神の不注意によりチートな2ndライフ始めました。   作:じじぃ♀

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今回の長さは異常です。コメントが嬉しくて詰め込み過ぎた……。

安易に褒めるとこういうことになるので以後お見知りおきを笑

ちょっとシリアスめな気もする第12話です!↓↓↓





第12話 日記と

ちょうど日が一番高くなったとき、洞窟に差し込む日の角度に気がついたサボとルフィ(の腹時計)がもう昼時であることを告げた。

 

「なぁアレン。そろそろ戻ろうぜ。たぶんこれ以上ここにいたらまたダダンに殴られる」

 

サボは自身の頭を擦りながらそう訴えた。今朝のダダンの拳骨はかなり堪えたらしい。

 

しかし残念ながらダダンのそれよりも遥かに痛い拳骨を俺は知っているので、そんなに畏怖するほどではなかった(ダダンのが痛くないと言えば嘘になるが)。

 

サボの言葉に頷き、隣で丸くなって寝るエースとルフィを起こしにかかる。

 

「おいエース、ルフィ!起きろよ、帰るぞ!」

 

あのあとのんびりしているうちに2人とも寝入ってしまったのだ。可愛かったので放置していたが、一度寝た2人を起こすのは骨が折れそうだ。

 

今朝気がついたことなのだが、エースはアレらしい。自分で起きれば問題ないが、他人に起こされた場合は少し機嫌を損ねるらしい(ルフィはいつでも上機嫌)。

 

「んー…何なんだよアレン…」

 

昼寝で割と眠りが浅かったからか、エースはすぐに目を覚ましたが(若干機嫌悪そう)ルフィは起きる気配もなければ動く気配もない。

 

「帰るぞ、また飯を食いっぱぐれるのも嫌だろ?」

 

エースにそう言いつつルフィの頬を軽く叩き続けるが彼が起きることはない。

 

「ったく…。エース、サボ。先行っててくれるか。俺はルフィおぶっていくからさ」

 

エースが完全に目覚めたのを確認し、先に行くように伝えれば2人は素直に頷いて出口の方に向かった。

 

その間俺はびよびよと伸びるルフィをどうおぶろうか試行錯誤していた。どうしようにも脱力したルフィは伸びるのだ。こんなにも勝手の悪い能力は他にないだろう。

 

俺でさえ能力者になった1ヶ月後には、このわけのわからない能力を(ある程度までとは言え)それなりに使えていたというのに(能力者になったのが2歳のときなのに何でできるんだとか言っちゃダメ)。

 

とりあえず、伸びるルフィはどうしようもないので横抱きに持ち上げ(俗に言うお姫様だっこだ)イスの岩に座らせた。この間もルフィに起きる気配はない。

 

どうすれば短時間でこんなにも深い眠りに落ちることができるのだろうか。毎晩不特定多数のイビキでよく眠れないので羨ましくて仕方がない。

 

 

 

━━━━━━━━━━

~エースside~

 

 

 

「ったく…。エース、サボ。先行っててくれるか。俺はルフィおぶっていくからさ」

 

呆れたように頭を掻き、アレンはルフィを見下ろした。さっきからずっと頬を叩かれているのに起きる気配のないルフィはヨダレを垂らしながらまだ夢の中。

 

サボと一緒にこくりと頷き、ここに入るときに使った洞窟の唯一の出入り口へと向かう。

 

ふと、サボを見れば彼はまだ物珍しそうに洞窟の天井を見上げていた。

 

「そんなに気になるのか?サボ」

 

「ん?んー、あの穴から何か見えた気がして…」

 

そう言ってサボはまた見上げ、それにつられて穴を見上げるが逆光で何かが見えるとは思えない。

 

「本当に何か見えたのか?」

 

「…いや、たぶん…何かの見間違いだと思う」

 

サボは思案顔で頭を掻いて、早く帰ろうぜと言った。その様子にどこか腑に落ちない気がしてならなかったがダダンの拳骨を思い出し、頷いた。

 

 

 

 

「エース!どこに行ってたんだい!アレンは一緒じゃないのかい?!」

 

家に帰るなり、ダダンの怒声が森に響いた。あまりの勢いにツバか飛んでくる。

 

「どこでもいいだろ!……うわっ」

 

ダダンに怒鳴り返したところで、彼女の背後の影に気がついた。

 

ガープだ。

 

