グロは雨巨大イカに手で合図を送ると、雨巨大イカはカルマ君とソルテを追い掛けるのを止めてグロの後方に着いた。
「さて、今から私も本気を出すとしよう。雨巨大イカも貴様らを狙い続けて攻撃する中で私も動くのだ。逃げても私か雨巨大イカに仕留められる運命なのだ。さあ、始めるとしよう!素晴らしきこのグロ様の華麗なる舞の様な美しき戦いをな!」
言ってる事が相変わらずウザいが、グロの実力は確かなモノで、その実力はラフェイルと同等と考えた方がいい。杉野とソルテに奥田さんを狙ったのか雨巨大イカが三人に向けて触手を伸ばしてくるので、三人は触手に捕らえられない様に逃げながら、グロに攻撃出来るチャンスを待つ様だが、そんな中でグロがカルマ君に向かって突っ込んで行くと、鞭を振り落とそうとしてくるので、カルマ君は近くに落ちていた壊れた鉄製の手すりを武器代わりに持つと、グロの振り落とす鞭にぶつけてカウンターを仕掛けようとしたのだが、グロの鞭には雨属性の炎が付与されている為か手すりを紙切れの様に切り裂き、その勢いのまま鞭をカルマ君に叩きつけた。カルマ君はその威力で吹っ飛ばされてしまい、壁に激突したが何とか持ちこたえた様で立ち上がった。
「グッハッ・・・痛いってモノじゃないよねコレ・・・渚君はコレを喰らって平気だって言ってたけど、下手すれば気絶してるぜ、コレは・・・」
「ほう、潮田渚とは違い死ぬ気モードでも無い身で今の一撃に耐えるか。どうやら、貴様はリボーンを除けばこの中では素の状態で一番戦える者の様だな。だが、死ぬ気の炎すら使えぬ貴様では私に拳一発喰らわす事すら不可能だがな!」
「チッ、悔しいけど事実だから仕方無いね。でも、あんたの相手は俺だけじゃないって事を忘れずにね!」
僕はカルマ君に気を取られているグロに向かって炎を付与させた水晶の剣で雨巨大イカの触手を叩きつけて鮫衝撃を放ったが、軟体動物同然の匣である雨巨大イカには効果が無かった様で触手で反撃されてしまい、空中に叩き上げられてしまい、触手で僕は地面に叩きつけられた。
「グワッ!!?身体が少し重く感じる・・・これが雨の炎による鎮静の効果なのか・・・」
僕は雨巨大イカの触手攻撃で雨の炎の影響を受けたのか、身体が重く感じ、思う様な速さで身体を動かせなくなった。
「渚君が雨の炎を纏った下手物の攻撃を受けて動きが鈍ったみたいだけどさ、何で下手物と同じ炎を付与させた鞭を受けた俺は鎮静の効力を受けてないのはどういう事?」
「ふん。仕方無い、教えてやろう。匣兵器は死ぬ気の炎の属性の効力を活かせるのに対してだ、匣では無い通常の武器に炎を付与させても死ぬ気の炎の特性が発揮されない事が多いのだ。私の鞭もその一つな訳だが、死ぬ気の炎の特性が活かせずとも、炎を付与させた一撃は通常時と比べれば桁違いだ!貴様もそれを肌身で知った筈だぞ。」
「クッ、確かに先程の鞭の一撃は凄く痛かったよ。でも、それって俺らもリングを填めて死ぬ気の炎を出せば可能って事だよね?」
「ふん、何をバカな事を。リングを持ってすらいない貴様がどうやって死ぬ気の炎を出すというのだ?」
「ああ。その点は大丈夫。さっきね、オッサンの鞭を喰らった時に予備かどうか知らないけどさ、オッサンのポケットからくすねたからさ!」
カルマ君は黒い笑みでグロにそう言うと、赤い石が付いた指輪を見せた。グロはその指輪を見ると、自分の服のポケットの中を確認すると、カルマ君を鋭い目付きで睨みながら叫んだ。
「オノレェェッ!!私が部下に渡そうとしていたリングをいつの間にぃぃ・・・だが、リングを奪ったとしても、相当な覚悟が無ければリングに炎は灯らぬ上に、そのリングが貴様の波動と同じ属性では無ければ覚悟が有ろうが炎は灯らんぞ。」
「そんなのやってみなきゃ解らないじゃん。確か覚悟を炎としてイメージすればいいんだよね?覚悟を炎にね・・・俺の覚悟はこれからも俺に喧嘩挑んだ奴らを返り討ちにする事とE組の奴らや知り合いにイタズラし続ける事かな?」
