「殺ったのか?」
殺せんせーの爆発の後は何も無く、皆には達成感と手応えがあった。
「油断するな、奴には再生能力もある。水面を見張れ!」
水圧と弾幕の檻に囲まれ、逃げ場は無かったはず。
すると水中から何かが浮かび上がってきた。それは球体をしていて、透明なオレンジ色、中には…
殺せんせーの顔が入っていた。
「え、何?」
それが初めてそれを見た皆の感想だ。
「これぞ先生の奥の手中の奥の手。完全防御形態!」
「それは一体?」
「先生の体を凝縮し、それによって余ったエネルギーで透明な結晶の壁を作る。
この状態の先生は無敵、対先生弾も水も、あらゆる物質を弾きます。」
という事は、あらゆる攻撃が効かず、永久に殺せないと?
「それじゃあ、ずっと殺せないじゃん。」
「いや、弱点はあります。この結晶は24時間後自然消滅し、先生は元の姿に戻る。
その間一切先生は身動きが取れません。これは様々なリスクを伴う。
例えばロケットで宇宙空間に飛ばされる、ですがそれが出来るロケットはないと調査済みです。」
やられた。皆がそう思った。
隠し持っていた奥の手中の奥の手。弱点まで計算していて、完敗だ。
「へー、何も効かないんだ。それは残念だよ。」
そう言うとカルマは殺せんせーがエロ本を読んでいる動画を見せる。
「にゅやああ!カルマ君やめて、手ないから顔も覆えないんです!」
するとカルマはウミウシを殺せんせーの顔につける。こういう時のカルマは天才的だ。
「取り敢えず、上層部とこいつの処分方法を検討する。今日は解散だ。」
「対先生物質のプールにでも閉じ込めますか?その時はエネルギーで爆発させて逃れます。」
「皆さんは誇っていい。世界中の軍隊すら先生をここまで追い込めなかった。
ひとえに皆さんの計画の素晴らしさです。」
殺せんせーは褒めてくれたが、それでも皆は、全員の渾身の一撃を外した落胆を隠せず、
ショックによる異常な疲労感を感じホテルに着いた。
しかし千葉と速水は残っていた。
「律、記録は撮れてたか?」
「はい、可能な限りのハイスピードで。」
「俺さ、分かっちゃったんだ。ミスった。この弾じゃ殺せないって。」
「断定は出来ません。ですが、千葉君の射撃があと0.3秒速いか、速水さんの射撃があと30cm近ければ、
気付く前に殺せた可能性が50パーセントほど存在します。」
「やっぱりね、リハーサルでも外さなかったし、自信はあった。けどさ、いざ本番。
プレッシャーで視界が狭まり指が硬直した。」
「こんなにも練習とは違うんだね。」
二人も酷くショックを受けていた。
そしてフロント前のテラスで、皆休んでいた。
「しかし疲れた、もう何もする気力ねー。」
「んだよてめーら。一回外したくらいで。これだけ頑張ればもう十分だ。明日はゆっくり遊ぼうぜ。」
「そうそう、明日こそ水着ギャルをじっくり見るんだ。」
皆は酷く疲れていた。いくらなんでも疲れ過ぎだ。
すると息も絶え絶えになった中村が、
「渚君、ちょっと肩を貸してくれんかね。」
「中村さん!すごい熱。」
「部屋に戻って着替えたいんだけど、ちっとも体が動かなくて。」
と言って倒れた。
すると岡島が
「ヤバイ、想像しただけで鼻血が…」
本当に鼻血を出した。
「おい岡島、しっかりしろ!」
周りを見ると、およそ10人が体調を崩して高熱を出していた。
「くそ、一体なんなんだよ!」
「わからない黒崎。でもこんなの異常だよ。」
すると烏間先生に電話がかかる。
「やあ烏間先生。可愛い生徒が苦しそうだねえ。」
「これは貴様の仕業か!」
「察しが良いねえ。そうだよ。あいにく治療薬は一種しかない特殊なウイルスでねえ。
1週間で死に至るよ。それとこの島には病院はないし医者も夜はいない。
治療薬が欲しければ山頂のホテルに来い。期限は1時間だ。手土産に袋の賞金首も忘れずにな。
その様子だと生徒の半数はウイルスに感染したようだね。」
「お前は何者だ?」
「さあね。そんなことはどうでも良い。賞金百億を狙ってる者だよ。
それと烏間先生、あんたは腕が立ちそうだ。だから、賞金首は背の小さい男女二人に持って来させろ。
我々の機嫌を損ねれば治療薬は即座に爆破する。外部と連絡を取ったりすればな。」
「念入りだな。」
「当然だ。未知の超生物の相手を想定していたからな。
よくぞそいつを行動不能まで追い込んだ。感謝するよ。お陰で計画が進んだ。」
「くそっ!」
烏間先生は歯嚙みした。
まさかこんな時に第三者が狙いに来るとは!