家に上がり込んで茶を啜っている。ダダンの様子だと、十中八九アレンかルフィに話でもしにきたのだろう。

 

「おおエース!どうじゃ、ルフィと仲良くしとるか?」

 

「……」

 

関係ない、と言いたいところだが2人の祖父である彼には全く持って関係大アリなのでガープを睨みつけ黙り込んだ。

 

背後ではサボがなんだなんだと騒いでいる。

 

「なぁガープが来てるのか?エース!」

 

「サボか!元気にしとるか?」

 

「ああ!ガープは何しに?」

 

友達か。

 

そんな心の中のツッコミなどつゆ知らず、2人は会話を進めていく。

 

「アレンに話があるんじゃよ」

 

「へぇー。俺たちも聞いていいのか?」

 

えっ、ちょっ…俺たち!?俺も入ってんのか!?

 

バッとサボを振り返るが、サボはきょとんとしている。自覚なしかよ…。

 

「好きにせい。エースにも関係あるしのう」

 

「俺にも?」

 

どういうことだ?まさか俺たちのどっちかが連れてかれるのか?

 

「お前の父親とアレンの母親についてじゃよ。…おお、アレン!」

 

ロジャーのことなど、嫌な予感しかしない。

 

ガープの顔に笑みが綻び、つられて後ろを振り向けば、ルフィを横抱きに抱えたアレンが変なものでも見るような目でガープを見ていた。

 

「じぃちゃん?なんでここに?」

 

アレンは家の中にルフィを抱いて入り、寝かせてきたのか、すぐにまた出てきた。

 

「そろそろ渡してもいいかと思ったんじゃよ」

 

主語がない。サボも含めて、話を聞いていた全員が首を傾げた。

 

「「何を?」」

 

アレンとハモり、ガープは笑った。いつもと変わらない脳天気な顔だ。

 

「日記じゃ。アレンの母親…ユリアナが、海賊王の船に乗り込む前から付けていたものじゃ」

 

そう言ってガープはスーツのポケットから革張りの小さな茶色の本を取り出した。金の刺繍糸の小洒落た飾り文字で『モンキー・D・ユリアナ』と書かれている。表紙の可愛らしさの割に、随分と分厚い。

 

「海賊王!?」

 

サボが声を上げた。ガープはものも言わず頷く。

 

その日記を受け取るものと思い、アレンを見たが彼は微動だにせずその分厚い日記帳を見つめていた。

 

「なんで…今頃になって?」

 

「なんとなくじゃ」

 

ガープは答え、ずい、と日記をアレンの方へ差し出した。有無を言わせない、受け取れ、という命令のような行動だった。

 

アレンはゆっくりと手を伸ばし、それを受け取った。パラパラと軽くページを流し、ふと、手を止めて日記を見つめた。

 

「何て書いてあるんだ?アレン」

 

好奇心には勝てず、そう聞いた。アレンは答えない。きゅっと固く口を結んだまま、目だけが日記の文字を追って忙しく動いていた。

 

そしてある一点を見つめて、アレンは動かなくなった。

 

「………どういう、ことだよ。じぃちゃん」

 

声が、日記を持つ手が震えていた。縋るようにアレンはガープを見上げた。

 

こんなふうに取り乱したような彼を見たのは初めてだった。いつも冷静で何よりも早く予想して対処する、平静を失うこととは無縁のようだったのに、だ。

 

「どうもこうもないんじゃよ」

 

諭すようにガープは言う。どちらも、らしくなかった。

 

「…アレン?」

 

ずっとアレンは眉間にシワを寄せ黙り込んだままだったため、サボが心配そうに彼の顔を覗き込んだ。

 

「……ごめん、びっくりしただけだから。……じいちゃん、後で話があるから昼飯、食べてってよ」

 

アレンはそう言って、ガープを見上げた。サボと2人で顔を見合わせた。

 

あのアレンが、ガープを引き止めた?そしてさらに何か用事があるとは言え、昼食を食べていくように勧めた?

