森の中をさまよって二十分ほど。ようやく、蜘蛛を見つけた。森の小道からそれて、さらに奥へと進んでいく。
「クモたちはどこへ向かってるんだろう?」
「さあ、ね。でも、この子たちは何かを恐れ、何かを頼ろうとしている。こんな時に頼れるのは、親玉だろう」
「クモの親玉?」
三十分追いかけて、蜘蛛の列を見失ってしまった。
「クモは?」
「わからない。……何か聞こえた!」
カシャッカシャッと大きな音。次の瞬間、私は毛むくじゃらの何かに捕まれ、逆さまの状態で運ばれた。ーー蜘蛛だ。大きな蜘蛛。ハリーも捕まり、ファングも捕まった。
しばらく運ばれ、蜘蛛は唐突に、私たちを解放した。周りを見ると、蜘蛛だらけ。先ほど私たちを運んだ蜘蛛と同種のようだ。
「こいつら、アクロマンチュラか?」
「何それ」
「魔法生物だよ。大蜘蛛だ。強力な毒を持ち、人語を解する。ほら、ハサミをガチャガチャ言わせてるでしょ?よく聞いてみて。言葉が聞こえる」
耳を澄ませると、蜘蛛たちは「アラゴグ!」と叫んでいる。目の前にある蜘蛛の巣のドームから、一際大きな蜘蛛が顔を出した。八つの目は全て白濁している。
「何の用だ?」
「人間です」
「ハグリッドか?」
「知らない人間です」
「殺せ」
「……一つ聞いても良いかい?アクロマンチュラーーアラゴグと呼んでも良いかな?君たちはハグリッドとどんな関係なんだい?私たちは友達だけど」
「友達だと?ハグリッドはこのくぼ地に人をよこしたことはない。わしとハグリッドは、親友だ。いいやつだ。わしが女の子を殺した罪を着せられた時に、ハグリッドは守ってくれた。いや、それよりも前にも。まだ卵だったわしの面倒を見てくれた。この森に住まわせてくれ、妻も探してくれた。ハグリッドには恩がある」
「君は、『秘密の部屋』のことを知ってるの?」
「その中に居る物は、わしら蜘蛛の仲間が何よりも恐れる、太古の生き物だ。これ以上は聞いてくれるな。わしらはその生き物の話をしない」
……蜘蛛が恐れる生き物。情報を整理しよう。生き物はパイプの中を通り、あらゆる場所に顔を出す。蜘蛛が恐れる生き物。そういえば、雄鶏が殺されていた。殺す必要があった?
「あ、あの……僕たち、もう帰ります」
「帰る?それはさせない。ハグリッドを襲うことはないが、新鮮な肉をおあずけにはできんよ。さらばだ、ハグリッドの友人よ」
周りの蜘蛛が詰め寄ってくる。
「リーナ、何か無いの?」
ハリーに聞かれた私は、ポケットの中から小瓶を取り出し、アラゴグの方へ投げつけた。
「〈
小瓶は壊れ、中からジェルが出てくる。それをもろに被ったアラゴグはーー
「な、なんだこれはあひゃひゃひゃひゃっ!」
ーー身悶えて大笑いしている。周りの蜘蛛は突然変な行動をとったアラゴグに驚き、停滞した。
「今だ!」
その隙に、アクロマンチュラの群れから逃げ出す。ーー上手く逃げ切れた。
「はぁ……はぁ……リーナ、何、あれ……」
「……ブライトからの、クリスマスプレゼント。あらゆる生物をくすぐり、笑わせてしまう、平和だけど、恐ろしい、物」
SCP-999『くすぐりお化け』
敵に回すと厄介なSCPオブジェクトの一つだ(こいつは絶対に敵対しないけど。あらゆる生物に対して平等だ)。
透明マントを回収し、こっそりとグリフィンドール談話室に戻る。それぞれの部屋に戻って、謎の生き物について考えていた。
……多分だけど、あの王者だろう。アクロマンチュラが蜘蛛の王だとしたら、アレは蛇の王。あの王蛇なら、全ての証言に納得がいく。……まだ残りあるし、案外簡単に攻略できるかも?