武神と恋をしてイチャつきたい   作:せこせこボンバー

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1話を読んでくれた人ありがとう。
釈迦堂さんとの技に関するやりとりを一部変更。


2話 風間ファミリー

 川神院に通うようになって三ヶ月が経過した。

堅士は百代との約束通り、月一回のペースでキチンと通っていた。

そして、今日は堅士が川神院に行く日である。

百代は川神院の前でキョロキョロと辺りを伺いながら、堅士が来るのを今か今かと待っている。

 

「まだかー」

「まだネ。それまで鍛錬して待っていようヨ」

「堅士と一緒にするから大丈夫です」

 

 ルー師範代が百代を鍛錬に誘うがあっさり断られてしまった。

そのやり取りをみて釈迦堂がイジる。

 

「そんなんだからルーは童貞なんだよ。百代は愛しい人に一秒でも早く会いたくてここにいるんだから放っといてやれや」

「ち、ちがいますよ!私と堅士はそんなんじゃなくて。友達とかライバルみたいなもんで……」

「わかった、わかった。そりゃあ悪かったな。ルー、行くぞ」

 

 慌てている百代を見て、釈迦堂はニヤニヤしながらルーと中に入っていった。

釈迦堂の言葉を否定はしたが、堅士が来る日が近づくと百代がソワソワしはじめるのが毎月の恒例行事となっている。

待ち始めて一時間が経った時に、ようやく堅士がやってきた。

見つけた百代は全力で走って堅士の胸に飛び込む。

 

「堅士―。待っていたぞ。まったく、遅いじゃないか」

「ええっ、これでも結構早く来たつもりなんだけど」

「美少女が待っているんだから、堅士はもっと早く来るべきだ!」

 

 百代にそんなことを言われて顔を赤くする堅士。

普段女の子と話すことがほとんどない堅士からすれば、こんなに仲良くなった百代という存在は特別なのだ。

百代が超がつくほどの美少女だったことも堅士が緊張している要因となっていた。

頑張って緊張していない風を装うが内心バクバクである。

 

「ご、ごめんね。でも俺も会いたかったよ」

「うん」

 

 なかなかお互い言葉が続かず、無言で抱きしめ合っていた。

これで好き合っていないなどと誰が認めるというのだろうか。

 

「……こんなところで何イチャついてんだお前ら。部屋でやれや」

 

 堅士が来たことを察知した釈迦堂が声を掛けてきて、百代に押されるように離れる二人。

 

「うわああああああああ」

 

百代が外に飛び出していってしまったので、堅士は少し悲しくなりながらも折角来たのだからと釈迦堂に稽古をつけてもらうことにした。

稽古といっても、もはや恒例となった堅士がひたすら攻撃を受けるというだけの、堅士からすれば稽古といえるのか謎の稽古である。

鉄心曰く、攻撃を受けるたびに堅士が纏っている気の量が増えていっているので川神院ではシゴキではなく稽古として認められている。

釈迦堂としても、これほど何の遠慮無く全力で技を出せる相手に会ったことがないので良い修行になっていた。

もちろんそれは釈迦堂だけでなく、ルーや百代にとってもそうである。

 

「さっそく行くぜっ」

 

 稽古場に移動して、すぐ始まった。

挨拶代わりとばかりに、リングや無双正拳突きで攻撃するがやはり堅士には届かない。

それは釈迦堂にとっても想定の範囲内である。

 

「相変わらず無傷かよ。だが今日は一味違うぜ?おらよ、禁じ手富士砕きっ!!」

「うぎゃ。えげつねえっすよ」

 

 無傷なのはこれまでと変わらなかったが、衝撃は今まで一番堅士まで伝わった。

 

「……川神流の禁じ手を出してもこれかよ。これで格闘センスが俺の半分でもあったらお前は超がつくほどのバグキャラだっただろうな」

「そんなに人生甘くないですって。今、開発中の技は普通に使うだけならまあ使えるでしょうけど地味すぎですよね」

「そうか?俺は好きだけどねえ……。まあ今のお前でも間違いなく並のバグキャラ程度はある。これ以上欲張っても碌な事はねえわな」

「並のバグキャラってなんですか。釈迦堂さん川神の街に染まりすぎておかしくなってますよ」

「この街は特殊だからな。こんなところにいれば自然とそうなっちまうんだよ。お前もいずれそうなるだろうぜ」

 