 

遠くでカラスがけたたましい鳴き声をあげた。

 

 

 

 

 

 

━━━━━━

~アレンside~

 

 

 

 

「……で。昼飯食べてってとは言ったけど、食べ尽くしてもいいなんて言ってないだろ、じいちゃん!」

 

いつもダダンが座る上座にドカっと座り、片っ端から料理を喰らい尽くしていくガープを睨みつけた。俺はキッチンで調理中なのでそれ以上のことはできない。

 

「なんじゃ、冷たいことを言うのう。わしはじいちゃんなんじゃぞ!」 

 

「知ってるよ!でもせめて遠慮してくれよ、食材が足りなくなる!」

 

しかし既に足りていない。さっき塩漬けにしていた3ヶ月分の魚が底をついた。メインの肉がなくなるのも時間の問題だ。

 

「アレンは料理が上手いんじゃな!顔はよう似とるが、そこはユリアナに似ないでよかったのう」

 

ガープはいつもの如く話を聞いていなかった。何も知らないルフィが口いっぱいに頬張った唐揚げを飲み下し、その話に食いついた。

 

「ユリアナって誰だ?」

 

「アレンの母ちゃんだよ。あ、おいルフィ!それは俺のだ!」

 

サボは他人の皿にまで手を伸ばし始めたルフィの手を掴みそれを阻止しつつ、続くガープの進撃を避けるためそれぞれの料理を少しずつ確保する。

 

「へー!んじゃ、おれのおばちゃんだな!おばちゃんは料理ヘタなのか?」

 

「ヘタも何も、あれは食べものと言えるのかさえわからんものじゃったぞ。料理が酷すぎて見るだけで卒倒するヤツもいたのう」

 

わっはっはっ!と機嫌よく笑いながら、ガープはまた大皿を1皿平らげた。それは笑い事なのか。

 

手元の唐揚げが油の中でくるくると回る。いい色になってきた。

 

エースとサボは信じられないものでも見るようにガープが空にした皿を見ている。

 

「信じられねぇ…アレンの母ちゃんが料理下手なんて……」

 

…違った。信じられないのは俺の母の料理の腕らしい。

 

「想像できねぇ……」

 

恐らく彼の脳内では俺によく似た女性が料理に大失敗している様子が上映されているのだろう。失敬な。

 

きつね色になった唐揚げをひとつずつ油から取り出し、キッチンペーパーの上に並べた。見る見るうちに油のシミが広がっていく。

 

「「ほんと、似なくてよかったな」」

 

俺を見て、2人はその結論に至った。

 

うん。俺も似なくてよかった。でないと今頃、毎日焼いただけの肉の生活になってたね。

 

「ほいサボ、エース。これ運んでくれ」

 

1通り油をきった唐揚げを大皿2皿に盛り付けた。2人は嫌な顔ひとつせず立ち上がり皿を取りに来る。

 

今思ったけどこの絵面すごいね。未来の火拳と未来の革命軍参謀総長と、未来の海賊王でしょ、このメンツ。しかも現海軍の英雄、伝説の海兵までいるし(とてもそんな風には見えないが)。

 

いやぁ、今更だけど俺すげぇ星の下に生まれたよな、うん。あのくそひげジジィ。

 

俺は手元に残しておいた数個の唐揚げをつまみつつ、また次の分を揚げにかかる。

 

ったく、よく食う弟が3人もいるとろくに座って飯も食べられない。今日なんてじいちゃんがいるから尚更だ。でも、悪い気はしない。

 

 

 

 

━━━━━━━

 

 

「今、何っ…!?」

 

「だから、海兵になりたいって」

 

説明しよう。昼飯のあとガープを家の裏手の山の中に連れて行き、海軍に入って海兵になりたいと言ってみたところ、ガープは急に耳が遠くなったらしい。

 

…というのは冗談だ。この4人の中で唯一、俺が海軍を選んだことが信じられなかったらしい。口をパクパクと動かしている。金魚みたいだ。

 

「海っ……!?」

 

「落ち着いてよ」

 

話が進まない。大きく溜息を吐いた。

 

「とりあえず、じぃちゃん。俺さ、今からでもすぐに海兵になりたいんだよ。だから今は帰るふりをして、今夜、俺のこと迎えに来てくれない?」

 

「今夜じゃと!?」

 

自分でもあまりに早急だと思うが、これからの物語の展開考えたら俺、そろそろ離脱しとかないとエースの初めて☆の覇気イベントなくなっちゃうんだよね…。資質は変わらないから将来的にわかるだろうけどさ、今からそういうのがあるってこと知っといた方がいいよね。それにサボの一件とかあるし。

 

できるならあの顔の怪我はさせたくないけど船出を邪魔する気はさらさらない。警告して避けさせるって手もあるけど、それじゃ俺がどうやって情報を掴んだのか聞かれたときに詰んじゃう。転生者だってバレたら良くないってことくらい、わかってるからね。

