知っているか?この小説の中では未だにクラス代表戦から数日しかたって無いんだぜ?
寮長室でシャワーを浴びて、部屋に戻ってきた時簪さんは出かけていたのでこれ幸いと織斑先生に借りたジャージを着替えて予備の制服を着て夕ご飯の準備に取り掛かる俺。
今朝方食堂のおばさんから新鮮な野菜や魚を貰ったのでそれを使った魚料理を作っています。野菜を洗って魚の下拵えをしながらいつものように滞りなく夕ご飯の用意をしていたら部屋のドアが開く音がした。
「ただいま……四五六君?戻ったの」
「お帰り簪さん。今さっき戻った所だよ」
キッチンに顔を出した簪さんにそう伝える。
「……」
「どうしたの簪さん?」
なにやら俺の制服姿をじろじろと見ている簪さん。
「四五六君、その制服って予備のだよね」
「え?あ、ああいつも来ているの今洗ってるから」
「ふ~ん」
ジト目で俺の姿を見てくる簪さん。話題を逸らさねば。
「今日は新鮮な魚と野菜をもらえたからムニエルと野菜の炒め物だからね」
「そう」
「ピーマンも入ってるからちゃんと食べようね簪さん」
「……四五六君のいじわる」
そっぽを向いて頬を膨らます簪さんは可愛かった。
「「いただきます」」
二人だけの夕食。簪さんがこっそりと俺の皿にピーマンを移そうとした所を注意したり今日有った事を話し合ったりといつも通りの食事だった。
食後いつものように緑茶をお互いのカップに注ぎまったりとした時間が流れた。
「……ねえ四五六君」
「なに簪さん」
「生徒会室で何されたの」
「ブフゥ!?」
飲んでいた緑茶が気管に入ってむせた。
「ごほっ、げほっ」
「だ、大丈夫四五六君!!」
むせた俺に駆け寄り背中を撫でてくれる簪さん。
「だ、大丈夫だよ簪さん。ちょっとお茶が喉に入った、だけだから」
しばらくむせていたが何とか落ち着いた。
「ふぅ、ふぅ……ありがとう簪さん。もう大丈夫だよ」
「なら、いいけど……」
まだ心配そうな顔をしながら席に戻る簪さんを見ながら考える。
生徒会室で起きた楯無さんとの出来事はまだ誰にもばれていないはず。織斑先生には怪しまれているがそれでもまだ完全にはばれてはいないはずだ。簪さんも自分の姉であり生徒会長である楯無さんが生徒会室に呼んだ事を気にしているだけであって、俺が何をされたかまでは分かってはいないはずだ。
だから此処でこれ以上不自然に動揺したら怪しまれてしまう。此処は自然な態度で切り抜けなければ。
「生徒会室で、生徒会長と少し話しただけだよ。ほら俺って二人目の男性適合者だからさ」
「……それだけ?」
「そうだよ。学園生活はどうかな?とかそんな話だけだったよ」
「ふ~ん」
ジト目で見てくる簪さんにちょっと引き攣った顔を浮かべながら、明日のお弁当はどんなのがいい?と話を逸らし、その場を切り抜ける。
言える訳無いよねぇ。実の姉がルームメイトをずぶ濡れにした、なんてね。しかも理由が嫉妬から来たものだ、なんて……。
この時俺は夕食に使った食器を片付けていたせいで気付く事が出来なかった。簪さんが思いつめた表情で俺の事を見ていることを。
「……姉さん」
翌日、俺は自家製の弁当を持って学園内に有る秘密の場所に来ていた。秘密とは言うがただ単に普段からこの場所は木々が重なり合い薄暗いので殆ど誰も立ち寄らないからである。
だがお昼時の数時間、ちょうど太陽が真上に来ている時間だけある一部の場所に光がさすのである。
そこはホンの数メートルだけ開けている場所であり、俺はその場所の草を取り除き、座れるようにしてそこでこっそりとお昼を食べているのである。
今日は本音さんや織斑達に呼ばれる前に教室をすばやく離脱し、この場所に来た。以前みたいに皆で食べる食事もいいけどやっぱりこうやって静かに食べる食事も捨てがたい。
