バカとテストと召喚獣 ~とある男の物語~   作:カンベエ

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第七問 地理
以下の問いに答えなさい。
「バルト三国と呼ばれる国名を全て挙げなさい」

姫路瑞希、木下優子の答え
『リトアニア、エストニア、ラトビア』

教師のコメント
その通りです。

寿々屋義行の答え
『日本、ドイツ、イタリア』

教師のコメント
割とまともな間違い方をしてきたのでビックリしています。ですがそれは『日独伊三国同盟』の三国ですね。

須川亮の答え
『上海、四川、広東』

教師のコメント
中華料理で有名な地名ですね、中華料理にかける情熱は認めますが間違いです。


第七話 バカと祭りと交渉術

開幕された清涼祭、一般の来客も多数あり物凄い賑わいを見せている。

 

「店長!ゴマ団子三つです!」

「店長!小龍包二つ入りました!」

 

店長―――隼人の忙しさは凄まじい、仕切りの内側にある臨時厨房で亮、他数名を使い倒して調理に奔走していた。

 

「・・・・大丈夫ですか?」

 

と、心配そうにこちらを覗いたのは姫路だ。

 

「問題無い、笑顔で接客することに腐心してくれ」

「ホールはある程度大丈夫ですから手伝いましょうか?」

『!?』

「いや、大丈夫だ姫路!お願いだ!ホールに集中してくれ!!」

「もう・・・・大丈夫ですよ、化学薬品『は』入れませんから」

「何を入れるつもりだ言ってみろ!!」

「えっと・・・・」

「いや、いい・・・・お願いですからホールで全力を出して下さい」

 

ちょっと頬を膨らませながらホールに戻る姫路。隼人が土下座までして姫路を厨房に入れないのには理由がある。先日、喫茶で出す料理の試作をしていた時に、姫路の作ったゴマ団子を食べた数名(雄二、明久、義行)が「外はゴリゴリ中はネットリ、甘すぎず辛すぎる味わいがとても―――んごパッ」という意味不明な台詞を残して倒れるという事件が発生した。製作者である姫路に話を聞いたところ化学薬品が大量に混入していた事が判明、その場で姫路を説教して料理を改めて教える約束だけして厨房には入れないようにしたのだ。

 

「ん・・・・そろそろか・・・・横溝、姫路と島田、アキちゃんを下がらせて入れ替わりでユキちゃん、木下姉弟を投入してくれ」

「了解した」

 

現在、ヨーロピアンのシフトは三交代制で回されている。姫路、島田、アキちゃん(明久)の大会参加組と叶、綾乃、康美ちゃん(康太)の組、ユキちゃん(義行)、秀吉、木下姉の組に分けられている。

 

「ふぅ・・・・そろそろ落ち着いて来たか」

 

定食屋のおっちゃんみたいなカッコをした隼人は、休憩用の椅子に座って一息付く。

 

「ご苦労様」

「おぉ、木し・・・・・・・・」

 

スリットが少し深めなチャイナドレスを着こなす木下を見て、思わず隼人の動きが止まった。少しづつ顔が赤くなっていく。

 

「・・・・?なによ」

「ん・・・・ああ、いや・・・・にあってるな・・・・と思って」

「そう?ありがとう」

 

ちょっと桃色な空気を醸しだし、周囲のFクラス男子が舌打ちを始めた頃・・・・

 

『おいおいきったねぇ床だなぁ!!こんなんで食いもん出して良いと思ってんのか!?』

『クラスの代表を出せ!!』

「・・・・クレーマーか・・・・」

 

ため息を一つ付けば、ゆっくりとホールへと出る隼人。

 

「ったく対応の遅ぇクラスだな!!さっさと代表をごぺっ!?」

 

突き刺さるような拳で坊主頭が吹っ飛ばされる。

 

「失礼、代表代理の秋山隼人と申します。何かご不満な点でも御座いましたでしょうか」

「いや、不満も何も今ツレが殴られげふぅっ!?」

 

モヒカン頭のみぞおちに今度は鋭い前蹴りが飛ぶ。

 

「それは私の『パンチから始まる交渉術』に対する冒涜でしょうか?ちなみに今のが『キックで繋ぐ交渉術』です。最後には『プロレス技で閉める交渉術』が御座います」

「ま、待て!こちらからはこの夏川を出そう!だから交渉はこっちとやってくれ!」

「お前常村!!俺を見捨てるのか!?」

「で?」

 

次に聞こえてきた声は雄二のもの。

 

「まだ交渉を続けるのか?常夏コンビとやら」

「い、いや・・・・もう十分だ」

「ああ、撤退させてもらおう」

『そうか』

 

がしっとその腰に抱きつく二人。

 

『え?ちょっ!!?』

『どっせい!!!』

『んごふっ!』

 

綺麗なジャーマンスープレックスで床に叩きつけられる常夏コンビ。気絶した二人をFクラスのメンバーに運ばせながら。

 

