これは俺が中学一年生の時の話。
まだ過去を引きずり、それが俺の性格に大きく影響を与えていた頃。
俺はどういう経緯でカルマや渚と出会い、親しくなったか。
それを今から語ろうか。
…
「さあ、こいつの命が惜しかったら俺に土下座して謝りな。」
不良グループの、1番最初に俺にやられた奴の首を絞めながら俺は脅した。
すでに不良は、全員傷だらけ。俺が徹底的に倒した。
普通なら、このまま終わってさっさとその場を去っている所だ。
だが俺はそれだけでは気が済まなかった。
弱者を虐げる強者、そんな奴は性根が腐っている。だからそれを根本から叩き直させる。
そう、そのためには、自分が強者ではないと思い込ませればいい。
だから徹底的に倒し、自分が弱者だと刷り込ませる。
俺はその手をよく使っていた、今思えばこの時が1番荒れていた。
両親を失った孤独感と不安を、暴れまわる事で無理やり押さえつけていた。
そんな時期だった。
「ひええ、助けてくれ、命だけは、何でもするから!」
不良が恐怖の形相で叫び土下座する。
「そう、その顔だ、お前らはそうやって、他人に頭下げて這いつくばって生きていればいい。」
俺はそう言い残し、高笑いして去っていった。
そんな日々を繰り返し、しかもそれをほとんど同じ場所で行っていたので、
俺は次第に恐れられ、また恨みも買っていった。
「ただいま。」
帰宅した俺は気だるそうに家のドアを開ける。
「お兄ちゃん、その傷、またケンカしたの?全く、いつまでそんな事やってるの。」
出迎えた妹が咎める。何故そんなに俺を注意したがるんだろう。
そもそも出迎えなければいいのに、
「うるさいな、俺がどこで何をしようが俺の勝手だ。」
そう言って俺は部屋に入った。これが、俺の日常だった。
そして翌日学校へ向かう。俺は学校では、その姿を隠していた、
素行不良な事はバレていない。少なくとも不良潰しは。
ただ無気力に過ごしていた。
授業だって、適当に受けているフリだけして、教師の話など聞き流していた。
そんな中、数学の時間、課題を解いている時、1人の男が席を立ち教師のところへ行く。
赤羽業だ。
「何だ赤羽!もう終わったのか!」
数学教師も驚いている。
「そ、結構簡単だったし、多分全問正解、俺適当にどっかで休んでるわ。」
そう言って問題集を投げどこかへ消える赤羽。
俺は、周囲の目を気にせず、その高い成績に物を言わせ悠々と過ごすそいつに、
興味を持ったと同時に強く警戒していた。
俺が手を出していない方の繁華街で暴れる不良荒らし。
カツアゲの類を見かけるとすぐに退治するらしい。赤髪で挑発的な態度。間違いなくこいつだ。
…
「ほらほら、反撃してこないの?あ、そんなボロボロじゃ手も足も出ないねー。」
一方その頃カルマも、別の場所で不良を潰し回っていた。
挑発的に、決定的な屈辱を相手に与えるために。
彼も、俺の事を噂で聞いていたらしい。
(最近隣町で現れたっていう不良荒らし。160ない小柄な身長、やや長めの黒髪の少年。
外見的特徴からしたら、間違いない、うちのクラスの黒崎だ。
けど意外だねえ、何となく本性隠してる事は見抜いてたけど、まさかあんな事やってるとはね。
なかなかヤバそうなやつじゃん。)
カルマは人一倍警戒心が強い。そんな奴が、俺の事を警戒していない筈がなかった。
だからこそ俺ら2人は、表で接触する事こそなかったが、常に水面下で警戒していた。
そして、2人はついにファースト・コンタクトをとる。
…
それはある休日の昼下がり。
俺は不良の溜まり場となっている廃工場のドラム缶に腰掛けていた。
ここに居ると大抵不良がやって来てケンカを売る。
不良狩りにはうってつけの場所だ。
だが俺が潰しすぎたのか、最近は閑散としていた。
すると、
足音がする、それも1人。ここに1人でやってくる奴なぞ珍しい。
「へー、ここで不良狩りやってる奴がいるって聞いたけど、誰もいないのかなー。」
その声、間違いない。赤羽だ。
「ここに居るぜ、例の『不良狩り』ならな。」
俺はそう返事をする。
すると、カルマは俺に気付き、
「へえ、やっぱり黒崎か。学校の様子とは全然違うねえ。
随分と手酷く不良を潰すらしいじゃん。」
と言う。
そして2人は向かい合う。そこには不穏な空気が流れていた。
「悪いか?俺は弱者を虐げるような強者が嫌いでね。
それに、お前だってそれは同じだ。不良を潰し回ってる、その一点は。」
「悪いとは言ってないよ、俺だってさあ、不良がカツアゲとかしてるの見ると、
許せないんだよねえ。けどさ、ちょっとやり過ぎじゃない?
徹底的に土下座までさせて屈服させるのは、もしかして、なんかトラウマでもあるの?
不良とか、土下座とかに関する。」
その言葉は俺の琴線に触れた。
不良に関する嫌な記憶があるわけではない。だが、俺は、
弱者が一方的に、強者の都合だけで踏みにじられる。
それによって俺の幸せな生活は壊されたのだ。
だから…
「言ってくれるねえ、趣味が悪いな、人の個人的事情に口を出すなんて、
それとも何だ、俺を挑発しているとでも?」
「さあ、どうだろうね…」
まさに一触即発の状態、周囲に張り詰めた雰囲気が流れる、
その状態のまま2人はしばらく睨み合っていた。
すると…
足音が聞こえる。それも大勢の。そしてその足音は、どんどん近付いている。
「!」
カルマも俺も身構える。不良の襲撃でもあったのか…?
