ちなみに、第一志望校には無事合格しました。
その頃、何が起きていたか。
確かに、E組の皆は分断され、全員と連絡がつかない状態。
でも、そのせいで誰かがやられていた?
…そんな事はなかったのである。彼らは趣向を凝らして戦っている。
弱者には弱者なりの戦い方がある、彼らは殺せんせーの教えを実践していたのだ。
例えば。
「何!周りが見えないぞ?」
煙幕の中、慌てふためく敵たち。そんな彼らの足元に、何やら球状の物が転がる。
「何だこれは…?」
すると、それはシューという音を立てて揺れ始める。カタカタ…
「まさか、爆だ…」
敵が気付いた時には、もう遅かった。
バン!
爆音の後には、気絶した敵が数人。そこには爆弾の痕跡一つ残っていなかった。
…
「ふう、これで大丈夫だね。敵がすぐやってくることはないだろう。」
眼鏡をクイと上げ、呟くその男は竹林。
今敵を倒したのは彼の爆弾である。
「……助かったぜ。竹林。」
「まったくだ。」
そう安堵するのは木村と岡島。
彼らは敵から全速力で逃げ、目的地へ向かうことを優先していたが、
危うく挟み撃ちされかけたところを、そこにいた竹林の爆弾で助かった。
「催涙弾を持ってきて正解だったよ。殺せんせー相手にはまだ使えてないけど。
銃で狙撃することや、ナイフを敵に繰り出すことだけが戦闘ではないからね。」
そう呟く竹林。彼らもまた、最上階へと向かう。
……
一方。
また別の場所にて。雇われた戦闘員の1人が、廊下を歩いていた。
彼は生徒の1人と交戦していたが、いつの間にか逃げられた。
それを追っていたのだが…
ガタッ
物音を男は見逃さなかった。
そこに侵入者がいることに気付き、男は音のする方へすぐさま駆け出す。
そして曲がり角を曲がろうとした時。
しかし…
「う、うわ!」
男の足元を何かが絡め取る。
そして、バランスを崩した男はそのまま転倒してしまう。
それを見逃すはずはなく…
ドシン!
大きな物音がする。
男の身体に凄まじい衝撃が走り、上を見上げると…
1人の人間が上に乗っていた
「デブの強さ、舐めたらいけないよ。」
誰あろう原だった。
男は見事に彼女の罠に引っかかったのだ。数時間は再起不能だろう。
「特製の罠、持ってきて正解だったね。」
…
そして、そのまた別の場所では。
巡回している2人の警備員。彼らは序盤に生徒と交戦していた人間ではない。
この計画の首謀者である仮面の男は、見張りを数十人放っていた。
彼らを捕らえる為に。生徒全員を人質に、殺せんせーの暗殺を試みたのだ。
そしてその二人は、入り口から遠いエリアを巡回していた。敵が来る確率は低い。
だからそこの警備は手薄だったし、警備員の顔にも気の緩みが見て取れた。
だが…
ズバババ!
銃声が廊下に鳴り響き、二人の男はバランスを崩し、そのまま倒れる。
「嘘、だ……」
かすかに感じられる人の気配、薄れゆく彼らの視界には、暗視ゴーグルをつけた少女の姿が。
そう。神崎有希子だ。
彼女はオンラインゲームの達人であり、銃を用いた戦闘のやり方を熟知している。
勿論、位置取りや攻撃、防御の技術まで。このようなビルでの攻略戦も経験した。
彼女はあえて遠回りをし、警備の手薄な箇所を狙った。
王道を行くその戦闘スタイルが功を奏したのだ。
とどめに警備の男二人にスタンガンの電流を浴びせて、縛り上げる。
彼女はまさに、戦場の女傑だった。
…
一方で、速水は見通しの良い吹き抜けに陣取っていた。
そこから的確に敵を狙撃して行く速水。もう5,6人は倒しただろう。
敵の位置に応じて適宜移動し、狙撃するその姿はまさに移動砲台である。
「敵が多い。多分この館内で、ざっと100人はいる。
このままじゃキリがない…」
そんな中、彼女に忍び寄る影が一人。
その影が至近距離まで近づいた時、気付いた彼女はすぐさま振り向く。
自分に向けられる銃口。
(やられる……!)
そう覚悟したその瞬間。
パン!