 その後もしばらく話していたが、百代がなかなか帰ってこないので堅士はランニングがてら探しに行くことにした。

川神院を出ようとすると、少年が話しかけてきた。

 

「すみません。川神院の人ですよね?俺は直江大和といいます。川神百代さんに会いたいのですが……」

「川神さんのお友達かな?今出かけていてね。今から探しに行くからお昼過ぎにまた来てもらえる?」

「わかりました。よろしくお願いします」

 

 約束した以上、お昼までには百代を川神院に連れ戻さないといけない。

堅士は百代と行った場所を中心に探すことにした。

最初に向かったのは多馬川の土手だ。

のどかな風景がひたすら続く素晴らしいランニングスポットである。

 

「ふぅ、到着。さてどうかな」

 

 川沿いを上ってしばらく走ると石投げをしている百代を発見した。

堅士の気配を察知したのか、逃げようとする百代に堅士は大声で呼びかける。

 

「待って!!」

 

 その大声に百代はビクッとなり動きを止める。

堅士は急いで近づき、俯いている百代に謝った。

 

「ごめんね」

「え?」

 

 何故謝られたのかわからなかった百代は反射的に顔を上げる。

そこには、ほとんど涙目の堅士がいた。

 

「俺と抱き合っているの嫌だったんだよね?しかも釈迦堂さんに見られて……。俺、川神さん以外の女の子と話したことなんて数えるほどしかなかったし、抱きつかれたのももちろん初めてだったから嬉しくて勘違いしちゃったみたい。本当にごめんなさい」

 

 どう考えても誤解でしかないのだが、堅士本人はいたって大真面目に謝っていた。

放心しているせいで百代が何も言わないのを、肯定の証だと解釈した堅士は大和が百代に会いたがっていたことを伝える。

また、先ほど会った大和が百代と恋仲に近い関係なのだと誤解からくる妄想を暴走させてもいた。

 

「川神さんに会いたいならお昼過ぎにもう一度来てって言ったから、それまでには戻ってね」

 

 そういった後もう一度謝った堅士は、この場から立ち去ろうとした。

しかし今度は放心状態から立ち直った百代が堅士を呼び止めた。

 

「待て!!」

 

 堅士も先ほどの百代と同じくビクッとなって動きを止めた。

そんな堅士を百代は力いっぱい抱きしめた。

 

「川神さん?」

 

 堅士を抱きしめたまま言葉を発しない百代に堅士が言葉をかけた。

堅士のその呼び方を聞くたびに百代はなぜだか心が痛くなった。

 

「……百代だ」

「え?」

 

 そんなことは堅士も百も承知である。

彼女の名前は川神百代。

 

「百代だ」

「うん、川神さんの名前は知ってるよ。それが……」

「百代だ!私のことは百代と呼べと言っただろうがっ!!」

 

 百代は叫びながら更に力をいれて堅士を抱きしめた。

 

「ごめん」

「謝らなくていい。謝らなくていいから私を百代と呼んでくれ」

「……百代」

「そうだ、それでいい。私を他人行儀な呼び方で呼ぶな。堅士にそう呼ばれるのは嫌なんだ」

「うん」

「……逃げたのは釈迦堂さんに見られたのが恥ずかったからだ。私は堅士のことが嫌ってなどいない。だからもう二度とそんな悲しいことを言うな」

「うん」

 

 堅士の胸に自分の顔を押し付ける百代の体はまだ少し震えていた。

 

「震えてる。大丈夫?」

「大丈夫じゃない。もう少しこのまま私を抱きしめろ」

「うん」

 

 震えが完全に治まり、仲良く手を繋いで帰る頃にはもう昼食の時間になっていた。

 

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

お昼を食べ終えた二人が入り口に向かうと、大和はすで待っていた。

 

「あいつがそうか?」

「そうだよ。本当に誰かわからないの?」

「ああ。気の弱さからして、戦った相手というわけでもなさそうだな」

「そっか~。なんだろうね」

「まあ、行けばわかるさ」

 