その予想は的中した。
現れたのは何と20人以上のの不良。
その中には、見た事のある顔も何人かいた。俺が潰した不良共だ。
「やい、そこの中坊、よくも俺らの縄張りを荒らしてくれたな。
あの時の復讐だ。叩き潰してやるよ。」
何人かは鉄パイプを持っている。
「…群れることでしか威張れないクズどもが。中学生1人にそんな数やって楽しいか?」
俺はそう毒づいた。半ば挑発だったが、それは本音でもあった。
卑怯な奴も、俺は嫌いだった。
「野郎ども、やっちまえ!ボコボコにしろ。」
リーダー格の男が号令を掛ける。すると一斉に不良が襲いかかる。
ふと赤羽の方を見るといつの間にかドラム缶の中に隠れていた。
「自分で蒔いたタネでしょ、自分で解決しな。ま、死にそうになったら助けてあげるよ。」
そう言い残して隠れるカルマ。
「ふん。やるしかないな。」
俺は内心焦っていた、正直この人数相手に勝てるかと言ったら、厳しいだろう。
だが、後戻りは出来ない、赤羽の言う通り、自分で蒔いたタネだ。
不良がまず1人、俺に襲いかかる。俺はまずそいつの隙を突き、難なく撃退する。
しかし、その間に俺は取り囲まれていた。
不良が数人襲いかかる。俺はそいつらの攻撃をかわしながら、隙を探して行く。
1人のガラ空きになった腹部を強く蹴り、そいつはうずくまる。
「数の力に頼る戦術は、個々の思考を疎かにする。愚かな奴め。」
しかし、その間に鉄パイプを持った不良が、俺の後頭部を狙う。
「!」
俺はすんでのところで受け止める。
しかしすかさず別の不良が殴りかかる。俺はその攻撃を顔面に直接受けてしまった。
「よそ見してんじゃねえ!」
「ぐはっ!」
俺はすかさず反撃に移る、しかし1対多の戦闘において、俺の状況は次第に不利になっていった。
相手は体格が俺よりふた回りも上だ。
1人1人は俺より弱いが、戦うにつれ体力を消耗し、俺の動きは鈍くなっていた。
俺は次第に防戦一方になり、ついに致命的な一撃を受ける。
ガツン!
不良の飛び蹴りが顔面に直撃した。
「ぐああ…」
「どうした、その程度か。」
不良がせせら笑う。
俺の意識は次第に薄れゆく。
鼻血が出て、目の上にもこぶができている。
俺の体はもうボロボロだった。だが、それでも俺は諦めなかった。
ゆっくりと俺に近付き、とどめを刺そうとするリーダー格の男。
俺はそいつが近付いた瞬間、正拳突きをそいつの腹部に食らわせた。
「…何?こいつ、まだ意識があるだと!」
だが劣勢は変わらない。相手はまだ3人いた。しかも3人ともかなり強い。
俺はもう一度必死に抵抗する。だが、体が動かなかった。
すると…
「ぐあああ!」
不良の1人が崩れ落ちる、何があったかと振り向くと、赤羽が不良を倒していた、
「うーん、やっぱり俺よりは強くないね。動きも技もまだ荒削りだ。
けどスゴイね。黒崎、よくここまで粘ったじゃん。俺だったら、
そんなになったらもう諦めてたよ。言ったでしょ、死にかけたら加勢するって。」
「赤羽…」
そこから先は早かった。カルマは俺より速く不良を倒して行く。
「もう1人、仲間がいただと…」
最後の不良が崩れ落ち、掃討が完了する。
カルマは手を叩いてこう言った、
「黒崎、お前ヤバすぎるよ、飛び蹴り顔面に思いっきり食らって、しかも鉄パイプまで喰らってtsのに、
まだ起き上がるとか。正気?現にお前の身体ボロボロだし。」
「ふっ、俺はな、絶対諦めねえ。その執念が俺の原動力さ。
そもそもお前がもっと早く加勢してりゃこんな事には…」
「逆に俺がいなかったらお前今頃ボコボコだったよ。俺のお陰…」
「そう言うけどお前3人しか倒してねえだろ!良いところだけ持って行きやがって!」
「ああ、バレた?」
「ま、お前の事は見直したぜ、ただの不良荒らしじゃねえんだな赤羽。」
「俺の事はカルマって呼んでよ。こちらこそ、その執念と体力、よほど根性ないとあんな闘えないよ、
黒崎、お前スゴイんだねえ〜。」
そこから先は早かった。目的が同じなのもあって、俺たちはすぐに意気投合した。
「よーし黒崎、今日も行こうか。」
「ああ、今日の相手は何人かな?」
こうして最強の不良荒らしコンビが誕生したのだった。
そして俺は、強者への執着を抑えることが出来た。カルマと言う仲間ができた事により、
孤独感が無くなったのが大きい。それから、俺は相手を屈服させるような事はしなくなった。
後に2人の悪魔は、あちこちの盛り場で伝説を作る事になる。
そんな二人に付き添う、どこかか弱そうな少年がいたとか。
黒崎がボロボロになるまで見て、負けそうになったら加勢して良い所持って行く。カルマらしい。