 

だからちょっと早すぎるけど、じぃちゃん使って早めに海軍に身を置くことにした。長年所属しといたほうが信頼されやすくて情報も流し易いってのもあるけど。

 

「じぃちゃんは海軍の中でも上の方で “偉い” んでしょ?俺の我儘、実現できたりする?」

 

偉い、を強調して微笑んだ。ガープは嬉しそうに胸を張った。うし、作戦成功。

 

「そうじゃ!偉いんじゃ!」

 

単純か。単純なんだな。

 

その後、ガープは早かった。すぐにセンゴク(と思われる男)に電伝虫で連絡を取って、海軍に是非『入れたい』のがいる、1週間後の朝1番に連れて行く、と矢継ぎ早に捲し立てた。ごめん、センゴクさん。

 

ガープはセンゴクに反対する間も与えず報告だけして電伝虫を切った。

 

「どうじゃ!」

 

「スゴイネー!じぃちゃんさっすが」

 

命知らずな彼に笑顔で拍手を送る。その後に「流石はKYキングだね」という言葉が俺の中で続いていたことは黙っておいた。ガープとルフィのKYさは異常だ。

 

たぶん、普通の海兵が突然こんなことを言い出したら拳骨じゃ済まないんだろうな、と思う。

 

「じゃあじぃちゃん、早く船に戻って帰るフリしておいて!待ち合わせは今夜10時にこの山の麓のくすの木のところで!」

 

ガープをくるりと反転させ、その腰の辺りを押した(それ以上は手が届かないのだ)。

 

「な、エースたちに…」

 

「挨拶はダメ!じぃちゃん、嘘吐けないだろ!」

 

「わ、わしだって嘘くらい吐けるんじゃぞ!!」

 

嘘くさい。嘘吐くときのルフィと同じ顔だ。

 

「吐けてないから!」

 

そう言って押し続けるが、老人とはいえ流石は軍人というだけあってガープは簡単には動かなかった。

 

ふと、俺の覇気の範囲内にエースの気配が入り込んできた。近づいてくる。

 

「だめだ、じぃちゃん、エースが来た。さっさと行って!エースにバレたら元も子もないんだから!!」

 

ぐいぐいと押し続け、やっとガープの足が動く。何かを言ったみたいだがよく聞き取れなかった。ガープが自分から歩き始めるのを確認し、彼が森の中に消えた直後、背後からエースが現れた。

 

「アレン?何話してたんだ?」

 

何か不穏な空気でも察したのだろうか。不安そうな顔だった。

 

「ん?ああ、俺の母さんについてだよ。色々と聞いてたんだ。それよりエース、今日はご馳走にしよう。サボとルフィも連れて牛、狩りに行くぞ」

 

「ご馳走?ほんとか?!」

 

エースの顔に笑みが綻んだ。しかしすぐにその笑顔は萎む。

 

「でもルフィ、あいつまだ体力ねぇぞ?」

 

「何かあったら俺が守ろう。それに、これから鍛えればいいさ。ルフィの力を見るためにも、今日は4人で狩りたいんだよ」

 

適当に嘘を吐いた。でもエースはそれで納得したらしい。また笑顔になった。

 

今晩からもう、しばらくエースやサボ、ルフィとはお別れだ。笑顔を目に焼き付けよう。そう心に決めた。

 

 

 

 

━━━━━━━━

 

 

「にくにくにっく~!」

 

「なんだよその歌!」

 

後ろでルフィとサボが楽しそうに笑っている。生い茂った森が、もうすぐ拓ける。

 

「おいルフィ、静かにしないと肉が逃げるぞ」

 

注意して、茂みの後ろにしゃがみこんだ。向こう側には3頭の牛が草を食んでいる。この距離なら、俺とエースとサボでそれぞれ1頭ずつ同時に狩れるだろう。

 

「エース、あれ頼む。サボはあっち。ルフィは俺と組んで向こうの黒いやつな」

 

それぞれに指示を出した。3人が頷いたのを確認し、手にした鉄パイプを握り締め突撃の合図を出した。

 

4人、同時に茂みを飛び出した。まず逃げ遅れたのが手前のエースに任せたやつが1頭。エースによってすぐに狩られた。

 

次にサボ。逃げ出すときに動揺したのか、俺のいる方に走ってきたので事実上挟み撃ち。それもすぐにサボによってパイプで沈められた。

 

