徒然なるままに…   作:初代小人

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はい。桃太郎最終回です。
無理やりまとめたので普段の三倍くらいの長さになってますがよろしくお願いします。


鬼より鬼畜な桃太郎④

3匹のお供を従え、鬼ヶ島の対岸に到達した桃太郎。

海を隔てて向こう側にはそびえ立つ鬼ヶ島が既に見えている。

しかし桃太郎には海上を移動する術はない。

 

 

その身体能力は高いものの、重い鎧と纏い、刀を下げた状態では海を超えることなど到底不可能である。

最も、イヌ、サル、キジの3匹は、 それぞれ向こう岸に行く方法があったようだが。

何にせよ大将たる桃太郎が鬼ヶ島に行けないのは大きな問題である。

仕方がないと太郎はあたりに落ちている木切れや、生えている木を組んで、小舟を作り始めた。

 

 

 

そして努力の甲斐あって、その日の夜には小舟は完成した。

しかしもう日はとっぷりと暮れており、今攻め込んだとて暗闇の中、地形の分からない鬼ヶ島で戦えば大敗することは確実と考えた桃太郎はそこで一夜を過ごし、明朝に漕ぎ出すことにしたのである。

 

 

幸い、おばあさんが多めに作ってくれたキビ団子はまだ8個ほど残っている。

この団子は、おばあさんが腕によりをかけて作ったものであり、一個食べれば一食分の栄養が得られ、空腹が満たされるという優れものである。

これだけの量残っていれば明日の分は足りるだろう。

桃太郎は安心して寝袋に入り、眠りに落ちた。

 

 

 

そして、朝がやってきた。

桃太郎とお供3匹は、それぞれキビ団子を一つずつ食べ、船に乗って出発した。

海は大荒れだった。神が怒り狂っているかのごとく雷は轟き、雨は殴りつけるように激しく打ち付ける。

まるでこれから起きる激しい戦いを暗示しているかのようだった。

 

 

桃太郎はそれでもどこ吹く風で、舵を取り、力強く漕ぎ、鬼ヶ島に到達した。

 

待ち構えていたのは凶悪な顔で金棒を構え、今にもこちらに飛びかかってきそうな赤鬼たち。

その目は血走り、ギラギラと妖しく輝いている。

 

 

相対した桃太郎は驚くほど落ち着いていた。

澄み切った頭にはもはや視界を遮る大粒の雨は目には入らず、鼓膜が破れそうなほど大きな雷鳴は耳にしない。

そして家来たちに指示を出す。

「一斉に、掛かれ!」

 

鬼たちにはひとつ誤算があった。

激しすぎる雨のせいで、金棒の毒がすべて洗い流されてしまったのである。

そしてそれは桃太郎にもわかっていたことだった。

 

 

桃太郎は以前に村で、金棒のトゲが体に少し刺さっただけの女性が苦しみ抜いた末に死んでしまったことを見たことがあったのだ。

そこから、金棒に毒が塗られていることを推測していた。むしろそれが一番の難点と思っていたので、無害化されて安心していた。

 

 

だが、あくまで毒が消えただけ。生身の人間である桃太郎は、金棒で殴打されればいと簡単に死んでしまうことだろう。それらは確実に避けなければならない。

それも分かっていたが、所詮鬼達も空は飛べない。

よって攻撃は多くても四方向から来ない。

しかも体が大きく愚鈍な鬼が相手なら、いなす事も大したことではないだろう。

 

 

桃太郎はタカをくくり、鬼の事を舐めきっていた。

 

 

そしてそれが桃太郎の()()となったのである。

 

 

 

桃太郎が計算に入れていなかったのは鬼たちのタフさ。

桃太郎にとって金棒の一撃は一撃必殺なのに対して、鬼たちは桃太郎が急所を5回以上刀で攻撃しなければ倒れない。

ましてや桃太郎はただの人間。体力の面でも鬼たちと大きな差がある。

さらにその体には道中の旅の疲れも残っている。

 

 

強い意志で無理やり動かしていたものの、その実桃太郎の体のコンディションは最低レベルまで落ちていた。

本来の力を出せれば、鬼と太刀打ち出来たかもしれない。

しかし今の桃太郎は疲労困憊。

鬼と戦うにはいささか部が悪すぎたのである。

 

 

