武神と恋をしてイチャつきたい   作:せこせこボンバー

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タイトルや設定、口調は適当。
ノリと勢いで書いたので文句は勘弁な。
外見は秋道チョウジ。


1話 真壁さんちの堅士君

 真壁堅士(まかべけんし)という人間がいた。

堅士には人のカテゴリーからは明らかに逸脱した部分があった。

それは堅士が異常に頑丈だということだ。

両親がそれをはっきり認識したのはつい最近である。

堅士が小学校から帰っている時に居眠り運転をしていた車が猛スピードで突っ込んできたのだ。

常識的に考えれば大怪我か運が悪ければ死んでいたはずであるが、堅士の場合は堅士が無傷で逆に車がひしゃげてしまったのだ。

確かに、病気や怪我には無縁の丈夫な子だとは思っていたが、まさかここまでだとは思わなかった両親は堅士の将来の幸せを考え、武術の総本山ともいわれる川神院に通わせることにした。

このときの両親の英断によって何人もの人間が救われることになるのだが、それを知る者はまだ誰もいない。

 

 

 

 堅士は電車を乗り継いでようやく着いた川神院を見て、その渋さと荘厳さに感動していた。

小学生にして渋さがわかる男、真壁堅士。

さっそく門をくぐり、近くにいた厳つい顔をした人に用件を伝える。

 

「あ?なんだ坊主?悪いけどもう一回言ってくれや」

「真壁堅士です。ここで武道を学びにきました」

 

 言われた通りもう一度意思を伝えた。

 

「……悪いことは言わねえからやめときな。見た感じお前から武の才能を感じねえ。お前も痛いのは嫌だろ?」

 

 冷たく言い放つ。

しかしそれはその男なりの優しさでもあった。

 

「確かに嫌です。でもせっかくなので一日だけでも頑張ってみます」

「……そうかい。忠告はしたからな」

「はい」

「俺は釈迦堂形部だ。まあ短い付き合いになるだろうがよろしくな」

「よろしくお願いします」

 

 釈迦堂に案内されて修行僧が集まる場所に向かうとまずは総代である川神鉄心から言葉をかけられた。

 

「よく来たのう真壁堅士」

「父が無理を言ったみたいで、すみません。今日一日よろしくお願いします」

「フォフォフォ。お主のお父さんには個人的に世話になっているからのう。このくらいの頼みは容易いものじゃわい」

 

 堅士の父から事情を聞いていた鉄心によって、初日から特殊な鍛錬となった。

釈迦堂の攻撃をひたすら受けてみるというものだ。

もちろん釈迦堂に本気で攻撃させるわけではないだろうが、それでも初日にやるようなことではないと大勢の人が鉄心に意見してやめさせようとした。

 

「これが一番あの子を知ることができるのじゃ」

 

 鉄心はそう言って変更を認めなかった。

釈迦堂も聞いていなかったようで若干焦っていた。

 

「おいおいマジかよ。いいのか坊主?」

「まあ大丈夫です。それにここに来てまだ15分と経っていません。もう帰るというのはちょっと……」

 

 釈迦堂が堅士の立場だったらさっさと帰っていただろう。

だからキチンと確認をとってあげたのだ。

 

「坊主がいいのならいいけどよ。……俺を恨むんじゃねえぞ?」

「はい。お願いします」

 

 釈迦堂の両手に気が凝縮されていく――。

 

「いくぜ。……リング」

 

 チャクラム状のエネルギー弾を堅士に放った。

それを見て、ほとんどの人間がマズイと思った。

少なくとも、小学生に放つ技ではない。

そんな中、鉄心と堅士だけが落ち着いていた。

 

「綺麗ですねそれ」

 

 それだけ言って、全く避ける素振りを見せずに真正面から受けとめた。

爆発音がし、砂煙が堅士を覆った。

 

「避けねえのかよ!大丈夫かあの坊主……」

 

 何人かの修行僧が堅士に駆け寄ろうとしたのだが、鉄心に止められる。

砂煙が治まると服に汚れ一つつけずに堅士が立っていた。

 

「はあ?どうなってんだよ」

「手加減してくださるのはありがたいですが、これくらいなら全然大丈夫です。もっと本気でお願いします」

「ちっ……。いけよぉ!リングッ!!」

 

