夕方
彼が廊下をぶらぶら歩いていると……
「……ん?何の臭いだ?」
どこからか漂う臭いを辿っていく
辿り着いたのは
「厨房か、誰だ?」
扉を開ける
そこにいたのは
「ん?あら、どうしたのかしら?」
「おぉ、お前か
いや、臭いが漂って来たから気になって来た」
「そう」
いたのは咲夜だった
台所でテキパキと料理を作っている
「ふぅん、噂通りいい腕してるな」
「えぇ、もう長い間お嬢様に料理を作ってるもの
これ位普通よ」
「それもそうだな
だが」
「?」
「料理の腕は確かだ
だが、道具が微妙なものばかりだ
腕前は悪く無いが、もっと上手い奴はいる」
「…それは?」
「俺だ」
「ぷっ
あはは、貴方が私より料理上手と?」
「あぁ、俺はこう見えて料理の腕はかなりのもんだ」
「へぇ〜、じゃあ見せてもらおうかしら?」
「あぁ、いいぞ」
そう言うと包丁を取る
「まず、包丁を見分けろ
自分の肉を切れば良さがしっかりわかる」
「え」
「ふむ、これだな
じゃ、まずは肉を切ってみるか
切り方にはコツがある
肉と野菜は切れやすさが全く違う
肉の場合はこうだ」
「へぇ」
「日本刀でもメスでもあればもっといいんだけどな」
「え」
「調味料は測ってるか?」
「そりゃあ測るわよ」
「どうやって?」
「匙や測りを使ってるわ」
「ダメだな」
「は?」
「俺は数で測る」
「数で?」
「例えば塩や砂糖
結晶ってのは殆ど大きさが同じに出来る
だから重さよりも、一粒一粒数えて入れた方が精確だ」
「え」
……………………
そんなこんなで料理を作り終えた
「ほら、結構適当に作ったから豪華では無いがな」
「ふぅん、見た目は普通ね」
そう言いながら食べる
すると
「!!こ、これは!!」
「どうだ?」
「ふ、ふん、ま、まあまあね
まぁ、不味くは無いわ」
「そうか」
「(な、何これ!?凄く美味しい!!
一体どんな修行をすればこんなに美味しく作れるの!?)」
「料理ってのはな、科学なんだ」
「え?」
「料理は愛情、なんて言うが結局は味覚
愛情で味覚が変わるわけじゃない
的確な配分、配合、調理
それで味は幾らでも変わる
人間の味覚がどんなのかわかって、どんな味が美味く感じるか
それさえわかれば誰だって、猿だって美味い飯を作れる
料理は科学だ」
「心無いこと言うわね…」
「違うか?」
「違くはないけど…
それよりも貴方はどうやってこんなに美味しく作れるようになったの?
どこで修行を?」
「修行なんて一度もしたこと無いぞ?」
「へ?」
「俺は料理作るのが面倒くさいから嫌いでよ
そいつだって思いつきで作った
まぁ、適当に作ったもんだ」
「(神様は何でこんな人にこんな才能を与えたのかしら…)」