デート・ア・ライブ–希望と命を繋ぐのは絶望を体験せし者–   作:黒乃 柳

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あけましておめでとうございます!
約7ヶ月更新出来ずに申し訳ありません(~_~;) 今回は前回のあとがきに反しますが外伝ものを投稿致します、後で所々修正、加筆するかもしれませんがそれでも良ければご覧下さいm(_ _)m


元日外伝 瞳の先は

 

 士織が五河家に養子として拾われ1年が経ちある意味では彼女の心は落ち着いてきた。

 

 

 

 そう…或る意味では——。

 

 

 

 

「2人共早く寝なよー?起きたら初詣行くんでしょ?」

 

 五河家の長男である五河新希、彼は絶望した人間から生まれるファントムという怪人を倒し唯一人に戻す事の出来る仮面ライダーウィザードとして…そして彼が持つ眼魂(あいこん)を狙う眼魔とも日夜人知れず戦っている。

 尤も今の彼はそんな事を感じさせない…面倒見の良い兄としての笑顔で2人の兄妹の眠たそうな眼を見詰めている訳なのだが…。

 

 

「はぁい…ことりもうねるね〜?」

 

 先程迄眠い眼を擦りながら新希の打った蕎麦を食べていた琴里が炬燵から出る、次いで長女である士織も炬燵から出るが

 

 

「んん…兄さん……その…今日も…良い…?」

 

 羞恥からか頬を紅く染める士織、そんな彼女の頬に掌を添え微笑む新希。

 

「…嫌って言った事は無いつもりだよ?」

 

 優しく微笑む新希、そんな彼の掌や掌から感じる温もりに更に羞恥心を煽られる士織は差し伸べられた掌をきゅッ…と握り腕を引く。

 

 

「そ、それじゃあ…部屋に行こ…?」

 

「ふふ…分かった、士織は甘えん坊だね…?」

 

 

 からかっている訳では無いのは幼くとも彼の声色で分かっているらしく俯きながら同じベッドに潜り込むのだが…

 

「もーお兄ちゃんもお姉ちゃんも遅い〜早く寝よっ?」

 

 

 先に布団に潜り込んでいた琴里、2人にとっては何時もの事らしく苦笑しつつも新希を真ん中に据え川の字となる

 

 

(やれやれ、2人共甘えん坊だなぁ…でも、其処が可愛いんだけどね…。)

 

—————

———

 

 

 

「兄さん…居る?」

 

「こんなに近くに居るんだから心配しなくても良いよ?」

 

 時計の針が深夜1時を刺す頃、琴里の可愛らしい寝息をBGMにくすくすと笑う新希、彼の指を掴み一緒の布団で寝るのは最早日課となりつつある。

 

 

 冒頭でも述べた通り彼女は確かに親に捨てられた絶望を乗り越えその心は落ち着いてきた。

 

 ——が、それは新たに寄る辺を見付けたからである…絶対的な死から自らを救い家族として共に居てくれる(新希)父性を感じ恋心にも似た想いを抱いている訳だが当の兄はといえば…。

 

 

「士織…?」

 

 

 時刻は1時半、返事は無い…顔を覗き込むには些か窮屈に成ってきたベッドの上で瞼を閉じる

 

 

「……寝ちゃったか…御休み、僕の大事な妹達…。」

 

 

 そう、彼は琴里を含め士織の事を妹としか思っていない(..........)其れは彼が彼で在り続ける限り変わらない事である

 

 彼は…誰かを狂おしい程に愛し結果自らの想いを否定するに至った悲恋から生まれた者、誰かを護りたいと思いはすれど誰かと結ばれたい等とは思わないし恐らく思えないであろう。

 

 

「………兄さん…」

 

 彼女もまた幼心にその事には気付いている、時折見せる達観した様な…何処か寂し気な微笑みにすら惹かれている程、少女五河士織は幼い恋心を痛めているのだ。

 

 

(…神様にお願いしたら…兄さんも苦しくなくなるのかな…?)

