私たちはなんとか立ち上がり、周りを見渡した。霧が深い荒地のような場所だ。
近くには不機嫌な顔の魔法使いが二人。どっちも、徹夜で仕事をしているようだ。
「やあ、アーサー。非番のようだな羨ましい。ウィーズリー御一行……まあ、アーサーの子供たちに追加四名は四百メートルほど向こうのキャンプ場だ。歩いて最初に出くわす場所。ロバーツさんと言う人が管理人だ。ディゴリーは……二番目のキャンプ場。ペインさんだ。すまんが急いでくれ。五時十五分に黒い森から大集団が到着するんだ。こっちは夜通しで仕事なんだから少しは休みたいんだ。だから私らにこれ以上時間を使わせないでくれ」
「ええと……すまん、バージル。君たちの分まで楽しんでこよう」
「「私らもちゃんと観戦するさ!」」
バージルさんに礼を言い、私たちは歩き出す。霧で何も見えないが、二十分も歩いていると小さな小屋が見えてきた。どうやらあの向こうが私たちが泊まるキャンプ場のようだ。
ディゴリー親子と別れて小屋に近づく。男性が一人立っているけど、訝しげにテントを見ているし、どうやらマグルのようだ。
「あんたらも宿泊客かい。名前は?」
「ウィーズリーです。テントを二張り、予約しました」
「あいよ。ウィーズリーさんはあそこの森のそばだな。一泊だけかね?」
「そうです」
「そうか。なら使用料は今すぐ払ってくれるかね?」
「わかりました。ええと──」
「これで足ります?」
ポケットからマグルの札束を引っ張りだして少し焦ってるアーサーさんから札束を奪い、金を払う。
「確かに。嬢ちゃん、しっかりもんだな」
「どうも」
ロバーツさんに頭を撫でられて、ついでに飴を貰った。ハリーが少しむくれてたけど。
「ふむ、おめえさんらも外国人かね?」
「外国人?」
アーサーさんがキョトンとした顔をする。……なるほど、魔法使いとマグルの貨幣は違うから、マグル社会で買い物やら何やらをしたことがない魔法使いたちは色々やらかすと。
「今までこんなに混んだことはねえし、だいたいの客が金勘定ができねえし、それにふらっと現れる。おめえさんたち、何もんだ?」
ロバーツさんの顔が険しくなる。その時、どこからか一人の魔法使いが現れて、ロバーツさんに杖を向けた。
「〈
呪文がかかると同時に、ロバーツさんの顔はとろんとして、目はうつろになった。なるほど、これが忘却術か。
ロバーツさんから地図を受け取り、テントを張る場所へと向かう。少しの間同行してくれた魔法使いによると、ルード・バグマンと言う人物がそこらじゅうでクィディッチについて話してしまって、それが管理人のマグルたちにも届いてしまうらしい。スタッフ側の苦労が絶えないとも。
キャンプ場の一番奥に私たちの場所はあった。森の際の空き地に『うーいづり』と書かれた小さな立て札がある。
「最高の立地じゃないか!競技場はこの森のすぐ裏だ。こんなに近いとはね」
アーサーさんはリュックを下ろしてテントを取り出した。人力で建てるらしい。もちろん、ウィーズリー家並びにドラコはやり方を知らなかった。ハリーと私で場所を指示して、ハーマイオニーも含めた三人でテントを設営していく。
さほど時間はかからずにテントが完成した。二人用の小さなテントが二つ。
「これ、全員入るの?残りのメンバーも到着したら十二人だよ?」
「おや、心配はいらないさハリー。見ててごらんなさい」
アーサーさんがテントに入っていく。ハリーとハーマイオニー、私がそれに続いていくと、中は古風なアパートのようだった。寝室にバスルーム、キッチン付き。
「同僚のパーキンズから借りたんだ。やっこさんはもうキャンプはやらないと言っていたがね。腰痛だそうだ」
その後はアーサーさんの指示で水を汲んできたり薪を集めてきたりした。周りのテントは個性豊かで、もはや私たちのマグル風のテントだけが異常と見られてしまいそうだった。
アフリカやアメリカ、それにブルガリアも。ブルガリアのテントには国旗とクィディッチ選手のポスターが貼ってあった。ビクトール・クラムと言う、世界最高峰のシーカーの一人だそうだ。
ホグワーツの生徒にも会ったし、他の魔法学校の生徒も見かけた。マグルの格好をしている人も居れば、可笑しい格好の人も居る。その国の民族衣装を着て居る人も。遊んでる人も居たし、何かの修行をしている人も居る。
なぜか柔道の試合をしている一団と剣道の試合をしている一団と空手の試合をしている一団が居た。少し見てたら、それぞれの団から代表者と思われる一名ずつが出て着て、何やら話し合ったかと思ったらいきなり喧嘩を始めた。柔道家は投げようとして剣道は竹刀を振り下ろして空手がそれを弾き飛ばす。周りは賭けをしている。なんだこれ。
「魔法使いたちが集まるといつもこうなるんだよ。おかげで、役所は大忙しさ」
アーサーさんが愚痴を漏らす。周りには折れたマッチが大量に転がっていた。