中間テストが終わって数日が経過した、ある日。いつも通りに登校しE組の校舎前に来たのだが、E組の校舎の周りに黒服の人達が多数いた。その黒服の人達は全員が外国の人で巨体を誇る人もいるので近寄り難い。それに中に入りたくても黒服の人達が入り口の前に立っているので入れないので困る。どうやら僕以外の生徒も教室に入りたくても入れない様なので、とりあえず杉野に挨拶をしておく。
「おはよう杉野。」
「あっ!?渚か。おはよう・・・って呑気に挨拶出来る状況じゃないだろ!?何だよ、この黒服の人達は・・・まさか、浅野理事長がE組を潰す為に派遣した人達じゃないよな・・・」
杉野に挨拶をしたが、そんな場合じゃないと言われてしまった。杉野は浅野理事長がE組を潰す為に派遣した人だと思った様だが、あの理事長の場合はE組を潰すなら自ら来そうなので、多分違う。この黒服の人達は一体?黒服の人達は僕を含めたE組の生徒を見つめると、その中の一人である身長が2メートルは有る体格の良い男が声を掛けてきた。
「ソコの君達、ここは椚ヶ丘中学校のクラスであるE組の教室が有る特殊校舎だと聞いたが、君達は一体何者だ?E組の生徒以外は立ち入り禁止だ!E組の生徒では無い者は通せない!」
この黒服の人達は僕らがE組の生徒だと思っていなかったのか、E組の生徒じゃないなら通せないと言うので確実に浅野理事長の差し金では無い事だけは解った。それにしても、日本語上手いなこの黒服の人・・・今の言葉を聞いて、別に悪い人では無いと思ったのか片岡さんが黒服の人達に伝えた。
「私達がそのE組の生徒です。」
「そうだったのか!?なら、早く入ればよかったのではないか?何故、この校舎の中に入って教室に向かおうとしなかったのだ?」
まさかこの人達、自分達が近寄り難い雰囲気を出していたとは思っていないのか・・・とりあえず、この黒服の人達は全員が良い人だと解ったので、僕を含めたE組の生徒全員は黒服の人達の前を通って校舎の中に入ると、E組の教室に入っていた。
「何だったんだ・・・あの黒服の人達は?」
「さあ?とにかく無事に教室に入れたから良かったよ。」
僕は杉野とそんな会話をした後に自分の席に座りホームルームの時間が来るのを待つ。窓を覗くと外には黒服の人達が立ち続けているので、いつもとは違う光景が広がっている。教室の外の廊下も例外無く黒服の人達が立っている。そんな状況を何と言えばいいのか、本校舎のセキュリティより上になっているのではないかと思える程に近寄りがたい雰囲気を相変わらず放っている、つまり恐いって事だ・・・しばらくして、殺せんせーとリボーンに烏間先生、ビッチ先生の四人が教室に入ってきた。
「それでは朝のホームルームを始めま・・・」
「ホームルームを始める前に今の状況について説明してほしいんですけど!!」
殺せんせーがホームルームを始めようとしたが、その前に今の状況を説明してほしいと木村君に言われたので、殺せんせーはその事について話をする事にした様だ。
「そうですね。今この校舎の中と外にいる黒服の人達がいる理由についてはリボーンが説明します。」
「お前ら、テストが返された時に俺が新たな教員を呼んだと言ったよな。その教員の付き添いがこの黒服の奴らだ!」
『新しい教員の付き添いがあの黒服の人達!?一体、どんな人を教員として派遣したんだ!!?』
あの黒服の人達はリボーンが派遣した新しい教員の付き添いだと言うので、クラス中はどんな人に教員として派遣したのか心配になってきた・・・
「おい、さっさと入ってこい!お前が入ってこないと始まらないからな。」
リボーンは派遣した新しい教員を教室に入る様に指示すると、教室にリボーンが呼んだ新たな教員と思われる男性が黒服の人を一人連れて入ってきた。
「コイツが俺が呼んだ新しくE組の教員として働く事になった奴だ。おい、さっさと自己紹介しやがれ!」