最後に残ったのは、俺とルフィの黒い牛だった。いかにも強そうなやつだった。

 

「ゴムゴムのぉ…」

 

「ルフィ止せ!!」

 

低く構え、ルフィが軽く手を引いた瞬間、牛の標的がルフィに向いた。

 

今まで、俺とルフィの間でどちらを狙うか揺れていたから仕掛て来なかったのに、それでは狙ってくださいと言っているようなものだった。

 

牛は自慢の黒い湾曲したツノを低く構えた。前足で地面を掻く。今にもルフィに突き刺しそうな雰囲気だ。

 

牛が動き出すよりも早く、強く地面を蹴った。

 

「ピストル!!」

 

その瞬間、ルフィが技を放った。案の定それは地面に当たり、跳ね返る。

 

牛に向けてパイプを振り上げた刹那、ルフィの跳ね返った掌が俺に迫っていた。それを見て確認する間もないのは明らかだった。

 

「「アレン!!」」

 

地面を蹴った。頭を丸め込むように身体に引きつけ、空中で弧を描く。ルフィのピストルは俺の顔のスレスレを飛んで、戻っていった。

 

ゴッ…

 

握りしめたパイプに鈍い衝撃が走る。牛のツノとツノの間、ちょうど脳天をパイプで殴りつけたのだ。そこは決して弱くない。けれど今は空中に浮いていることで俺の全体重が乗っていた。

 

牛の身体が大きく前に揺らいだ。

 

「アレン!ごめん!おれ…」

 

「いいよ、ルフィ。それにしてもお前のそれ、使いこなせれば強くなれるかもな。まずは標準に合わせないと。無闇に発射するだけじゃダメだよ」

 

寄ってきたルフィの頭を撫で、笑った。そして俺が使っている鉄パイプをルフィに押し付ける。

 

「やるよ、それ。能力の使い方になれるまではそれを使えばいい。能力は、馴れてからでも遅くない」

 

「え、でもアレンの…」

 

「鉄パイプなら、グレイターミナルにいっぱいあるさ」

 

もう鉄パイプを使うつもりなんてさらさらないのだが。

 

そんなことを言えるわけもなく、ただ微笑んだ。サボとエースがそれぞれ牛を引き摺ってくる。

 

「アレン!大丈夫か?」

 

「ああ、問題ないよ。それより、牛も狩れたとこだし、メニューはどうする?ステーキ?」

 

今しがた倒したばかりの小山のような牛を見た。これ1頭なら、単純計算で前みたいな巨大ステーキが10枚ほどか。それを3頭分だから約30枚ほど。この3人とダダン一家を合わせても余裕で満足できそうだ。

 

「ステーキステーキ!おれステーキがいい!」

 

「俺も!エースは?」

 

「俺もステーキ」

 

万丈一致でステーキに決定した。そこからは至って平和に時間が過ぎた。4人で談笑しながら狩った牛を引き摺って帰り、血抜きをして皮を剥いで解体して……。いつも通りの作業が続き、夕食がステーキだということに誰しもが浮足立っていた……ただ1人を除いては。

 

 

 

 

「…おかしいと思わねぇか?」

 

家の外で血抜きの際に牛の血で汚れた服を洗っている最中に、家の中からエースの声が聞こえた。サボが何かを言うが、よく聞き取れない。

 

「…………かし…とは……ったけど…」

 

「だろ!」

 

エースは近いのか、気が立っていて声が大きくなっているのか、よく聞こえた。

 

「おかしいんだよ、ジジィと話してから!あれは、なんか隠してる」

 

あれ、バレそうか?しかしサボはそれに反対したようだ。

 

「…や、……は違……じゃ…いか?たしか……だけど……んなに……がう…じゃ……」

 

「そうかも知んねぇけど…俺は、嫌だ。隠し事はキライだ。俺たちは兄弟だろ!隠し事なんて、したくねぇ!」

 

その言葉にサボは黙りこんだ。隠し事…か。俺はもちろんだけど、サボも隠し事してるんだよなぁ。だからきっと思うこともたくさんあるだろうに。

 

まぁ、そのことはあとで解決…とはいかなくとも足掛かりだけは作っておこう。

 

牛の血でピンク色になった水を捨てるため、桶を抱えて立ち上がった。

 

…そういえば、俺がいなくなったあと、この家の炊事洗濯は誰がするんだろうな。洗濯はともかく、飯はどうにもならないだろう。レシピでも書いておこうか。

 

