吸魂鬼に転生してしまいました。   作:零崎妖識

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少なくとも、賢者の石編本篇は終わらせる。そのあとは少し更新できないですね。七月半ば頃まで。多分。


トロールとクィレル

起き上がるトロール。十二メートルはありそうだ。

 

「ハリー、先に行って。クィレルを止めるんだ」

 

「でも、リーナは?」

 

「私は……ここでトロールを倒してるよ」

 

突進してくるトロール。

 

「〈守れ(プロテゴ)〉!」

 

盾の呪文を使って突進を食い止める。

 

「大丈夫。私は死なないさ。絶対に、君に追いついてみせる!〈爆発せよ(コンフリンゴ)〉!」

 

トロールの鼻面が爆発し、トロールが数歩ーーとはいえ、私の歩幅だと十歩はあるかな?ーー後退する。その隙に、ハリーはドアの中へ入っていった。さて、

 

「すぐに追いつかないとね。だから、本気で相手にさせてもらう」

 

トロールは怒りのこもったような目で見てきている。さあ、狩りの時間と行こう。

 

「試してみたかったんだよね。〈鳥よ(エイビス)〉、〈肥大せよ(エンゴージオ)〉」

 

鳥を呼び出し、大きくする。準備は整った。

 

「〈鳥よ、怪鳥となり相手を襲え〉!」

 

魔力を込めた言葉。東洋、特に日本の方では言霊というものがあり、言葉に魂が宿ると言う。なら、魔力を込めれば、似たような事象を引き起こせるのではないか?と言う考えから出来上がったオリジナルの呪文だ。

 

鳥の姿がどんどん変わっていく。二本の足は太くなり、翼からは羽根が消えて飛膜となり、嘴は大きく太く、毛はなくなり、顔の横には大きなパラボラアンテナのような耳がついている。

 

「行ってこい、イャンクック!」

 

『〈怪鳥〉イャンクック』。とあるゲームに出てくる登竜門的存在。先生と親しまれる彼は今、トロールへと向かっていった。

 

「ガァァァァアッ!」

 

突進からの連続の突っつき。一見地味だけど、体重があるからか結構重い一撃である。トロールは棍棒を盾のように持って対応しているが、少しずつ、ひびが入ってきている。

 

「ガァァッ!」

 

トロールの棍棒が折れた。けれど、その隙にトロールは後退。イャンクックの顔面を殴りつけた。しかし、粘着性の火炎液で反撃する。

 

「アアァアァァァッ!」

 

トロールの顔面が焼ける。それでも、トロールは止まらない。イャンクックへパンチを浴びせる。イャンクックは火炎液や突っつきで反撃する。それがしばしの間繰り返された。

 

「アアァアッ!」

 

トロールが後ろへよろける。今だ!

 

「〈滑れ(グリセオ)〉!」

 

トロールの足元を滑りやすくし、トロールを転ばせる。

 

「ガァァァァアッ!」

 

イャンクックは隙を逃さず、上へ飛び乗って、顔面へ全体重を乗せた突っつきをし始めた。

 

「〈水よ(アグアメンティ)〉、〈氷河となれ(グレイシアス)〉」

 

水をトロールの四肢へ呼び出し、凍りつかせる。これでトロールは身動きがとりづらくなった。

 

「最後の仕上げと行こう。〈万全の守り(プロテゴ・トタラム)〉、〈最大爆発せよ(コンフリンゴ・マキシマ)〉!」

 

爆発呪文をトロールにかける。そのままだと自分も余波を喰らうから、盾の呪文も一緒に使っておく。

 

ズドンッ!

 

トロールの全身が飛び散る。私は無事だけど、部屋はトロールの血と脳漿と骨の欠片と肉片と内臓でスプラッタになっている。時間が惜しいから掃除はしないけど。

 

「〈呪文よ終われ(フィニート・インカーターテム)〉」

 

大きな音を聞いて放心していたイャンクックを鳥に戻し、更に肥大化も解除する。あとは自然消滅するだろう。さて、ハリーの元へ向かおうか。

 

私は駆け足で通路を進んでいった。

 

 

 

 

「捕まえろ!」

 

声が聞こえる。聞き覚えのない、けど、嫌な声だ。

 

扉を開けると、円形の部屋の周りを炎が囲っていた。その中でクィレルがハリーの手首を掴んでいる。私の体は意識よりも早く動いていた。

 

「〈縛れ(インカーセラス)〉!」

 

「なにっ!」

 