「あ、ああ。解ったよ、リボーン。初めまして、俺が今日からこのE組の教員の一人として務める事になったディーノだ。担当教科は数学と理科だ。まあ、俺がそんなに得意な教科でも無いから間違えた事を教えてしまったら、許してくれよ?」
新しく教員として来たのはディーノという金髪の男性だ。見た目は優しそうな好青年という感じだ。でも、付き添いの黒服の人達の事を考えると、ディーノという人は凄い人である事は確かなので、一体どういう人なのか気になる。リボーンはディーノ先生の自己紹介にどこか不満だったのか、ディーノ先生に詰め寄った。
「おい、へなちょこ!テメエ、ふざけてんのか?得意な教科でも無いから、間違えた事を教えても許してくれだと?甘ったれるんじゃねえ!!もう一度、しばかれたいのか?」
「待てって!?今のは言葉のあやだっての!さっき頬をひっぱたかれた理由が解らねえし、何でまたひっぱたかれなきゃならねえんだ!?」
「テメエが先月、つまり4月の末期にソコのタコを呑気にイタリア観光させていたからだ!!」
その話を聞く通り、確かにディーノ先生の頬はひっぱたかれた跡なのか赤く腫れていた。ん?殺せんせーを呑気にイタリア観光させていたって・・・まさか、ディーノ先生は殺せんせーが言っていたファミリーのボスなのか?リボーンはその疑問に答えるかの様にディーノ先生の正体を言った。
「いいか、お前ら。ディーノはイタリアのマフィアであるキャバローネファミリーのボスだ。キャバローネはボンゴレファミリーと同盟関係で、ボンゴレファミリーとキャバローネファミリーは親友みたいな関係だ。キャバローネはボンゴレに負けないくらいの歴史が有るファミリーで、キャバローネはマフィアだが、自分達が拠点としている街の民を大事にしている為に人望が高い。簡単に言えばお人好しの集まりだ。」
「まあ、お人好しと言われればそうかもな。自分達の拠点である街の民を守るのは当たり前だと思うしな。それに俺は無闇に人を傷付ける様な輩は嫌いだから、困った奴がいたら放ってはおけないって感じだな。マフィアらしくないと言われたら、その通りだけどな。」
ディーノ先生は本当にキャバローネファミリーというマフィアのボスだったのか。でも、マフィアのボスだからといって無闇に人を傷付ける様な輩は嫌いらしいし、自分達が拠点とする街の民を守る様にしているので、ディーノ先生とその部下である黒服の人達は良い人で間違いはないのかな。
「とりあえずは俺がどんな奴かは解った筈だ。そんじゃ、ホームルームを終わらせようぜ。って事でそこは頼むぜ、殺せんせー。」
「はい、了解です。それではディーノ先生の紹介も終えたので、ホームルームに戻りましょうか。」
ディーノ先生の紹介が終わったのでホームルームの時間に戻るのだが、ディーノ先生の部下である黒服の人達に少しでも離れてくれる様に言えずにいたので、この後の授業に集中出来るかどうかが不安だ・・・
ホームルームが終わり、一時間目の授業は体育なので直ぐに着替え終えると、校庭の運動場に出た。クラス全員が来た事を確認すると、烏間先生は本日の体育の内容を伝えた。
「本日は暗殺バトミントンを行う。各自、俺が決めたチーム内容で行う様に!」
暗殺バトミントンは殺せんせーの顔に扮したボールを対殺せんせー用のナイフで弾いて相手のコートに飛ばし、相手のコートに着けば得点が入り、当てたナイフの軌道で得点が変わるので、バトミントンと言うよりはテニスに近い感じだ。これは動く目標に正確にナイフを当てられる様になる為に烏間先生が考案したモノだ。本日はこの暗殺バトミントンを行うみたいだが、菅谷君は黙っていようとは思っていたが、やっぱり言った方がいいかと思ったのか烏間先生に尋ねた。
「烏間先生、暗殺バトミントンを行う前になんですが・・・あの人達をどうにかしてもらえませんか?あんな大人数に見られた中でやるのは落ち着きにくいからさ、せめて少しでも人数を減らしてくれる様に言ってくれませんか?」
「菅谷君の言いたい事は解るが、キャバローネファミリーのメンバーからすれば自分達のボスを見ず知らずの場所に置いていくのは無理な筈だ。だから、しばらくの間は我慢してくれ・・・」
