秋の日のヴィオロンの...もう一つの物語 作:メトロポリスパパ
アンツィオ高校、戦車道部の更衣室。
今日は朝練の日である。
1人の女性が髪の毛のセットをしていた。
彼女は何時も一番乗りだ。
服を着替えて、メガネからコンタクトに、そして、髪の毛のセット。
後ろに太く編んだ三つ編みを解いて、左右に分けてリボンで結ぶ。
俗に言うツインテールである。
右側のリボンを結んで、左側を結ぼうかという所で誰かが入ってきた。
「おはようございます・・・ドゥーチェ」
ツインテールの女性は鏡越しに確認し、挨拶する。
「おはよう、カルパッチョ」
よし!と、左側のリボンを結び ドゥーチェ アンチョビの完成である。
鏡からカルパッチョに身体の向きを変えると、カルパッチョはロッカーの扉を開けたままうつむき加減で、はぁ・・・、とため息を付いている。
何処となく目が赤く、下瞼も腫れているように見えた。
「ん?どうした?カルパッチョ、元気無いじゃないか」
カルパッチョはハッとしてェアンチョビの方に向き答える
「いえ、なんでもないんです・・・」
ん〜・・・そんな事は無いだろう?と腕組みをしアンチョビは軽い冗談のつもりで言った。
「なんだぁ?たかちゃんとケンカでもしたのか?」
それを聞いた瞬間、カルパッチョの顔が益々どんよりとしていく。
ゔおおおおおおお!マジだったのかぁー!
「すまんー!わざとじゃ無いんだ!冗談のつもりだったんだー!」
アンチョビはカルパッチョの前で両手をわちゃわちゃしながら謝る。
フフ・・・、と軽くカルパッチョは笑い。
「すいませんドゥーチェ、心配させてしまって、違うんです」
ふぃ〜、と安心するアンチョビ。
アンチョビが聞き直す前にカルパッチョから話し出す。
「実は、たかちゃんから連絡があって、大洗が廃校になったと・・・」
「・・・はぁぁぁああああー?!」
驚きつつ疑うアンチョビ。
「それはマジなのか?」
「はい・・・エキシビジョンの後に、役人の人が来て廃校を宣言されたと」
「なに?!そんなことが許されるのか?!」
「廃校撤回は再検討するとの約束で確約では無いと、再検討した結果今月末で廃校になる事が決定したと・・・」
「今月末って・・・あと一週間も無いじゃないか!」
「たかちゃん達も抵抗しようとしたんですが、抵抗すれば職員や一般の方達の再就職は斡旋しない・・・と」
「ぐ・・・」
アンチョビはやり場の無い気持ちになる。
「で、大洗のやつらはどうなるんだ?」
「今日退艦したそうで、身の振り方が決まるまでバスで大洗の各地に分散して待機するそうです」
どよーん・・・となるアンチョビ。
慌ててカルパッチョが言う。
「あ!でも戦車は没収されずに済んだそうです!サンダースの方達が移動先が決まるまで預かってくれるみたいで、昨日引き取りに来てくれたと」
「そうか・・・」
そこで、バン!とドアが開き。
「おはよーっす!あれ?どうしたんすか?」
ぬ!ペパロニ!
何故か二人は慌てる。
「なんすか?なんかあったんっすかぁ?」
「ん!あ!いや!なんでもないんだ」
「そうそう」
んー?と首を捻るペパロニ。
「さあ!練習の時間だ!行くぞ!」
「は、はいー!」
アンチョビとカルパッチョはそそくさと出て行く。
カルパッチョに至っては制服のままである。
「自分今来たとこなんすけどー!ちょ待ってくださいよー!」
二人は逃げるように歩きながら思った。
なんか分からないが、とりあえず、ペパロニにはまだ黙っていようと。
それと、まずは練習だ、考えるのは後にしよう。
正午を半分回った頃
夏休み中であるが外は観光客で賑わっている。
街角には、部や委員会などが露店を出している。
練習も終わり、アンチョビとカルパッチョは、カフェテラスでジェラートを食べながら午後のひと時を過ごしていた。
そこに、生徒の一人が駆け寄ってきた。
「安斎先輩!」
「アンチョビと呼べと言ってるだろ!」
「あ、すいませーん」
「んで?どうしたんだ?」
ちょっと困ったような顔をして生徒が答える。
「なんかコロッセオで、戦車道の人達が騒いでるんですけどぉ」
んん〜?とアンチョビとカルパッチョは顔を見合わせる。
ま、とりあえず行ってみよう。
コロッセオの中に入ると、露店に居るはずのペパロニがフライパンを振り回しながら、CV33の上で何やらわめいている。
その周りでは隊員が、そうだそうだー!と騒いでいる。
慌てて駆け寄るアンチョビとカルパッチョ。
「なんだおまえら!なにをしている?!」
ペパロニがアンチョビに気付き答える。
「あ!姐さん!今呼びに行こうと思ってたんっすよー!これ見てくださいよー!」
スマホをポンと投げてアンチョビに渡す。
そこには戦車道ニュースの画像が出ている。
ん?これは?!