鬼との戦いが始まって数分、最初に敗北を喫したのは猿であった。

太郎はその知恵を見込んで人間と同じような武器を持たせたものの、猿にはその武器は重すぎたのである。

結果として機動力が低下し、鬼たちに生け捕りにされてしまいました。

そして必死の抵抗もむなしく、彼は縄で縛られ、鬼ヶ島の奥へと引きずられて行った。

 

 

 

それを見ていたのはキジだった。

存外頭が切れるキジは、その様子を見て、自軍の敗北を予知したのである。

そして、桃太郎と犬を冷酷に見捨て、空へと高く飛び、逃亡。

そのまま自らの古巣へ戻り、天寿を全うしたそうな。

 

 

 

そして残された犬と桃太郎。

桃太郎にも自らに勝ち目がないことはわかっていた。

しかしここで降参したところで残忍非道な鬼たちは自分を殺すだろうと思っていた。

そのため白旗は上げなかった。

 

 

そして犬は忠義心が強く、これまで自分の面倒を嫌な顔一つせずに見てくれた桃太郎のことを見捨てるなど出来るはずもない。

よって桃太郎と共に最後まで戦い抜くことを心に決めていた。

 

 

 

そして孤軍奮闘する桃太郎と犬。

だがしかし、疲労がピークに達した桃太郎は、一瞬の隙を突かれて刀を弾かれてしまった。

それを見た犬は「ご主人様!」と思わず桃太郎に駆け寄ろうとしたところを捕縛されてしまう。

そして桃太郎と犬は磔の刑に処されることになってしまった。

 

 

 

死を目前にした桃太郎。

しかし彼には後悔はなかった。

不思議と満足感があっただけだった。

そして鬼たちによってとうとう磔台に縛られようというその時だった。

腰に下げていたキビ団子を入れていた網が地面に落ちて転がった。

 

 

 

それを見て桃太郎は走馬灯のようにおばあさんのことを思い出した。

物心がついたときからいっぱい美味しいご飯を作ってくれたおばあさん。

おじいさんと仲良くニコニコといつも楽しそうにしていたおばあさん。

おじいさんが鬼に連れ去られ、二度と帰ってこないことを知って声を上げて泣いていたおばあさん。

それなのに桃太郎の前では涙を押し殺し、泣きはらした目で、震えた声で、桃太郎をあやしてくれたおばあさん。

鬼への復讐のために体を鍛え始めた桃太郎を見て心配そうな顔をするおばあさん。

鬼ヶ島に出発する際、震えた声で、泣きそうな顔で、それでもキビ団子を渡してくれて、応援してくれたおばあさん。

 

 

次に桃太郎はおじいさんのことを思い出していた。

優しく、強い子になれといつも桃太郎に言い聞かせてくれたおじいさん。

おばあさんの料理が美味しいことを何故かいつも自分のことのように胸を張っていたおじいさん。

たまにおばあさんに内緒で芝刈りに連れていってくれたおじいさん。

壊すためじゃなく、守るために力を使えといつも言っていたおじいさん。

稼ぎが少なくて貧乏なはずなのに桃太郎の為ならといくらでもお金を出してくれたおじいさん。

 

 

 

そして桃太郎は自分について考えていた。

僕は、おじいさんとおばあさんにたくさんの愛情を貰った。

でも、僕はそれが見えていただろうか、感じられていただろうか。

 

 

 

僕はおばあさんのことをきちんと見れていただろうか。

あの、寂しそうな笑顔になぜ気づけなかったのだろうか。

おばあさんの心配を何故察することができなかったのだろうか。

おじいさんの敵討ちはおばあさんの為だなんて言って、おばあさんがそんなことを望んでいるかどうか確かめただろうか。

「僕はおばあさんにもらった愛情に、何か恩返しが出来ただろうか。何かおばあさんを喜ばせるようなことが出来ただろうか。」

 

 

 

僕はおじいさんのいいつけを守れただろうか。

確かに強くはなった。

でも今の僕は優しいだろうか。

鬼たちの返り血にまみれ、何の関係もなかった動物達を巻き込み、何体もの鬼を殺して。

もっと穏便なやり方はなかっただろうか。

僕は守るために力を使えただろうか。

「僕は、おじいさんの想いを受け取ることが出来ただろうか、天国のおじいさんに、褒められるような生き方ができただろうか。」

 

 

 

そして僕は気づいた。

僕は、2人からたくさんのものを貰うだけもらっておいて、恩返しはおろか、感謝の言葉すらも返せていない。

 

