黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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54話 死神の時間

「くそ!」

 

盗聴器を潰す前原。

 

あの花屋つまり死神から買った花束。あれに盗聴器が付いていたのだ。

 

「これで俺らの情勢を探り、ビッチ先生が1人になる隙を狙っていたってわけか。」

 

「烏間先生も殺せんせーもいない事を知った上で、大胆にも乗り込んだと。」

 

ということだ。

 

「でもさ、実は良い人って事はないの?言うほど悪人には見えなかったし…」

 

倉橋がそう言う。

 

「すごいよね、そう思わせちゃうんだから。こんな堂々と犯行宣言されない限り、

 

あいつの前では誰でもそう思う。死ぬ寸前までね。」

 

そうカルマは分析する。

 

「そうだよね、実際のところビッチ先生さらってるしね。」

 

倉橋も、それに納得したようだ。

 

そして、誰かが死神からのメッセージを読み上げる。

 

「今夜18時、地図に示した場所にクラス全員で来てください。先生方、親御さんは勿論、

 

外部の者に1人でも伝えたらイリーナ先生の命はありません。」

 

つまり俺ら全員でその場所に来いと。

 

「どうせ人質にとろうとしているんだろう。」

 

「鷹岡やシロと同じ、烏間先生と殺せんせーをおびき出す為に…」

 

千葉が考察する。

 

「くそ、厄介な奴に限って俺らを先に標的にしやがる!」

 

杉野が悔しそうに壁を叩く。しかし、それはどうする事も出来ない。

 

そして杉野もそれを分かっているから、悔しい表情をしているんだろう。

 

「しょうがないじゃない、私達賞金稼ぎの一等地にいるのよ、狙われて当然。」

 

狭間の言葉が全てを物語っていた。

 

そして、寺坂があるものを指差す。超体育着だ。

 

「…使うか、これ。」

 

「今来ないでいつ着るの。守る為に使うって決めたじゃん。」

 

「あんなビッチでも色々世話になってるしな。」

 

「世界一の殺し屋だが知らねーが、そんな計画通りにいかせるかよ!」

 

皆乗り気だった。俺はどうしてもそう積極的にはなれなかったが、反対する訳にもいかないので従った。

 

 

「…死神は常に1人で仕事をする。依頼に合わせて協力者を用意する事はあるが、

 

そいつらは皆暗殺に加担した事を知らない。成功した仕事の難度の高さから、

 

実は数人いるんじゃないかと噂された程だ。」

 

(世界一の殺し屋か…)

 

道を歩きながら死神について考える烏間先生。

 

すると落ちている花に気が付いた。

 

「商品、踏みそうだぞ。」

 

花を拾う烏間先生。

 

「おお、ありがとうございます。お礼に、一輪どうぞ。」

 

それを受け取り、烏間先生に一輪の花を渡す花屋。

 

「ガーベラです。繊細な花でしてね。貴方は野に強く咲く花の方がお好きでしょうけど。

 

でも手元の花は、水をやらねばすぐ枯れてしまいますよ。」

 

「?、まあ良い、せいぜい長持ちさせるさ。」

 

さすがの烏間先生も気付かなかった。まさかその花屋が、死神と呼ばれた殺し屋だとは。

 

(接近してみて超人的な力を感じた。だが僕の敵ではない。彼も、花束に加えようか。)

 

そして指定の場所に向かう俺達。

 

まずは糸成3号(偵察ヘリ)で周囲を偵察する。

 

「空中を一周したが、屋上や周囲に人影はない。」

 

「倉庫の規模からして、手下はせいぜい数人。」

 

「それと、花束に盗聴器を仕込む必要があったって事は、

 

その直前の情報までは入手できてないって事。」

 

「大方殺せんせーが盗聴器も全部撤去したんだろう。」

 

そして磯貝が声を掛ける。

 

「いいか皆、この超体育着や、対殺せんせー様の武器。その全てを知るのは、

 

敵がどれだけ情報通でも無理。

 

だから作戦はこうだ。大人しく捕まるフリをして、隙を見てビッチ先生を救出!」

 

「律、12時過ぎて連絡なかったら殺せんせーに連絡して。」

 

