ここで雑用をすることになってから初めて日記を書いた。だから、これまでのことを書こうと思う。誰かがこれを読んだなら、つまらないと捨ててしまうのだろうな。しかし、これは私なりの心の整理なのだ。……自分の日記なのに何を書いているんだろうか。
この場所に来てから一ヶ月ほど経ったとき、私は与えられていた部屋から出ることになった。ようやく死ぬのかと思ったが、どうやらそうではないようだった。死刑なら、あいつらが直接来るはずだ。だが、私を連れ出しに来たのは人間だった。
地下へと連れて行かれた私は、何かの赤い錠剤を飲まされた。もしや、毒薬の実験か?呪いに犯された私の身体では意味がないと思うがな。まあ、その予想も外れたのだが。
錠剤を飲んだあと、身体の不調がどんどん消えていった。まるで、呪いが抜けていくかのように。おおよそ二時間後には、私の身体はあの方を受け入れる前、私の全盛期と言える頃にまで回復した。錠剤の瓶が置いてあったので見てみると、ラベルには『SCP-500』と記載されていた。この時はまだ何のことかわからなかったが、今思えばこれが彼女の言っていた超技術によって作られた薬なのだろう。そして、私を表舞台から裏の世界へ引きずり込んだキッカケでもある。いや、マグルから見れば私たち自身が裏の存在だろうし、かの帝王に味方した時点で魔法界の闇へ踏み込んでしまっていたのだろうな。
回復して余裕が出てきた私は、部屋を見回してみた。……はて、ここはあのアズカバン牢獄のはずだ。なぜ、非合法であろう生物がいるのだろう。少なくとも、私はこれまでの人生で、恐竜を思わせる青い大きなトカゲなど見たことがないのだが。……あ、猫が二足歩行で歩いてる。
数分後、白衣を着た無精髭の男が私の前に現れた。以下は、彼が私に話した内容だ。うろ覚えだから、少し違うかもしれないが。
「やあ、調子はどうだい?
「俺か?俺はブライト・ディメント。
「発明家で研究者だ。
「何を隠そう、さっきお前が飲んだ薬は俺が作った。
「再現したが正しいがね。
「……俺のことを疑ってるみたいだね。
「え?あの子との関係は家族だぜ?
「いや、どっちかって言うと親戚か。
「まあ、そんなことはどうでもいい。
「少しお願いしたいことがあってね。
「なに、断ってもただ再収監されるだけだ。
「俺の、いや、ディメント家の助手をしてほしいって話なんだがな?
「ある意味、魔法界の裏に迫るような内容だ。
「さっきも言ったが断ってもいいんだぜ?
「逃すつもりは毛頭ないがね。
「……いや、アレの実験台にするのもいいな。
「よし、なら断ったら実験台で、受け入れたら
「さあ、どうするんだい?
「俺としては実験台の方が嬉しいけど、
「お前にとっては奴れ……助手の方が楽だぞ?
「さ、選びな」
もちろん助手だった。実態は雑用係、いや、奴隷みたいな感じだったが。奴隷よりはマシか。
私に任された仕事は、ブライト・ディメントが作ったモノーーSCPオブジェクトとやらの管理、観察、並びにモンスターとやらの世話だ。また、書類仕事を手伝うこともあったり、なぜかマグルのテレビゲームの手伝いもさせられる。
私はもっとまともな仕事が欲しいと考えている。SCPオブジェクトは安全で可愛らしいモノもあるが、大半は何かしらの危険性を持っているし、モンスターは一部が放逐されているから探しにくいし攻撃されるし、ゲームにいたってはなぜやらねばいけないのだろう。書類仕事はまだマシだが、そのくらい自分でやれと常々思う。
しかし、逆らえない理由がある。なぜ、彼らディメント家がアズカバンの管理を任されているのか。それがわかった時に、私は逆らう気をなくした。彼女が私のトロールを爆死させ、〈磔の呪文〉を使ってきた理由も理解できた。確かにこれは、魔法界の裏に迫るものだろう。帝王も知らないであろう、とある純血一族の裏の顔。いや、こちらが表の顔だろう。
だが、彼らは気のいい人ばかりのようだ。なぜ、元囚人の私を信用しているのか。それが気にかかる。
……おっと、呼ばれてしまった。やれやれ、また仕事か。この続きはまた今度書くとこにしよう。時間が取れればだがね。最後に、誰の物かわかるように、名前でも入れておくか。様式美と言うやつだ。
ーークィリナス・クィレル