デート・ア・ライブ–希望と命を繋ぐのは絶望を体験せし者–   作:黒乃 柳

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今回は半オリキャラと化した幼少期の琴里がちょい役で出てきます


初めての温もり

 

 

五河夫妻に連れられ研究施設が有する彼等の社宅へと脚を踏み入れる事となる新希、二人はエンジニア風ではなく本当にエンジニアでありある研究と物品の修復の為に急遽日本から米国に渡っていたのだが…。

 

 

「うま…ッ!これすッごく美味しいよ〜!」

 

 

「はははっ、良い食べっぷりだね新希!どんどん食べなさい?」

 

 

「さっき逢ったばかりなのにもう懐いてくれてるみたいで私も嬉しいわ、…処で、さっきの話だけどあー君の居た元の世界では誰もが魔法を使えるの?」

 

 

がつがつと料理を頬張る新希に竜雄はすっかり息子が出来た様な気分で料理を勧め、遥子も何処か嬉しそうに微笑むがエンジニアとしての血が疼いたのか首を傾げ問い掛ける

 

 

「んー…誰もが、っていう訳ではないよ?才能無い人は大勢居るし。

技術的にはどっこいどっこいじゃないかな?少なくとも僕が未だあっちに居た頃は人が単独で空を飛ぶ技術は確立されてなかった、でもこっちでは向こうみたいに魔法の基礎が確立されてる訳じゃないみたいだし…そう考えると何かの拍子でこっちの技術は飛躍的に進歩するだろうね〜…ごちそーさま!」

 

 

唐揚げをもぐもぐと咀嚼しながら到底幼児が口走る様な事は述べず客観的な意見を述べる新希に人を信じ易い竜雄は兎も角、遥子も俄かには信じられなかった話を信用せざるを得なくなる。

 

 

「そう…確かあー君は…というかあー君の元になった人は其のCADっていう機械を弄れるのよね?あー君から見て此れはどう見えるかしら?」

 

 

エンジニアとしては興味が尽きない話ではあるが本題に移るべく新希が装着し使い熟してみせたベルトと同じものの写真を見せるが所々損傷が激しい、夫妻は此れを直す為に呼ばれたのだが…

 

 

「……分解(ばら)してある写真を見て思ったけど此処迄酷いと直すのは難しいんじゃないかな?

僕が知らないだけかもしれないけど、良く解らない部品が多いし…、成る程ね…お姉さんとお兄さんは此れを直したいんだね?」

 

 

此処迄来ると最早彼の精神年齢が16歳程度で尚且つ知性はそれ以上だという事も納得してしまう、夫妻にも用途不明の部品が多く見受けられるベルト…此れは直せないと諦めるしかないのかと半ば諦めていたが

 

 

「——ご飯ご馳走になってはい、さよならっていうのは僕のポリシーに反するし…科学的にでは無いけど"復元"してあげよーか?」

 

 

 

「!そんな事が出来るのかい?」

 

 

オレンジジュースで喉を潤す新希は二人を交互に見詰め首を傾げる、正直な話損傷が激しいものを一から分解して直すより自身の権能で直した方が一番確実で手っ取り早い

 

 

やや興奮気味な竜雄に新希は頷く、無論出来る事と出来ない事はあると予め言い含めるのは忘れない。

 

 

「神様だからって何でも出来る訳じゃないけどね…変な呪いとか掛かってなければいけると思うよ?

一応機密事項とかもあるだろうし契約書とか用意してよ、他言するつもりはないけどお兄さんとお姉さんに迷惑掛けたくないからさ?」

 

 

 

「解ったわ、まぁ…私達の命の恩人を疑うつもりは無いけどね…でも、貴方はどうしてあのベルトを知っていたの?」

 

 

尤もな意見だ、自分達が直せないと悩んでいたベルトを装着する自称神様の少年…訝しむのは当たり前の事であり新希としても聞いておいて貰った方が後々やり易い

 

 

「僕のオリジナルのオリジナルは時間と空間、万物の創造と破壊を司るからね、オリジナルも夢で未来を見通す事が出来たんだけど…僕も同じでさ、違う世界の日本で英雄達の志や想い(こころ)を引き継いで戦っていたお兄さんが格好良かったから、かな…要は模倣しただけだよー?」

 

 

ブレスレットをベルトに変化させる新希、綺麗事や理想論ばかりを挙げ連ねる似非ヒーローよりも格好良いから真似したと嘯く少年の姿に遥子は一瞬呆気に取られるがくすりと笑う