「はい、皆さんどうかご無事で。」

 

「行くぞ。」

 

ついに倉庫の中に入る。

 

その入り口はだだっ広い。

 

「全員散らばれば一気に捕獲はされない。」

 

その言葉通りに全員散らばる。

 

するとスピーカーから声がする。

 

「全員来たようだね。それじゃ閉めるよ。」

 

「…やっぱりこっちの様子は分かってるんだね。死神って言うより覗き魔?」

 

「それにしても…、そのカッコいい服、僕と一戦交えるつもりかい?」

 

超体育着、やはりただの服ではないと見抜いたようだ。

 

「…約束通りに全員来たでしょ。ビッチ先生さえ返してくれればそれで終わりよ。」

 

「全員散らばってるね。一気に捕まえられるのを防ぐつもりか。流石だねえ。」

 

すると死神は、謎のスイッチを押す。

 

すると床が一気に降下する。

 

「な、何だ?部屋全体が下に?」

 

そして降下がストップすると、そこは檻の中だった。

 

「捕獲完了。予想外だろ。一人一人捕まえるのはリスクが高い。

 

君達の為に用意した仕掛けさ。まさに移動式監獄だね。」

 

檻の外にいたのは死神、そして捕らえられたビッチ先生もいた。

 

さらに死神は続ける。

 

「お察しだと思うけど、君達全員、あのタコを誘き寄せる人質になってもらうよ。」

 

「くそ、出せ!」

 

皆慌てて壁を叩く。

 

「安心して、あのタコが大人しく来れば全員無事に解放する。」

 

「本当に?ビッチ先生も無事なんでしょうね。」

 

「勿論、人質を殺したら人質の意味が無くなっちゃう。

 

交渉次第で、30人は殺せる命が欲しい。」

 

「だから今は殺さない、本当だな?

 

俺達が反抗的な態度取っても頭に来て殺したりはしないよな?」

 

岡島が怯えた顔でそう言う。

 

「しないよ、子供だからってビビり過ぎだろ。」

 

しかし、

 

「いや、ちょっぴり安心した。」

 

「ここだ、竹林、空間のある音が聞こえる!」

 

三村が空間を見つけたらしい。

 

竹林がそこに爆弾を投げる!

 

(指向性爆薬か…)

 

そこに空いた大穴に皆駆け込む。

 

そして奥田のカプセル煙幕が炸裂する!

 

そして死神に周囲の状況を把握させない。

 

煙が消えた時には、檻はもぬけの殻だった。

 

(暗殺の訓練を受けた中学生か。いいねえ、そう来なくちゃ!

 

相手は未知の超生物。27人の殺し屋は肩慣らしに持ってこいだ。

 

1人2人殺しても構わない。万を超える死神のスキルを思い出そう。

 

椚ヶ丘中学校3年E組。幸か不幸か、100億の地球を滅ぼす賞金首を殺す使命を負った生徒達。

 

学内差別の苦い経験を共有しているからか、クラス内の結束は固い、か…。)

 

「聞こえるかなE組の皆。今君達がいるのは密閉された地下空間。

 

地上へ出るには、電子ロックを解除する必要がある。

 

鍵は僕の光彩認証。ロックを解除するには僕を倒さなきゃいけないって仕組みだ。

 

実はね、竹林君の爆薬で君達が逃げて嬉しいんだよ。

 

これだけの殺し屋を同時に相手できる機会はない。

 

未知の生物の前の肩慣らしには持ってこいだ。

 

期待してるよ。何処からでもかかってきな。」

 

そう言って通信は切れた。

 

「まるで、ゲーム感覚…」

 

速水が呟く。その通り、死神はこの暗殺をまるでゲームのように楽しんでいた。

 

鷹岡のような執念とは違う。さっきまで、あんなに顔を注意深く観察していたのに、

 

彼の顔が見えない。

 

表情を微妙に変化させ印象を残さない、高度な技法だった。

 

***

 

その頃ブラジルにて。殺せんせーは俺らが死神と戦っている事も知らずに、

 

呑気にテストの問題を作っていた。

 

