デート・ア・ライブ–希望と命を繋ぐのは絶望を体験せし者– 作:黒乃 柳
五河一家に拾われ『五河新希』として暫しの刻を過ごしたある日、新希は買い出しを頼まれお釣りは小遣いにしても構わないと5千円を渡され彼はレジで会計を済ませる
「さて、と…今日は新しい家族がやって来る日だから寄り道せずに帰らなきゃ…——。」
ふと、窓から黒い髪を左右非対称に結んだ女性が数人の男子に絡まれているのが見えた
昔の自分なら知らないフリをするか気紛れに助けていたが…お兄ちゃんと呼び慕ってくれる義妹の手前如何しても放っておけず買い物袋をレジカウンターで預かって貰い少女が消えていった路地裏へと向かうと
「…随分とお盛んだね〜、君達中学生…いや、高校生かな…?」
「あ"?んだテメェ?テメェも混ざりたッ!?」
少女を数人で組み伏せていた男の一人が鼻息荒く近付いてきたので腹部に拳を減り込ませ捻る、無論命を取らない程度に加減はするが暫くは呼吸すらままならないだろう。
「——下衆だねェ、僕はお兄ちゃん達みたいな屑に容赦するつもりは無いよ?因みに君達の行動は写メらせて貰う事も出来るから完璧に悪党側だけど…如何する?僕と
表情自体はにっこりと微笑んでいるが其の裏に潜むは夜叉や悪魔といった印象を少年達に持たせ、尚且つ証拠すら握られている為逃げ場は無い。
「ご、ごめんなさいッ!出来心で…!だから…っ…」
「ふぅん…出来心なら他人を傷付けたり女の子を襲って良いんだ?
——謝る人、間違ってるよね?」
笑顔で威圧する。
誰にも誰かを…ましてや動物すらも傷付ける権利は無いと言わんばかりの笑顔で…。
「す、すいませんでしたっ!!」
少女に頭を下げガタガタと恐怖で震える一人を引き摺って脱兎の如く立ち去る集団を横目に少女に視線を向けると彼女もまた震えていた。
其の為致し方無しとばかりに羽織っていたジャンパーを羽織らせる。
行き掛かり上、譬え
「……」
「……まぁ、ああでもしないと君に"喰べられ"ちゃうでしょ?後、あからさま過ぎだよ?」
片眼を髪で隠した少女…否、自分と似た様な"何か"に手を差し伸べる、すると彼女は"歓喜"に打ち震えながら奇妙な笑い声を漏らす
——まるで、"貴方を待っていた"と言わんばかりに。
「きひひひひッ!良い…最高ですわッ!思わず食べてしまいたくなる位ッ!!」
歓喜、
「…残念だけど今の僕には食べる価値は無いよ、"診た"感じ僕と同じ
ぴたりと笑い声が止む、互いに名乗ってはいないがお互いの力量は把握しているのだろう
「…取り敢えず、少し喋ろうか?僕も君が何をしたいのか聞いておきたいし。」
「…解りましたわ、ではエスコートの程は宜しくお願い致しますわね…"
—————
———
場所を変え近くの森林公園で二人は互いの名を名乗り新希はドーナツを彼女、
「お店の人は変だけど中々いけるよ?プレーンシュガー。」
「うふふ…有難く頂戴致しますわね、新希さん」
ベンチにハンカチを敷いて彼女を座らせる、其の動作は極自然な流れであった為に何人もの男を
「…中々のお手前ですわね、所謂プレイボーイなのでしょうか?」
「?自然でしょ、というか少し話したけど僕のオリジナルは所謂上流階級のボンボンだからね〜…然も覚醒する迄自分が破壊神の魂を引き継いでいるとは露にも思ってなかったからね、前兆はあったのに。」
教育の賜物だと笑うが其れはあくまでも元となった人物が得た知識であり経験である、其れを如何扱うかはまた別の問題だがさり気なく会話の流れを変えながらドーナツを頬張る
「…破壊神とはまた随分と仰々しいですわね、…其の力なら私達精霊も殺せるのですか?」
ただでさえ自分と同じ能力を持つ事に最初は驚いた狂美だが其れに加え『万象一切を破壊する』という能力に己が目的を達成出来ると歓びを隠せず問い掛けるが新希は首を振る
「"達"は無理かな〜…先ず、今の僕が内包している魔力も霊力も器に対して微々たるものだ、其れに対して君達精霊を
尚且つ、此れは僕個人が誓った事だけど…」
要は
尤も、其れは狂三も承知の上だが一旦言葉を区切り様子を伺う新希に違和感を感じ静観していると
きゃあぁぁァッ!?