 

 睡魔により薄れ行く意識の中、想い人の事を想い乍少女は微睡んでいく…。

 

 

—————

———

 

 1月1日

 

 

「おっ兄ちゃーん♪」

 

「お待たせ…兄さん」

 

「いやいや、あんまり待ってなかったよ?それにしても2人共似合ってるね♪」

 

 

 2人の妹がそれぞれピンクと赤の着物に裾を通し玄関から顔を出す、そんな妹達とは対照的に普段着で外に出ていた新希はおめかしをした彼女達に偽りなき賛辞の言葉を述べる

 

 

「じゃ、行こっか?父さん達も準備は出来たみたいだしね」

 

 

 車のクラクションの音に応える様に腕を大きく振る、仕事柄海外出張も多い五河夫妻であるが思いの外新希の家事スキルが高い為こういう行事も滞りなく行える。戸締りを終え車に乗り込もうとする新希であったが。

 

 

(…す…て……)

 

「…?」

 

(たす…て…っ)

 

「………」

 

(たすけて…っ)

 

 

「……うん、分かった…必ず助けてあげる…」

 

「え?兄さん…どうかしたの?」

 

 

 不意に独り言を呟く新希に士織は訝しげな視線を送る…が、彼は何でも無いと首を振り

 

「御免、悪いけど先に行ってるね…!」

 

 ドア際で良かったと言わんばかりに乗車するのを中断し"少女"の姿と成って駆け出していくのであった

 

—————

———

 

 場所は変わり新希達が初詣の為に訪れた神社の境内

 

「ん〜…ママとパパ何処に行っちゃったんでしょう…それにしても変な果物ですね〜…誰も見てないなら食べちゃいたいです〜…」

 

 

 紫銀の髪を腰まで伸ばした少女が一人でいる、如何やら家族と一緒に来たのであろう、頬を膨らませながら不意に頭上から落ちてきた果物に似た果実を手に取るが…

 

 

「…だめッ!!」

 

 

「きゃッ!?な、何ですか〜…?」

 

 

 突如現れた銀髪の少女に手を払われる

 

 

「あ、危ないじゃないですか〜…貴女誰ですか?」

 

 憤慨した様子の紫銀の髪の少女、いきなり現れた銀髪の少女は両手を重ねぺこりと頭を下げる

 

「ごめんね、でもあれは食べたら良くないものだから…えっと…ボクの名前は新希、君は?」

 

 新希と名乗る少女、何を隠そう彼女は先程迄士織達と共に居たあの新希である。

 

 

「新希さんですか〜…私は美九ですぅ…これって美味しそうなのに本当に食べちゃダメなんですか?」

 

 互いに名を名乗りあった処で美九は己が手にした果実の事を問う、新希の様に元々魔力が生命線である存在なら問題無く食べられるのであろう、何処ぞのキマイラが美味だと思う位なのだから。

 

 然し…唯の人間が口にすれば…そんな予感を感じて成らない…否、予感等とは生温い幻視を視た新希は首を縦に振る。

 

 

「うん、君が未だ人間を辞めたくないなら渡して?」

 

 そう言いながら手を伸ばそうとしたその時…!

 

 

「ッ!危ないッ!!」

 

「ふぇ?きゃっ!?」

 

 

 自分達が今迄立っていた場所を砕く長剣の一撃をぎりぎり躱す新希達、長剣を振り下ろした二本の角を生やした怪人は身体を気体化する事が出来る様で首をこきこきと鳴らしながら振り下ろした長剣を握り直し新希を見下ろす。

 

 

「…さっさと立て、貴様の力は此の程度ではあるまい?」

 

 

「……へェ、不意打ちをする癖にボクが体勢を整えるのを待ってくれるなんて結構優しいんだね?」

 

 

 美九を庇う様に前に立ち構えを取る新希、美九はと言えばあまりに現実離れした状況に気が動転している。

 

 

「な、ななな…っ!?今びゅんッて…!!」

 

「美九下がって、——お兄さん?ボクやお兄さんは兎も角何でこの子迄巻き込んだの?」

 

 

 独特な呼吸法を用い全身に魔力と氣を纏わせ戦闘準備を調える新希に怪人はふン、と鼻を鳴らし剣の切先を突き付ける

 

 

「…貴様の性根を確かめさせて貰った迄の事、さァ戦え…貴様の力を見せてみろッ!!」

 

 持っていた長剣で突きを繰り出す怪人…彼の一撃を横に飛び腰周りに体当りをしてこの場から遠ざけ様とする新希ではあるが元々体格差がある相手に加え此処に来るまでに自身の時間を速める事で魔力を消費していた

 

 

(く…ッ…短期決戦で臨まないとやられる…ッ!)

