黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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遅ればせながらクリスマス回。
前々から書いていたんです。


after story クリスマスの時間

12月24日、クリスマスイブ。暗殺教室が終わって9ヶ月が経過していた。

辺り一面が雪に覆われた中、ここ、椚ヶ丘駅前には所々ツリーが飾られ、

まさにクリスマス、聖夜といった雰囲気を醸し出している。

そして、そんな中沢山のカップルがお互いの愛を確かめ合っている。

まさにクリスマス、これでは性夜である。

そんな中、1人の高校生らしき少年が呟く。

 

「全く、ハロウィンといいバレンタインといい、何故こうも日本人は

本来の目的を知らずに仮装したりチョコを渡したりとお祭り騒ぎをするのだ。ことに最近。

皆企業の戦略に乗せられてるだけじゃないのか?」

 

彼の名は黒崎翔太。かつて超生物事件に関わった生徒の1人である。

今は高校生として、普通に生活を送っているそうだ。彼の指摘は正しい。

クリスマスの日、本来は家族で一緒にパーティをし、子供にプレゼントを渡すのがしきたりだ。

それなのに日本人と来たら所々でカップルが溢れんばかりの愛を見せつけて…

爆ぜろリア充。

 

という作者の僻みは置いといて。

 

「…こんな事、あかりが聞いたら怒るだろうな…」

 

と言いながら、腕時計を確認する黒崎。

…どうやら黒崎は、待ち合わせをしている模様。

勿論その相手とは、雪村あかり、世間では天才子役、磨瀬榛名として知られていた少女だ。

クリスマスにそんな相手とデート出来るというのに、当の本人は、

 

(全く、俺はクリスマスデートなんてわざわざする性分じゃないんだが…

あかりが一緒に過ごそうと言ってきたからな…)

 

とか思っているというのだ。非リア充が聞いたら嫉妬で発狂しそうなセリフだ。

時刻は5時。待ち合わせの時間になり、黒崎がそろそろ来ないかと思い始めた時。

すると、彼の元へ1人の少女が駆け寄る。雪村あかりがやって来たのだ。

 

緑のツインテールだった髪を、中学卒業と同時に、黒髪のストレートヘアに戻し、

身長の伸びも相まって、茅野カエデだった頃とは別人のように大人びた雰囲気になった彼女。

役者業も再開し、復帰に向けて一生懸命に頑張っている。

そんな彼女を見て、さすがの黒崎でも思ってしまう。

俺は彼女に釣り合うほどの男になれるのか、と。

 

「…お待たせ、翔太君!ごめんね…、準備が遅くなっちゃって…」

 

そう言って謝ってきた彼女を間近で見て、黒崎は息を呑んだ。

サラサラの黒のウエーブヘア。透き通るような白い肌。

フリルのついた黒のワンピースを身に付けている彼女は、いつも以上に綺麗に見える。

俺はこんな少女と恋人同士なのか。なんとも信じがたい話だ。と黒崎は思った。

 

けれど、少なくとも今夜は、その良く似合う綺麗な服装も俺の為なのだ。

きっと、少し遅れたのも、服装を選んだりするのに手間取ったのだろう。

黒崎はそう思う事にした。

 

「…それにしても、どうしてあんなに今夜を楽しみにしているんだ?

 

何か特別な理由でもあったのか?」

 

黒崎はあかりに問う。

そう、彼女は本当に今日の事を楽しみにしていた。黒崎を誘う時も、目を爛々と輝かせて、

 

「クリスマス、一緒に過ごそうよ!」

 

と言って来たのだ。これを断れる訳がない。

現に今も、本当に彼女は嬉しそうにしている。

 

「…だって、初めてじゃない?クリスマスイブを一緒に過ごすのは。

去年はさ、クリスマスどころじゃなかったから…」

 

確かにそうだ。去年は茅野が、雪村あかりとして正体を明かして、殺せんせーに暗殺を仕掛けて、

あれからもう一年が経つのだ。

 

「…そうか。悪いな、変な事思い出させて…」

 

「気にしないで。それに、私こういうシチュエーションに憧れてたんだ。

恋人同士で、クリスマスを過ごすっていう。演技でも、やった事無かったし。」

 

目を輝かせて語るあかり。そう、彼女だって普通の少女なのだ。

黒崎はそれを忘れていた。1年間暗殺を続け、しかも正体は天才子役。

そんな彼女だって、よくよく考えてみれば、内面はごく普通の女子高生なのだ。

触手が無くなっても甘い物が好きな事は変わらなかったし、

クリスマスを楽しみに待つその姿は、年頃の少女そのものだ。

そんな所も、彼女の可愛さだろうか。

そう思うと何だか微笑ましい。

 

「そうだったのか。じゃあ…、まずはどこへ行こうか?」

 

黒崎はあかりに訊く。

 

「…あの店に行こう。ほら、新しい服買いたいから。」

というわけで、駅前の商店街にある洋服屋へと向かう。

 

すると、あかりが黒崎の手を握る。

「え?」

若干動揺する黒崎。

 

「…ふふ、ずっと、手、繋いでいようよ。」

「あ、ああ」

 

商店街の中を2人で歩く。すると周りにも、男女のカップルがちらほら見える。

やはりクリスマスだからか。

時々、独り身とみられる男からの痛い視線を感じるのは気のせいだろう。

それにしても、手を繋ぎながら歩くというのは何だかこそばゆいというか恥ずかしい。

黒崎はそう思った。そんな内に洋服屋に着く。

クリスマスツリーが飾られ、カジュアルな装いだ。

すると、あかりは服を選んでいく。

 