烏間先生が言う様にディーノ先生の部下達は自分達のボスであるディーノ先生を見ず知らずの場所に置いていくのは無理だと思うし、ここがディーノ先生に危害を加える様なモノが無いと判断すれば、少しずつ人数が減っていくと思うので、しばらくは我慢する様に言った。皆はそういう事なら仕方がないと思い、大人数に見られた中での授業に慣れる事にした。
暗殺バトミントンを開始し、僕がいるチームは磯貝君が殺せんせーに扮したボールをナイフで弾き、相手チームのコートに飛ばすと相手チームである岡島君が弾き返そうとしてナイフを振ったのだが、すっぽ抜けてしまったのか岡島君の手にしていたナイフが山なりに飛んでいってしまい、ディーノ先生の部下に当たりそうになった。
「あっ、やっべ!!?すっぽ抜けた!?避けてくれ!」
岡島君はすっぽ抜けたナイフに当たらない様に避けろと伝えたが、岡島君のすっぽ抜けたナイフがキャバローネのメンバーに当たりるかと思った瞬間だった。
「危ねっ!?」
ディーノ先生が鞭を取り出すと、その鞭を使って華麗に岡島君のすっぽ抜けたナイフを捕らえると、岡島君のナイフを自分の手に引き寄せると、ナイフを岡島君に返した。
「全く、ちゃんと掴んでおけよ。じゃないと、今の様にすっぽ抜けて変な所に飛んでしまうからな。次からは気をつけろよ!」
「は、はい。すみません、今後は気をつける様にします。」
「そうしてくれ。まあ、今の様な事になったら俺がフォローするから安心しとけよ。失敗は成功の母とも言うしな。」
今のディーノ先生の動きは華麗で格好よく見えた。クラスの皆もそう思ったらしく、クラスの皆のディーノ先生への好感度が膨れ上がった様だ。ディーノ先生の部下達はディーノ先生の今の行動が少し大袈裟だと思ったのか冗談半分で笑い出した。
「ははっ。ボス、あの少年の手からすっぽ抜けたナイフは殺せんせーに害は有っても、私達にはゴムで出来たナイフ同然だから、当たっても別に害に無いっての!」
「なのにボスは格好つけて、鞭でゴムナイフをキャッチするなんて、いくら何でも大袈裟ですぜボス。」
「笑うなっての。俺は例え、ゴムの様なナイフで有っても何かしらの拍子でお前達に怪我を負わせたくないから、受け止めてやったんだっての!それなのに、お前らは素直に礼すら言わねえのかよ。」
「ははっ。ボスは本当に心配性だな。そんな心配性なボスに一応、礼を言っておくか。ありがとうなボス!」
キャバローネファミリーのメンバーとボスであるディーノ先生とのやり取りは、まるでボスと部下というよりは冗談を混ぜて会話する様な仲の友人みたいな感じで、見ていて空気が和むというか落ち着く感じだ。キャバローネファミリーのメンバーはボスであるディーノ先生と同じ様に良い人達の集まりなのかもしれない。暗殺バトミントンを再開し、キャバローネファミリーの人達は見学しながら僕らにナイフを扱うコツを言ったりしてくれたので、本日の暗殺バトミントンは烏間先生が思った以上の成果となったらしく、皆のナイフの扱いが上達した気がする。
体育が終わった後に、ディーノ先生の下に倉橋さんが駆け寄ってきてはディーノ先生にこんな質問をする。
「ディーノ先生に質問ですが、ディーノ先生は彼女とかいますか?」
「ええと、君は確か倉橋だったか?」
「はい。そうです。それでディーノ先生、質問の答えなんですけど、どうなんですか?」
「俺は付き合っている奴なんていないっての。ってか、彼女が出来た事なんて一回も無いっての・・・」
「嘘でしょ!?ディーノ先生って、格好いいし、さっきの様に華麗な鞭捌きを見せるから強い筈だし、自分達の拠点である街の民を守る様にしてるから、モテているかなと思ったんだけど・・・彼女が出来た事は一回も無いんだ・・・(つまり、これはチャンス?ディーノ先生は格好いいけど、でも私は烏間先生とディーノ先生のどちらかを選ぶ事なんて出来ない!?)」
