黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

24 / 109
18話 才能の時間

「俺はあんたを父親とは認めない。子供を傷つける父親がどこにいる?

 

そもそも俺に父親はいない。それに、俺、父親とか大嫌いなんで。」

 

それが俺の本音だった。こんな独善的な父親認めない。そして許さない、仲間を傷つけたこと。

 

「父ちゃんに刃向かうのか?悪い子だ、悪い子はしつけねえとなあ。」

 

「上等だやってみろ。」

 

こいつの独善を叩きのめしてやる。そうして鷹岡が手を上げたので、俺はそれを受け止めた。

 

すると鷹岡は俺を思い切り蹴った。

 

「ぐっ」

 

かなり痛かった が我慢した、これも皆を守るためだ。

 

「やめろ鷹岡!」

 

烏間先生がやってきた。

 

「大丈夫か、三人共。痛みはないか?」

 

「私は大丈夫です。」

 

「俺もへーきっす。」

 

「俺は平気さ。」

 

「大丈夫に決まっているだろう烏間。俺の家族なんだから。手加減してるさ。」

 

「あなたの家族ではない、私の生徒です。」

 

そこには顔を真っ黒にした殺せんせーが立っていた。

 

その通りだ。俺たちはあんたの家族なんかじゃない。殺せんせーの生徒だ。

 

「酷いなあ。文句があるのかモンスター。今の罰だって教育の範囲内さ。

 

それとも何だ?多少教育論が違うだけで、俺に文句をつけるのか?」

 

「教育の範囲内だと?ふざけるな。法律で禁止されてるぜ。生徒への体罰は。

 

法律違反を起こしたお前に待っているのは懲戒免職だ。さあさっさと帰んな。」

 

すると鷹岡は言った。

 

「ここは地球を救う暗殺者を育てる場だ。多少ルールを破ってでも地球を救うべきなんだよ。

 

それにこの場所には教育委員会も手出しできねえさ。じゃあ訓練を続けるぞ。」

 

そして訓練が始まった。スクワット300回だと?まあ出来ない事はないが、

 

こんな奴の訓練やりたくないんでやってるフリだけしておく。

 

「あれでは生徒達が潰れてしまう。私からすれば間違っているものの、彼には彼なりの

 

教育論がある。だから烏間先生、あなたが同じ体育教師として彼を止めて下さい。」

 

(否定か、俺が奴を間違っていたと言えるのか?)

 

「そもそもこの時間割、放課後生徒たちと遊べないじゃないですか!」

 

「そうよ、私の買い物に付き合ってくれる男子がいなくなるじゃない!」

 

「間違いだらけだなここの教師は。」

 

そして…

 

(悔しいだろう烏間。大事な生徒を俺に奪われるのは。部隊で最優秀だったお前は、

 

俺の存在など気にも留めなかっただろう。だがな烏間。こいつらがタコを殺した英雄になれば、

 

俺も英雄を育てた英雄として、お前をアゴで使ってやるよ。)

 

「初回からスクワット300回とか、死んじまうよ…」

 

みんな辛そうだ。

 

「助けて烏間先生…」

 

「おいおい、烏間は俺らの家族じゃないぞ。お仕置きだな。父ちゃんだけを頼ろうとしない子は」

そう言って倉橋に殴りかかろうとする。

 

「そこまでだ。暴れたいなら俺が相手を務めてやる。」

 

烏間が止めに入ってきた。

 

「おいおい、俺は暴力を振ってるんじゃないぞ。これは教育だ。やるならあくまで教師としてだ。

烏間。お前が育てた生徒の中で一押しの奴を一人選べ。そいつが俺に一度でもナイフを当てられたら俺は出て行く。

 

ただし、もちろん当てられなければお前は一切口出し出来ない。そして、使うのはこれだ。」

 

「本物!」

 

あろう事か鷹岡は本物のナイフを取り出した。殺せというのか?

 

「よせ鷹岡、彼らは本物のナイフを使う訓練をしていない。」

 

「安心しな。寸止めでも当たった事にしてやるよ。さあ選べ烏間!

 

生徒を見殺しにするか生贄として差し出すか。どっちみち酷い教師だなお前は。」

 

鷹岡は狂気の笑みを浮かべた。狂っている。酷い教師はお前だ。生徒を傷つけて…

 

(俺はまだ迷っている。地球を救うためだ。奴のような容赦ない教育こそが必要なのではないかと。

この職業に就いてから迷ってばかりだ。それに鷹岡は精鋭部隊に属した男。

 

中学生のナイフが当たるはずもなく、そして僅かだが可能性のある生徒を危険にさらしてもいいのか…)

 

「渚君、やる気はあるか?」

 

「ぼ、僕?」

 

「な、何で渚が?」

 

「やるやらないは君が選ぶ権利がある。そしてまず俺の考えを言わせてもらう。

 

俺は暗殺を依頼した以上、君達とはプロ同士だと思っている。そしてプロとして君達に支払うべき報酬は、

 

当たり前の中学生活を保証することだと思う。このナイフを無理に受け取る必要はない。

 

その時は、報酬を維持して貰えるよう努力する。」

 

(僕はこの人の目が好きだ。こんな真っ直ぐな目で見てくれる人は家族にもいない。

 

それに神崎さんと前原君のこと、せめて一発返さないと気が済まない。)

 

「やります。」

 

