「くそ!」
盗聴器を潰す前原。
あの花屋つまり死神から買った花束。あれに盗聴器が付いていたのだ。
「これで俺らの情勢を探り、ビッチ先生が1人になる隙を狙っていたってわけか。」
「烏間先生も殺せんせーもいない事を知った上で、大胆にも乗り込んだと。」
ということだ。
「でもさ、実は良い人って事はないの?言うほど悪人には見えなかったし…」
倉橋がそう言う。
「すごいよね、そう思わせちゃうんだから。こんな堂々と犯行宣言されない限り、
あいつの前では誰でもそう思う。死ぬ寸前までね。」
そうカルマは分析する。
「そうだよね、実際のところビッチ先生さらってるしね。」
倉橋も、それに納得したようだ。
そして、誰かが死神からのメッセージを読み上げる。
「今夜18時、地図に示した場所にクラス全員で来てください。先生方、親御さんは勿論、
外部の者に1人でも伝えたらイリーナ先生の命はありません。」
つまり俺ら全員でその場所に来いと。
「どうせ人質にとろうとしているんだろう。」
「鷹岡やシロと同じ、烏間先生と殺せんせーをおびき出す為に…」
千葉が考察する。
「くそ、厄介な奴に限って俺らを先に標的にしやがる!」
杉野が悔しそうに壁を叩く。しかし、それはどうする事も出来ない。
そして杉野もそれを分かっているから、悔しい表情をしているんだろう。
「しょうがないじゃない、私達賞金稼ぎの一等地にいるのよ、狙われて当然。」
狭間の言葉が全てを物語っていた。
そして、寺坂があるものを指差す。超体育着だ。
「…使うか、これ。」
「今来ないでいつ着るの。守る為に使うって決めたじゃん。」
「あんなビッチでも色々世話になってるしな。」
「世界一の殺し屋だが知らねーが、そんな計画通りにいかせるかよ!」
皆乗り気だった。俺はどうしてもそう積極的にはなれなかったが、反対する訳にもいかないので従った。
「…死神は常に1人で仕事をする。依頼に合わせて協力者を用意する事はあるが、
そいつらは皆暗殺に加担した事を知らない。成功した仕事の難度の高さから、
実は数人いるんじゃないかと噂された程だ。」
(世界一の殺し屋か…)
道を歩きながら死神について考える烏間先生。
すると落ちている花に気が付いた。
「商品、踏みそうだぞ。」
花を拾う烏間先生。
「おお、ありがとうございます。お礼に、一輪どうぞ。」
それを受け取り、烏間先生に一輪の花を渡す花屋。
「ガーベラです。繊細な花でしてね。貴方は野に強く咲く花の方がお好きでしょうけど。
でも手元の花は、水をやらねばすぐ枯れてしまいますよ。」
「?、まあ良い、せいぜい長持ちさせるさ。」
さすがの烏間先生も気付かなかった。まさかその花屋が、死神と呼ばれた殺し屋だとは。
(接近してみて超人的な力を感じた。だが僕の敵ではない。彼も、花束に加えようか。)
そして指定の場所に向かう俺達。
まずは糸成3号(偵察ヘリ)で周囲を偵察する。
「空中を一周したが、屋上や周囲に人影はない。」
「倉庫の規模からして、手下はせいぜい数人。」
「それと、花束に盗聴器を仕込む必要があったって事は、
その直前の情報までは入手できてないって事。」
「大方殺せんせーが盗聴器も全部撤去したんだろう。」
そして磯貝が声を掛ける。
「いいか皆、この超体育着や、対殺せんせー様の武器。その全てを知るのは、
敵がどれだけ情報通でも無理。
だから作戦はこうだ。大人しく捕まるフリをして、隙を見てビッチ先生を救出!」
「律、12時過ぎて連絡なかったら殺せんせーに連絡して。」
「はい、皆さんどうかご無事で。」
「行くぞ。」
ついに倉庫の中に入る。
その入り口はだだっ広い。
「全員散らばれば一気に捕獲はされない。」
その言葉通りに全員散らばる。
するとスピーカーから声がする。
「全員来たようだね。それじゃ閉めるよ。」
「…やっぱりこっちの様子は分かってるんだね。死神って言うより覗き魔?」
「それにしても…、そのカッコいい服、僕と一戦交えるつもりかい?」
超体育着、やはりただの服ではないと見抜いたようだ。
「…約束通りに全員来たでしょ。ビッチ先生さえ返してくれればそれで終わりよ。」
「全員散らばってるね。一気に捕まえられるのを防ぐつもりか。流石だねえ。」
すると死神は、謎のスイッチを押す。
すると床が一気に降下する。
「な、何だ?部屋全体が下に?」
そして降下がストップすると、そこは檻の中だった。
「捕獲完了。予想外だろ。一人一人捕まえるのはリスクが高い。
君達の為に用意した仕掛けさ。まさに移動式監獄だね。」
檻の外にいたのは死神、そして捕らえられたビッチ先生もいた。
さらに死神は続ける。
「お察しだと思うけど、君達全員、あのタコを誘き寄せる人質になってもらうよ。」
「くそ、出せ!」
皆慌てて壁を叩く。
「安心して、あのタコが大人しく来れば全員無事に解放する。」
「本当に?ビッチ先生も無事なんでしょうね。」
「勿論、人質を殺したら人質の意味が無くなっちゃう。
交渉次第で、30人は殺せる命が欲しい。」
「だから今は殺さない、本当だな?
