予めご了承下さい
※尚、時系列的には本編暫くあと、コラボ開始前です
終戦の日特別編
「総員、黙祷!」
8月15日、正午。約140年前に、日本がポツダム宣言を受け入れた日。日本が『負けた』事を当時の国家元首が国民に表明した日。残留兵を除き、多くの日本人にとっての、『終戦の日』。
お盆が近い事もあり、極東支部では毎年、第二次世界大戦のみならず、戦争(ここで言う戦争とは、人類同士での戦争だけでなく神と人との戦争、つまり現在も続く『対アラガミ防衛戦争』も含む)で亡くなった全ての人類の冥福を祈る行事が行われていた。
極東出身の人物が司令官を、任官中の殆どを極東支部の隊員として過ごした人物が副司令を勤め、部隊員のほぼ全員が極東出身、当の第二次世界大戦参加者、或いはその両方と言うこの鎮守府艦『佐世保』、及びその管轄下にある各海上基地、佐世保陸上基地もそれは例外では無く。
「これまでの全ての戦争で亡くなった、全ての方々に、冥福を、お祈り申し上げます……」
『司令官』と言う役割を己に課し、普段敬語を使わない、『護悧 刻』も、この日ばかりは敬意を表する為に敬語を使い、
「負けた…んだよね、この日に」
第二次世界大戦当時、日本が比較的優勢だった頃に沈み、その後の事を実感としては知らない無い艦娘達も、沈痛な面持ちで、
「この日が近くなると、何処かが、痛むんだ。何処かはわからないのに…」
終戦のその時まで浮かんでいた者は、今もその記憶に苛まれ。
また、佐世保から少し離れた海上基地でも
「この日になると、親父を思い出すんですよ。俺たち兄弟を逃がすために、囮になって喰われた親父を…」
『この』戦争で家族を失った兵士達の声は決して小さくはなく、
「あの日もこんな青空だった……昔居た神機兵部隊の新入りが殺られた日も……気の良い奴だったよ…」
まして、目の前で同僚を喰われた者の後悔は如何ばかりか。
だが、
「でもな、似たような状況で、、alpha-1ってコールサインの英雄がいたんだ。信じられないかも知れないが、その時俺の居た部隊を囲んでいたヴァジュラ4体を、救援としてやってきたあいつが、俺たちの離脱する時間を稼ぐ為に向かっていって、そして帰ってきた」
「親父が喰われてから、必死に身体を鍛えて、神機兵の搭乗員に応募して、最初の任務で殺したのが、親父を喰ったあいつだった」
「あの時の事は忘れない。でも、恨み続けるつもりも無い」
「今回は、状況も装備も、技術も違う」
「今回の戦争では、誰も見棄てない。誰も死なせない。幸い今回は聖域がある。敵を殲滅出来なくとも、聖域内部で全ての人類が生き残れるほどに聖域が広がれば、それだけで俺たちの勝ちだ」
一度言葉を切り、続ける。
「敢えて言おう……総員、勝つぞ!」
ーーーーーー
side刻
戦争は続く。死者の名前を英雄に読み替え、慰霊の儀式を戦意高揚のプロパガンダとして活用し、過去の兵器の名を新たなそれに付け替えて……
だが、それは悪事なのだろうか?
死んでいった者達も忘れない、と、今を仲間を鼓舞する事が。
『次は勝つ』と先人に誓い、仲間により一層の団結を促す事が。
仲間を活かすために作った兵器を過去の名兵器になぞらえ、その活躍を願う事が。
それであいつらが死なずに済むなら、人類が生き残れるなら…
それでも、構わない。