私とハリー、ロンは校庭を横切り、禁じられた森の横にある木の小屋ーーハグリッドの家に向かった。中からは戸を引っ掻く音と吠え声が聞こえてきた。
「退がれ、ファング、退がれ」
ハグリッドが飼ってる動物らしい。あ、ハグリッドが出てきた。
「待て、待て、退がれ、ファング」
大きな黒いボアハウンド犬の首輪を押さえながら。
(わ、悪い人じゃないよね?ガクガクブルブル)
怖がってるだけか。臆病なのかな。
中は一部屋だけでごちゃごちゃしていた。ハグリッドがファングを離すと、ファングは一直線にロンへ向かい、舐め始めた。
「うわっ。何するんだよ!」
(怖い人じゃないんだー!やったー!)
かわいい。
「ファングー。おいでー」
(わーい!)
「あははっ。くすぐったいよ。仕返しだー♪」
ムギュウ
「あー、モフモフー、気持ちいいー」
私がファングと戯れている間に色々話していたみたいだ。ロンのことやらミセス・ノリスやらスネイプやら。……ん?『日刊予言者新聞』?七月三十一日にグリンゴッツに侵入者?ああ、そんな馬鹿がいたらしいね。しかし、三十一日か。私やハリーがグリンゴッツに行った日。あのヴォっさんも漏れ鍋にいた。……怪しい。
「リーナ?帰るよー」
「わかった。名残惜しいけど、またね。ファング」
「キューン(また来てねー)」
さて、この後は夕食だ。今夜は何が出るんだろう。ーー激辛麻婆だった。口の中が痛い。
☆
ーー飛行訓練は木曜日に始まります。グリフィンドールとスリザリンとの合同授業ですーー
飛行訓練かー。いつも使ってる箒とは違う箒だしなぁ。ハリーなら平気だろうけど。マルフォイは自慢話をしてくるけど、マグルの乗ったヘリコプターが魔法使いの家に近づけるかっての。
朝食の時、ネビルに荷物が届いた。『思い出し玉』だ。けど、忘れてることを教えられても、何を忘れてるのか思い出せなければ意味はないと思う。……あ、マルフォイが思い出し玉をひったくった。って、マクゴナガル先生登場。早いな。マルフォイは玉を戻したけど、こりゃ、また何かあるな。
校庭でスリザリン生と箒の横で待つ。
「なにをぼやぼやしてるんですか。みんな箒のそばに立って。ミス・ディメントはもう立ってますよ。さあ、早く」
マダム・フーチが言う。箒を確認すると、だいぶ昔のものだとわかった。
「右手を箒の上に突き出して。そして、『上がれ!』と言う」
『上がれ!』
みんな叫ぶ。私とハリーは一発成功。まあ、ホグワーツに来る前にアズカバン島で飛んでたしね。ハーマイオニーは転がるだけ、ネビルのは何も起こらなかった。気持ちが大事なのだよ、ネビル。
マダム・フーチは生徒の箒の握り方を直していく。私とハリー、ロン、ハーマイオニーは及第点らしい。マルフォイ?注意されてたよ。
「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強くけってください。箒はぐらつかないように押さえ、二メートルぐらい浮上して、それから少し前かがみになってすぐに降りてきてください。笛を吹いたらですよーー一、二のーー」
あっ、ネビルが緊張したのかフライングした。
「こら、戻ってきなさい!」
どんどん離れていって……落ちた。多分骨が折れた。箒は禁じられた森の方へ飛んでいく。買い直せよ、ホグワーツ。
「手首が折れてるわ」
あ、やっぱり。
「さあさあ、ネビル、大丈夫。立って。ーー私がこの子を医務室に連れていきますから、その間、誰も動いてはいけません。箒もそのままにして置くように。さもないと、クィディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出ていってもらいますよ。さあ、ネビル、行きましょう」
ネビルを支えながら校舎へ消えるマダム・フーチ。
「あいつの顔を見たか?あの大まぬけの。見ろよ!ロングボトムのばあさんが送ってきたバカ玉だ」
ネビル、落としてたのか。てか、ここまで持ってきてたのかよ。
「マルフォイ、こっちへ渡してもらおう」
ハリーが言う。冷たい声だね。怒ってる。
「それじゃ、ロングボトムがあとで取りにこられる所に置いておくよ。そうだな、木の上なんてどうだい?」
「こっちに渡せ!」
声を荒げるハリー。マルフォイは箒に乗り飛び上がった。案外上手だね。
「ここまで取りにこいよ、ポッター」
ハリーは箒を掴む。
「ダメ!フーチ先生がおっしゃったでしょう、動いちゃいけないって。私たちみんなが迷惑するのよ」
「いや、大丈夫でしょ。先にマルフォイが焚きつけたって言えば。それに、ハリーなら心配しないで平気だね」
ハリーはそのまま空へ飛び上がった。何人かキャーキャー言ってるけど、ハリーは渡さないよ?