ディーノ先生、彼女いないんだ・・・見るからにモテそうなのにな。ディーノ先生はマフィアとは言えど、優しくて良い人だから彼女ぐらいはいるかなと思ったんだけど、そうでもないんだな。それと倉橋さんは、烏間先生に気が有ったと思ったんだけど、もしかしてディーノ先生に惚れたのあかな?う~ん、悩んでいる様に見えるし、烏間先生かディーノ先生のどちらかを選ぶべきか考えているのかな?それよりも、ディーノ先生は自分の容姿が整っている事に気付いてはいない様だし、もしかすると自分がモテている事に気付いていないだけかもしれない・・・
その後、二時間目と三時間目の授業を終えると、次の四時間目の授業はディーノ先生が担当する数学だ。数学の授業が始まると、ディーノ先生は計算式の説明を解りやすい様に説明し、解き方のコツを教えるので殺せんせーの授業と劣らない内容のモノだったので、クラスの皆はディーノ先生は容姿と身体能力に頭脳も優れ、教え方も上手な完璧な人物だと思った。だが、リボーンはディーノ先生の授業を見て褒めつつも貶していた。
「ほう。へなちょこディーノの割には随分と好評な授業を行っているな。でもお前はへなちょこだからな、凡ミスを起こさないかどうかが心配だな。」
「相変わらず俺の事はへなちょこ呼ばわりかよ・・・さすがに間違えた答えを教える様な凡ミスはしないって。」
「どうだろうな?お前は俺から見れば、へなちょこのままだ。まあ、一生お前はへなちょこのままなんだろうがな。」
ディーノ先生は凡ミスはしないと言って、リボーンの言ってる事を否定した。だが、リボーンはディーノ先生をへなちょこ呼ばわりするので、岡野さんがリボーンに何故、ディーノ先生をへなちょこ呼ばわりするのか尋ねた。
「ちょっと、リボーン!何でディーノ先生をへなちょこ呼ばわりするの?ディーノ先生は体育の授業で華麗な動きを見せていたし、授業の教え方も上手だし、性格も優しくて完璧な人じゃない。それなのに、何でディーノ先生をへなちょこって言うのよ?」
「コイツが完璧な人物だと?お前らは今日会ったばかりで知らないから、そう思えるだけだ。コイツは元々は俺の生徒なんだぞ。コイツを立派なキャバローネファミリーのボスにする為にコイツのかてきょーをやっていた時期が有ったんだ。その時のコイツは今も十分なへなちょこなのに、昔はとにかくマフィアのボスにはなりたくないとほざいていたし、直ぐにビビって逃げ出すチキン野郎だった。今はそんな性格だけは無くなったが、根本的なへなちょこな部分が修正されてねえからな。だから、コイツはへなちょこなんだ!」
ディーノ先生が元々はリボーンの生徒だった!?それは考えもしなかったが、リボーンの話を聞く辺り、ディーノ先生はマフィアのボスにはなりたくなかったというので、ディーノ先生はマフィアより一般人に近い考えをする人って事かな。
「ディーノ先生、リボーンの生徒だったって本当なんですか?」
「ああ、本当だぜ磯貝。俺はお前らと同じ年ぐらいの時にリボーンの生徒だったんだ。リボーンが俺のかてきょーとして来た時は悪夢の始まりかと思ったぜ。リボーンの無茶なしごきで死にかけるし、俺が通っていた学校のクラスでも暴れん坊の生徒に俺の口真似をしては怒らせては俺に向かう様に仕向けられたりと、散々な目に合ってきたぜ・・・今も思い出すだけで泣きたくなる辛い悪夢の様な思い出だ・・・でも、リボーンと出会わなかったら、きっと俺はキャバローネのボスにならずに後悔していた筈だ。キャバローネのボスになれた事で、キャバローネのメンバーを守れる事に気付いたし、マフィアだからと言って他人を無闇に傷付ける必要は無い。キャバローネが戦うのはファミリーを守る時と自分が正しいと思った道を貫き通す時だけだ。そう思えれば、マフィアのボスになった事に後悔は無いぜ。」