 

 

「…そうやって笑ってる方が自然なのかもね、貴方は…付いてきて、何かするとは到底思えないから」

 

 

書類は必要無いとする遥子、英雄(ヒーロー)に憧れたという少年の言葉と顔に嘘は感じず彼の本質を最初から見抜いていた夫に促される形で研究室に招き入れる

 

 

——此れが、三人の少し先の未来を決定付けるとは知らずに。

 

 

—————

———

 

 

結果だけ言うと厳重に保管されていたベルトは復元された、完璧に、一寸の狂いも無く。

 

 

 

だが…

 

 

「……むぅ…」

 

 

「…………」

 

 

竜雄と遥子は項垂れていた、まぁ…心中お察しはする、自分達が数日掛けて苦心していたものを目の前で"一瞬"の後に復元されたのだから技術者(エンジニア)として此れ程悔しい事は無いだろう。

 

 

「んー、一仕事終えたらすっきり♪」

 

 

そんな二人を尻目に背伸びをする新希、そろそろ帰ろうと外套を翻した処でつい数時間前と同じ事が起きる

 

 

「待って、あー君はこれから如何するつもりなの?」

 

 

裾を掴まれ動きを制される、背丈の問題もあるが矢張り"省エネ"モードでは大人の力には勝てないのだろうか…と彼なりにショックを受けながら振り返る

 

 

「如何する、って…今迄通りあの路地裏で暮らすよ?気儘で良いから、ね…?」

 

 

此の言葉に付き合いは浅いが嘘だと解ってしまうのは…彼等が真に"親"だからだろう。

 

 

「——戻って…君は如何するんだい?また…銃を抜く様な危険な生活をするのかい?その小さな身体で」

 

 

 

「………」

 

 

今迄口を挟まなかった竜雄が口を開く、少し頭を使えば察する事は出来る…大人の姿にならず幼児の姿を取るのはその方が霊力や魔力といった力の消費を抑えられるから、だと。

 

そして新希自身も見抜かれてしまった為に沈黙する、其れを肯定の意として受け取った竜雄は更に言葉を続ける。

 

 

「…君さえ良ければだが…養子にならないか?」

 

 

「…なに、言ってんの?僕は…「得体の知れないものに付け狙われている、と?正直な話では君が来ても来なくても変わらないだろう、一度関わった以上ああいう存在はまた現れるさ」……」

 

 

だろうね、と小さく呟く

 

如何いった経緯であのベルトを入手したかは知らないが眼魔が狙っていた以上彼等はまた狙われる、寧ろ今回は偶々助かったが何時殺されるかは解らない、其れなら腕の立つ用心棒やせめて自衛手段を確保するべきだろう。

無論、彼に其処まで打算的な事を考えられる悪知恵は無い、あくまで新希を案じての提案だからこそ新希は押し黙ってしまう。

 

然し、此処で遥子が口を出す。

 

 

 

「…あー君、私達には未だ4歳の娘が居るの…もし、もしも貴方が彼処以外に行く場所が無いなら…護って欲しい、とお願いする事はいけないかしら?」

 

 

強気で堂々としている遥子の願い、そして自分の内側すら見詰めている様な竜雄の視線を真っ直ぐに見詰め返す新希

 

何秒、いや…何分そうしただろうか漸く新希は首を縦に振る

 

 

「……得体の知れない子供を養うなんて物好きだね、良いよ。誰にも関わらない様に生きてきたけど其れも少し飽きたし…それに——」

 

 

彼等の部屋の隅で漸く此方の様子を見詰めている少女に優しく微笑むと手招く、少女も恥ずかしそうにしながらもとことこと近付き頭を下げる。

 

 

「…僕はあらき、お名前…聞いて良い?」

 

 

「ことり!いつかことり…あらきおにいちゃんは…ずっといっしょ?」

 

 

 

舌足らずに喋る琴里に微笑むと優しく頭を撫でる、破壊の神等とは到底思えぬ慈しむ様な手に竜雄も遥子も安心して彼を"己が息子"として受け入れる事が出来た

 

 

「…うん、琴里がもう良いって言う迄…僕は側に居るよ…♪」

 

 

新希として形を得て初めて感じた優しい温もり、産まれた意味を知る第一の一歩を踏み出した彼を次に待つ出逢いは…もう一人の義妹との邂逅であるが今はただ、華奢な身体を押し付け甘えてくる妹を宥めるので精一杯であった。

 

 





次回は日本に話の軸を移します、士織も出てくる回です(笑)
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