「…これなんか、どうかな?」

彼女が選んだのは、白いワンピース。いつも黒系統の服を着ている彼女にしては意外な選択だ。

でも爽やかで明るい感じがして、なかなか似合いそうだ。

「…いいと思うよ。あかりに良く似合いそうだ。」

 

「本当?」

 

他にも彼女は色々な服を選んでいく。中にはサンタの色合いをしたコートなんかも。

 

「…これ、本当に買うの?」

 

黒崎が聞いてみると、

 

「まさか。でもさ、一回くらい着たっていいじゃん♪」

 

とあかりは答える。

 

実際に試着したその格好は、とても似合っていて、可愛さを感じる。

 

(…きっと彼女にはどんな服でも似合うのだろうな。)

 

そうして彼女はいくつかの服を買い、2人は店を出る。

 

「…今度は、カフェでも行くか。」

 

黒崎は、洋服屋のすぐ隣にあるカフェへ行こうとする。

 

だが…

 

「…翔太君。あれ…」

 

そこの看板を指差すあかり。一体何があったのかと見てみると、そこには、

 

「当店スタッフのメンタル保持の為、カップルの入店をクリスマスは禁止いたします。」

 

という文字が。

 

「ははは…」

 

これには苦笑いするしかない。

 

「じゃあ、あの店に行くか。ほら、2人で初めて出掛けた時に行った店。」

あの店のケーキバイキングは美味しかった。あの時の事が懐かしく思える。

確か、修学旅行の時のお礼としてあかりが誘ってくれたのだ。

「うん!」

 

商店街から駅へと戻る2人。

 

「あの、まだ手繋いでるの?」

遠慮がちに訊く黒崎。

「勿論!今日はずっとこのままだよ♪」

それを聞いて、軽くため息をつく黒崎。

「あ、ああ…」

 

どこか恥ずかしそうだ。

それに対して、あかりは頬をほんのり染めながらも、とても嬉しそうだ。

そしてカフェに入る。やはり中はカップルが沢山いた。

 

「懐かしいな。あの時は、まだ知り合って数ヶ月しか経ってなかったな。」

「うん、私がさ、修学旅行のお礼に誘ったんだよね。」

「そうだったな。」

「でもね、あれはただの口実だったんだ。」

「え?」

 

黒崎は驚く。それもそうだろう。では、本当は何が目的だったんだろう。

 

「…実は、あの時から、翔太君の事気になってた。

 

助けてくれたのは嬉しかったけど、それだけが理由じゃない。

 

私を二度も助けてくれた翔太君に、どこか惹かれたんだ。

 

どうして、私の事を助けてくれたんだろうって。」

 

「…そうだったのか。」

 

黒崎は驚いた様子だ。

 

「ねえ、私が翔太君の事、いつから好きだったか分かる?」

「わからないな。俺があかりの触手を抜き取って助けたあの時か?」

正確には、殺せんせーが触手を抜き取ったわけだが。

「違うよ。もっと前から、夏休みくらいから、もう好きだったんだよ。

ずっと、気になってたんだ。」

 

「そりゃ嬉しいな。でも、なかなか気付かなかったよ。あかりの演技が上手かったから?」

「…違うよ。翔太君が鈍いだけ。ふふっ。」

 

あかりは微笑む。

俺はそんなに鈍かったのだろうか、黒崎には思い当たる節はないようだ。

彼は本当に鈍感である。

 

「そういえば、卒業して半年になるな。皆、それぞれの夢を目指して頑張ってるみたいだ。」

「うん、そうだね。」

「杉野は今、甲子園目指して頑張ってる。カルマは、官僚になりたいと言っていたな。

渚は教師を目指してるって。殺せんせーに憧れたんだろうな。」

 

あれから半年。皆新たな道を歩み始めている。

そんな事を話しながらケーキを食べ終わり、会計を済ませ店を出る。

他にも、駅前の商店街で色々な小物を買ったり、ゲームセンターでゲームに興じたりと、

色々な事をして、気付けば時刻は9時に。

 

駅前には、まだ雪が降っていた。まさにホワイトクリスマスだ。

 

「…そろそろ帰ろう。今日は、ここまでかな。」

「うん、そうだね。ちょっと寂しいけど。」

雪の降るクリスマス。楽しかったひと時ももうすぐ終わりだ。

そして、別れを告げようというその時。

「え…」

あかりは言葉を失う。なんと、黒崎が彼女にキスをしたのだ。

「んん…」

 

あの時とは違う、恋人として、愛を確かめるようなほのかなキス。でも、あかりへの効果は絶大だ。

「…翔太君、まさか最後にそんな…、ずるいよ…」

顔を真っ赤に染めながら呟くあかり。意表を突かれ、大分動揺しているようだ。

そんな彼女を見て、ちょっとした悪戯心が黒崎に芽生える。

「今日はあかりにリードされっぱなしだったからな。最後くらいは俺が決めないと。

じゃあね、素敵な聖夜だったよ、お姫様。ふふっ。」

 

最後にあかりの手の甲にキスをし、そう言い残して、闇の中に消える黒崎。

 

「…もう、最後にそんな事言うなんて、反則…」

 

頰を膨らませて、あかりは人知れず呟いた。




リア充爆ぜろ。

本当に羨ましいですね。茅野ちゃんとデートなんて。
そうさせたのは僕ですが。
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