ディーノ先生、やっぱり苦労していたんだな・・・リボーンの無茶なしごきに耐えて何とかキャバローネファミリーのボスになったんだろうな。それにしても、ディーノ先生がリボーンの生徒だったのは、僕らと同じ位の年の時だと言ってるので、リボーンの年齢は一体いくつなんだ?まさか、見た目は赤ん坊だが、実は何十年も生きているとかじゃないよな・・・気になるが、聞いた瞬間にリボーンに殺られるビジョンが浮かぶので、その事について聞くのは止めておこう・・・
「さて、俺の過去の話はここまでとして授業を再開するぜ。この問題の解き方のポイントはな・・・」
ディーノ先生の過去の話を終えると授業を再開した。結局、リボーンがディーノ先生を未だにへなちょこ呼ばわりする理由が解らなかったが仕方無い。過去は過去、今は今という事が大切だ。なのにリボーンは、未だに過去の事を持ち出してディーノ先生をへなちょこ呼ばわりしてる。本当にリボーンも意地が悪いな。
授業が終わった後に、昼休みになったので誰もが教室で昼食の弁当を食べている中、僕は制服の袖に入っていたネークが餌を寄越せとせがむので、職員室に行き、職員室の冷凍庫から殺せんせーが用意してくれたネークの餌である冷凍マウスを取り出すと、ネークに与えていた。すると、ディーノ先生が僕に話し掛けてきた。
「よぉ、渚。それがリボーンの言っていたネークか。」
「ディーノ先生!?ええと、確かにこの蛇がネークですけど・・・どうしたんですか?」
「そのネークと言う蛇はお前が試練を乗り越えた事でレオンから武器と一緒に吐き出された生物なんだろ。実はな、俺もお前と同じ様に試練を乗り越えた事でレオンから武器を吐き出されたんだ。それがこの跳ね馬の鞭さ。」
ディーノ先生はそう言いながら、一本の鞭を取り出して僕に見せた。この鞭は体育の授業で使っていた物と同じ物の様だ。
「ディーノ先生の鞭はレオンから吐き出された武器だったんだ。僕の場合は吐き出されたのが、このボールペンで死ぬ気モードになった時に水晶の剣になるんだけど、ディーノ先生とは違って普段じゃ役に立たないんだよなぁ・・・」
「まあ、そう言うなって。お前の武器は本当に必要な時だけに使える武器って考えられるし、そんなに悲観する事は無いだろ。」
ディーノ先生の言う通りだな。普段から簡単に使える様な武器では周りを傷付けかねないし、本当に必要な時だけに使える武器だと言われれば納得だ。
「それで、ディーノ先生。その鞭がレオンから吐き出された武器だというのは解ったけど、ネークの事を聞いたのは一体どうしてですか?」
「それはな、俺も武器だけじゃなく、お前と同じ様に相棒となる生物も吐き出されたんだ。それがこのエンツィオさ!」
ディーノ先生は職員室にある自分の席から何か持ってくると、それを僕に見せた。ディーノ先生が見せたのは一匹の小さな亀だ。
「この亀もレオンから生まれたの!?」
「ああ。エンツィオはお前のネーク同様にレオンから生まれた亀だ。生まれた当初はリボーンが預かっていたんだが、俺がリボーンの生徒を卒業す時にリボーンに卒業祝いにレオンが欲しいと言ったんだが、レオンは渡せないと言われた後にエンツィオを貰ったのさ。」
このエンツィオという亀もネークの様な特殊な体質の持ち主なのかな?ディーノ先生と話をしていると、ディーノ先生の部下達が駆け寄って来て、ディーノ先生と僕に告げた。
「E組の校舎とその周りはボスに危害を加える様なモノは無さそうだな。生徒達にも慕われているみたいだし、俺達は安心出来ますぜ。」
「そうか。なら、今日から寝泊まりする場所の手配とか頼むぜ。別にお前達がいなくても、俺は平気だしよ。」
「そうだろうな。そんじゃ、ボス。俺達は先に失礼するぜ。あ~あ、せいせいするわ。」
「おいおい、そりゃねえだろ。全く、とっとと行けよ。放課後に迎えには来いよな。」
ディーノ先生の部下達はこの校舎とその周りに危害を加える様なモノは無いと判断して、ディーノ先生を残して山を下りていった。ディーノ先生の部下達を見送った後にとりあえず、僕は教室に戻って弁当を食べる事にした。ディーノ先生も教室に移動して、皆に囲まれながら弁当を食べていた。意外にもエンツィオは人気だったのか、ほとんどの生徒がエンツィオに自分の弁当のおかずを渡して食べさせていた。主にグリーンピースやパセリとかを与えていた。あれ?これって、嫌いな食べ物を押し付けているか、残飯処理の手段にされてるだけなのか・・・