両親との気まずい雰囲気が流れる食事とは大違いである。
「さって、何から食べようか「一二三君?」な」
声がしたほうに顔を向けたら驚いた表情の楯無さんの姿が。
「楯無、さん?どうしたんですか、こんな所に」
「それはこっちのセリフよ。私の秘密のお気に入りの場所に貴方がいるんだから。それも雑草を取り除いてレジャーシートに座布団まで敷いて」
今日は完全にリラックスしようと本気使用で来たら楯無さんが来てしまった。まあ、見つかってしまったものは仕方が無い。
此処で出て行けなんて言える訳が無いし、言える立場でもないし。かといってこれから片付けて出て行く気も無い。なら取る選択肢はこれしかない。
「まあ、立ち話もなんですし座ったらどうですか」
「そう、ね。お邪魔させてもらうわね」
少し自分が座っていた場所を移動させて楯無さんが座れる場所を作る。そしてそこに座る楯無さんの手には風呂敷に包まれた小さな物が。
「楯無さんも此処でお昼を?」
「ええ。前年度はちょくちょく利用してたのよ此処。今年度は初めてだけど」
「それはなんでって、まあ俺と織斑の事、ですか」
「そうね。世界でたった二人しかいない男性適合者が入学、ともなればいろいろ準備やらなにやらがあるからね」
「あ~それはすみません」
「貴方が謝ることじゃないわよ」
そう言ってお互いに苦笑い。
「小難しい話は此処まで。お昼にしましょう。せっかく朝早くに手作りしてきたお弁当が美味しくなくなっちゃう」
「ええ、そうですね。小難しい話は終わりにしてお昼にしましょう」
そう言ってお互いにお弁当を広げる。
「……」
「どうかしましたか?」
楯無さんが俺のお弁当の中身を見て自分のお弁当の中身を見てうな垂れる。
(手を抜いた訳じゃないのにこのいいようの無い敗北感は一体……)
その後はお互いに楽しく食事が出来た。お互いのおかずを交換したり、他愛のない事を話したり食後の飲み物の事で口論したりと極々普通の男女がするような食事をする事ができた。
「ふぅ。一二三君のおかず美味しかったわ。流石本音が言うだけの事はあるわね」
「いやいや楯無さんのおかずも美味しかったですよ」
「ふふふ。こうやってのんびりと食事するのも久しぶりね~」
ごろん、とシートの上に寝そべる楯無さん。
「行儀が悪いですよ楯無さん」
「いいじゃない。一二三君しかいないんだし」
ごろごろと寝そべる楯無さん。その姿は普段の凜とした姿ではなくまるで
「そうしてると普通の女の子なんですね、楯無さんも」
「え?」
俺の言葉を聞いて体を起こす楯無さん。
「今日、一緒に食事をして思ったんですけど、普段は凜として気を緩めない楯無さんも今日みたいに一緒に食事をして、話をして、寝そべっている姿を見ると何所にでもいる普通の女の子なんですね」
「な、何を言ってるのかしら。私は生徒会長で学園最強で国家代表なのよ、偉いのよ」
「生徒会長でも学園最強でも国家代表でも、妹の事で嫉妬したり、今日のように一緒に食事をしたところを見た俺からしたら楯無さんは妹思いの普通の女の子ですよ」
「な、な、な」
実際に会ってみて感じた事をそのまま伝えてみた。確かに原作ではいろいろとしていたが楯無さんの簪さんを思う気持ちは本物でただそれをお互いが上手く伝えられないだけで、それが無くなれば二人はきっととても仲のいい姉妹になると思うんだ。
そう思っていたら楯無さんはそそくさと自分のお弁当箱を片付けて立ち上がった。
「もう行くんですか?」
「え、ええそうね。生徒会長は忙しいのよ」
「そうですか」
来た道を戻っていく楯無さん。最後に見た時、瞳が潤んでいたがどうしたんだろう?
ネタは有る。部分部分のセリフも思いついた。でもそこまで書き出せない。何故?