 一緒に大和のもとに行き、声を掛ける。

 

「お前が直江大和か?」

「はい。川神百代さんですね?」

 

 恐怖の笑みを浮かべる百代を見て、大和が堅士に大丈夫かを確認するかのように尋ねる。

 

「そうだ。会ったこともない私に何の用でもあるのか?」

「は、はい。実は……」

 

 大和が百代に会おうとした理由は、用心棒の依頼である。

コンパスで耳たぶに穴を開けた奴らに仕返しをしたいということだった。

 

「話はわかったぞ。面白そうではある」

「力を貸してくれるのですか?」

「いいだろう、と言いたいところだがお前のせいで堅士に誤解されて大変なことになりかけた。あのまま誤解が解けなければ私はお前をボコボコにしていただろう」

「え……?」

 

 大和の顔が引きつる。

大和に非はない、ただ運が悪かっただけだ。

 

「しかし、私は寛大だ。そのことは水に流そう」

 

 ホッとした顔の大和。

 

「1つだけ条件を出す」

 

 敢えて最初は無茶なことを言い譲歩を引き出す、その手口は完全にヤ○ザのそれだった。

 

「百代?」

「大丈夫だ、ひどいことは言わない。条件とはお前が私達の舎弟(パシリ)になることだ」

「「……は?」」

 

堅士と大和の声が揃う。

 

「川神院はたとえ実の娘だろうと贔屓せず修行をさせる。まだ小学生の私は兄弟子達の使いっ走りもして大変にストレスが溜まっている。堅士がいるときはいいがそれ以外の時にもストレスを発散する必要がある」

「はい」

「そんな時に遠慮なくコキ使える存在(パシリ)がいると何かと便利だろう」

「なるほど……つまり」

「私達が手を貸してやる代わりにお前はこれから私達の弟分(パシリ)になれ!」

「(すぐに飽きるだろ。その場限りの助っ人だしな)」

「(って思ってるんだろうけど、甘いぞ。何しろずっと召使い(パシリ)がほしいって言ってたし)」

 

 堅士の心配も虚しく、大和はあっさりと了承してしまう。

せめて自分は優しくしてあげようと思う堅士であった。

 

「ではこれからは姉さんと兄さんで」

「うむ。それでは契約成立だ!」

 

 堅士の時と同じように小指を出して指切りを始める。

「指切りげんまん、嘘ついたら♪うでーのなーかでなぶーりこーろす♪指切った」

 

またしても物騒な歌詞を嬉しそうに歌って指切りをする百代であった。

 

「え……?」

 

 大和はこの時初めて川神院の恐ろしさを知ったという。

 

 その次の日の朝早くから堅士と百代を先鋒として六年生11人と対峙したが、百代一人が一瞬でケリがつける。

 

「早すぎだよ百代。ところで人質をとってお前の耳に風穴を開けた奴はどいつ?」

「こいつだけど……」

 

 堅士に聞かれて風間翔一が指をさしたのは、少し蟹っぽい顔をしている奴だった。

指をさされた奴は恐怖で震えていた。

 

「こいつにはケジメとしてさらなる痛みが必要だな」

「や、やめろ。俺は釜中の三宅君を知ってるんだぞ」

「ふうん。その三宅君とやらは俺はともかく、お前らをボコボコにしたあそこの美少女よりも強いのか?」

「強いやつなのか?楽しみだなあ」

 

 百代が鼻歌交じりにスキップをしながら堅士達に近づいてくる。

 

「ひぃぃ」

「どうした?答えろ」

「俺は本当の悪なんだ。子猫を平気でイジメ殺せる!お前らも殺すぞクソが!!」

 

 少年の精一杯の強がりは堅士と百代には逆効果であった。

特に堅士はそういった行いが大嫌いだった。

そして、普段は温厚な人間はキレるととんでもないことをするのが世の常である。

 

「そうかぁ。悪かぁ。素敵だなぁセンパイ」

「そんな素敵な先輩にご褒美だ。俺と百代のデートに付き合ってくれ」

「ああ。あそこの建物の屋上までな」

 

 堅士が少年を腕に抱え、屋上に行く。

 

