吸魂鬼に転生してしまいました。   作:零崎妖識

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ちょっとリーナとマルフォイの距離を近づけてみる。


処罰(後編)

フィルチの愚痴と説教を聞きながら校庭を横切る。着いた先は、やはりハグリッドの小屋だった。

 

「まさか、本当に森に入るのか?」

 

「ああ、そのまさかだねぇ」

 

マルフォイの言葉にフィルチが答える。

 

ファングを引き連れて、ハグリッドがやってくる。石弓を持ち矢筒を背負ってる。

 

「もう森に入らにゃならん。お前さんの仕事は終わりだ、フィルチ」

 

「夜明けに戻ってくるよ。こいつらの体の残ってる部分だけ引き取りにくるさ」

 

フィルチが城に戻っていく。

 

「よーし、それじゃ、よーく聞いとくれ。なんせ、俺たちが今夜やろうとしていることは危険なんだ。みんな軽はずみなことはしちゃいかん。しばらくは俺について来てくれ」

 

ハグリッドの先導で、森に入っていく。進んでいくと、急にハグリッドが立ち止まった。何か、銀色の、水銀みたいな液体が落ちている。

 

「あそこを見ろ。地面に光った物が見えるか?銀色の物が見えるか?一角獣(ユニコーン)の血だ。何者かにひどく傷つけられたユニコーンが一頭、この森の中にいる。今週になって二回目だ。水曜日に最初の死骸を見つけた。みんなでかわいそうなやつを見つけだすんだ。助からないんなら、苦しまんようにしてやらねばならん」

 

「ユニコーンを襲ったやつが、先に僕たちを見つけたらどうするんだい?」

 

マルフォイが聞く。いつもより声が震えている。恐怖を感じているようだ。

 

「俺やファングと一緒におれば、この森にすむものは誰もお前たちを傷つけはせん。道をそれるなよ」

 

意訳すると、この森にいるはずのないものは傷つけてくる、もしくは、この森にいるものでも襲ってくる可能性はあるってことだよね。

 

そのあと、ファング班とハグリッド班に別れて探索することになった。ファング班はネビルとマルフォイ、ハグリッド班は私とハリーだ。ユニコーンを見つけた時は緑の光を、困ったことが起きたら赤の光を打ち上げる。

 

少し進み、道が分かれた所でファング班と別れた。そこら中に銀色の血が落ちている。

 

「その木の陰に隠れろ!」

 

「っ!」

 

ハリーを掴んで樫の巨木の陰に隠れる。ハグリッドは矢を弓につがえ、構えている。何者かが、するすると枯葉の上を通る音が聞こえる。……遠くに行った。

 

「思ったとおりだ。ここにいるべきではない何かだ」

 

これまでより慎重に進んでいく。突然、何かが動いた。

 

「そこにいるのは誰だ?姿を現せ……こっちには武器があるぞ!」

 

ハグリッドが叫ぶ。現れたのは赤毛の人間の体と、栗毛で赤味がかった長い尾を持つ馬の体。ケンタウルスだ。

 

「ああ、お前さんか、ロナン。元気かね?」

 

「こんばんは、ハグリッド。私を撃とうとしたんですか?」

 

「用心にこしたことはない」

 

ロナンと言うケンタウルスと話しているハグリッド。

 

「今夜は火星が明るい」

 

「なあ、ロナンよ。けがをしたユニコーンがいるはずなんだ。見かけんかったか?」

 

ロナンはすぐには返事をせず、空を見上げていた。

 

「いつでも罪のない者が真っ先に犠牲になる。大昔からずっとそうだった。そして今もなお……」

 

その時、ロナンの背後でまた、何かが動いた。現れたのは、ロナンより荒々しい印象のケンタウルスだ。

 

「やあ、ベイン。元気かね?」

 

「こんばんは。ハグリッド、あなたも元気ですか?」

 

「ああ、元気だ。なあ、ロナンにも聞いたんだが、傷つけられたユニコーンか、何かおかしなものを見んかったか?」

 

ベインはロナンのそばまで歩いていき、空を見上げた。

 

「今夜は火星が明るい」

 

またそれか。ハグリッドも諦めたのか、何かを見つけたら知らせるように言い、その場を離れた。

 

少しして、赤い火花を見つけた。何かあったようだ。

 

「二人ともここで待ってろ。この小道からそれるなよ。すぐ戻ってくるからな」

 

そう言って、ハグリッドは下草をなぎ倒しながら遠のいていった。

 

「ねぇ、リーナ」

 

「なんだい、ハリー」

 

「どう思う?」

 