 先程よりも遥かに凝縮された気によって作られたエネルギー弾がもう一度堅士を襲った。

 

「さっきよりも、綺麗です」

「……これもダメか。一体どうなっていやがる」

 

 釈迦堂の本気のリングを受けても服に全くダメージが入っていない。

当然、堅士本人にもダメージは入らない。

 

「だがおもしれぇ。これならどうだ?川神流無双正拳突きっ!!」

 

 釈迦堂は堅士の懐まで一瞬で接近して技を放ったが、手応えがまるで無い。

他にも様々な技を繰り出すが、どれも手応えはない。

しかし、釈迦堂には1つだけわかったことがあった。

それは、堅士まで攻撃が届いていないということだ。

堅士に届くほんの僅かなところで、壁のようなものに当たって攻撃が無力化されている。

 

「坊主……。名前、なんて言ったっけ?」

 

 釈迦堂は攻撃をやめて、堅士に尋ねる。

 

「真壁堅士です。ありがとうございました」

「堅士、お前に才能が全くないって言ったの訂正するわ。お前はきっと大物になるぜ。……こっちこそありがとうよ」

 

 堅士と釈迦堂が握手をすると、歓声が川神院に木霊した。

鉄心も嬉しそうに堅士を迎える。

 

「やるとは思っとったが、まさか釈迦堂の本気を受けて服にすらダメージが入らないとはのう。驚きすぎて笑ってしまうわい、フォッフォッフォッ」

「ありがとうございます。俺としてもここまでとは思いませんでした」

 

 それからしばらく鉄心と堅士が談笑していると、一人の女の子がやってきた。

 

「おいじじい、うるさくてあんまり眠れなかったじゃないか」

「モモ以外はとっくに起きて鍛錬しておる。まったく、いつまで寝るつもりじゃ」

「ふんっ、そんなの私の勝手だ!それより、その子は誰だ?初めて見る顔だが……」

 

 堅士に話が振られたので、堅士は頭を下げて挨拶をした。

 

「はじめまして。今日一日、川神院でお世話になる真壁堅士です」

「ふうん……。私は川神百代だ。お前、強いのか?」

 

 後に武神と呼ばれる百代を持ってしても、堅士の才を図りかねていた。

 

「強くはないと思いますけど……。俺ってどうなんでしょうか、総代?」

「うーむ。少なくとも守りに関して無双。しかし話を聞くに、攻撃面においてはよほどのことがない限り並の域から出んじゃろうな」

「じじい、もっと簡潔に話せ。要するにどういうことだ?」

 

 百代が鉄心の髭を引っ張りながら結論を急かす。

 

「イタタタ。こりゃ、やめんかモモ!」

「いいからはやくしろ」

 

 髭から手を離す百代。

 

「今のお主ではあの子には勝てぬ。まあ、負けもせんじゃろうが」

 

 堅士に攻撃が届くことはない、しかし同時に百代にも致命的な攻撃が届くことはないだろうという判断からの言葉だった。

百代の性格を考えると、何手かはわざと攻撃を受けるだろうが倒すまでには至らないということである。

鉄心から勝てないと聞いて百代が難しい顔をする。

 

「私は同世代に負けたことはないんだ。それなのに勝てないなんて納得出来ないぞ。おいお前、今から私と戦え!」

「こりゃモモ。今さっき真壁は戦ったばかりで……」

「いーやーだー。戦うんだー。ぜーったい、戦うんだー!」

 

 駄々をこねる百代を見て、堅士が了承する。

 

「いいですよ。川神さんが俺に五分間攻撃してきて倒れなかったらこっちの勝ち、そういう勝負なら」

「ああ、いいぞ」

 

 いうが速いが堅士に攻撃を仕掛ける百代。

しかし、その奇襲にも堅士には通じなかった。

百代が今できる最大の攻撃を繰り出していくが、そのどれもが通じないまま五分経ち勝負は終わった。

 

「五分経過じゃ、それまで!……勝者、真壁堅士!!」

「ありがとうございました」

「……あ、ありがとう……ございました」

 

 百代は全力で攻撃し続けたせいで疲れきっており、礼も満足にできていなかった。

 

