アルトリアという人間が存在するifであり
衛宮切嗣が抑止力の代行者となるifであり
アルトリアがマスターとして選ばれるifであり
衛宮切嗣がアサシンとして召喚されるifであり
2人が契約するifの世界である。
いつも通りの朝だった。
いつも通りに家を出て、いつも通りに授業を受け、いつも通りの日常だった。
あれは帰り道の時だった。
遅くまで部活を勤しみ——最近は何かと物騒なので自主練なのだが——自転車を押し、公園を通りかかった時のことだった。
音がした。
気の所為かと思った。こんな夜も更けている時間に、さらにこの公園に人がいるとは思わなかった。
この公園は人目のつかない町の隅に作られている。昼間ならまだしもこんな夜に人がいるとはありえない。
だが音はなおも続く。
よく耳を澄ますとそれはまるで鉄と鉄がぶつかりあう音だとわかった。
何をしているのか。
ちょっとした好奇心だった。
自転車を停め、中に入る。なるべく足音を立てないよう、静かに。見つからぬよう、木の影に隠れ。
何故そんな事をしたのか、本能がそう動いたのか、わからなかった。
木の影に隠れ、音の正体を見た。
人がいた。
1人は体に似合わない自身の身の丈以上ある、まるで巨人が使っていたかのように大きい剣を持った少年。
1人は全身鎧を着けた白銀の人。顔も隠されていて性別はわからない。こちらも剣を掲げていた。
目の前に映し出される時代錯誤の光景に頭が冷静に動かなかった。
白銀の人が剣を突き出し少年がそれをいなす。一進一退の攻防戦。少年が剣で、腕で、脚で、相手に攻撃を仕掛ける。白銀の人が剣身で、腕で、受け止める。ぶつかりあう度に周りに火花を散らす。
その迫力は如何程のものか、その雰囲気に気圧される。
「————誰だっ!!」
息が止まる。
気づかれた。
逃げなければ。何かを考える前に体が動いていた。
走る。自転車も置いていき、全速力で走り抜く。足がはち切れんばかりに夜の町を疾走する。
「——ハ————っ」
気づいたら家の前だった。
一人暮らしには広すぎるくらいの、今はお目にかかることはできなさそうな武家屋敷。
誰もいない家に入る。
居間で落ち着こうとふるが息は切れ切れで心臓が潰れそうなくらいに拍動する。
悪寒が止まらない。冷や汗が流れる。嫌な予感がする。
「あ————」
腕に激痛が走る。
制服を破り腕から赤い血が流れる。刃物を投げられた。
追いつかれた。
公園にいた2人ではない。後ろを見ると奇妙な仮面を着けた人間がいた。顔はわからないが体格から男とわかった。
後ろを見ると同時に竹刀を手に取り硝子を割り庭にでる。背中から着地をし、背中を強く打ったが頭スレスレにナイフが投げらてきた。
相手は何も言わない。無言でナイフを構える。
やられっぱなしは嫌だ。
何も出来ずに殺されるのは嫌だ。
まだ死ぬわけにはいけないんだ。
直ぐに立ち上がり2、3歩で間合いを詰め相手に面を打つ。しかし、竹刀は相手には届かずどういう原理かまるで豆腐を切るかのように竹刀を切られてしまった。
バラバラにされた竹刀はもう使い物にはならなく、庭に放り投げた。
後ろに後ずさり背中に土蔵が当たる。
仮面の男は銀色に輝くナイフを片手に殺しにかかる。その異常な速さで、人殺しに特化したような動きで襲い掛かる。
——殺されるっ!
運が良かったのか足が滑りまたもや命が助かった。
そして土蔵の扉はどういう原理かまたも綺麗に穴があいた。
「あ——ぐぁ——」
相手の蹴りがみぞおちに決まる。土蔵の中に飛ばされる。さらに追い討ちとばかりにナイフも投げられ腕や足や四肢に傷がつく。その痛みに悶える。
流れ落ちた血が床に——変な落書き模様が書かれた床に滴る。
——死ぬな。
相手に詰め寄られ絶対絶命の危機、諦めのようなものを感じた。
相手は人殺しだ。その手腕、相当な手練れだとも感じた。
——悔しい。
何も出来ずに、ただ無意味に死んでいくのが悔しかった。
こんなとこで惨めに死ぬのか。
ああ、涙が出てくる。
何故死なねばならないのか。
——生きたい。
まだやりたいことはたくさんある。
その反面走馬灯と言うのか、頭の中に家族が友人の顔が思い出される。
——生きたい。
彼のナイフは私の胸を貫くだろう。さらに酷ければ無残な死体で見つかることにもなるだろう。
だがこんなとこでは死ねない。
遠い昔——かつての故郷で誰だったか、確かに約束したのだ。死んでやるから寿命までまて、と。
顔は思い出せない。名前も、何故そんな状況にもなったのか何一つ思い出せないのに、ただこの約束は今まで果たしてきた。
今更破ることなんてできない。
死にたくない。
男は手を振り上げた。
————生き——たいっ!!
瞬間眩い光に包まれた。
周りを照らす青い光と手に走る痛み。
そしてバン、という音。銃音だろうか。
光が止んだとき、1人の男がいた。
赤いフード姿の男だ。フードで顔の造形はわからないが時折見えるこちらを見つめる瞳は虚無に包まれていた。
——懐かしい。
なにが懐かしいのかわからなかった。ただ彼を見ると無性に懐かしさを感じるのであった。
月光を背景に男は口を開いた。
「あんたが僕のマスターか」
——アルトリアはその日運命に出会った。
「君は、すごいね。僕が夢見た本物の英雄だ」
「私は、マスターが思う人間などではありません……!」
「彼女の為なら俺は、魔術師だろうが英霊だろうが殺してみせる」
生を見る少女
憂いを帯びた女騎士
死を見る青年
「私は私の為に聖杯を取るの。お爺様なんて関係ないわ」
「死んだら死んだでその時はごめんね〜」
色褪せぬ願いを持つ少女
嘗ての栄光栄える王
「私は民から化け物であれと願われた女王よ!!」
「私の子供、可愛い子供はどこ?」
食人行動に恍惚する女王
夜な夜な子供を探し求める女
「確かに俺の娘は怪物として恐れられただろうが、俺には愛しい娘であった」
「ル・シアンてよぶなあ!!」
英霊に憧れを抱く怪物の子
教授の荷物で聖杯戦争に参加した少年
「私がいなければあの人は……!」
「僕の顔は見れたもんじゃないからね、隠してるんだ」
負い目を抱き続ける少女
死を克服しようと追求した魔術師
「私が聖杯を持って帰るのよ」
「うぅ、うが——■■■■■■■■!!!」
雪のようなホムンクルス
狂気で名を刻んだ戦士
「僕は君みたいな正義感ぶる奴が一番嫌いなんだ」
「私の話を聞け!」
理想の果てに行き着いた暗殺者
死ぬわけにはいかない少女
正史とは違う7人7騎が揃う聖杯戦争。
最後に勝ち残るのは誰か。
続かない