カルマ君、その覚悟はおかしくない!!?そんな覚悟で炎が灯ったら喜んでいいのかどうか複雑なんだけど・・・そう思っていると、本当にカルマ君がグロからぶんどったリングから赤い炎が灯った。本当に今の覚悟で炎が灯るとは・・・覚悟って、人それぞれなのかな・・・
「あっ。出たよ。俺の死ぬ気の炎は赤い炎か・・・リボーン、この赤い炎の属性と特性を教えてくれない?」
「カルマが出した赤い死ぬ気の炎の属性は嵐属性だ。嵐属性の炎の特性は分解だ。要するに嵐の炎を受けた物質は原子を分解され崩壊するって事だな。」
「成る程ね、俺の炎の属性は嵐で、その特性は分解と。俺好みの特性だね。さてと、荒廃したとはいえどさすがは元ボーリング場だね。ボーリング玉がゴロゴロと転がっているし、このボーリング玉に炎でも付与させてオッサンにぶつけるとしようか・・・」
カルマ君、グロと君のどちらが悪者か解らなくなってきたんだけど・・・カルマ君は黒い笑みを浮かべながら、落ちていたボーリング玉を拾うとリングから出る炎を付与させようとするが、ボーリング玉に炎が付与される素振りは無かった。
「あれ?おかしいな・・・」
「残念だが、死ぬ気の炎を付与させる事が出来るのは死ぬ気の炎に適応した物だけなんだ。だからカルマ、そのボーリング玉には炎は付与出来ねえぞ。」
「そう。それは残念・・・」
「フハハ!!残念だったな!貴様がリングに炎を灯しても炎を付与出来る武器も無ければ、私の雨巨大イカの様な匣すら無い貴様には宝の持ち腐れだったな!」
カルマ君はリボーンの説明を聞いて死ぬ気の炎を付与出来る武器は決まっていると聞くと残念そうな顔をし、グロは宝の持ち腐れだったとバカにするが、リボーンは帽子の中から何かを取り出すと、それをカルマ君に投げ渡した。リボーンがカルマ君に投げ渡したのは匣だった様だ。
「リボーン、この匣は最初から持っていた訳?」
「まあ、そうだな。その匣は開発者が問題だしな・・・不安要素が高いから俺が殺せんせーから預かっていた匣の一つだ。その匣が嵐属性だという事だけは判明してはいるが、その匣の中身がどういうモノかまでは解ってねえ。」
殺せんせーから預かっていた匣だって!?殺せんせーは開発者が問題だという匣をリボーンに預けていた様だけど、それをカルマ君に渡したって事はカルマ君なら、その匣を正しい事の為に使ってくれると信じたからだろう。カルマ君はそんなリボーンの考えに気付いた様で、いつもとは違い、珍しく真剣な表情をしていた。
「殺せんせーが不安要素が高いからリボーンに預けていた匣か。そんな匣を俺に渡したって事は俺を信じたからって事だよね。面白いじゃん。この匣を使いこなしてやろうじゃん!」
カルマ君は匣に炎を注入すると匣が開き、匣の中から大きな鎌が一本出現し、カルマ君はその鎌を手にし構えた。
「カルマが開けた匣の中身は鎌か。見た目は只の鎌だが、殺せんせーが警戒する程の奴が作った匣だしな、何か特別な仕掛けが有るかもしれねえ。くれぐれも扱いには注意しろよ、カルマ!」
「はいよ。そんな事は承知の上だっての。」
「ふん。どんな大物が出るかと思えばたかが知れた大きいだけの鎌か。そんな鎌程度で私の雨巨大イカを止める事は出来んわ!」
「それはやってみなきゃ解らないっての!渚君は少し休んでおきなよ。休んでチャンスが出来れば、このオッサンに一撃喰らわせればいいしさ!」
カルマ君が休む様に言うので僕は少しの間だけ休ませてもらう事にし、カルマ君に任せる事にした。カルマ君が雨巨大イカの触手一本に向かって鎌を振ると、雨巨大イカの触手に確かに命中はしたが、触手が切れる様子は無く、むしろ弾き返されてしまい、カルマ君がその衝撃で後ろに仰け反ってしまった。雨巨大イカの触手から逃れながらもそれを見た杉野はカルマ君の匣の威力が予想とは違う為か、落胆した感じだった。