乾いた銃声が鳴り響く。自分がやられたと思った速水。
しかし。倒れたのはその男だった。
「え……?」
驚いて銃声のする方を振り向くと、そこにはライフルを構えた、目の隠れた1人の少年、千葉の姿が。
「危なかったな、速水。」
彼の口の形がそう言っているようにも聞こえた。
「ありがとう。」
彼女は素っ気なく、冷静にそう返した。
2人は敵を仕留めて行く。そして頃合いを見計らい、示し合わせてもいないのに同時に上へ向かう。
阿吽の呼吸のスナイパーコンビだった。
***
奥田愛美は、敵から逃げていた。
ロビーでの乱戦から抜け出し、上へと走っていたところを、運悪く見つかってしまう。
慌てて逃げ出す彼女。煙幕を使い、敵を足止めしたものの、いずれ追いつかれてしまうだろう。
(早く、逃げなければ…。でも、その前に。)
彼女はハンカチで口を押さえ、用意していた液体を廊下に散布する。
さらに、催涙スプレーをその場所で噴射し、ガスを充満させる。
いずれも遅効性の物で、すぐに効力は発揮できないが、それでも、彼女はそれを使った。
ひたすら逃げ、上を目指す彼女。念のため、敵の手薄な入り口の遠くから遠回りする。
…
しかし、敵は次第に近づいて行く。
パン!
銃声が聞こえる。こちらを狙ったものではないが、敵がいることを確認する為に撃ったのだろう。
おそらくこれで位置が分かってしまった。
だから、
彼女は敵を迎え撃つ。近づいて行く人影。相手は1人しかいない。
敵はスタンガンを振るって来る。
慌てて回避する彼女。敵は素早く攻撃を繰り出し、彼女はそれを避けるのが精一杯。
「きゃっ!」
彼女の首筋をスタンガンがかすめそうになる。
それを避けた時に態勢を崩してしまう。
敵はそれを見逃さず第2撃を繰り出す。もう駄目かと思ったその時。
男は頭を抑え、膝をつく。
ついにクロロホルムの効果が出たのだ。
すかさず彼女は麻酔銃を撃つ。
「う、あ……」
男はその場に倒れる。
「あ、危なかった……」
彼女はほっと胸を撫で下ろす。
彼女は、クロロホルムを巻いた場所を通ってきた敵が、
自分と戦う頃には戦闘不能になると考えたのだ。
そして、すぐさま気を取直して建物の上を目指す。
暗殺教室が始まったばかりの頃の、科学以外に取り柄のなかった彼女はもういない。
***
その全ての光景を、モニター越しに見ていた仮面の男。
彼は怒りと衝撃のあまり震えだす。
「……何たるザマだ!使えない警備員どもめ!」
彼は人選を誤った。彼が雇ったメンバーはSP、警備員など様々だったが、
このような集団戦には慣れていない。だからE組にあっさり破れたのだ。
そして、最大の敗因は、仮面の男も、その男が雇ったメンバーも、
中学生だと侮っていた事であった。
だが。
「仕方ない。こうなったら、こいつを使うしかないか。予定より少し早いがね。」
仮面の男はニヤリと笑う。彼にはまだ勝算があるようだ。
…
一方、その頃、E組のメンバーは、それぞれ最上階へと駆け上がる。
次第に彼らは合流し、立ちはだかる敵を倒していく。
「よし、この調子で行くぞ!」
そう声を掛け、さらに進もうとする。しかし……
上へと向かう階段が、見つからないのだ。
探しても探しても。今までは、遠回りではあったが階段はどこかにあった。しかし、
13階であろうか、それより上へと向かう階段がどこにもない。
そこの階の部屋を探すが、何もない上、高さからして最上階はここではない。
「くそ、どうすれば……」
誰かが呟く。どうすればいい?その答えは見つからない。
するとその時。突然、廊下の壁の一つが動き出す。
「へ……?」
それに対して、皆驚きを隠せない。そして、どこからともなく声がする。
「まさかここまで辿り着かれるとはね。だが、君達が最上階にたどり着く事はないだろう。
だって……」
言葉とともに、ドアの向こうから人影が現れる。
「ここで君達E組の生徒全員は、死を迎えるんだから。」
さあ、どうなってしまうのか……
私も分からない。最近スランプ気味でね…