「マルフォイがネビルを脅かしてパニックになって打ち上げたに五百ガリオン」

 

「奇遇だね。僕もだ」

 

しばらくして、ハグリッドが戻ってきた。マルフォイ、ネビル、ファングを引き連れている。話を聞くと、予想が当たっていたようだ。

 

「お前たち二人がばか騒ぎしてくれたおかげで、もう捕まるものも捕まらんかもしれん。よーし、組分けを変えよう……」

 

「じゃあ、私とマルフォイが一緒になるよ」

 

「おお、そうか。それじゃあ、俺と一緒に来い。ハリーとネビルはファングと一緒だ」

 

ハリーたちと別れる。

 

「ねぇ、マルフォイ」

 

「なんだ、ディメント」

 

「君、寂しいの?」

 

マルフォイが固まる。図星かな?

 

「何を根拠に言っているんだ?僕が寂しい?クラッブやゴイルがいるのに?」

 

「その二人とは、友達のような上下関係に見えたけどね。……ここから先は独り言だよ。聞き流してくれても構わない」

 

そう言って、私は考えていたことを話し始める。

 

「確かに、スリザリンは闇の魔法使いを多く出している。でも、本質は違うと思うんだ。組分け帽子も言っていたろ?『スリザリンではもしかして 君はまことの友を得る』って。グリフィンドールが勇敢、ハッフルパフが誠実、レイブンクローが知識なら、スリザリンの性質はーー友愛。君は、友達が欲しかったんじゃないの?」

 

「……ははっ。最後のは独り言じゃなくて質問になっているぞ。……ああ、そうだろうな。僕は、友達が欲しかったのかもしれない。でも、どうしてそう考えたんだい?」

 

「簡単だよ。それぞれの寮の気質を組分けが歌ったのなら、スリザリンは友愛か卑怯となる。卑怯はあり得ないだろうから、友愛だ。それに、君の行動。ロンやハーマイオニー、ハリーが嫌いなら、近づかなければいいはずだ。けど、君は関わってきた。どう考えてもツンデレの行動なんだよね」

 

「ツンデレだと?僕が?」

 

「君が。嫌いって言ってる相手に関わっていくのはツンデレの行動さ」

 

「……そうか。じゃあ、僕の話も聞いてくれるかい?」

 

そう言って、マルフォイは話し始める。

 

「僕の家は知っての通り、聖二十八家の一つだ。それゆえに、僕は小さい頃から純血主義だった。でも、父上は闇の帝王に仕えていたし、クラッブとゴイルも、父上の知り合いの息子として会った。僕もの周りには、純血主義しかいなかったんだ。けど、ホグワーツに来てから、グレンジャーを見て知ったんだ。マグル生まれでも、純血の上をいくことがあるって。最初はそれが信じられなかった。でも、認めざるを得なくなったんだ。そして僕は考えたんだ。本当に、純血主義は正しいのかってね。

 

それに、君たちの関係も見てたんだ。君たちはみんなが言い合い、みんなで進む。それに比べて僕たちは薄っぺらい。クラッブとゴイルは僕についてくるだけだし、グリーングラスは僕の見た目や家系だけで近づいてきた。……ああ、正直に言おう。僕は君たちに憧れたのさ。笑えるだろう?スリザリンが、敵対しているグリフィンドールに憧れるなんて!」

 

マルフォイは少し悲しそうな顔をしている。……憧れた、か。

 

「マルフォイ、ホグワーツ四強ーーホグワーツの創立者について知ってるかい?」

 

「うん?ゴドリック・グリフィンドール、サラザール・スリザリン、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクローだろ?それがどうかしたのか?」

 

「彼らは仲が良かった。特に、ハッフルパフとレイブンクローが。それに負けないくらい、グリフィンドールとスリザリンもね。聞いたことがあるんだよ。スリザリンが別れた原因は、純血主義者を黙らせるためだって」

 

「……そうなのか?それじゃあ、スリザリンの伝説は……」

 

「後の捏造か、もしくはスリザリンが三人に迷惑をかけないように流した噂だろうね。スリザリンが純血主義だとしても、『例のあの人』レベルなら別の学校を作ってるはずさ」

 

マルフォイは愕然としている。それはそうだろう。スリザリンの伝説の一部が、捏造だなんて。

 

「ねぇ、マルフォイ。確かに君は色々やった。でも、もう過ぎたことだ。だからさ?」

 

 

ーー私たちと友達にならない?