「殺せんせーが不安要素だらけだと言ってたからさ、強過ぎる力の余りで反動が高くて不安って意味かと思ったんだけど・・・あれって、普通に威力不足って事じゃないのか?」
「フハハ、これは傑作だな!どうやら、その匣はハズレだった様だな!その程度の威力では雨巨大イカの触手は切れる事は無いわ!」
グロはリボーンが渡したカルマ君の匣はハズレだと言いながら下種い笑みを浮かべたが、カルマ君はそんなグロに対して嘲笑うかの様な笑みを浮かべると口を開く。
「いやぁ、確かに傑作だね。この匣は。オッサンがこれを只の鎌としか思っていない時点で、この匣は本当にどういう物か解ってない様だね。」
「どういう意味だ?それが只の鎌じゃないと言うなら、その得物は何だと言うんだ?」
「うーん、俺もよく解らないよ。でも、何となくこの匣がどんな物かはまだ予想の範囲内だけど、理解はしたつもりだよ。おそらく、ここをこうすれば・・・」
カルマ君は匣から出た鎌の持ち手に有る出っ張りの様なモノをいじると、カルマ君の鎌が姿形を変えていき、三日月状の刃の様な姿になった。
「うんうん、予想通りだね。この匣はおそらくだけど様々な武器に姿を変える特殊な物だよ。今の様に出っ張りの様な部分をいじれば鎌からこの三日月状の刃に変わった訳だし、多分だけど他の武器にも変化すると思えるんだ。」
カルマ君はやはり凄い!初めて使うのに自分の匣の性質を理解するなんて・・・普通、鎌から別の武器に変化するなんて思わない人の方が多い筈だ。カルマ君なら、あの匣の力を最大限に活かせるかもしれないな。
「まさか、姿形を変える得物だとはな。だが、鎌から三日月状の刃に変わったぐらいでどうなると言うのだ?」
「さあね?まあ、どのみち直ぐ解る事だから、見ていれば解るよ!」
カルマ君は三日月状の刃に嵐属性の炎を送り、刃に点火していた炎を大きくすると、その刃を振り下ろすと雨巨大イカの触手を一本切り裂いた。雨巨大イカは触手が切り落とされた事で痛みを感じたのか、全ての触手を地面にの中に閉まったが、落ち着いたのか思ったより早く触手を再び外に出した。グロは雨巨大イカの触手を切り落とされた事に驚きを隠せないでいた。
「バカな!?雨巨大イカの触手を切り落とすだと・・・雨巨大イカの触手は弾力が高くどんな衝撃も和らげる上に雨属性の鎮静で守られている事も有り、斬撃もほぼ無力化出来る筈だ。なのに何故・・・」
「ああ、多分それ、俺の炎の属性って嵐なんでしょ。その特性である分解で雨巨大イカの触手を分解して叩き切ったって事だよ。まあ、さっきの鎌の場合は単に炎の勢いが弱かったからなのか、鎌の切れ味が悪いからか解らないけど、どちらかの理由で弾かれちゃったみたいだけどね。」
「貴様・・・本当にその匣兵器を使うのは初めてなのか・・・」
「勿論。俺が先程まで死ぬ気の炎とそれを出すリング、そして匣の存在を知らなかったのはオッサンも知ってるでしょ。」
「グッ、初心者なのに匣兵器の扱いに早くも適応しおって、化け物めが・・・」
グロは匣を早くも使いこなしているカルマ君を化け物扱いしているが、カルマ君は化け物と言うよりは悪魔かと思う。グロは直ぐに気を取り直すと、カルマ君を挑発する。
「まあ、よかろう。雨巨大イカの触手が一本切られたとしても別に障害にはなりはしない。それにその刃で残った触手を切り落とそうとしても、今度は後方や横側から攻撃されるのが関の山だろうな!」
「ねえ、オッサン。この刃が三日月状なのは何でだと思う?単に切れ味を上げる為って事では無いと俺は思うんだよなぁ。多分、この様に使う為かと思うんだけどね!」
カルマ君は刃を投げると、刃が回転しながらブーメランの様に飛んでいき、雨巨大イカの触手を二本切り落とすと、カルマ君の下に戻ってきた。
「やっぱりね。これはブーメランだわ。結構、切れ味も良いし、接近戦でも遠距離でも扱えるという応用のしやすさが評価出来るね。」