 

 

 先の一撃を躱す際に脚を挫いたのだろう、新希の足首は腫れている…美九もこと今更その事実に気付き自分の所為だと後退りをする

 

 

(あ、新希さんがやられちゃいますぅ、ど、どうすれば…!)

 

 

 この時の彼女に逃げるという選択肢は無かった、同い年位の少女が自分を庇って怪我をしてしまッた、それだけではなく今も必死で戦っている…逃げるならせめて新希も一緒にと思考を巡らせていたその時。

 

 

(それを…彼に…!)

 

(え…?)

 

 

 戦いに夢中で気付いていない二人、この場では美九だけが気付けた存在に美九は眼を丸くする。

 金髪のショートヘアに赤と茶色のオッドアイ、これだけなら少し珍しい程度だが彼女が持つあまりに現実離れした雰囲気とでもいうのだろうか…神秘的な雰囲気を帯びた女性に美九は心の中で問い掛ける

 

 

(これ…この果実で新希さんを助けられるんですかぁ…?)

 

 返事はなくただ頷くだけ、然しその眼を見た美九は何故だかそれを信じるに足るものだという確信を得る

 

 

「新希さんッ!受け取って下さーいッッ!!」

 

「ッ!有難う美九ッ!!」

 

 ぱしッ!剣の腹に子供とは到底思えぬ脚力で蹴りを加え飛び退きながら果物を受け取る新希、残り少ない魔力と霊力を再び自身の時間を速める事に回す。

 

 

「…お兄さん、貴方は幸せ者だよ…死んじゃっても尚…遠く離れた場所に行っても尚貴方を"助けて"ってお願いしてくれる人が居る…その人の為にボクは貴方と戦う…ッ!!」

 

 

 変身ッ!と腰に神器が変化したベルトを顕現させ更には果物…ヘルヘイムの果実に向け指先で何某かの印を結ぶ、少ない魔力量では此処が限界だったのか美九の眼にも漸く高速で動いていた新希の姿が肉眼で捉える事が出来る様になる。

 

 

 

だが…此れで充分、彼女が渡した果実は紺色の眼魂(あいこん)となり運命を切り開く刃となる…ッ!

 

 

「開眼!鎧武!」「オレンジ!バナナ!そんなバカな!」

 

 オレンジの様な太刀を携えた出で立ち、オレンジ色と紺色を基調とした姿のレジェンドライダーの力と想いを得れば先程の意趣返しとばかりに切先を向け

 

 

「ここからはボク達のステージだッッ!!」

 

 

「ッ…来るが良いッ!」

 

 

 ギンッ!ギャリッ!!と刃同士がぶつかり合う音が境内から少し離れた森林で鳴り響く、皮肉にも美九から怪人を遠ざけ様とした事で人目を避ける事になった訳だ。

 

 

「ッ…斬撃から伝わるこの嫌な感じ…貴様何かしているな…!?」

 

 

 意外にも先に息を乱し斬撃を受けたのは怪人の方であった、脚を挫きながらも重い一太刀を浴びせる事に成功した新希は不敵に笑う。

 

 

「秘密だよ、だけど漸く効いてきたみたいだね…こっちも余裕は無いから大技に賭けさせて貰うよ…ッ!!」

 

 

「オメガドライブ 鎧武!」

 

 

 持久戦になれば倒す機会は無い、ならば未だ渾身の力を込めれる内に叩くと言えば数メートル程跳躍、右脚にオレンジ色のエネルギーを纏わせ怪人の胸部に向け飛び膝蹴りを食らわせんとするが…。

 

 

 ドカッ…!