「というわけだ。」
烏間先生は事情を話した。
「誰がそんな酷いこと…」
「烏間さんダメです。いくらあのホテルに電話を繰り返しても、プライバシーを繰り返すだけで…。」
「やはりな。知人から聞いた話だが、あのホテルは警察からもマークされている。
伏魔島と呼ばれ、南国の孤島のホテルということもあり、
政財界やマフィアの大物なども出入りしている危険な場所だ。
私兵を雇い、違法取引も数知れず。警察も手を出せない。」
「そんなホテルがこっちに協力するわけないね。」
そうだ、ホテルは敵と思った方が良い。
「どーすんだよ、このままじゃ皆死んじまう!」
吉田が焦りを隠さず叫ぶ。
「落ち着いて吉田君、そう簡単に死なないからさ。」
原がなだめる。
「すまねえ原。」
「んだよお前ら、今すぐ都会の大病院に連れて行けば良いだろうが。そこで治せば良いんだよ!」
寺坂がそう言う。
「俺も賛成だ。相手はウイルスと言っているが、もしかしたら脅すための嘘かもしれない。
まず大病院で診療して結果を見てから…。」
「賛成しないな黒崎。それが本当のウイルスだった時、どんな病院にも治療薬はない。
その時のリスクが高すぎるよ。取り敢えず応急処置はしとくから、取引に行った方が…。」
打つ手なしか…。俺たちの暗殺が良いとこまで行ったせいで、殺せんせーは動けない。
動けたなら対処のしようがあるんだが…
取引に応じて二人を行かせるか?相手が素直に治療薬を渡すとは思えない。
それに渚と茅野を危険な目に遭わせる事になる。そんなのは嫌だ。
二人が人質に取られるという最悪の事態も…
「皆さん、私に考えがあります。動ける人は全員動きやすい服装で来て下さい。
良い作戦かは分かりませんが、大人しく取引に応じるよりは良いでしょう。」
皆着替えて殺せんせーの元に集まる。
「どうするつもりだ、殺せんせー?」
「私の考えはこうです。律さん、お願いします。」
「はい、このホテルの入口には大量の警備が居て、この警備の目をかいくぐるのは不可能です。
しかし一箇所。侵入の難しい崖の上のホテルの通用口には警備がいません。
監視カメラは私の方でハッキングし、警備システムは全て私の配下にあります。」
「なのでそこから侵入し、最上階まで向かう。そこで動ける全員で黒幕に奇襲をかけ、
治療薬を奪還します。
ただし、敵も複数人いる可能性が高い。それにハッキングも限界があるので、この作戦にはリスクも大きい。
どうします、全ては皆さん次第。」
「そりゃー、無理かもね。」
「そもそもこの崖よ、無理に決まってるわ!」
「危険すぎる、やはり渚君、茅野さん…。」
すると皆は崖を登る。
「崖登るくらいなら楽勝だけど、未知の敵と戦う訓練はしてないから、
烏間先生、指揮お願いしますよ。」
そう磯貝が言う。
「ああ、落とし前、きっちりつけてやんよ。」
「分かりましたか、貴方のもとには15人の特殊部隊がいる。さあ、時間はないですよ。」
「16人です、殺せんせー、私を忘れてます。」
そう律が言う。
「おっとこれは失礼、16人ですね。」
さあ、もう覚悟は決まった。
「全員注目!」
烏間先生が叫ぶ。
「隠密潜入から奇襲への連続ミッション!違うのはターゲットのみ。
作戦開始は20:00!マップを3分で叩き込め!」
「了解!」
潜入作戦、 開始。