「まさか、私の雨巨大イカの触手をまたしても・・・しかも二本も切り落とされるとは・・・だが、これ以上は好きにさせんぞ!!」
グロはカルマ君に雨巨大イカの触手を合計で三本も切り落とされたからなのか、戸惑った表情になりつつあるが、グロはカルマ君に突っ込んでいき、鞭に雨属性の炎を付与して叩きつけようとしてくるが、カルマ君は刃でグロの攻撃を受け止めると、刃の持ち手をいじり出すと、三日月状の刃が姿形を変え、今度は弓に変化した。
「今度は弓になったか。矢は何処に有るのかな?へえ、どういう原理か知らないけど、矢は自動で出てくる仕組みか。しかも、おそらく無限に矢が充填されるみたいだけど、これって、オーバーテクノロジーじゃね?」
カルマ君の得物が弓に変わると、弓から矢が出る仕組みらしく、その矢を弦にセットすると、新しい矢が直ぐに出るらしく、カルマ君はオーバーテクノロジーじゃないのかと言うが、匣自体がオーバーテクノロジーっぽいので驚くべきなのかどうかも解らない。
「鎌から三日月状の刃になって、今度は弓矢だと!?貴様の匣はどんな構造をしておるのだ!?」
「そんな事を聞かれても知らねえし、俺が一番どんな構造なのか知りたいよ。でも、様々な武器を扱えるから俺好みの匣だし、別に構造がどうなっているのかとかは関係無いかな。この匣は様々な状況から武器の姿形を変えていく事で、戦況に合った武器を選べる様にしたのかもしれないね、この匣の製作者はね。多分だけど、この匣の製作者はこの匣の性質からして欲深い嫌な性格で友達いなさそうな奴で間違いないと思うんだよね。」
カルマ君は自分が使っている匣の性質から製作者が欲が深い性格だと言うが、今は戦いの最中なので直ぐにグロに弓を向けると、矢に嵐属性の炎を送り、威力の底上げを行う。
「さて、この弓矢の威力を確かめてみないとね!発射!」
「防御だ!雨巨大イカよ、私の前に触手を何本も並べて奴の技の威力を下げるのだ!」
カルマ君は十分に矢に嵐属性の炎を送り込むと、弦を引っ張り矢を発射した。カルマ君は発射した矢の勢いの反動が高かった為か、身体全体に負担が掛かったらしく地面に膝を着いたが、矢は赤い炎の光線の様に真っ直ぐ飛んでいき、グロは矢の威力を落とす為に雨巨大イカに触手を何本も並べて壁にする様に命令を出すと、雨巨大イカはグロの前に残った触手を全て使い分厚い壁になる。カルマ君の発射した矢の威力は凄く、雨巨大イカの触手の壁を貫きながら進んでいくが、五本目の触手のところで矢の勢いが消えてしまった。
「雨巨大イカの触手が残り二本まで減らされたが、その威力の代償の見返りとして貴様は地面に膝が着く程で今は隙だらけだ!失せろ、このクソガキが!!」
グロは反動で動けずにいたカルマ君を雨属性の炎を付与した鞭の一撃で吹っ飛ばしたが、吹っ飛ばされたカルマ君はグロに向けて笑みを浮かべていた。
「今だよ、渚君。最早、コイツを守る下手物の触手も残ったのは二本だけ。渚君、後は君が一撃でコイツを倒しなよ!後は任せるわ・・・」
カルマ君はこの戦いは僕が終わらせる様に伝えた後に気を失ってしまった。僕はそんなカルマ君の意志に応えるべく動き出す。
「解った!カルマ君、後は僕が引き受けた!」
「チッ、確かに雨巨大イカの触手が二本だけでは防御が薄っぺら同然だが、先程言った筈だ。雨巨大イカがいなくとも私の身は私自身で守れるとな!!それに貴様の必殺技は既に見切った。貴様には私を倒せる決定的な一撃が無いのだ!」
「それはどうかな?お前にさっき放ったバーニング・ストライクが通じないと言うならば、新しい技で対処するまでだ!」
「新しい技だと!?そんなモノを放たせる隙を与える様なグロ・キシニアでは無いわ!!やれ、雨巨大イカよ!残った触手二本でこのガキを・・・」
「ヌルフフフ。それは残念だが無理な相談ですねぇ。先生がその残った触手二本を美味しく調理してイカ尽くしにして美味しく頂きましたよ。」