 

 

「…ッ…!」

 

 

 確かに蹴りは身体の芯を捉えていた、タイミングも申し分ないが矢張り踏み込みが甘かったらしく何歩か後退りされた後に耐えられてしまう

 

「く…魔力を使い過ぎた…」

 

 移動に魔力を使わなければ或いは…と思うかもしれないがそんな"仮定"(たられば)は意味が無い…痛む脚を引き摺り立ち上がる新希、暫しの沈黙の後怪人は背中を向ける

 

 

「…敵に背中を向けるつもり?」

 

 

 精一杯の強がり、今美九を庇いながら戦えるかと問われればそんな余裕は無い…然し彼にも矜持(プライド)というものがある

 

 ——尤も、其れはこの怪物も同じだが。

 

 

「…そんな弱った身体で戦われていた等俺の矜持(プライド)に傷が付く、精々再び相見える時迄に回復しておく事だな…。」

 

 

 魔力や霊力は一般的には見た目では分からないもの、然し人成らざる者である新希は魔力や霊力を糧に動いていると言っても過言では無い、戦いの中で其れを見極めた怪物…(もとい)ロード・バロンは再戦を匂わす発言を残しヘルヘイムの森へと繋がるクラックを開き去っていった。

 

 

—————

———

 

 

「本当に大丈夫ですかぁ?脚首が腫れちゃってますぅ…」

 

 再び境内へと戻ってきた美九と新希、尤も新希は身の丈160はある少女の姿だが…。

 

 

「うん、大丈夫…心配掛けて御免ね?ありがと。」

 

 腫れ上がった脚首を引きながら頷くと豊満な乳房を揺らし「元気元気♪」と微笑むが美九はそんな彼女を見詰めながら頬を赤く染めぽー…っとしている

 

「あ、あの…もし美九が大きくなってまた逢えたら…その「兄さん遅いなぁ…先に来てるって言ったのに…」あ、あれ?——また、逢いましょうね、お姉様…♪」

 

 

 気付けば其処には誰も居なかった、一瞬茫然としていた美九だがこの事は誰にも言わないでおこうと胸に誓う。

 

 再びあの素敵なお姉様(新希)に逢える事を強く望みながら…。

 

 

—————

———

 

「もう、兄さんは何時も何時も…今日は元旦なのにそんな怪我をして…」

 

 

「士織?正しくは元旦ではなくて元日だよ、元旦は一年の始まりの朝、たまに間違える人も居るから気を付けようね?」

 

 美九を置いて士織達と合流してしまった事に少しだけ罪悪感を抱くも鳥居の前で探し歩いている家族の姿を見れば仕方なしとでも言うべきか、足首を腫らしながら姿を現した兄に文句を言う士織だったが新希は軽口を叩きつつ賽銭箱へと一歩近付く。

 

 

「どっちでも良いもん…今年は兄さんが無理をしない年になる様にお願いするんだから」

 

「あはは、それは有難いね、なら僕は士織と琴里が元気に過ごせる様にお願いしようかな?」

 

 

「もー…お兄ちゃんもお姉ちゃんも喧嘩しちゃダメ!ほら、お願い事しよ?」

 

 

 端から見たら喧嘩をしている様に見えたのだろう、琴里が頬を膨らませ二人の手を取り3人並んで賽銭箱の前へと立つ

 

 

(今年もお兄ちゃんとお姉ちゃんと元気いっぱい遊べますよーに!)

 

 

(…今年も兄さん達と一緒に暮らせますように…後、兄さんの苦しみが無くなります様に…)

 

(………)

 

 

 2人の妹に似た様な事を願われているとは思わない新希だが両手を合わせ思うのは恐らく2人と変わらないのであろう

 

 何故なら、一呼吸遅れで振り返り視線の先にあるのは最愛の家族なのだから…家族を見据え微笑む新希の眼はとても優しいものであった。

 




次回の投稿は未定ですが前回のあとがきにあった通りの内容になるかと思います。
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