「ハックション!!」
寒い。日中とは言え下着までずぶ濡れの状態では流石に寒い。それにこんなずぶ濡れ状態を誰かに見られる訳にもいかないから監視カメラの画像をハッキングしながら誰にも会わないように隠れながら移動しているから余計に部屋まで行くのに時間が掛かり余計に体温が下がってきてしまった。
ヤバイな。手足の感覚がなくなって来た。部屋に着いたらシャワーを浴びて体温を上げなくては。そして後もう少しで部屋に到着すると言う所で、トラブルが発生した。
部屋の近くで誰かが話しているのだ。監視カメラの画像を見るにどうやら本音さんと簪さんの二人のようだ。距離が離れているから何を話しているかは分からない、が表情を見る限り楽しくおしゃべりしているようだ。
楽しくお話している分には構わないのだが、せめて部屋の中かもしくは休憩室で話してくれないかな。部屋の前で話されていたら俺が入る事が出来ない。さて、ホントどうしよう。体温がかなり下がっているこの状態、早くあったかいシャワーを浴びたいのだが、今このまま部屋に向かえば二人に見つかってしまう。
で、こんなずぶ濡れ状態を見られたら絶対にどうしてこうなったかを聞かれてしまう。服の一部が濡れているって言うのならまだ何とか誤魔化せるが、全身がずぶ濡れの状態なんてそうそう起きることではない。しかも全校放送で生徒会室に呼ばれた後にこの状態である。簪さんは姉である楯無さんのISの能力の事は知っているはずだから、下手な言い訳しようものなら簪さんは姉である楯無さんが俺をずぶ濡れにした、と思ってしまうかもしれない。まあ、間違いではないが。
だが、現状ただでさえ二人の仲はあまり良くないと言うのにそんな中で姉がルームメイトをずぶ濡れにした、なんて発覚したら二人の中が険悪な物になってしまう。
嫌だよ、俺。俺が原因で二人の中が険悪になるとか。それに俺的にはたかが水でずぶ濡れになったくらいどうって事は無いし。こんな事小中学校でしょっちゅうあったし。お返しとして「八卦龍」を使っていじめっ子の家を浸水させてやったけどな。
それはともかく、ホントどうしよう?このままじゃあ風邪をひいて、し……ま…
「ハックション!!」
「誰かいるの~?」
まずい、隠れなくては!!
「誰か、いたのかな?」
「そうかな~?あ、でねかんちゃん」
あ、危なかった。隠れるのがもう少し遅かったら、見つかってしまう所だった。運よく近くの空いていた部屋に隠れる事が出来た……って、これ不法侵入じゃね?
は、早く撤退せねば、ってまだ外には二人が、
「…まったく、一夏め。もう少し自分の立つ場を考えられんのか?」
……あ
「……一二三、何故寮長室に勝手に入っているんだ」
「え、あ、いやこれはですね」
ここって寮長室だったのか!?気がつかなかった、っていうか勝手に入った理由を考えね「一二三、どうしてずぶ濡れになっているんだ?」ば……
寒さで上手く働かない頭を使い言い訳を考えていたら、目の前に織斑先生がいて俺の両手を掴んでいた。
「此処まで冷たくなるまで一体何をしていたんだ!!ここでシャワーを浴びて来い、今すぐに!!」
「い、いやそんな訳には「返事は、YESかはいだ!!」は、はい!!分かりました」
目が笑っていない笑顔が此処まで恐い物とは、思いもしなかった。笑顔と言う名の脅迫を受けた俺は大人しく寮長室のシャワー室で体を温めることに。冷たい体に温かいお湯が気持ちいい。
「あ、織斑先生、シャワーお借りしました。それとジャージも」
「かまわん。気にするな」
シャワー室から出てきたら織斑先生はいつものスーツ姿から私服姿に変わっていた。
「では、俺はこれで戻りますね」
愛想笑いをしながらドアの方に逃げようとしたのだが
「まあ、まて一二三。少し話をしようじゃないか」
肩を物凄い力で掴まれてそのままテーブルの椅子に座らされました。やはり魔王からは逃げれないのか……。
「さて、と……。一二三さっきの事だが、どうしてあんなにずぶ濡れになっていたんだ」
やはりその事の話になりますよね。
「い、いやーちょっとドジっちゃいまして頭から水を被ってしまったんですよ、ホント運がなかったな~ハハハ」
「ほほう。頭から水を被ったから、そこまでずぶ濡れになったのか」
「ええ。ホントついてないですよね~」
「なるほど。ずぶ濡れになった事は分かった。で、何所で全身がずぶ濡れになるほどの水を被ったんだ」
い、言い訳を考えなくては。
「え、えっと、そう男子トイレで手を洗おうとしたらちょっと勢いよく蛇口を捻りすぎてしま「この学園のトイレの蛇口は全てセンサー感知式だが?」って……」
い、言い訳……
「そ、そうそう、学校を見学してた時にプールを見つけてちょっと近寄ったら足を滑らしてしまって落ち「今の時期プールに水など入っていないが?」て……」
言い訳……
「が、学校の中庭にある噴水の近くでちょっと躓いてしまってそのまま水の「この学園にそもそも噴水自体が無いが」中に……」
……。
「で、一二三。本当の所、どうしてそうなったんだ」
真剣な表情で質問してくる織斑先生。正直に話した方が良いのかも知れない。だが、俺は楯無さんと約束してしまったのだ。この事は秘密にするって。いくら相手が織斑先生だからと言ってそう簡単に喋るわけにはいかない。
「……すみません。答えれません」
「何故だ」
「すみません。それも答えれません」
「……」
険しい表情になった織斑先生の視線に耐えながらも俺は視線を逸らさずに言い切った。視線を合わせてから数十秒後、織斑先生はため息を一つついた。
「一二三、貴様がそこまで言うのなら今回は、その答えで我慢しよう。だが、もしもう一度同じような事が有ったら絶対に理由を聞きだすからな。いいな」
「はい。分かりました」
その後、濡れた服は織斑先生が乾かしてくれるとの事で服を預けて部屋に戻る事に。流石にあの二人はもういないようですんなりと部屋に入る事ができた。簪さんもどこかに出かけているようなので今のうちに予備の制服を取り出して着る事にした。
さて、簪さんが居ないうちに夕食の準備をしておこうかな。それと今日の呼び出しについての言い訳も考えておかないと。
この時、俺は自分がされたことに対して深く考えていなかった。なぜならばたかだかずぶ濡れになった程度、としか思っていなかったからだ。小中学校と虐めれられていた俺は水を掛けられる、なんてことは結構有ったために今回の事も服が濡れた程度、としか認識していなかった。
が、それはあくまでも俺視点の話であり他の人から見たら全く別に見られている、なんて思ってもいなかったのだ。
読者の皆様に聞きます。
貴方がちょっと気になっている異性の人が身内が勤めている委員会の教室に連れて行かれ、帰ってきたらずぶ濡れになっており、そのことを聞いても誤魔化されるか、明らかに無理がある理由を言われる。身内との中は険悪一歩手前状態。
そんな時、貴方は身内の人にどんな態度を取りますか?
答え1 言い分をとりあえず聞いてその場は我慢する。
答え2 親友が何所からか聞きつけて一緒に真実を知ろうと行動する。
答え3 血で血を洗う姉妹喧嘩勃発。現実は非情である。
答え4 四五六君の脅威の話術により気がつけば姉妹は仲直りしていた。