アンツィオのP40修理寄付呼びかけの小さい記事の下に、デカデカと大洗廃校の記事が載っていた。
ペパロニが息巻く。
「こんなんアリっすかー?!文科省のやつらマジ許せないっす!今からカチコミ行ってやろうって思ってんすよー!」
それに合わせて隊員も息巻く。
「おう!行ってやりましょうよー!」
「あいつら戦車道なめてますよー!」
ペパロニがCV33から飛び降り、アンチョビの隣に来て言う。
「姐さん!姐さんからもなんか言ってやってくださいよー!」
アンチョビとカルパッチョは二人で、はぁ〜、となる。
なーんか、そうなる気がしたんだよなぁ〜。
アンチョビはCV33の上に乗り話し出す。
「諸君!先ずはこの騒ぎをやめろ!」
隊員たちから反論が出る。
「姐さんはこんなん許せるんすかー!」
「大洗がこんなんなって、姐さん悔しくないんっすかー!」
ペパロニは腕組みをしムスッとしながら黙って聞いている。
「黙って聞け!確かに!大洗は廃校になってしまう!私も残念でならない。だが・・・大洗は戦車道まで取り上げられてはいない!噂によれば、戦車も没収されそうになったが、その戦車を守る事に成功したそうだ。つまり!彼女達の戦車道はまだ終わってはいない!我々、アンツィオの戦車道が復活したように!彼女達も必ず復活する!たとえ場所が変わっても、戦車がある限り彼女達の道は続くのだ!もし・・・彼女達が我が校に転校してきたならば、我々は暖かく迎え入れようではないか!そして!共に歩もうではないか!戦車の道を!」
アンチョビはビシィッと短鞭を掲げる。
ウオー!という歓声に
ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!
鳴り止まぬドゥーチェコール。
「姐さん最高っすーー!」
ペパロニも謎の感動に包まれている。
続けてペパロニが隊員に向かって叫ぶ。
「オラー!お前ら聞いたかー?!大洗のやつらがいつ来てもいいように準備しとけー!おい!お前は、大洗にいつでも転校して来いって伝えろ!」
「わっかりましたー!」
隊員達とペパロニがダァーッとコロッセオから出て行く。
後に残ったアンチョビとカルパッチョ。
アンチョビは眉毛を八の字にして軽く笑いながら言う。
「ははは・・・なんか、変なベクトルに向いてしまったが、まあいい・・・」
カルパッチョが軽く頭をさげる。
「ドゥーチェ、ありがとうございます」
「ん?ああ、一時はどうなるかと思ったが、騒ぎが収まってよかった」
「いえ、それもありますが・・・」
カルパッチョは、ニコッと微笑みながら言う。
「わたしも、心のモヤモヤが晴れました」
「そうか・・・わたしは当たり前の事を言っただけだがな」
そう言うと、マントを翻しコロッセオの出口に歩き出すアンチョビ。
アンチョビのその背中を見ながら、たかちゃんが転校してきてくれたら嬉しいなーと思うカルパッチョであった。
「あのぉ〜なんか、戦車道の人達が 歓迎 大洗女子学園 て書いた、でっかい垂れ幕をぶら下げてるんですけど、なんとかして下さーい」
他校の廃校の反応をまとめて書こうと思った作者。しかし、思ったより長くなりそうな事に気付き、一校づつ書いていく事にした。
次回【Steep news プラウダ】
よろしくお願いします。】