「……ハリー、透明マント、持ってるよね?ハンカチ大にしたやつ」
「うん。使うんでしょ?職員室に忍び込むのに」
ハリーはポケットから、銀鼠色の、シルクのようなハンカチーー最小サイズの透明マント改を取り出した。
「……戻ったほうが良いんじゃないのか?」
「嫌な予感がするんだ。多分、私たちにも関係がある」
ドラコを納得させて、大きくした透明マントをかぶる。よし、行こう。
先生たちに紛れ込んで、職員室の中に入った。唯一、停職になったダンブルドアだけがいないーーあ、ロックハートもいないや。
少しして、マクゴナガル先生が話し始めた。
「とうとう起こってしまいました」
悲しみ、そして二方向への怒り。それは、継承者と、自分自身へ向けられていた。
「生徒が一人、怪物に連れ去られました。『秘密の部屋』そのものの中へです」
生徒を連れ去った怪物ーーひいては継承者へ怒りを向け、防げなかった自分へ怒りを向けるマクゴナガル先生。
「なぜ、そんなにもはっきりと言えるのか、教えてもらえますかな?」
「『スリザリンの継承者』がまた伝言を書き残したのですよ、セブルス。最初に残された文字のすぐ下にです。彼女の白骨は永遠に『秘密の部屋』に横たわるであろう、と」
「誰ですか?いったい、どの子がさらわれたんですか?」
「……ジニー・ウィーズリーです」
ロンが飛び出そうとした。慌てて、ハリーとネビルがロンを抑える。抑えなかったら彼は、マクゴナガル先生の胸ぐらをつかんで問い詰めていただろう。それほどまでに、今のロンの心は複雑だった。
「全校生徒を明日、帰宅させなければ。ホグワーツはおしまいです。ダンブルドアはいつもおっしゃっていた……」
バタン、と扉が開いた。もしや、ダンブルドアが帰ってきたのかと、みんながそっちを向いた。
「大変失礼しました。ついうとうととしていましてね。何か、聞き逃してしまいましたか?」
ここで杖を抜いて呪いをかけなかった私を誰か褒めて欲しい。遅れた挙句、ダンブルドアかと期待させておいて「何か聞き逃してしまいましたか?」だと?ふざけるな。ロンの妹が攫われたんだぞ?
次の瞬間、一斉に先生方が、ロックハートにとある意味の言葉を浴びせかけた。「お前は常々「自分はスリザリンの継承者のことをわかっていた」とか言ってたから秘密の部屋行って女子生徒救ってこい」、と。意味は、「お前は邪魔だからどっか行ってろ」。マクゴナガル先生も厄介払いができたと言っていたし。
寮には戻らず、これからどうするか考えた。第一目標としては、『秘密の部屋』に乗り込んでジニーを救い出す。けど、バジリスクが厄介だ。……でも、行くしかない。
「ロックハートを連れて行こう。一応教師だし」
「盾になってもらおうか」
そんなこんなで、まずはロックハートの部屋へ。
部屋の扉を開けると、部屋の中は片付けられ、なんと言うか、夜逃げみたいな雰囲気だった。
「……先生、夜逃げですか?」
「な、なんのことだね?」
「逃げるんですか?」
「しょ、職務内容にはなかったことだ」
「僕の妹はどうなるんですか!」
とうとうロンが怒った。ついでに、こんなことも言っておこう。
「先生、現在ディメント家の一部があなたの本の真偽について調べています。少なくとも、ノンフィクションと謳われた七冊のうち、四冊が先生以外の者が行ったことだと判明しています。おそらく、〈忘却術〉でしょうね。他人の偉業を自分のものと偽る、盗作、詐欺、他にもいくつか罪状が付くでしょうね。さて、それを踏まえてですが、先生、これから『秘密の部屋』に乗り込むんですけど、ついてきてくれませんかね?」
暗に、断ったら「魔法界のアイドル・ロックハート」の真実をバラすと言い、従わせてみた。ちなみに、断っても断らなくてもバラすつもりです。
「あ、その前に杖は没収しておきましょう。ドラコ、お願い」
「ああ。……いや、リーナが〈呼び寄せ呪文〉を使ったほうが早いんじゃないかい?」
そう言いつつも、ドラコはロックハートの杖を見つけ出し、自分のポケットにしまった。
「さて、行きましょうか先生」
間違えた。先生は「逝きましょう」だったね。