何故かハリーの手を離したクィレルを縛り上げる。よく見ると、クィレルはターバンを取っていた。後頭部には蛇みたいな顔がついている。

 

「率直に言おう。キモい」

 

「うるさい!」

 

後ろの顔ーーおそらくヴォルデモートーーが叫ぶ。

 

「君たちは私のハリーに何をしようとした?何をした?まあいい。苦しみを味わってもらうだけだ。〈苦しめ(クルーシオ)〉!」

 

「グッ、グァァァァアアアアッ!」

 

磔の呪文をヴォルデモートinクィレルに使用する。人間に対して使ったらアズカバンで終身刑だけど、私たち吸魂鬼は例外的に使っても平気だしね。ダメでもバレなきゃ問題はない。

 

「許さん……許さんぞ!」

 

クィレルの体からヴォルデモートが抜け出る。幽霊、いや、それよりも不確かな霞みたいだ。って、おい!

 

「ハリーに何してるんだ!」

 

あろうことか、その霞はハリーの体を通り抜けていった。そして、ハリーは崩れ落ちた。

 

「ハリー!」

 

私はハリーに駆け寄る。ああ、ハリー。

 

「戻ったら私に言うことがあるんだろう?私もハリーに言いたいことがあるって言っただろう?死ぬな!目を開けてくれ、ハリー!」

 

いやだ。このままハリーが死ぬなんていやだ!

 

「すぐに、マダム・ポンフリーの元へ……」

 

私はハリーを抱えて立ち上がった。マダム・ポンフリーの元へ行けばなんとかなるはずだ。あの人なら!

 

「心配いらんよ、リーナ」

 

私の目の前に人影が現れる。その正体はーー

 

「ダンブルドア……先生……」

 

「ハリーは心配せんでも平気じゃ。ただ、気絶しておるだけじゃのう。マダム・ポンフリーの元へ連れて行けば、五日以内に目覚める。わしが聞きたいのは、『石』は無事か、クィレル先生はどうして苦しんでおるのか、ヴォルデモートはどうしたのか、そして、一つ前の部屋の惨状じゃ。話してくれるかのう」

 

「……ええ。でも、その前にハリーを」

 

「おお、そうじゃのう。もう少しでわしのペットのフォークスが来る。彼に捕まって帰るとしよう。ああ、後でウィルに手紙を送らないと。クィレル先生はアズカバン行きじゃろうし。そうじゃろう?」

 

「ええ。ヴォルデモートが彼に取り付いていました」

 

「やはりか。君はいつから気づいておったのじゃ?」

 

「漏れ鍋で見たときに、変な思考が彼からしていたので。今の時代に、ハリー関連で惨めな思いをしている人なんて、ヴォルデモートぐらいでしょう?」

 

「そうじゃのう。おっと、フォークスが来たようじゃ。わしはクィレル先生を掴もう。さあ、フォークスの足に捕まって」

 

ダンブルドア先生のペットであるらしい不死鳥の足を掴む。すると、その体からは考えられないほどの力強さで私たちを連れて飛び上がった。そしてそのまま、トロールのいた部屋も、薬の部屋も、チェスの部屋も、鍵の部屋も、植物の部屋も、フラッフィーのいる廊下も飛び越して、医務室の前に着地した。

 

「さあ、行っておいで。わしはウィルに手紙を送っておこう」

 

私は先生に頭を下げ、医務室の中へと入っていった。

 

 

そのあとは、ダンブルドア先生に話をした。『石』はハリーのポケットに入っていて無事だったこと、私がクィレルに磔の呪文をかけたこと、ヴォルデモートが霞のようになって逃げたこと、私がトロールと戦い、爆死させたこと。先生は黙って聞いてくれた。そして、私を抱きしめた。

 

「よう頑張ってくれた。ありがとう」

 

クィレルを引き取りに来たのは、アスと言う吸魂鬼と、ランと言う吸魂鬼だった。久々に会った二人はだいぶ個性的になっていた。

 

「あとはボクたちが引き継ぐよ。なに、心配しないでくれ。あの満月にかけて、アズカバンへ連行してみせよう」

 

「ふっふっふ。我が魔手にかかれば容易きことよ。この漆黒の堕天使が、かの悪魔に囚われし罪人を、贖罪をするための地へと誘おう!」

 

厨二病乙。

 

ただキザな言い回しをしただけのアスと、完全に厨二病だけどわりかし真面目なランによって、クィレルは連れて行かれた。クィレルの手は火脹れになっていた。ハリーの手を離したのは、これが原因だろう。

 

 

ハリーが目を覚ましたと聞いたのは、その三日後だった。

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