渚はナイフを受け取った。そうか、渚なら出来るかもしれない。訓練でも時々渚が蛇のような殺気を発する。あれはもしかして…

 

「お前の目も曇ったなあ烏間。よりによってそんなチビを選ぶとは。」

 

「渚君、奴は素手対ナイフの戦い方も熟知している。本気で振らないとかすりもしない。」

 

「はい。」

 

(そのガキは間違いなく最弱クラス。そして本物のナイフを人に向けた時どうなるか。

 

素人がその意味に気づけば、萎縮して普段の力の2割も出なくなる。余裕で勝てるな。)

 

「いいか、ナイフを一回でも当てれば君の勝ちだ。君を素手で制圧すれば奴の勝ち。

 

それが鷹岡の決めたルールだ。だが君と奴の最大の違いはナイフの有無じゃない。分かるね?」

 

「渚のナイフ、当たると思うか?」

 

「無理だろ。」

 

「いや、渚ならやれるかもしれないさ。」

 

「何でだ黒崎?」

 

「まあ見ておけ。」

 

「さあ来い!公開処刑だ!」

 

…「いいか、鷹岡にとってこの勝負は戦闘、攻防ともに強さを見せつける必要がある。

 

対して君は暗殺。一回でもナイフを当てればいい。鷹岡も最初の数撃はかわすだろう。

 

反撃の来ないそこに勝機がある。」…

 

(僕は、本物のナイフを手にして一瞬迷って、それから烏間先生のアドバイスを思い出した。

 

そうか、戦って勝たなくたっていい。殺せば勝ちなんだ。

 

だから僕は、通学路を歩くみたいに、笑顔で、普通に歩いた。そして近づいて、ナイフを振るった。

 

そこで鷹岡先生は、初めて自分が殺されかけていることに気づいた。誰だって殺されかけたらギョッとする。

 

殺せんせーですらそうなんだから。ギョッとして態勢を崩して、重心が後ろに偏っていたので、

 

服を引っ張って転ばせた。正面からだと防がれるので、背後に回って、確実に…)

 

「捕まえた。」

 

何と渚はナイフを当てた。

 

(なんて事だ、予想を遥かに上回った。殺気を隠して近づく才能、殺気で相手を怯ませる才能、

 

本番に物怖じしない才能!これは暗殺の才能!咲かせてもいい才能なのか?

 

「勝負ありですね、烏間先生。全く、本物のナイフを生徒にもたせて、怪我でもしたらどうするんですか。」

 

「フン、怪我しそうならマッハで助けに入っただろう。」

 

 

 

「よっしゃあ!」

 

みんな歓喜した。

 

「すげーよ渚。よく当てられたな。」

 

「うん、烏間先生のアドバイスに従っただけだよ。」

 

「サンキューな渚、スカッとしたぜ。」

 

(彼は一見弱く見える。だから鷹岡は油断し反応が遅れた。弱く見えるというのは、

 

暗殺者にとって立派な長所なのだ。)

 

(だが、この平和なご時世に咲かせてもいい才能か?この教室はともかく、世間に出て役立つのか?)

 

「今回はずいぶん迷ってばかりですねえ。」

 

「悪いか?」

 

「でもね烏間先生…」

 

「このガキ、父親も同然の俺に逆らって、マグレの勝ちがそんなに嬉しいか!」

 

「確かに、この勝ちはまぐれです。けど鷹岡先生、父親を押し付けるあなたより、

 

プロに徹する烏間先生の方が、僕はあったかく感じます。

 

本気で僕らを強くしようとしたのには感謝します。でもごめんなさい、出て行って下さい。

 

僕らの担任は殺せんせーで、僕らの教官は烏間先生です。それは譲れません。」

 

渚の言う事は筋が通っていた。そして立派な言葉だった。烏間先生ならきっと応えてくれるだろう。

「じゃあ私は?」

 

「僕らのビッチです。」

 

「先生として一番嬉しいのは、自分の問いに生徒が答えを出してくれた時。そしてその答えは受け止めなくては。」

 

「この、舐めやがって…!」

 

「そこまでだ。俺の身内が迷惑かけてすまなかった。俺が上に交渉する。俺が指導を続けられるよう。」

 

すると…

 

「そこまでです。」

 

「理事長先生!」

 

理事長が現れた。まさかE組を疲弊させる鷹岡の続投を望むのか?

 

「新任教師の腕前、拝見させて頂きました。教育に恐怖は必須だ。けれども、 暴力でしか恐怖を

 

与えられない教師など三流以下です。あなたはこの学園に不必要だ。

 

教師の任命権は防衛省ではなく、この私にある事をお忘れなく、ではさようなら。」

 

「く、くっそお!」

 

鷹岡は逃げるように去っていった。

 

「相変わらずあの人の教育には迷いがありませんねえ。」

 

だが良いだろう、鷹岡が追い出されたのなら、今日に限れば。

 

「烏間先生、今回は生徒のお陰で体育教師に返り咲けたんだし、臨時報酬あってもいいんじゃない?」

 

「甘いものとか食べたいなー」

 

「甘い店など俺は知らん、これで好きな所へ行くといい。」

 

皆喜んだ。俺も甘い物を食えるのは良かった。

 

「黒崎君、ほら行こう!一緒にプリン食べよう!」

 

「ああ。」

 

けれど、渚が見せた才能は、俺に強い衝撃を与えたのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。