「7:1、この比率だと方程式が美しくなりますねえ。」

 

しかし、7:1と連呼した殺せんせーは、他の観戦客の怒りを買う。

 

「おいデカイの、ケンカ売ってんのか?」

 

乱闘になりかけ慌てて逃げる殺せんせー。

 

ちなみに客の中に浅野が呼び寄せた留学生がいた。

 

「何があったんでしょう。サッカーに詳しい前原君に聞いてみましょう。」

 

そう言って電話する殺せんせー。

 

しかし繋がらない。

 

「じゃあ磯貝君に…、あれ?そういえば黒崎君も…」

 

そうやって掛けるも全員繋がらない。

 

「胸騒ぎがしますね。」

 

殺せんせーは慌てて日本へ戻るのだった。

 

***

 

「この狭い地下じゃ全員で動くと身動きが取れない。

 

ここからは幾つかの班に分かれて別行動だ。」

 

「A班は死神との交戦役。連絡係の茅野以外は戦闘を担当。

 

死神を積極的に探して見つかったら戦闘開始!」

 

A班 渚、カルマ、黒崎、茅野、木村、岡野、吉田、村松、前原、千葉、磯貝

 

「B班はビッチ先生の救出役。人質として利用されるのは避けたいし。

 

片岡、杉野が守りながら動いてくれ。」

 

B班 片岡、杉野、中村、矢田、倉橋、神崎、三村、岡島、速水

 

「C班は偵察。寺坂を壁に、各自の力で情報を集め脱出経路の確保。」

 

C班 寺坂、菅谷、竹林、イトナ、奥田、原、不破、狭間

 

「監視カメラは見つけたら即破壊。律、各班の円滑な連絡を頼む。」

 

そう言って律を起動する、しかし、

 

「やる気しねえ〜。死神さんに逆らうとかマジありえねー。」

 

ハッキングされていた。

 

「ここは電波が通っていない。モバイル律は本体とは分離されている。ハッキングは本体より

 

簡単だけど、それでも…」

 

世界最高峰のAIである彼女をハッキングするんだ。相当な腕前だ。

 

優れた殺し屋ほど万に通ず、か。

 

「トランシーバーでも連絡は出来るよ。」

 

不破が代替策を提案する。

 

「よし、早速行動開始だ。油断はするなよ。」

 

 

A班

 

「殺し屋って人種は正面戦闘が得意じゃない。ヴァンパイアだってそうだった。

 

多勢に無勢ならこちらが有利なのも経験済み。

 

必ず不意打ちで来るから、それを躱して多人数でのバトルに持ち込めば、

 

勝機はある!」

 

死神とはいえ正面戦闘は得意でないはず。そんなもの殺し屋には無駄だからだ。

 

しかし、

 

「…え?」

 

死神は現れた。それも、

 

「なんで、正面から堂々と…?」

 

足音を鳴らしながら、死神は近づいて行く。姿が見えない。さっきまでの花屋の面影は無い。

 

雰囲気さえ自在に操る。それが死神のスキル。

 

もし殺し屋だったら、そんなありえない妄想は真実だった。

 

「くそ、舐めやがって、正面からノコノコとやって来たな!」

 

「返り討ちにしてやる!」

 

吉田と村松がスタンガンを持ち飛び掛かる。

 

しかし、それを横にいなして、肘鉄を喰らわせる死神。

 

そして吉田と村松は倒れ伏す、

 

「殺し屋になって初めて磨いたスキルは、正面戦闘。

 

99%の標的には必要無いが、これが無いと残り1%の標的を仕留め損ねる。

 

世界一の殺し屋になるには不可欠だ。」

 

そして物凄い速さで移動する死神。

 

「烏間先生より、速い!」

 

あっという間に茅野の所へ辿り着く。そして、強烈な膝蹴りをした。

 

バキバキと骨の砕ける音がする。

 

「っと、流石にアバラ折っちゃったか。女子は脆いなあ。これ以上傷つけると人質として支障が出る。」

 

それを聞いて、俺と渚の目の色が変わる。

 

「僕が殺る」

 

「俺が倒す」

 

そして死神との、殺し合いが始まる。

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