部屋の中は細長く、薄明かりが付いていた。壁際には、左右一対の蛇が絡み合った彫刻の柱。趣味が悪い。
奥へ進むと、年老いた男の石像が目に入った。これがサラザール・スリザリンだろう。石像の手前にはーー
「ジニー!」
ジニーがいた。まだ息はある。でも、非常に希薄だ。彼女の近くに落ちている日記。もしかして、魂を奪い取って、ジニーを操っていたのか?
「その子はもう目を覚ましはしない」
声が聞こえる。振り向くと、背の高い、黒髪の少年が立っていた。
「トム・リドル……!」
「……感情が凄く薄い。今のジニーよりもはるかに。今の君は、思念体といったところかな?」
「よくわかったね。なら、僕が誰なのかもわかってるんだろう?」
「ああ。スリザリンの継承者で、五十年前にも、この部屋を開いた。そして、今は日記に宿り、あの日記に心を許した者の魂を奪う」
「大正解。でも、それだけじゃーー」
「ハリーには教えてなかったけどね、私は君の本体を知っている。大方、あの禁呪を使って遺したんだろう?
ヴォルデモート」
私がその名を告げると、リドルは笑い、ハリーは顔が険しくなった。
「はははっ!本当に面白いよ!そこまで見透かされてるなんてね!ああ。確かに禁呪だよ。今、コレと同じ存在は六つある。中でも、僕が一番力を持っている!」
「だろうね。魂を引き裂くのは、ほぼ必ず半分ずつだ。ホグワーツ在学中に作ったんなら、君が一番、内包されている魂が大きい」
「……ごめん、よくわからないから教えて」
「うん。簡単に言うと、大きな罪を犯すことで、魂を引き裂き、箱の中に入れる禁呪ーーホークラックス、『分霊箱』を、こいつは作ったんだよ。まあ、箱って言うのは定義だけで、実際には関係の深い物ならなんでもいいんだけどね。それで、あの日記の中には、誰かを、いや、マートルを殺した時のヴォルデモートの魂が宿っているんだ」
「ああ、そうさ。僕は単なる記憶みたいなものだ。でも、ダンブルドアは追放された!僕を止めることはできやしない!」
踏ん反り返るリドル。しかし、笑顔が凍りつく。歌うような、美しい鳴き声が聞こえてきた。ーー不死鳥だ。彼(彼女?)は、ハリーの頭にボロボロの帽子を落とし、私の肩に止まった。大きさの割に軽い。流石、伝説の生き物。
「ありがとう、フォークス」
落とした帽子は、古い組分け帽子だった。
「はっ。そんなもので僕に勝てるとでも?歌い鳥と古帽子で?やれると思うか?」
今気付いたけど、リドルの輪郭が少しずつはっきりしていっている。どんどん実体に近づいていってる。早くしないと。
「さて、御託はここまでだ。始めようか。『■■■■■■。■■■■■■■■■■■■■■■。■■■■■■■』」
私には何を言っているのかわからない。でも、おそらく合言葉みたいなものだというのはわかった。スリザリン像の口が開き始めてるからだ。あの中から、バジリスクが出てくるのだろう。私は、蜘蛛の王に投げた小瓶と同じものを、スリザリン像の口の中に放り込んだ。
「はっ、そんな小瓶で何ができる。■■■■■■ーーおい、どうした。なぜのたうちまわっている!いや、そのピーナッツバター色の粘液は一体なんなんだ!」
「あははっ!」
流石、流石だよブライト!本当に、アレと全く同じようにしてくれるとは!
「おい、バジリスクに何をした!」
「とある物体を引っ付けただけだよ。君にはバジリスクが笑っているのがわからないのかい?そこで黙って見ているがいい、亡霊」
私はリドルに言い捨て、バジリスクに向き直る。笑い転げているから、今の彼は眼を閉じている。さあ、大博打だ。
バジリスクの心の中に入り込む。バジリスクを形作るモノ、内なる自分とでも言うものを探すために。
「……誰?」
暗い部屋の奥にいたのは、小さな男の子だった。あれが、バジリスクのメンタルイメージだろう。
「私は君と話をしに来たんだ。君について、教えてくれるかい?」
「……うん。ボクはバジリスクって呼ばれてる。父さんからは、ヨーンって呼ばれてた」
「父さん?」
「みんなは父さんのことを、サラザールとか、サラとか、スリザリンって呼んでた」
「へぇ。なんで、部屋がこんなに暗いの?」
「人を殺したくない。ボクはホグワーツを守れって、父さんに言われたのに、命令されて、逆らえなくて……!」
バジリスクもただの被害者だったんだろう。おそらく、何かしらの契約で、強い蛇語使いには逆らえなくなっている。
「契約書か何かあるの?」
「ある。でも、ボクだと破けないんだ。……お姉さんなら、破くことができるの……?」
「やってみせよう」
ヨーンから契約書を受け取る。本来、この手のものは関係者ーーこの場合はバジリスクと使役者にしか破けない。けど、
「
「はぁ……はぁ……これで、君は自由だ。君を縛るものはない。君のしたいようにするといい」
「うん。ありがとう、お姉さん!」
部屋に光が射し、ヨーンが笑顔になる。私は、そのままバジリスクの心から出て行った。
「ーーおい、なぜ動かない!なぜあいつらを殺さない!早く、早くしろ!」
「無駄だよ。もう、バジリスクは君に縛られてはいない」
「何だと!?」
「リーナ、上手くいったの?」
「ああ、もちろん。バジリスクは自由、もうリドルに従うことはない。……ところで、その剣は何?」
「何か武器を探してたら、組分け帽子から引き抜けた」
(それ、父さんの友達が持ってた剣!)
「「うわっ?!」」
急にヨーンが話しかけてきた。驚いた。
(ゴブリンの銀で出来てるって)
「ゴブリンの銀……ああ、なるほど。ヨーン、この剣を咬んでみて」
「おい、なぜそいつらの言うことを聞くんだ、バジリスク!」
ヨーンが剣を咬む。毒が流れ出し、剣に染み込んでいく。
「ゴブリンの銀……確か、有益なものを吸収して強くなるんだっけ?」
「当たり。さて、やることはわかるよね?」
「もちろん!」
ハリーは日記に近づく。そして、剣を逆手に持ち、振り被る。
「止めろ……止めろ、止めろ止めろ止めろ止めろ止めろーーっ!」
「嫌だ!」
そのまま、剣を日記に突き刺す。リドルは悲鳴を上げ、消えていき、ジニーの顔には赤みが戻っていった。
一件落着。
なぜシリアスが崩壊したのか。SCP-999ってやつのせいなんだ。
ヨーン→どこぞの巨大蛇の名前。とある感想で見て。
新作→魔法科高校の電脳少女(カゲプロのエネを達也くんのところに)