グロが雨巨大イカに残った触手二本で僕を止める様に指示しようとしたが、雨巨大イカは既にいつの間にかやって来た殺せんせーに食われていた・・・って、雨巨大イカって生き物の様で兵器なんだよね?それを食って兵器なのか、殺せんせーは・・・まあ、ミサイルとかナイフとかを平気で食べているところを何度も見ているし平気なんだろうけど・・・
「わ、私の雨巨大イカが!!?超生物、貴様・・・よくも私の雨巨大イカを・・・それ以前に雨属性の炎が纏われていた雨巨大イカをどうやって食したと言うのだ!!?」
「簡単な話です。イカとタコは同じ軟体動物同士ですので説得したのです。雨の炎を消さないと頭も食いますと伝えただけです。」
それって説得じゃなくて脅しだよ、殺せんせー!!?それにしても、何で持ち主でもない殺せんせーの言う事を聞いたんだ、雨巨大イカは・・・まさか、殺せんせーが自分より格上の存在だから言う事を聞いた訳じゃないよね。だとしたら、グロが少し哀れだ・・・
「さあ、今です渚君。その男を君の一撃で手入れしてあげなさい!」
「解っていますよ、殺せんせー!」
僕は水晶の剣に炎を込めると地面に思い切り叩きつけると、大きな炎の衝撃波を起こし、その衝撃波がグロに襲い掛かる。
「ヒッ!?何だ、この技は!!?」
「炎の衝撃波を飛ばす技、その名もバーニング・ウェーブ!」
「おのれぇぇっ!!?この私が、こんなクソガキにぃぃっ!!?」
グロは僕が放った炎の衝撃波を飛ばして相手にぶつける新技であるバーニング・ウェーブを喰らって、荒廃したボウリング場の外にまで吹っ飛んでいき、その勢いのまま近くに有った流れが早い川に沈んでいったので、僕はさすがに心配なのでグロを探しに行こうとしたのだが・・・
「よくやった渚。これであの河童野郎も川に帰れて幸せな筈だ。」
リボーンはそう僕に言った。そんなにグロが嫌いなのか、リボーン・・・僕はグロが何とか無事でいる事を祈るが、気絶したと思われていたカルマ君だが、気絶した振りだったらしく、リボーンの意見に賛成の様だ。
「渚君。よくやったね。これであの河童のオッサンは川に帰れたし、一生陸に上がってこないだろうね。俺はアイツが嫌いだし、二度と会いたくないから、その方がいいんだけどね!」
『そこまでは望んではいないけど、二度と会いたくないのは確かだ・・・』
カルマ君の発言の後、グロとは二度と会いたくないと殺せんせーと僕以外の皆が言った。たった1日で温厚な神埼さんにまで、ここまで嫌われるグロの扱いは一体・・・僕はグロが生きている事を祈るしかなかった・・・
戦いが終わったので、僕は死ぬ気モードを解除して元の状態に戻り、カルマ君は弓矢を匣にしまった。その後、リボーンと殺せんせーが修学旅行に戻ろうと催促した。
「さてと、戦いは終わったし、さっさと修学旅行に戻るぞ!」
「ですね。先生が来るのが遅かった様ですし、皆さんを危険な目に合わせた事に責任を感じています・・・ですが、無事でしたしホッとしました。それにカルマ君はその匣を正しく使ってくれると思いますし、私が言う事はこれ以上は有りません。それでは修学旅行に戻りましょうか。観光する時間は既に無くなったも同然ですが・・・」
それは言わないでほしいな、殺せんせー・・・トラブルで修学旅行なのにあまり観光出来ずにいたのは残念だが、今日のトラブルで神崎さんの迷いは振り切れたし、喜んでいいのか解らないがカルマ君も匣を用いて死ぬ気の炎を使っての戦いが出来る様になったから、このトラブルも悪くなかったのかも。僕らが荒廃したボウリング場を出ようとした時だった。
「ラフェイルとは違い、六魔将では無いが、ヴィスタファミリーの幹部の中でも高い実力を持ったグロ・キシニアを倒すとは・・・思った以上の強さを持っている様だな。椚ヶ丘中学校E組の生徒達よ!」