「…こっちだ!」
「あらあら…レディを放って行くなんて…隅に置けませんわね。」
悲鳴を聞き驚くべき瞬発力で疾る新希に狂三は言葉とは裏腹にくすくすと笑いながら彼が置いていった買い物袋を手に後を追う事とした様だ。
—————
———
「ケッ!折角復活してみりゃァメデューサも指輪の魔法使いも居ねェ…おらッ!さっさと絶望しな!俺は暴れ足りねェんだッ!!」
「や…っ…こ、来ないで…!」
森林の奥深く、焔の様に…否、実際焔を纏った怪人が黒髪を腰迄伸ばした少女を襲っていた
彼はその昔ある魔法使いに太陽迄蹴り飛ばされ死と再生を繰り返すだけの存在となったが再生する度に強さを増し遂に単独で脱出してきた経緯を持つ怪人、そんな経緯を持つ為にただ己が破壊衝動を満たす為だけにゲートの気配を感じさせる少女を絶望させんと大剣を持ち近付くが…
ぱァンッ!!
「ッ…何もンだテメェッ!!」
頬を掠め久方振りの"傷"に怒声を上げるが内心では歓喜に打ち震えている、己が身を太陽に沈めた魔法使いの魂を扱う者でさえ傷一つ負わせられなかったにも拘らず眼前に現れた少年は其れが出来る…
——つまり、思いっきり暴れられる存在が居るという事実に此れ以上喜ばしい事は無い。
「——やれやれ、ガンマ以外にも厄介そうな奴が居たものだ…僕は、何者でも無い者さ。
大丈夫?」
少女を抱き上げ一時的に距離を置く新希、少女はといえばそんな新希に目を奪われたかの様に固まっていたが静かに降ろされ安否を気遣われ何度も頷く
「良かった、…少し厄介そうな奴だから離れてて、直ぐに綺麗なお姉さんが来る筈だから…ね?」
「う、うん…!」
言われた通り離れた位置の木に隠れる少女、怪人はニヤニヤと笑いながら剣を片手で振るう
「久々だぜェ…俺様に傷を負わせる人間ってのはよォ?俺様はフェニックス、テメェを絶望させる男だッ!!」
名乗りを上げながら猛スピードで突進してくるフェニックス
然し、新希にとっては"遅過ぎる"
「——絶望なんて一度体験すれば充分だよ、…其れに僕は君なんかに絶望はしない…ッ!!」
変、身ッ!!
「ッ!!」
「アーイ!」「バッチリミナー!バッチリミナー!」
幼年期から一気に青年期、銀髪を腰迄伸ばした姿へと『成長』しゴーストドライバーを装着、
「開眼!オレ!」「レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴーストッ!!」
「へ、変身…した…ッ!」
木に隠れていた少女が息を呑む、自身と同い年位の少年が一気に成長した事も驚きなのに変身迄したのだ、無理もない。
「はッ!テメェも変身すんのかよッ!!」
ガキンッ!!
「"も"?っていう事は…!」
時に剣を、時に拳や蹴りを交え戦う様を漸く到着した狂美は黙って見詰める
辺りの木々は二人がぶつかる度に燃やし尽くさんが如き凶悪な魔力と全てを覆い、"護る"という意思の元から生じる魔力により激しく騒めく
「そうよ、何年か前に俺様に歯向かってきた青い奴も俺様がぶちのめしてやった!最高の気分だったぜェ?!」
迸る焔、あまりにも圧倒的な魔力に対し新希の魔力は蝋燭の火に等しいが今の言葉を聞いて奮い起つ
ありったけの力を込めた一撃に蹌踉めくフェニックス、その隙に新希は眼魂を…『ウィザード』の眼魂をセットし直す…!
