私、更識楯無には妹がいる。大好きで大好きだけど、面と向かって話すことが出来ない妹が……。
私は妹であるかんちゃんとの仲が上手くいっていない。別に私が悪いとか、かんちゃんが悪いとかではない。ただ、実の妹から向けられる視線に私が耐えられなかっただけ。
私は日本の裏社会の組織である対暗部用暗部「更識家」の当主となるべくして幼い頃から厳しい訓練を課せられてきた。
私自身は更識家に生まれてきた事には怨んでいない。いくら恨み言を言ったところで生まれが変わるわけではないから。
自分で言うのもなんだが私は才能に恵まれていた。そのおかげで私は二十歳にも満たない歳で更識家の当主になり、そしてISの国家代表かつ専用機持ちになれたのだから。……他の人から見れば私のこれまでの人生は輝かしい物に見えるかもしれない。けど私はそうは思わない。
私がいろんな肩書きを持てば持つほど、私と妹との心の隙間は大きくなっていくばかりであった。私は妹であるかんちゃんが大好きだ。それこそ四六時中一緒に居たい位に。でもそれは出来なかった。それは私の立場上しょうがない事だった。
……いや、違う。私はそうやって自分に言い訳をしているだけだ。
幼い頃、いつも私がする事なす事を笑顔で褒めてくれたかんちゃん。けど私達が成長するにしたがって、だんだんとかんちゃんの私を見る目線は尊敬や親愛から、嫉妬や畏怖の視線となっていった。そんな視線で見られることが私は恐かった。
そうやって少しづつ少しづつ私達の心の隙間は離れていき、今では私は実の妹であるかんちゃんと一対一で話すことすら出来なくなってしまった。
もちろん、そんな事にならないように私だって何とかしようとした。虚や本音にも相談して仲を保とうとだってした。でもダメだった。
私がかんちゃんと仲を良くしようとすればするほど逆に私達の仲は、心の隙間は大きくなっていってしまった。
私がかんちゃんの事が大好きなのは本当の事。でも、だからこそ大好きなかんちゃんから嫉妬や畏怖の目線で見られることが耐えられ無かった……。
そんな中、世間では世界初の男性適合者が2人現れた。一人は世界最強のIS乗りの身内でISの生みの親と親しい仲である、織斑一夏。
もう一人は名前こそ珍しい名前であるがそれ以外は何か特別な事があるわけではない極普通の一般人である、一二三四五六。
そんな2人を私は最初、あまり意識していなかった。無論私個人としてであり更識家当主としては2人は護衛対象であり重要視するべき人間であることは理解していた。
だが、その内の1人一二三四五六がかんちゃんと同じ部屋になったことで私の意識が変わった。
彼がかんちゃんと同じ部屋になった、と言う話を聞いた直後私はISを展開して彼に突撃しようとした。傍に控えていた虚に止められなかったら一体どうなっていた事か……。
彼がかんちゃんと同じ部屋になってから私は彼の行動に注意を払うようになった。もし、万が一にでも彼がかんちゃんに対して不埒な行為を少しでもしたのなら私はたとえ世界を敵に回しても彼を社会的に抹殺する、ぐらいの意識で彼の行動に注意を払っていたが、彼は普通だった。
彼の行動は誰が見ても普通、と言うしかなく特に目立つような事はなくむしろ影が薄いといっても過言ではなかった。そして彼のクラスが行ったクラス代表を決める試合。彼は素人ながらにも専用機持ちの代表候補生相手に20分も持ちこたえた。素人相手に20分も掛かった代表候補生が悪いのかそれとも代表候補生相手に20分も持たせた彼がすごいのか?ちょっと評価が分かれるわ。
そんなクラス代表を決める試合が有った日の夕方、私が定期的に見ている学園の監視カメラの映像に、彼が映ったの。
かんちゃんに