「ディーノ先生の弁当、豪華だな・・・見た事の無い食材ばっかりだ。」
「そうなのか。じゃあ、好きな物を選んでくれ。選んだおかずを分けてやるぜ。」
「本当か!?ディーノ先生は太っ腹だな!」
ディーノ先生は自分の弁当のおかずを他の生徒達に分けてあげている。こういうところを見ると、本当にマフィアのボスとは思えないな。それがディーノ先生の良いところであり、親しみ易い理由な訳だ。殺せんせーもディーノ先生の弁当のおかずを分けてもらっているので、二人の仲は良さそうだ。だけど、弁当のおかずを分けている時のディーノ先生は少し変だった。
「悪い!殺せんせー、弁当のおかずをアンタの弁当箱に移そうとしたら溢してしまった・・・」
「いえいえ、このぐらいのミスは誰にだって有りますよ。無理して箸を使って渡そうとしたからでしょう。」
そうだよね、さすがに箸の扱いに慣れていないだけだよね。皆がそう思っていると、リボーンが語る。
「お前らに言っておくぞ。只今、ディーノの部下達は全員が山を下りていった。よって、本格的なへなちょこディーノになる。コイツは部下の前ではお前らの言う様な完璧なマフィアのボスだが、部下達の見ていない状態だと運動音痴になるんだ。」
「おいおい、リボーン。またそんなデタラメを・・・コイツらが信じるだろうが。俺はイタリア育ちだから、箸の扱いに慣れていないだけだっての!」
リボーンはディーノ先生は部下達がいない状態だと運動音痴になると言うが、ディーノ先生は否定して、単に箸の扱いに慣れていないだけだと伝えていた。けど、箸の扱いが下手と言っても、床にべったりとくっ付く程の食べかすを溢すモノなのか・・・皆が弁当を食べ終えた後、職員室に行き、冷凍マウスを消化し終えたネークを連れて教室に戻った時だった。
「うわああっぁあ!!?」
岡島君の声が外から聞こえたので、クラスの皆が一斉に外に出ると、ソコには腰を抜かした岡島君がいたので、烏間先生が岡島君に声を掛けた。
「どうしたんだ岡島君?一体、何が有ったというんだ?」
「か、烏間先生・・・あ、あれ!」
岡島君が指を指した方を見ると、体長が3メートル半は有る大きな亀の姿だった。ディーノ先生はその亀の姿を見ると、声を発した。
「エンツィオじゃないか!?まさか、岡島・・・エンツィオに水を掛けたのか?」
「そうです。亀だし湿り気が必要かなと思ってエンツィオに校庭のホースで水を軽く掛けたら、エンツィオが徐々に大きくなってきたから、急いで水を止めたんだけど、あの大きさのままで俺を追い掛けてくるもんで大声を挙げて助けを呼んだんだ。」
「やっぱりか・・・エンツィオはスポンジスッポンでな、水を掛けると水の量に応じて大きくなっていくんだ。大きくなっていくに連れて凶暴化していき、下手すれば、一般住宅と同じ大きさになって家を食らい尽くすんだ・・・」
危険な生物だな、エンツィオ!!?僕のネークはゴムの様に身体が伸びる能力を持つが、大人しい性格で無毒の蛇なので人には無害だ。それに比べ、エンツィオは水を掛ける事で巨大化していき、大きくなるに連れて凶暴化していくらしく、本当に危険な生物だ。
「エンツィオを大人しくさせるにはドライヤーで水分を飛ばして、元の大きさに戻すしかない。だから、お前らは下がっていろ。エンツィオは飼い主である俺が責任を持って大人しくさせる!」
ディーノ先生は鞭を取り出すと、鞭を構えてエンツィオを捕らえるつもりの様だ。ディーノ先生は本当に格好いいな。きっと、直ぐにディーノ先生はその鞭捌きでエンツィオを捕らえる筈だ。
「いくぜ、エンツィオ!大人しく捕まれよ!」
ディーノ先生が鞭を振るうと、その鞭はビッチ先生の目に命中した・・・あれ?