僕らに向けて、そう告げる男の声が上の方から聞こえたので、僕らはボウリング上の屋根を見上げるとソコに黒いローブを纏う男の姿が見えた。ローブで顔が見えず、どの様な人物なのか解らないが、ヴィスタファミリーの名前を出している時点でヴィスタファミリーの関係者で間違いないのだが、放つオーラが凄くて僕らはまともに立つ事すら出来ない程の威圧感を放っていた。殺せんせーも威圧感を感じている様で少し動きが鈍っているが、ローブを纏う男に何者なのかを尋ねた。
「半端ない威圧感を放っていますが・・・あなたは一体、何者なのですか?」
「我が名はパーヴェント。ヴィスタファミリーを束ねる者だ。部下共からは総帥と呼ばれているがな!我はグロ・キシニアを仕向けて、貴様らの実力を計らせてもらったが、戦いを見て小僧と言えど侮れない者達だと解った。」
「パーヴェント・・・イタリア語で恐怖の意味を持った名前か。テメエがヴィスタファミリーのボスだって言うなら、俺達に一体何の様なんだ?そもそも、お前らはボンゴレ十代目であるアイツの命を狙っていたんじゃないのか?」
「今から説明してやるぞ、晴れのアルコバレーノ、リボーンよ。我の目的は人々の魂を集め、その魂をエネルギーとしてヴィスタリングに取り込む事でヴィスタリングの万物を超越した力を完全に解放する事なり!そもそも、ボンゴレ十代目の命を狙っていたのは単に裏社会にて一番の強者の魂で有るので、ヴィスタリングの覚醒に効率が良いからだ。ラフェイルは単にボンゴレ十代目を暗殺して裏社会の頂点を取る為だとかで真の目的は誤魔化してはいたと思うがな。」
「ラフェイルが誤魔化していた真の目的を何でわざわざ僕らにばらすんだ!?」
「貴様が潮田渚か?見た目はともかく、魂の質は素晴らしい!ソコのカルマと言う小僧よ、貴様もだ!魂の質が良い、これならヴィスタリングの覚醒に十分に貢献出来るだろう。他にも素晴らしい魂の質を持った奴が超生物にアルコバレーノ以外にも一人いるが・・・今はどうでもよい。その前にソコの赤い髪の小僧はざっと一年半振りに会ったのだ。久し振りと言っておこうか。」
「久し振りだと?しかも一年半振りってどういう事だ?お前は俺の失った記憶を知ってるのか!?」
パーヴェントと名乗る男はヴィスタファミリーの総帥と呼ばれている者、つまりヴィスタファミリーのボスであると告げた。更にヴィスタファミリーの真の目的は人々の魂を集めてヴィスタリングに取り込ませる事でヴィスタリングの力を完全に解放させる事だと言う。それにソルテの事を知っている様で一年半振りに会うと言うと、ソルテは自分の記憶についてパーヴェントがどれだけ関わっているか問い質した。
「俺の失った記憶について知ってる事が有ったら話せ、パーヴェント!!」
「下らぬ。貴様の記憶について我は興味が無い。貴様が記憶を取り戻そうが取り戻せなかろうが我には関係の無い事だ。それに思い出さない方が幸せかもしれん記憶が有るかもしれんぞ。」
「それはどういう意味だ・・・俺の記憶について、やっぱり何か知ってるんだな・・・」
「知ってようが、知ってなかろうが、貴様に話す道理は無い。」
パーヴェントはソルテの過去について語る気は無い様で、ソルテから視線を外すと僕とカルマ君に向けて言った。
「渚にカルマよ、貴様らの魂はヴィスタリングの覚醒にはうってつけだが、そのままヴィスタリング覚醒の生け贄にするのも勿体無い。どうだ、貴様ら二人は我がヴィスタファミリーに入るというならば、入れてやっても構わないが?」
「断る!関係無い人々を巻き込んでまでヴィスタリングの覚醒を目論むお前の仲間になるのだけはごめんだ!」
「俺も渚君と同じく、他人巻き込んでヴィスタリング覚醒とかふざけた野望を叶えようとする様な組織にだけは入りたくないね!むしろ、俺は命令したい側だしね!」
「ふん。まあ、よかろう。それも一興だ。良いだろう。貴様らはヴィスタファミリーに牙を剥けるというのなら、コチラも容赦せぬ!我が束ねるヴィスタファミリーの一員がこれからも貴様らを襲いに来るが、貴様らはそれを見事に撃ち破ってみせるがいい!では、去らばだ!」