そんなことを考えて森の端に水を捨てた。

 

 

━━━━━━━

 

 

 

 

夕飯時、もうダダン一家の家は大騒ぎだった。めったにないご馳走がテーブルに並びみんなが目を輝かせてそれを見ていた。

 

「アレン!一体どうしたんだいこれは!」

 

「ステーキだけど」

 

「そうじゃないよ!!」

 

「じゃあどうなのさ。それよりダダン、早く食べないとなくなっちゃうよ?ほらルフィが狙って……あーあ」

 

ダダンの皿にあった肉塊はルフィの口の中へと消えた。怒ったダダンはルフィを脅しにかかるがルフィはヘタクソな嘘で「おれは食べてない」と主張した。

 

そんな日常的な光景に思わず笑みが溢れる。

 

ここにいる誰も、俺が明日の朝には消えることを知らない。だからこそ、今こうしているのが堪らなく嬉しくて寂しい。明日にはもう離れ離れだ。俺が自分で選んだこととは言え、いざとなると惜しくなる。

 

ルフィはどう言うだろうか。サボは。エースは、俺をどう思うだろう。突然何も言わずに消えた兄を、兄と呼んでくれるだろうか。

 

次々と差し出される空の皿にステーキを乗せながら一人ひとりに、よく噛むように注意を促した。

 

結局、牛3頭分の肉は全てそれぞれの腹に収まり、残ったのは骨と臓物だけになった。それらはまだ、俺の料理の腕ではどうしようもないので森の肥やしにするため桶に入れて家を出た。

 

何故か、その後ろをエースがつけてくる。忍び足で気配を消しているつもりだろうが、肝心の気配そのものは消えていない。

 

「…後をつけたりして、どうしたんだ。エース」

 

立ち止まり後ろを振り向けば、案の定5メートルほど後ろにエースがいた。

 

「…!……何も」

 

つんけんどんに言う。エースはルフィほど嘘がヘタではないらしい。

 

「いつも律儀なエースがそんなことするのに、何もないわけないだろ?」

 

水の入った桶をいつまでも持っているのも疲れ、それは足元に置いた。しかしエースは怒られるとでも思ったらしい。俯き、ぼそぼそと言い訳でもするように呟く。

 

「……ジジィと話してから、様子が変…だったから」

 

その様子に、俺は笑った。

 

「それで、心配してくれたのか?」

 

「っ…!ちがっ……俺は」

 

「心配してくれたんだろ、エースは優しいもんな。ありがとう」

 

俺は、アレンを疑ったのに。

 

エースから漏れ出てくる感情が、勝手に入ってくる。初めてのことだった。今までの覇気では、わかっても位置と距離、気配の大きさくらいだったのに今日は妙に冴えていた。

 

アレンがどっか行くんじゃないかって、疑ったのに。なんでそんなこと言うんだよ…これじゃ俺が、信じてなかったみたいだ……。

 

侵入してくるエースの感情に思わずドキリとする。

 

違う、信じてるし、信じてもらってる。負い目を感じるのはエースじゃなくて俺であるはずなのに。

 

「……ほら、顔上げろって。そんな深刻な顔するなよ、エース。…じぃちゃんと話してからだっけ?ごめんな、あの時母さんについて聞いてたって言ったろ。それで色々考えてたんだよ。…俺は変わんないから、大丈夫だって」

 

笑ってそう言った。母さんのことを話したということ以外、嘘は言っていない。エースは顔を上げた。

 

もう、感情が溢れるということはなくなっていた。潮が引くように、俺の中に入って来ていたエースの感情もすっと引いて行く。

 

「…わかった」

 

エースは頷いた。

 

「よし、じゃあ先に風呂入って寝ててくれよ。俺は掃除とか終わらせてから寝るから」

 

いつものように微笑めば、エースは安心したように笑顔を見せた。

 

明日の朝には、この笑顔はどう変わるのだろう。怒り?悲しみ?呆れ?どれもありそうでなさそうだ。

 

大人しく家の中へと戻るエースの背中を見送り、また桶を抱えた。

 

臓物がひどい臭いを放っていた。

 

 

 

━━━━━━━━

 

 

臓物を森の端に埋め、桶を洗ってキッチンを掃除して風呂に入って風呂の掃除をして。

 