「さて、デートから帰るとしよう」

 

 屋根の端に連れて来られれば、何をされるかは想像に難くなかった。

 

「な……じょ、冗談だろ?」

「安心して俺らに身を任せろ。大丈夫、死にはしないさ。よかったなあ、ここが『目には目を』の国じゃなくって」

「私がキチンと足から落としてやる。行け」

 

 百代がドンッと突き落とす。

 

「ウワァァーーッ!!!」

 

 その光景を見て、全員の腰が引けていた。

 

「な、何もここまで……」

「両足イッたんじゃないのか、これ……」

「ぐ……う、い、いたい、いた、い」

 

 蹲りながら痛がっている少年に百代と堅士がさらに恐ろしいことを言う。

 

「おいおい、屋根から足を滑らせるとか危ないぞ。帰るまでがデートなんだからな」

「ひ……ひぃぃっぃぃぃいいいいい!!!」

「猫と違って生きてて良かったな。まあ、またそんなふざけた話が俺らの耳に入ってきたら……わかってるよな?」

「や、やりません。もう二度とやりませんっ。これからは世のため、人のために全力をつくします」

「そうか聞き分けの良い子だ。では耳たぶに穴を開けたことをしっかりと本人に詫びてさっさと帰るといい」

 

 翔一の靴を舐める勢いで謝罪した後、少年は足を引きずりながら帰っていった。

 

「これで依頼は達成だな」

「は、はい。ありがとうございました」

 

 百代にビクビクしながら礼を言う大和。

 

「なあに、これで念願のパシリが手に入ったんだ。悪も滅んだし、まさに一石二鳥というやつだな!」

 

 そのことを思い出した大和はまたしても顔が引きつる。

 

「と、とりあえず、これはそのお礼の品です」

 

 そう言って大和は、野球のキラカード(ウルトラレア)を百代に差し出す。

そこには、どうせ関係が続くならば少しでも友好関係がベストだという大和なりの打算もあった。

 

「兄さんへのお礼は……」

「俺はこれ以上はいいや。ちょっと脅しただけだしな」

「わかりました。では何か困ったことがあったらおっしゃってください」

「ああ」

 

 大和は翔一へある提案をしようとする。

 

「なあキャップ……」

「ああ。俺もそう言おうと思っていたところだ!」

「「「だろうと思った」」」

 

 岡本一子・島津岳人・師岡卓也の三人は翔一がどうするのか最初からわかっていたのだ。

例えさっきまで腰が引けていたとしても、である。

大和が提案しなくてもきっと翔一は同じことをしただろう。

 

「なあ二人とも、俺達風間ファミリーの仲間に入らないか?」

「風間ファミリーが何か知らないが面白そうだ。いいぞ」

 

 百代が即応する。

 

「まあ百代がそれでいいならいいか。俺は家がこっちにないんだけどいいのか?」

「問題ないぜ。離れていてもファミリー(家族)だからな!」

「わかった。これからよろしく」

 

 堅士も聞きたいことを聞いた後はあっさりと応えた。

 

「じゃあ、兄さんと姉さんの風間ファミリー入りを祝って乾杯だ。こんな事もあろうかとジュース持ってきてたんだ」

 

 大和が人数分の缶ジュースを鞄から取り出す。

 

「それじゃあ新しい仲間に……」

「「「「「「かんぱーい」」」」」」

 

 一子は百代の強さに惚れ込み、すぐに懐いた。

そして、大和が姉さん、兄さんと呼んでいるのを知って、百代のことをお姉様、堅士のことを兄さんと呼ぶようになる。

今は堅士と百代を入れて7人となった風間ファミリーだが、面白そうな奴は随時募集中となっている。

 

「なら俺が今度川神に来る時にはメンバー増えているかもな。だがこのファミリーの7番、ラッキー7はすでに俺がもらった」

「運のよさなら負けないぜ!」

 

 堅士と翔一が当たり付きの駄菓子で何円分当たりが出るかの勝負をして場を盛り上げた。

ちなみに勝負は、10円や20円の当たりをコンスタントに出した堅士を、翔一が100円の大当たりを最後に引き当て大逆転勝利で幕を下ろした。

 

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