 

これまでの人生を、おばあさんがくれた人生を、何故僕は、復讐という空虚なものに費やしてしまったのだろう。

働いて稼いだお金でささやかな暮らしを送りながら、おばあさんに親孝行をして生きていく、そんな幸せな生き方もあったはずなのに。

 

 

 

そこまで考えて、桃太郎は涙をこらえることができなかった。

おじいさん、おばあさん、ごめんなさい。ありがとう。

こんな親不孝者を今まで育ててくれて。

貧乏だったけど一番大切な、愛情をたくさんくれて、ありがとう。

それなのに、それなのに。

僕はもう、おばあさんに何も返すことが出来ない…

最後に残った命も、もう少しで費えてしまう。

それならば、せめて、最後に、尊い命を救わせてくれ。

こんな罪にまみれた命だけど、最後に少しくらいかっこつけても、バチは当たらないだろう?

 

 

「少し、待ってくれ。」

いよいよ処刑されようかという時、桃太郎は鬼にそう言った。

 

 

「僕は、罪に塗れた悪人だ。お前らの仲間も殺した。死刑になろうとも悔いなどない。だが、この犬と猿は違う。僕が無理やり罪を背負わせた。僕はどのような苦しい死に方をしても構わない。だから、こいつらの命だけは、助けてやってくれないか?」

 

 

その顔は、憑き物が落ちたような清々しい面持ちだった。

1匹の黒鬼が言った。

「そなたも、理由なしで攻め込んでくるようなことはするまい?なぁにこちらの退屈しのぎだ。どうしてこうして攻めようなどと思い立ったのか、聞かせてくれんかのぅ?」

 

 

桃太郎はそれに応じ、桃から生まれたこと。おじいさんのこと、おばあさんのこと、そして今とても後悔していることを全て話した。

それを聞いた鬼たちは、胸を打たれたようで、熱い涙を流すものも中にはいた。

そして黒鬼は桃太郎に問うた。

「今、そなたの縛めを解けば、再び我らを殺そうとするか?」

 

そして桃太郎は答えた。

「もう二度と無益な殺生はしない。そちらにもそちらの事情がある。仕方ないことなのだろう。」

 

それを聞いて鬼たちは驚いた。

何故なら桃太郎は、それを本心から言っていたのだから。

それを示すように、目には真っ直ぐな光が宿っていた。

 

 

そして黒鬼は配下の鬼たちに問うた。

「のう、人間共、猿共とバカにしてばかりおったが、なかなかどうしてきゃつらも捨てたもんではないと思わんか。むしろワシには我ら鬼より人間の方が優れているように見えるが。どうだ、ここは一つ、きゃつらに未来を預けてはみんか?人間を喰らって滅ぼすよりも、我ら鬼こそ滅ぶべきだとは思わぬか?」と。

そして鬼たちは、揃って肯定した。

 

 

 

そして黒鬼は桃太郎に言った。

「お主の人徳に免じて此度のことは不問としてやろう。また、我らは食人をやめる。まあ一ヶ月後くらいには滅んでいることだろう。そこで、お主は人間の里に戻り、「鬼退治をやり遂げた」と言うが良い。なぁに、気にするな。地上から劣等種がまた一種減るだけじゃ。」

そうして黒鬼は桃太郎1行の縛めを解いた。

 

 

そして自由の身となった桃太郎は、おばあさんに恩返しをしながら慎ましく穏やかに生きたとさ。

 

 

おしまい。

 

 

 

 

 

 




鬼より鬼畜な桃太郎、どうでしたか?結末を考えるのに結構頭を使いましたよ〜(大嘘)まあ一応これが一番丸く収まったかなって感じです。桃太郎が鬼全滅させるマジキチルートもあったんですけどね?w
また次の投稿はいつになるかわかんないので、まあ気長にお願いしますね。
あと、テーマが、最初に書いた「正義と悪とはなんなのか」ということともうひとつ、「見えているつもりになっていませんか?あなたの大事なもの」の二つになっています。後者は、暗殺教室の、死神の過去編より着想を得ています。彼は自分の弟子が「見えている」つもりで、「見えていなくて」、そして裏切られた後も今度はあぐりのことが「見えて」いなくて、そうして大事なものを失ってから気づいたというものなので。
いやはや、脱線しました。次回もよろしくお願いしますね。
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