「こっちへ渡せよ。でないと箒から突き落としてやる」
「へえ、そうかい?」
ハリーがマルフォイに突進する。マルフォイはギリギリで避けた。やっぱり本来のポテンシャルが発揮できてないね、ハリー。……ん?
「クラッブもゴイルもここまでは助けにこないぞ。ピンチだな、マルフォイ」
「そいつはどうかな?クラッブ!」
やっぱりね。
「行かせないよ」
誰にも気付かれないように飛んだ私がクラッブの行く手を阻む。クラッブは横を抜けようとするがその度に私に阻まれる。
「ちっ。取れるものなら取るがいい、ほら!」
マルフォイはガラス玉を放り投げ、稲妻のように地面に戻った。同時に戻ったクラッブ共々、ハリーが地面に衝突するのを今か今かと待ちわびている。甘いよ。
地面から一メートルぐらいの高さで難なくガラス玉をキャッチしたハリーは悠々と地面に降り立った。
「ハリー・ポッター、それにリーナ・ディメント……!」
マクゴナガル先生が走ってきた。見られてたみたいだ。
「まさかーーこんなことはホグワーツで一度も……」
?どうしたんだろう。
「ミスター・ポッター。首の骨を折るかもという懸念はなかったのですか?」
「大丈夫だと確信してました」
「ミス・ディメント。彼にタックルされたら箒から落ちていたかもしれないのですよ?」
「避けてまた妨害するだけですよ」
「はぁ……。ついてきなさい、二人とも。私が考える、あなたたちにふさわしい処罰を与えます」
マルフォイが勝ち誇った顔をしているが問題はない。なぜならーー
(ああ、こんなに才能あふれる者がグリフィンドールに!良いシーカーとチェイサーを見つけました。これで、今年の寮対抗杯を取れるかもしれません……!)
マクゴナガル先生の心の中がこんなんだからだ。
校舎の中に入り、『妖精の呪文』教室の前にたどり着く。
「フリットウィック先生、申し訳ありませんが、ちょっとウッドをお借りできませんか」
ハリーがガクブルしてるけど、そんなこと関係なしに、ウッドと呼ばれる五年生は出てきた。
「三人とも私についていらっしゃい」
廊下をどんどん歩き出す。次にたどり着いたのは人気のない教室。中にばピーブズがいたけどマクゴナガル先生が追っ払った。
「ポッター、ディメント、こちら、オリバー・ウッドです。ウッド、シーカーとチェイサーを見つけましたよ」
ウッドの表情が一瞬、驚きに変わり、そして満面の笑みに変わった。
「本当ですか?」
「まちがいありません。この子は生まれつきそうなんです。あんなものを私は初めて見ました。箒に乗ったのは?」
「初めてではないですけど、いつも使ってるのとは違うので飛びづらかったです」
ハリーが答える。補足しておこう。
「ハリーが初めて飛んだ箒、今でもハリーが使ってるやつなんですけど、使い手を選ぶようなやつなんです。それを初見で乗りこなしてました」
先生は驚いたような顔をしている。
「この子は、今手に持っている玉を十五メートル上空からダイビングしてつかみました。それも、地面から一メートルも上で。チャーリー・ウィーズリーだってそんなことはできませんでしたよ」
「彼女は?」
「ディメントは自分の何倍もあろうかという体格の者を足止めしていました。どんなにその子が抜こうとしても無理でしたよ」
ウッドの顔はこれ以上の幸せは無いと言っても過言ではない表情だった。
「ポッター、ディメント、クィディッチの試合を見たことがあるかい?」
「いいえ」
「ほんの少し」
ハリー、私の順に答える。しかし、クィディッチか。……まあ、ハリーと一緒ならいいや。
「体格もシーカーにぴったりだ。チェイサーは体格はほとんど関係しないしね」
ハリーと私を観察するウッド。グリフィンドール・チームのキャプテンらしいが、風の噂で重度のクィディッチ馬鹿と聞いている。
「身軽だし……すばしこいし……ふさわしい箒を持たせないといけませんね、先生ーーニンバス2000とか、クイーンスイープの7番なんかがいいですかね」
「あ、ハリーと私は自分の箒があるので、あとで届けてもらいます」
「へぇ!どこのメーカーだい?」
「私の知り合いが作ったオリジナル品。でも、性能は保証する」
「私からダンブルドア先生に話してみます。一年生の規則を曲げれるかどうか。是が非でも去年より強いチームにしなければ。あの最終試合でスリザリンにペシャンコにされて、私はそれから何週間もセブルス・スネイプの顔をまともに見れませんでしたよ……」
どこか哀愁が漂うマクゴナガル先生。よっぽど辛かったんだね……。
「ポッター、ディメント、あなた方が厳しい練習を積んでいるという報告を聞きたいものです。今回の処罰は、二人ともグリフィンドールのクィディッチ・チームに入ること。いいですね?」
それから、先生はハリーに笑いかけた。
「あなたのお父さまがどんなにお喜びになったことか。お父さまもすばらしい選手でした」
リーナをクィディッチチームに入れるつもりは最初はなかった。いつのまにかこうなっていた。一体何があったんだ……!