「大変お騒がせいたしましたお客様、当店はお客様のお声には耳を傾けますが悪質なモノが御座いました場合ご覧のように強硬手段も辞さない次第で御座います」

 

スっ、と恭しく一礼するとむしろ「よくやった!」「見事なジャーマンだ!」「是非うちの団体に!」とか賞賛の声が聞こえてくる。

 

「ですがお客様各位にご迷惑をおかけいたしましたのは確かです、なので今店内にいらっしゃいますお客様のお食事代に関してはサービスとさせて頂きます。引き続きお食事をお楽しみ下さい」

 

―Fクラス―バックヤード

 

「で?あれで良かったか?」

「ああ、まぁサービスの方は・・・・」

「あれぐらいは必要だ、要らん事で客を離れさせるのも面倒だ」

「確かにな」

「で?大会はどうだ?」

「出だしは上上、というところだな」

 

ならば良し、だ。わざわざこっちの仕事に穴空けてまで負けたら間違い無くボコボコに殴った上に霧島のところへ「私を食べて」という手紙と共に送りつけていたところだ。

 

「隼人、ちょっといいか?」

 

トイレに行ってくる、と雄二が教室を出て行くと、亮がバックヤードに入ってきた。

 

「どうした亮」

「・・・・客足が少しづつ遠のいている」

「・・・・原因は?」

「分からないが・・・・」

 

ふむ、と顎に手を当てて考えながらホールへと出ると、最初の忙しさが嘘のように閑古鳥が鳴いている。

 

「お兄ちゃん!ありがとうございます!」

「気にするなチビッ子」

 

廊下から雄二の声が聞こえてくる、どうやら女の子が一緒らしいが・・・・

 

「お?なんだ坂本、妹か?」

「可愛いねー、あと五年したらお兄ちゃんと付き合おうか」

「いや、むしろ俺は今だからこそ・・・・」

「俺と付き合ってくれ!」

 

亮が何故か土下座までしている。

 

「で?探している奴は何て名前なんだ?」

「名前は・・・・分からないです」

「なんだ、親戚じゃないのか?特徴は?」

「えっと・・・・バカなお兄ちゃんでした」

「そうか」

 

雄二は、集まるクラスメイトを見回してから。

 

「たくさんいるんだが」

「えっと、すごくバカなお兄ちゃんでした」

『吉井か寿々屋だな』

 

バックヤードで着替えを終えて男子の制服に戻った明久と義行が血泪を流している。

 

『失礼な!そんな呼び方をする子と面識なんて無い(よ)!?』

 

眼に涙を浮かべる女の子。

 

「そんなー!葉月、『バカなお兄ちゃんを知りませんか』って一生懸命探したのに!!」

「スマンな、バカなお兄ちゃんたちはバカだから」

『酷っ!?』

 

ポンポン、と少女の頭を撫でると。

 

「というか明久、義行。お前ら本当に面識無いのか?」

「・・・・・あ、明久!ぬいぐるみの子だ!」

「・・・・・・ああ!」

 

話を聞けば、この子・・・・葉月ちゃんが困っていたところを助けたのが出会いだったという。

 

「しかし両方バカなお兄ちゃんだと呼び方に困るだろう、どうだ?名前で呼んでみては」

「名前で、です?」

「ああ、こっちの途方もないバカ面が明久、取り返しのつかないバカ面が義行だ」

「分かりました!えっと・・・・明久お兄ちゃん、義行お兄ちゃん」

 

少し顔を赤くしてもじもじしながら二人の名を呼ぶ葉月ちゃん。

 

『コロス』

 

その光景にFFFの連中が殺気立っていた。

 

「義行お兄ちゃんにはファーストキスもあげて結婚の約束までしました」

「すずやぁあああああああ!!!」

 

目にも止まらぬ速さで現れた島田が、義行の頭部にローリングソバットをぶちかましマウントを取って思いっきり殴っている。プロ顔負けの技量のためか義行は身動き一つ取れずに殴られている。

 

「坂本!ペンチと包丁!包丁は10本あれば足りるわ!!」

「落ち着け島田、それは制裁を通り越して殺人だ」

 

いくら取り返しのつかないバカと言えども死なせていいわけでは無い。

 

「おねえちゃん!」

「葉月!」

 

どうやらこの二人、姉妹だったようだ。言われてみればどことなく似ている。

 

「ふむ」

 

姉妹を見比べる義行。

 

「なによ」

「いや、良かったな葉月ちゃん。姉ちゃんに似て美人で」

「んなっ!?」

『!!!』

 

なにも驚いたのは間接的に綺麗と言われた島田だけでは無い、その場にいたほかの奴らもだ。

 

「あれだけ殴られておいて世辞が言えるだと!?」

「アイツは真性のMなのか!!」

「想像以上のバカだぜ、寿々屋」

 

この時、この瞬間より。義行の呼称が『Mな方の観察処分者』になった。

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