「——そ、もう喋らなくて良いよ…"御前は此の人と一緒に"倒すから…ッ!!」
表面化はされていないが確かな怒りをフェニックスも、尚且つ此の戦いを見ていた二人も感じた
(…甘い、ですわね…いえ、其れが…貴方なのでしょう)
優しい心を持ちながら其の為に絶望した少年、『負』を糧にする彼が五河夫妻に与えられたのは『五河』の姓だけではない
其の力が、今無法なる怪人を穿つ
「開眼!ウィザード!」「指輪の魔法!最後の希望!!」
赤い…まるで宝石の様な光沢を放つ顔に指輪を嵌めた姿
其の出で立ちに怪人はクックック…と喉を鳴らす
「良いねェ…ッ!テメェとならもっと愉しい戦いが出来そうだッ!!」
「悪いけどさっさと片付けるよ。
——ショータイムだ。」
フェニックスが無数の火球を放つに対し新希は指輪を火から水へと変えスタイルを変え空気中の水分を絶対零度の氷柱にして相殺。
火球が氷柱を溶かし水蒸気が辺りに立ち込める中不意にフェニックスに何百倍もの重力が襲い掛かる!
「ぐッ!しゃらくせェッッ!!」
然しフェニックスも一筋縄では行かない、魔力を爆発的に解放し重力の戒めから解き放たれ其の儘大剣で新希の胸を刺し貫くが
ばきッ!!
「なッ!?氷で出来た鏡だとォッ!?」
「
「ヒースイフードボーザバビュードゴーンッ!!」
(こ、此奴…ッ!俺様が対処出来ねェ速さで…!)
嘗て相対した魔法使いよりも早い取り回しで次々と魔法を繰り出す相手にフェニックスは違和感を感じる
そして、その違和感は間違いでは無い、新希は少ない魔力で最大の戦果を得るべく世界ではなく"自分自身"に『刻が速く進む』様に擬似的な加速を付けて戦っている
人間ならば身体や心臓にかなりの負担を掛けているが彼は『負の権化』完全に消滅する事とは無いが生命線である魔力にかなりの負担は強いている
其れほど…フェニックスが強大な力を持っていたという事だ。
「ハイタッチ、シャイニングストライク!!」
キラキラ、キラキラッ!と電子音が木霊す中斧と剣が一体となった獲物が巨大化しフェニッスの身体を両断する!
「グアアァァァッッ!!!」
「—ふぅ…ありがと、ウィザード…ゆっくり休んで。」
変身を解除しようとドライバーに手を掛けた瞬間…"不死鳥が舞い上がる"
ゴオォゥッ!!
「っ…!」
「クハッ…良いじゃねェかテメェ…ッ!久し振りに太陽以外でくたばったぜ…ッ!今日の処はテメェの強さに免じて引いてやるが…俺様が飽きたらまた遊びに行ってやるよ!!」
負け惜しみとは思えぬ強気な発言、此処で異空間に飛ばさなかったのが新希の失敗だ
然しフェニックスも戦闘狂を自覚しているだけあり息を荒くしている新希に白い
「宇宙で拾った拾い物だ、そいつを使って次も精々愉しませろよッ!」
其の儘飛翔して何処かへ消える、恐らくは太陽に向かったのだろう…更なる力を求め自分から太陽に呑まれる気だ、数年は戻ってこないと見た新希は今度こそ変身を解除する
「……そっか、君は宇宙に関係したライダーなんだね」
ぽつりと呟いた後疲労感から立ち眩みを起こし倒れそうになるのを少女が身を挺して支える
「だ、大丈夫!?お兄さん?!」
「ん……ごめんね、大丈夫、だよ…?」
へたり込む新希、其れを支える少女の前に狂三が姿を顕す
「…矢っ張り御強いですわね、でも…何故貴方は其処までして其処の方を護るのですか?」
解せない、そう言わんばかりに見詰める狂三に新希はくす…と弱々しく微笑む
「別に…この子だからじゃないよ、君や…君が助けようとした子猫が同じ目にあったら僕は助ける。
——
助ける、そう口にして倒れる新希に少女は涙を溜めるが狂美は俯く
「……他の誰かの為に傷付く甘さと矛盾を持った神、ですか…
——きひひっ!"また…逢いましょう"新希さん?」
初めてだった、色欲を度外視して自分を救おうと言う愚か者は。
だから、再会を願い彼の荷物と彼自身を担ぎ少女を歩かせる
「そう言えば…貴女は何て御名前ですか?取り敢えず人目のある場所迄は運びますが…」
あたふたとしている少女に名を問う狂三、交番は…流石にマズイかと思い直し取り敢えず公園から商店街に向かう狂美に少女は名乗る
「わ、私は…士織、です…」
何の縁か、新希が救ったのは新な家族であり義妹になる士織であった。
二人の少女との数奇な出逢い、此れが数年後に新なトラブルを引き起こすとは解らず新希は寝息を立て運ばれる事となる。
次回は遂にデート・ア・ライブの"ファントム"と折紙を出そうかと思います。