僕とカルマ君はパーヴェントからの勧誘を断ると、パーヴェントはこれからもヴィスタファミリーの一員が襲い掛かってくると言い残し、姿を消した。パーヴェントが姿を消すと、威圧感が消えて身体が自由に動く様になった。
「これでヴィスタファミリーとは本格的に敵対する事になっちまった訳だが、ヴィスタファミリーが襲って来ても死ぬ気で戦って撃破して返り討ちにしてやれ。」
「リボーンの言う通りですね。先生としてはあの様な組織の相手はさせたくないのですが、目を付けられてしまった以上は仕方有りませんね。これからもヴィスタファミリーの一員が君達を襲う事でしょうが、その度に君達が返り討ちにしてやりなさい。それがヴィスタファミリーの一員達に一番の報復の手入れになる筈です。」
リボーンと殺せんせーはこれからもヴィスタファミリーの一員と戦う事になるだろうが、襲われる度に返り討ちにしてやれと言うので、頑張るしかないのかな。
「返り討ちにしろっつても、渚やカルマはともかくさ・・・俺は物を投げて投擲するしか出来ないんだけど・・・」
「安心しろ、杉野。これからの戦いを予想した上でE組の生徒に合った戦術を教えたり、武器に匣を支給する事を考えたからな。修学旅行が終わったら、まずは軽くお前ら全員を鍛えてやるから覚悟しとけよ!」
『何だろう、凄く良い笑顔なんだけど・・・見てるコチラは寒気がしてくる・・・』
リボーンが良い笑顔でそう言うが、僕らからすると帰ったら地獄だと告げられた様なモノなんだけど・・・それよりも、ソルテは平気なのか?自分の過去を知ると思われるパーヴェントに会ったが、過去の事は結局は教えてもらえずにいたから落ち込んでいるかどうか心配だったけど、そんなには気落ちしておらず、落胆した様子も無いので平気な様だ。
その後、僕らは修学旅行に戻り、宿に戻る道のりの中で少ない時間の中だが京都の街を見物し、宿の中に入ったのだった。
ヴィスタファミリーのアジトにて
「戻ったぞ。」
「総帥!?今までどちらに?」
「前に話した椚ヶ丘中学校E組の生徒に挨拶をしに行くついでに、実力を確かめる為にグロ・キシニアを戦わせただけだ。グロ・キシニアはヤられてしまったが、我が転移装置でグロをこのアジトに送った筈だ。奴の容態は?」
「グロ・キシニアはほぼ全身に打撲傷が有り、しばらくはろくに動けないでしょう。それに匣である雨巨大イカに関しては破損状態が酷く、修理に時間が掛かると思われます。」
「そうか。なら、次の策を練るまでだ。さて、次はどう動くのだE組?渚とカルマの二人で対処するのか?それとも、新たに戦いに出る生徒が出るか?まあ、どちらでも構わぬ。どう転んでも我らには都合が良いからな!フハハハッハ!!」
パーヴェントはヴィスタファミリーのアジトに戻り、甲高い笑い声を挙げながら次の策を練るのだった。
今回はカルマが匣を使う事でグロを追い詰め、渚がトドメの一撃を加えた事で勝利しました。カルマの匣は様々な武器に姿形を変えるモノですが、今回出したモノだけではなく、他にも違う武器へと姿形を変えられます。ついでにカルマが作った匣の製作者は感付いたかもしれませんが、柳沢=シロです。
それと殺せんせーが雨巨大イカを食していましたが、れっきとした兵器ですので味は本物のイカとはかけ離れており、かなりアバンギャルドな感じだとの事・・・
戦いが終わった後、現れたのはヴィスタファミリーのボスである男、パーヴェント。ただし姿はローブで隠れており確認出来ず、その実力は不明ですが、威圧感だけで渚達の動きを封じた上にリボーンと殺せんせーの動きまで鈍らせる程です。ついでに『パーヴェント』とは話の中でも言われていましたがイタリア語で『恐怖』という意味です。
次回は渚達が戦っている間の殺せんせーが修学旅行の中での暗殺を回避する場面、宿での生徒達の恋愛事情とかの話ですかね。