「イタッ!!?何をしてんのよ!!このへなちょこ!!何で亀に向けて振るった鞭が斜め後ろにいた私の目玉に当たる訳?アンタ、わざと失敗したんじゃないでしょうね?」
「す、すまねえ、イリーナ先生!?こ、今度は大丈夫だ!」
ディーノ先生は再びエンツィオに向けて鞭を振るったが、今度は僕の前を鞭が横切った・・・まさか、リボーンが言う様にディーノ先生は部下の前じゃないと本当に運動音痴になるの・・・そう思っていると、リボーンが語りだした。
「これで解っただろ。ディーノは部下達がいない状態だと、へなちょこディーノになるんだ。」
「俺達が思っていたディーノ先生のイメージが崩壊していく・・・」
「本当に部下達がいないと別の意味で何も出来ないのね・・・正直言って、ガッカリだわ。」
吉田君と狭間さんはリボーンの説明を聞き、ディーノ先生のイメージが崩壊していく事にガッカリしている様だ。まあ、ここまで格好悪いと無理もないか・・・もたもたしていると、エンツィオは暴れだし、近くに有ったサッカーゴールをかじり、サッカーゴールを簡単に噛み砕いていた。
「鉄の塊であるサッカーゴールを簡単に噛み砕いてやがる・・・これは俺達が噛まれたら、人溜まりもないな・・・」
「ソルテの言う通りだな。奥田さん、あれを大人しくさせる薬有るでしょ。いっそのこと薬でエンツィオの動きを止めようか。」
ソルテの言う通りサッカーゴールを簡単に噛み砕いているエンツィオに人間が噛まれたら、人溜まりもない。カルマ君は奥田さんが作った薬を使って動きを止める事を提案したが、殺せんせーはカルマ君の意見を否定した。
「ダメです、カルマ君。薬を使ってエンツィオの動きを止めるなんて・・・先生は許しませんよ!」
「何でさ、殺せんせー?薬を使って動きを止める方が正確かと思ったんだけど。それなのに何でダメなのさ?」
「ダメに決まっているでしょ!薬を使ってエンツィオを殺してまで止めるなんて、動物愛護法に引っ掛かる様な事をさせる訳にはいきません!」
「あの、殺せんせー・・・俺が奥田さんに使ってもらおうと思った薬って、麻酔薬なんだけど・・・」
「えっ!?そ、そうだったんですか・・・」
「当たり前だよ。人のペットを勝手に殺す様な真似をする訳無いじゃん。暴れられたら恐いからさ、麻酔薬で眠らせている間に乾燥させて元のサイズにしようと思ったんだけど・・・殺せんせー、俺をそんなに非道な人間に思ってた訳?」
「まさか、そんな筈有りませんよ・・・只、カルマ君が薬を使うと聞くと、あまりろくな事をしそうにないと思っただけですよ。」
殺せんせー、絶対にカルマ君が薬でエンツィオを殺すのではないかと疑っていたな・・・
「とにかく、エンツィオは先生が大人しくさせます!動物には優しく接すれば、どんな動物も心を許して身を委ねてくれる筈です。皆さん、先生の行動を見ておきなさい!」
殺せんせーはエンツィオに近付き、エンツィオに自分の腕の触手一本を伸ばして、エンツィオの顔の前に触手を近付けた。
「エンツィオ、大丈夫ですよ。私達は危害は加えませんし、私は君と仲良くしたいと思っています。だから落ち着いてください。」
『凄い、殺せんせー!?エンツィオの動きが止まったぞ。』
エンツィオの動きが止まり、エンツィオは殺せんせーの顔を覗きこむ。本当にエンツィオに殺せんせーの思いが通じたのか・・・
「さあ、エンツィオ。大人しくしてくださいね。今からドライヤーで乾かしてあげますからね。皆さん、ドライヤーをタコ線繋げて先生に渡してくれま・・・」
殺せんせーはエンツィオを乾かす為にドライヤーを渡す様に伝えようとした瞬間、エンツィオは殺せんせーの伸ばしていた触手一本を噛み千切り、触手をそのまま食べてしまった・・・
「ニャヤアァァァァッッ!!?わ、私の触手が食われたぁぁっ!!?エンツィオ、私はあなたの餌じゃ有りませんよ!!?」
殺せんせーはエンツィオに触手を噛み千切られた事に驚きつつも、エンツィオに言葉が通じるかどうか解らないが自分は餌じゃないと告げた。エンツィオに噛み千切られた箇所の先生の触手は直ぐに再生したが、結局はあの殺せんせーの行動はエンツィオに対して何の効果も無かったという事だ。殺せんせーの事をエンツィオは餌としか認識していない様だな・・・