いつもの通りに働いて、気が付けば約束の夜10時まで、あと2時間ほどに迫っていた。家の中は既に、満腹で心地よくなった弟たちと山賊たちの寝息で溢れている。覇気で見てみても、誰も起きていない。

 

紙と鉛筆を持って1人、ランプと月明かりの下でいくつかの手紙と料理のレシピを書き出した。

 

エースに、サボに、ルフィに、ダダンに、他の山賊のみんなに。

 

それぞれに違うことを書いた。皆を合せて、なんて淡白すぎると思ったからだ。

 

レシピも合わせて、全て書き終わる頃には約束の時間はすぐそこにまで迫っていた。

 

麻袋に服と下着とユリアナの日記を詰めて、家を出る。今日は満月から少し欠けたような月だ。明るい月が浮かび上がらせた家の影を目に焼き付ける。

 

「……行ってきます」

 

行って、いつか帰ってきます。裏切ったわけじゃない。だからいつか胸を張って帰ってくるから。

 

歩き出した。森は静かだ。虫とフクロウだけが俺を見ている。どんどん、どんどん離れていく。帰れなくなる気がした。堪えきれなくなって、ついに走りだした。

 

木の上の鳥が、慌てふためいて飛び立つ。思わず空を見上げてふと気が付いた。俺の上空を飛ぶ巨大な鳥。夜で、さらに遠いのもありよく見えなかったがすぐにわかった。あれはきっとあいつだ。ここに来てすぐ、エースと仲良くなって海へ行ったときに世話になったあのカモメ。

 

自分の腹に触れた。

 

「“インプット”」

 

森の声が変化する。

 

『あの子、家を出るんだって』

 

『あのおじいさんと一緒に』

 

『帰ってこないの?』

 

『さあ、知らないよ。でも、帰ってくるといいね』

 

『だね。あの子たちがいると、退屈しない。面白いもの』

 

フクロウたちが鳴き交わす。そんな風に、思われてたのか。彼女らに声をかけた。

 

「なぁ、あのカモメを呼んでくれよ」

 

 

 

 

 

 




切れ方が変っ!!次頑張ります…笑


〈補填〉

・サボとルフィ(の腹時計)
かなり正確。

・ダダンのそれよりも遥かに痛い拳骨
もちろんガープ。頭蓋骨が陥没しそうなレベル(何故かしない)。

・エースとルフィを可愛かったので放置
アレンのデフォ。もしスマホがあったなら、取り敢えず写真に収めておく。

・悪魔の実の能力を使いこなす(?)2歳児
恐怖である。ただし、アレンがした事といえば自身の強化や能力の入れ替え程度である。他人に迷惑はかけません。

・不特定多数のイビキ
ダダンとルフィとその他諸々。サボとエースは基本静かに寝てるので好き。

・洞窟の天井の穴
何かがいた模様。

・ガープ
今だ孫に愛されない。娘にも愛されなかった可哀想な男。

・エース
家族のことになると敏感。離れ離れは嫌。ただし父親は嫌い。

・ユリアナの日記
チートアイテムになりきれない予感。色々書いてます。ラフテルとか(ヤバイ)。

・アレンはガープが嫌い。
アレン「嫌いなわけじゃないさ。生理的に受け付けないだけ(=嫌いと同義)」

・ダダンの席に座るガープ
ダダンは奥で正座。究極に大人しいが大体ガープが帰ったあとに3人(4人)のうちの誰かに当る。

・ユリアナ
アレンと顔はよく似ているが料理は壊滅的なセンスを持っていた模様。

・2人の結論
サボ&エース「「アレンがもし母ちゃんに似てたら俺たちは餓死してたな」」

・すごいメンツ
すごいメンツ。

・くそひげジジィ
また登場する予定あり。

・エースの初めて☆の覇気イベント
アレンのいないところで進行する模様。

・手玉に取られるガープ
ガープの扱いを既に心得ているアレン。恐ろしい子。

・黒い牛
危うく主人公が弟にノックアウトさせられるとこだった。持ち前の覇気と身体能力で回避。

・アレンのパイプ
後にルフィ愛用の武器に。

・サボの足掛かり
手紙にでも書いとこう。

・いつも律儀なエース
止まれと言われれば例え追われていても止まるし、挨拶もする。律儀な子。

・妙に冴えた覇気
いつの間にか勝手に進歩していく見聞色。くそひげジジィのせい。

・巨大なカモメ
取り敢えずデカい。
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