私は画像を見て呆然としたわ。私が知っているかんちゃんは間違っても異性を抱きしめる事ができるはずが無かったから。そしてその画像を見た私の心の中に浮かんだのはなぜ、どうしてという疑問では無く醜い嫉妬だった。
(なんで……どうしてかんちゃんが彼を抱きしめれるの?かんちゃんはそんな事できないはずでしょ。なんで、どうして……どうして其処にいるのが私じゃないの。なんで私じゃないの)
後から思い返してみれば思い違いもいい事だ。長年面と向かって話もしてない私が短い間とは言えかんちゃんと一緒に生活している彼と同じ立場にいられる訳も無いのに。
かんちゃんが彼を抱きしめた翌日、私は彼を生徒会室に呼び出した。建前としては彼に複数の企業や国が専用機を用意しているのに対して私の実家である更識家も名乗りを上げた、という事を伝えるために。
呼び出され、初めて直接見た彼は本当に何所にでもいそうな極々普通の男の子だった。どちらかといえば影が薄い地味な男子、と言うほうがにあっているほど。
そんな彼をイスに座らせて私は手短に用件を伝えると私は本題である、かんちゃんとの関係を問いただした。私にかんちゃんの交友関係に口出す権利なんて無いのにね。
問いただす、なんて言ったけど実際に私がしたことを見れば尋問のようだった。ISを使い彼を拘束して上での質問。とてもじゃないが暗部の当主が取る態度ではなかった。
だから私は彼が何か言ってきたらそれに素直に従おうと思っていた。悪いのは完全に私の方だから、よほどの事意外なら素直に従おうと思っていたのに彼は私に対して罵倒の一つもせずに笑って私がしたことを済ましてしまった。ほんとこれじゃあどっちが年上かわかりもしない……。
次に私が彼とあったのは私が見つけた秘密のお昼ねスポットである。この場所は普段は日に隠れて薄暗いのだがお昼時の数時間の間木の隙間からちょうどいい感じで日が入り休憩するにはもってこいの場所なのだ。
今年度に入ってからは男性適合者のことで時間が取れなくてまだ一度も行ってなかったけど今日は時間が取れたから久しぶりに行ってみたの。そうしたら私だけの秘密のスポットに彼がいたの。ご丁寧に草むしりをしてレジャーシートまで敷いて。
まあ、出会ってしまったからにはしょうがないから彼の隣にお邪魔して一緒にお昼ご飯を食べる事になったのだけど、彼が取り出したお弁当の中身を見て私はショックを受けてしまった。
彼の取り出したお弁当の中身は私が作ったお弁当の数段上を行っていた。料理に関してはそれなりの腕はあると思っていたのに彼の料理はあきらかに私より数段上だという事が見て取れた。
言いようの無い敗北感が私を襲う。別に競っていたわけではないが女性として何か負けた気がしてならなかった。
そんな敗北感を味わった後私は彼と仲良く一緒にお昼を共にした。お弁当のおかずを交換したり、レシピを交換したり、食後の飲み物で口論したり他愛の無い話題で話し合ったりと極々普通の女の子がするようなお昼を過ごした。
彼と一緒のお昼はとてもリラックスができた。私もクラスメイトと一緒にお昼を食べたことはあるがやはり生徒会長と言う肩書きや学園最強と言う意味がどうしても周りのクラスメイト達と壁を作ってしまう。でも彼は違った。彼は私を見ても特別扱いもしなかったし、特別視もしなかった。ただごく普通の女の子として私と接しそして話してくれた。
それは私の事を、生徒会長とも、学園最強とも、更識家現当主としてではなく、ただの更識楯無として見られているという事。
それが私にとってどれだけ嬉しかった事か、彼はきっと知らないし、教えるつもりも無い。更識家現当主として……いいえ更識簪から見て完璧ではならない私にとってただの女の子として扱ってくれる事がどれ程嬉しかった事を。
旧作は簪がヒロイン。
ハーメルン版は更識姉妹がヒロイン。
つまりここから変えて行こうと思います。