「エンツィオ、飼い主として俺が責任持ってお前を戻すから大人しく・・・イデッ!?」
ディーノ先生は暴走するエンツィオを止めようと頑張っているが、段差はおろか石ころ一つ無い道で転ける始末なので、意思に反して部下がいないので、運動音痴になっている為か派手に転ぶので行動が報われない・・・そんなディーノ先生を見ていたリボーンは若干呆れつつも、ディーノ先生の手助けをする様だ。
「相変わらず部下がいないとへなちょこだな。仕方ねえな、手助けしてやるか。その為には杉野、お前ちょっとこっちに来い!」
「ん?ディーノ先生を手助けする為に、何で俺を呼んだんだリボーン?」
「まあ、黙って動かずにいてくれ。そうすりゃ、後はディーノが済ませる筈だ。」
リボーンは杉野を自分の近くに呼ぶと、杉野の顔にレオンが張り付くと、レオンの変身能力でか杉野の顔が変化していき、その顔はキャバローネファミリーのメンバーの1人である髯と眼鏡が特徴的だった人のモノだった。杉野は何が起きたかどうか解っていない様だが、ディーノ先生は顔が変わった杉野を見ると、雰囲気が変わった。
「ロマーリオ!?何でいるんだ?先に帰ったんじゃ無かったのか?まあ、今はそんな事よりもエンツィオが暴れているから、安全な場所に避難しとけ!」
「えっ?もしかして、今は俺の顔が変わってんのか?そのロマーリオって人の顔に?」
杉野は自分の顔がレオンによって一時的に変えられた事に気付いた様で、ロマーリオっていう人のふりをしながらディーノ先生を見つめ続けながら、安全な所に避難した。ディーノ先生は部下と同じ顔に杉野がなっている事でか、へなちょこ状態から完璧状態になり、鞭でエンツィオの首を捕らえると、エンツィオの首を絞めて気絶させた。
「悪いな、エンツィオ。しばらく大人しくしてくれよ。」
エンツィオを気絶させたディーノ先生はエンツィオを教室に運び、ドライヤーで水分を飛ばし乾燥させて、エンツィオを元のサイズに戻した。杉野の顔からレオンが離れると、杉野の顔は元に戻り、これで昼休みのハプニングな出来事は無事に被害もサッカーゴールが一つ使えなくなっただけで済み、無事に終わった。
「やっぱり、ディーノ先生は格好いいな。部下いる時限定だけど・・・」
「そうかな?私はギャップ有って面白いと思うんだけどな。部下いる時のディーノ先生は格好いいけど、部下いない時のへなちょこなディーノ先生も可愛くて私は有りな方なんだけど・・・」
杉野がディーノ先生の事を部下いる時限定で格好いいと言うと、クラスのほとんどの生徒が杉野の言う事に相づちを打ち首を縦に振るが、倉橋さんはそのギャップが逆に良いと言う。まあ、僕は倉橋さんの言う通りだと思う。全てが完璧な人より少し欠点を持った人の方が親しみ易いしね。
ディーノ先生は部下の前だと一見完璧な人だけど、部下がいないと運動音痴になるという欠点を持った人だったが、ディーノ先生程、差別対偶されてるE組の教師に向いている人はあまりいない筈だ。部下がいないとへなちょこなディーノ先生だけど、そういう彼だからこそ、リボーンはE組の教師に相応しいと思って呼んだんだろう。こうして、僕らE組の教師として新たにやって来たディーノ先生は早くも僕らE組に馴染んだのであった。
E組に新しく教師としてやって来たのはディーノでした。彼は部下がいる時は完璧ですが、部下がいないと運動音痴のへなちょこ状態になるので、そういう彼だからこそ、E組の教師に相応しいかなと思って教師にしました。担当教科は数学と理科。ディーノが得意かどうかは知らないですが、さすがに間違えた事は教えないと思いますので大丈夫でしょう。間違えた事を教えたら、リボーンにヤられますしね・・・
エンツィオは殺せんせーの事を餌としか認識していません・・・巨大化したエンツィオは殺せんせーの天敵です・・・
それとディーノの寝泊まりする場所は椚ヶ丘の街に有る、建てたばかりの新築でまだ誰も使っていない大きなシェアハウスだとの事。キャバローネファミリーが共同で使っています。後、さすがにディーノを一人にすると運動音痴で見ていられない状態になるので、毎日最低二人はディーノに付いていき、E組の校舎に通う事になった様です。
次回は修学旅行の話に入ります。