 

 

「……ははっ、僕はスリザリンで、君たちはグリフィンドールだぞ?」

 

「寮の違いなんて関係ないさ。ハリーのお母さんとスネイプは仲が良かったらしいし」

 

「僕は君たちを退学させようとしたんだぞ?」

 

「そのあとピーブズをけしかけたからどうでもいい」

 

「あれは君たちか!」

 

マルフォイが叫ぶ。その口元は笑っていた。

 

「……本当に、良いのか?」

 

「何度も言わせないで。ロンとハーマイオニーには言い聞かせとく。ハリーは平気でしょ、多分」

 

「そうか……

 

ありがとう、ディメント」

 

そう言ったマルフォイは泣いていた。けど、笑っていた。こうして、寮を超えた友情が生まれたのだった。

 

……あ、ハグリッド空気だ。

 

 

『うわあぁぁぁぁあ!』

 

突如響き渡る悲鳴。ネビルの声だ。

 

「ハグリッド!」

 

「ああ、なんかあったに違いねぇ。ここにお前さんたちを残しても危ないし、一緒に行くぞ!」

 

「ロングボトムにも謝りたいしな。無事でいるといいが……」

 

声のした方向に進む。そして、何かに怯えたネビルとファングを見つけた。

 

「ネビル!平気か!?」

 

「リーナ!ユ、ユニコーンが!」

 

「落ち着け、ネビル。リーナもだ。ほれ、何があったのか話してみろ」

 

ネビルは深呼吸をして話し始めた。

 

「ユ、ユニコーンの死骸があったんだ。ハリーと見つけた。そしたら、フードを被った何かが地面をはってきて……ユニコーンの血を飲みはじめたんだ」

 

「……吸魂鬼か?ディメント」

 

「いや、吸魂鬼は血肉を食べない。魂を吸い取ることはあっても、死骸は食べないよ」

 

となると、何がいるんだ?……ユニコーンの血?どこかで聞いたような……。

 

「そうだ!僕、ハリーを置いてきちゃった!も、戻らないと!」

 

「一人で行こうとするな、ロングボトム!せめて僕かディメントを連れていけ!」

 

「えっ、マルフォイ!?何が悪いものでも食べたの?」

 

「今はそんなボケは要らないだろう!」

 

そう言いつつ、ハグリッドを置き去りにしつつ、私たちはネビルが来た方向へ走り始める。すると、金髪のケンタウルスが現れた。

 

「そこを退いて。急いでるんだ」

 

「ふむ、この子を探しているのかな?お嬢さん」

 

ケンタウルスが横を向く。彼の背中にはハリーが乗っていた。

 

「僕は大丈夫だよ、リーナ」

 

みんな、ほっとする。ハリーが無事だったからだ。

 

ハグリッドはフィレンツェと名乗ったケンタウルスに言われて、森の奥へと入っていった。フィレンツェはハリーに何かを言うとそのまま去っていった。

 

「ふぅ……無事で良かった、ハリー」

 

「そうだな。無事で何よりだ、ポッター、ロングボトム」

 

「えっ。何か悪いものでも食べたのかい、マルフォイ」

 

「君もか!なんで僕は弄られるんだ!」

 

「マルフォイだからでしょ」

 

「ううっ……ゴホン。それはともかく、色々とすまなかった、ポッター、ロングボトム。ディメントに本音を見透かされてね。自分の心に素直になれた」

 

マルフォイが頭を下げる。ハリーはともかく、ネビルが驚いていた。

 

「えっ、ちょ、なんで頭下げるのさ!いや確かに謝ってほしかったけど、いきなりは心の準備があるから!」

 

「まあまあ、落ち着いて、ネビル。ここは君の魔法薬学を手伝ってもらうってことでいいんじゃない?」

 

オロオロするネビルと落ち着いて妥協点的なものを提案するハリー。

 

「とりあえず、マルフォイはともだちになったけど良いかい?」

 

「うーん、なんでこれまで悪戯とかしてきたの?」

 

「それはね……」

 

〜少女説明中〜

 

「アッハッハ!マッ、マルフォイがツンデレって!」

 

「笑うなよ、ポッター!」

 

「笑われても仕方ないと思うよ。普段は嫌味ったらしいし」

 

「ううっ」

 

カオスである。でも、マルフォイは無事受け入れられたようだ。さて、帰ったら何があったのか、ハリーに詳しく聞かないとね。

 

「明日、そっちのテーブルに行ってもいいかい?」

 

「別にいいよ。ハーマイオニーたちにも何があったのか説明したいし」




近づけると言ったが、一気に友達までランクアップ。マルフォイってツンデレのような気がするんですよね。

スリザリンの性質が友愛なのは間違ってないはず。
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