。

 

「V2・・・ポジティブ」

 

ナオミから指示が出る

 

「ギアアップ」

 

ギアアップの指示に答えるケイ

 

「ギアアップ!」

 

ランディングギアが格納され高度を上げていくC-5M。

格納庫の前に居るおやっさんとジャーマンシェパードのランディーに見届けられながら彼女たちは空に上がって行った。

 

 




次回予告
大洗の戦車を預かるために空に上がったサンダースのケイは、聖グロリアーナのダージリンに無線連絡をする。
次回【Two of the huddle】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
後書きでございます。
杏から知らせを聞き、お願いをされたケイ。
ケイなら断る筈がないですよねw
それと、オリキャラが2人ほど登場します。
校長のハーリングさんとビーグルさん。
こちらを見て頂ければ性格付けが分かりやすいと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=l1Ba2O-VKa8
そうです!エースコンバット5ですね。
おやっさんは23:14辺り、ハーリングさんは46:38辺りです。
ここから結構アイデアをもらったりしています。
2016/9/19に文回しの調整とセリフの調整、追加をしました。
V1ローテートはどうしても入れたかったんです!w
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。