「真壁、堅士……。お前、強いな。一撃も届かずに終わってしまった」

「ありがとうございます。でも正式な勝負なら俺の攻撃なんてまともに川神さんに届かないだろうから、良くて引き分けだったでしょうけど」

「そんなに謙遜するな。この私が認めよう、お前は強い。これからは私のことは百代と呼べ。敬語もやめろ」

 

 どうだ、嬉しいだろうとばかりにドヤ顔で仁王立ちをしている百代。

 

「じゃあさっそく。百代さん」

「『さん』は余計だ。私はお前のことを堅士と呼ぶことにしたぞ」

「わかった。百代も小学生だよね?」

「そうだぞ。もうすぐ小学五年生になる」

「そっかあ~。じゃあ俺が四年生になるから百代は一個上なんだね」

 

 百代は堅士に興味を持ったようで、自分の部屋に堅士を無理矢理引っ張りこんで話し続けた。

修行僧が昼食を知らせに来たので話は一旦終わることになった。

 

「よし、ごはんの時間だ。行くぞ堅士」

 

 堅士の手を引っ張って、意気揚々と食堂に向かった。

 

「逃げない、逃げないからっ!」

 

 ぐいぐい引っ張られてバランスを崩しそうになりながら、百代についていく。

それを見た百代はSっ気が出てきたのか、更にグイグイと引っ張る。

 

「ほーらほら。もっとこっちに来ないと転けてしまうぞ」

 

 そのまま食堂に到着して、鉄心の近くに座った。

全員で一斉にいただきますと挨拶をして食事を始める。

 

「昼食までお世話になって……ありがとうございます」

 

 頭を下げる堅士に、鉄心は笑いながら気にしないでいいと伝える。

 

「なんのなんの。百代と仲良くやってくれているようで何よりじゃ。それよりさっきは百代に連れて行かれて話しそこねてしまったが、真壁に一つ提案がある」

「なんでしょうか」

「お主の中に眠る可能性を今日だけとは言わずに、たまにここに来て修行せんか?」

 

 鉄心の言葉に百代が歓喜の声をあげる。

 

「ジジイのくせにナイスな提案だ!!そうしろよ堅士!いいだろ?」

「お誘いは嬉しいんですけど……。俺は川神の人間じゃないので頻繁に、というのは物理的に厳しいかと」

「却下を却下だ!今すぐここに引っ越してこい。そうすれば一緒に成長できるじゃないか」

 

 百代の発言を鉄心が叱る。

 

「こりゃモモ!あまり無理を言うでない」

「いやだ、いやだ。堅士と一緒に鍛錬するんだー!」

「わかりました。毎週というのは少し無理なので月一回くらいのペースではどうでしょうか?金曜日に来れば土日も使えますし」

 

 大人な(小学生)堅士が妥協案を出した。

 

「わかった。それで我慢するぞ!その代わり毎月ちゃんと来いよ?」

「はいはい。それでどうでしょうか総代」

「うむ。それが現実的であろう。真壁の両親にはワシからも伝えておこう。それにしてもモモがここまで誰かに執着するとはのう。良い傾向じゃ」

 

 話もまとまり、昼食が終わると百代に案内されて川神院を見て回り、その後は基礎トレーニングが始まった。

百代は基礎トレーニングと聞いて嫌な顔をしていたが、それでも堅士と一緒にトレーニングをするのはそれなりに楽しかったようだ。

堅士にとっては基礎トレーニングであっても新鮮なので、どれも心から楽しめた。

そして、堅士が帰る時間になる。

 

「じゃあまたね、百代」

「……」

 

 しかし百代は手を離そうとしない。

 

「また来るから。ねっ?」

「……約束だぞ?」

 

 この時の上目遣いで目を潤ませている百代を見て、初めて女性というものを意識した堅士。

 

「うん。約束」

「じゃあ指切りするぞ。指切りげんまん、嘘ついたら♪うでーのなーかでなぶーりこーろす♪指切った」

 

 と、百代はとんでもない歌詞を明るく歌いながら指切りをしていた。

堅士はその歌詞に焦りつつも、自分には攻撃は効かなかったから大丈夫だろうとあまり深刻に考えなかった。

しかし、実はこういう場合のお仕置きが完全には無力化できないのだ。

そのことにまだ気がついていない堅士だが、それに気がつくのはまだ先の話である。

兎にも角にも、堅士と百代の出会いの日は終わりを迎えた。

 

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