作者は首を括るしかないのだろうか。
「……」
就寝時間を過ぎた寮長室で千冬は1人、椅子に座り考え事をしていた。
内容は、ほんの数時間前までいたこの学園に2人しか居ない男子生徒の1人、一二三四五六の事である。
この日、千冬が書類仕事を終えて自室の寮長室に入った時、其処で目に入ったのは頭からつま先までを水で濡らした四五六の姿があった。
ずぶ濡れの四五六が何故自室に居るのか?疑問に思い四五六の手を触るとまるで冷水に手を入れているかと思うほど冷たい手をしていた。
すぐさま千冬は四五六を自室のシャワー室に向かわせ熱いシャワーを浴びるように言った。最初はごねたが睨むように言うと素直に四五六はシャワー室に入っていった。
「……なぜ、あそこまで冷たくなるまで放って置いたのだ」
千冬から見た四五六と言う生徒はとても模範的で手の掛からない生徒であった。愚弟と違い毎日毎日何かと騒動を起こすわけでもなく、極々普通の生徒であった。
まあ、コミュニケーション能力に多少難があるが、それは回りに女子生徒しかいないこの学園の状況を考えればやむなしと思えるぐらいであった。
そんな四五六が全身ずぶ濡れになっていた。
「虐め、なのか……」
女尊男卑が蔓延っている現状で、IS学園というある意味もっとも女尊男卑が激しい場所ならば起こってもおかしくは無い。だが、それは学園側も考えていた事である。
仮にも世界で二人しかいない男性適合者である。もしそんな二人に虐め行為があったなどと発覚すれば冗談抜きでIS委員会から強制査察が入ってもおかしくは無いだろう。
それにこの学園にいる女子生徒は苛烈な入試試験を切り抜けてきたある意味エリートである。世界情勢や男性適合者の価値が分かるだけの頭は持っている。と言うかそれが出来ないような頭の持ち主では入学など出来はしないのだ。
ISが操縦できるだけの生徒など言い方は悪いが変えはいくらでも居るのだから。
「……」
カチコチと寮長室に飾られた時計の秒針の音だけが響く。
千冬は思い返す。四五六になぜずぶ濡れになった理由を聞いた時の事を。
「あの、馬鹿者が……」
全身、それこそ頭からつま先までずぶ濡れになり、さらにそんな状態で長時間そのままでいたのであろう。掴んだ手はまるで死人のように冷たかった。
そんな状態にされたのにもかかわらず、四五六は水を掛けた相手を喋る事はせず、黙秘した。
これが、水を掛けた相手を見ていない、というならばまだしも全身ずぶ濡れになるほどの水の量となれば、相手に見つからずに水を掛けるというのは難しい。となれば四五六は水を掛けた犯人を知りつつも黙秘していたことになる。
だが、ここまでずぶ濡れにした相手をかばう必要が一体何所に有ると言うのだろうか?
ならば、可能性としては水をかけた犯人に脅されて口止めをされているか、犯人の正体を話す事を四五六自ら黙秘していることになる。
四五六自ら黙秘しているならばまだしも、これが脅されているとしたら……。
「私の生徒に手を出して、あまつさえ脅迫している、だと……」
椅子の上に座り両手を組み瞑想するかのように目を瞑っている千冬。一見すれば寝ているかのように見えるが実際に目にしているのならばそんな事は考え付かなかっただろう。
椅子に座る千冬の放つオーラはまさしく
「今回は四五六に免じて見逃してやる……。だが、次は無い。必ず見つけ出して一体自分が何をしでかしたのかを思い知らす。絶対にだ」
ゾッとするようなほど低く響く声。その声には絶対見つけ出すという覚悟が見て取れた。
「誰の生徒に手を出したのか、思い知らせてくれる」
楯無さんに死亡フラグが立ちました。
楯無「え?」