吸魂鬼に転生してしまいました。   作:零崎妖識

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ハロウィン・パーティの日に

「ハリー!リーナ!うまくいったかい?」

 

ニックが教室から現れる。彼の後ろには、壊れた飾り棚があった。

 

「ピーブズをたきつけて、フィルチの事務所の真上に墜落させたんですよ。そうすれば気をそらすことができるのではと……」

 

ニックがフィルチの気を引いてくれたのか。ほんと、いい霊魂(ひと)だよ。

 

「そういえば、あー、もし、あつかましくなければ、ですが、今度のハロウィーンが、私の五百回目の絶命日に当たるのですが……私は地下牢を一つ使って、パーティを開こうと思っています。よろしければ、出席していただけませんか?」

 

絶命日パーティか。聞いたことがあるような無いような。バレンタイン・デイ頃のいろいろなお祭りも、絶命日パーティに入るのかな?イースターは……復活祭か。

 

しかし、死ぬと人の価値観は変わるのかねぇ。生と死の境界。此の世と彼の世。此岸と彼岸。一つの冒険の終わりと新たな冒険の始まり。彼も死ぬまでは生きたいと思っていただろうに。死んだら死んだで、その日にパーティを開く。前に読んだ日本のマンガで、墓場で亡者が合コン?して、享年聞いたり死因を聞いたりしてたけど、私も死んだらこんな感じなのかな。それとも、ニンゲンとは違ってそのまま消え去るのかな。

 

「で、リーナはどうするの?」

 

「うん?なんのこと?」

 

「だから、絶命日パーティに出席するかしないか」

 

「うーん。去年は満足に食べられなかったしね。それに、絶命日パーティって基本的に参加者はゴーストでしょ?人が食べられる物出るの?」

 

「……あれで満足に食べられてない?食べたものどこに消えてるの?」

 

乙女の秘密だ。

 

「えっと、リーナは出席しないってことでいいんだね?ごめん、ニック。僕も出席しない」

 

「そうですか。それは残念です。しかし、青春しているようで。今この瞬間を大切になさってください」

 

 

 

「絶命日パーティですって?生きているうちに招かれた人ってそんなに多くないのよ?なんで行かなかったの?」

 

「理由は言ったよ?」

 

談話室に戻り、いつものメンバーにさっきあったことを話した。そしたら、ハーマイオニーが絶命日パーティにすごく興味を持って、さっきのセリフを言った。

 

「ロックハート先生も誘われたことがあるのかしら。いえ、あるはずだわ。本に書いていないだけで!」

 

ちょっと誰か、『万能薬』取ってきてー。これもう病気だー。

 

「自分の死んだ日を祝うなんて、想像できないよ。それより、誰かこれ教えてくれない?」

 

ロンは魔法薬の宿題が終わっていないようだ。ネビルも一緒にやっている。

 

ふと、談話室の中を見回してみた。暖炉では暖かな炎が燃え、椅子を照らしている。生徒たちはそれぞれ好き勝手に動き、赤毛の双子は、火蜥蜴(サラマンダー)に花火を食べさせようとしている。……破裂。まさにそうとしか言いようがないようすで、火蜥蜴が吹っ飛んだ。イメージとしては、限界まで空気を入れて、口を開けて手を離した風船か。部屋を縦横無尽に飛び回り、最終的に暖炉の中へ消えていった。パーシーはフレッドとジョージに怒り、他はいつもの事だと笑っている。ああ、こんな日常が続けばいいのに。ハリーと。

 

 

どんどんハロウィンが近づいてくる。広間の飾りつけは変わり、ダンブルドアがパーティの余興として『がいこつ舞踏団』を予約したとの噂も流れ始めた。寮の中でも、仮装する生徒が増えていく。最初は双子。その次にリーが。そしてどんどん広がっていく。うん。去年のような恐怖じゃなく、こんな楽しいのがハロウィンだ。ディス・イズ・ハロウィン。今度ダンブルドアを見かけたら、『トリック・オア・トリート』とでも言ってみようかな?

 

金の皿には、かぼちゃパフェやらパンプキンパイやらが載っていた。プリンもある。去年はトロールのせいで全種類は食べきれなかったからね。今年は全て食い尽くす。いただきます。

 

「やあ、ハリー。リーナはどうしたんだい?」

 

「やあ、ドラコ。リーナは去年の悔いをはらしてるところだよ」

 

「そうか……すごい食いっぷりだな。そういえば、ドビーが言っていたことはわかったのか?」

 

「多分、蛇に関係する何かだと思うんだけど……」

 

「蛇と言ったら我がスリザリン寮だな。……ああ、そういえば。なあ、『秘密の部屋』って知ってるかい?」

 

「いや、知らないけど。それがどうかしたの?」

 

「ハリー。秘密の部屋って言うのは、ホグワーツ創始者の一人、サラザール・スリザリンが秘密裏にこの城に遺した部屋って言われているの。なんでも、怪物が入っているんだとか。その部屋を開けられる者は、『スリザリンの継承者』だけらしいのよ」

 

「ハーマイオニー。説明をありがとう。その秘密の部屋なんだけど、何十年も前に、一度開かれているらしいんだ」

 

「どうしてそんなことを知っているんだい?」

 

「父上から聞いた。なんで教えてくれたのかは知らないし、中に何が居るのかも知らない。父上よりも前の世代の話だ。ただ、マグル生まれが一人、死んだとだけ」

 

……秘密の部屋、か。何も起きなければいいけど。

 

そう思っていた時期が私にもあった。すぐに裏切られたけどね。

 

 

 

それは、ハロウィン・パーティがひと段落して、寮に戻ろうとしている時だった。急に、ハリーが辺りを見回し、走り始めたのだ。

 

「なあ、ハリーはどうしたんだ?」

 

ドラコが聞いてくるが無視。私たちはハリーを追いかける。

 

「まただ。また、『声』が聞こえた!」

 

自分でも、私が緊張して筋肉がこわばったのがわかった。だとすると、もしかしたら、この先にはーー

 

 

『秘密の部屋は開かれたり

継承者の敵よ 気をつけよ』

 

 

誰もいない、水浸しの廊下と、壁に書かれた警告文。その下では、松明の腕木にぶら下がったミセス・ノリスが、死んでいるかのように目を見開いて硬直していた。

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