俺達が反抗的な態度取っても頭に来て殺したりはしないよな?」
岡島が怯えた顔でそう言う。
「しないよ、子供だからってビビり過ぎだろ。」
しかし、
「いや、ちょっぴり安心した。」
「ここだ、竹林、空間のある音が聞こえる!」
三村が空間を見つけたらしい。
竹林がそこに爆弾を投げる!
(指向性爆薬か…)
そこに空いた大穴に皆駆け込む。
そして奥田のカプセル煙幕が炸裂する!
そして死神に周囲の状況を把握させない。
煙が消えた時には、檻はもぬけの殻だった。
(暗殺の訓練を受けた中学生か。いいねえ、そう来なくちゃ!
相手は未知の超生物。27人の殺し屋は肩慣らしに持ってこいだ。
1人2人殺しても構わない。万を超える死神のスキルを思い出そう。
椚ヶ丘中学校3年E組。幸か不幸か、100億の地球を滅ぼす賞金首を殺す使命を負った生徒達。
学内差別の苦い経験を共有しているからか、クラス内の結束は固い、か…。)
「聞こえるかなE組の皆。今君達がいるのは密閉された地下空間。
地上へ出るには、電子ロックを解除する必要がある。
鍵は僕の光彩認証。ロックを解除するには僕を倒さなきゃいけないって仕組みだ。
実はね、竹林君の爆薬で君達が逃げて嬉しいんだよ。
これだけの殺し屋を同時に相手できる機会はない。
未知の生物の前の肩慣らしには持ってこいだ。
期待してるよ。何処からでもかかってきな。」
そう言って通信は切れた。
「まるで、ゲーム感覚…」
速水が呟く。その通り、死神はこの暗殺をまるでゲームのように楽しんでいた。
鷹岡のような執念とは違う。さっきまで、あんなに顔を注意深く観察していたのに、
彼の顔が見えない。
表情を微妙に変化させ印象を残さない、高度な技法だった。
***
その頃ブラジルにて。殺せんせーは俺らが死神と戦っている事も知らずに、
呑気にテストの問題を作っていた。
「7:1、この比率だと方程式が美しくなりますねえ。」
しかし、7:1と連呼した殺せんせーは、他の観戦客の怒りを買う。
「おいデカイの、ケンカ売ってんのか?」
乱闘になりかけ慌てて逃げる殺せんせー。
ちなみに客の中に浅野が呼び寄せた留学生がいた。
「何があったんでしょう。サッカーに詳しい前原君に聞いてみましょう。」
そう言って電話する殺せんせー。
しかし繋がらない。
「じゃあ磯貝君に…、あれ?そういえば黒崎君も…」
そうやって掛けるも全員繋がらない。
「胸騒ぎがしますね。」
殺せんせーは慌てて日本へ戻るのだった。
***
「この狭い地下じゃ全員で動くと身動きが取れない。
ここからは幾つかの班に分かれて別行動だ。」
「A班は死神との交戦役。連絡係の茅野以外は戦闘を担当。
死神を積極的に探して見つかったら戦闘開始!」
A班 渚、カルマ、黒崎、茅野、木村、岡野、吉田、村松、前原、千葉、磯貝
「B班はビッチ先生の救出役。人質として利用されるのは避けたいし。
片岡、杉野が守りながら動いてくれ。」
B班 片岡、杉野、中村、矢田、倉橋、神崎、三村、岡島、速水
「C班は偵察。寺坂を壁に、各自の力で情報を集め脱出経路の確保。」
C班 寺坂、菅谷、竹林、イトナ、奥田、原、不破、狭間
「監視カメラは見つけたら即破壊。律、各班の円滑な連絡を頼む。」
そう言って律を起動する、しかし、
「やる気しねえ〜。死神さんに逆らうとかマジありえねー。」
ハッキングされていた。
「ここは電波が通っていない。モバイル律は本体とは分離されている。ハッキングは本体より
簡単だけど、それでも…」
世界最高峰のAIである彼女をハッキングするんだ。相当な腕前だ。
優れた殺し屋ほど万に通ず、か。
「トランシーバーでも連絡は出来るよ。」
不破が代替策を提案する。
「よし、早速行動開始だ。油断はするなよ。」
…
A班
「殺し屋って人種は正面戦闘が得意じゃない。ヴァンパイアだってそうだった。
多勢に無勢ならこちらが有利なのも経験済み。
必ず不意打ちで来るから、それを躱して多人数でのバトルに持ち込めば、
勝機はある!」
死神とはいえ正面戦闘は得意でないはず。そんなもの殺し屋には無駄だからだ。
しかし、
「…え?」
死神は現れた。それも、
「なんで、正面から堂々と…?」
足音を鳴らしながら、死神は近づいて行く。姿が見えない。さっきまでの花屋の面影は無い。
雰囲気さえ自在に操る。それが死神のスキル。
もし殺し屋だったら、そんなありえない妄想は真実だった。
「くそ、舐めやがって、正面からノコノコとやって来たな!」
「返り討ちにしてやる!」
吉田と村松がスタンガンを持ち飛び掛かる。
しかし、それを横にいなして、肘鉄を喰らわせる死神。
そして吉田と村松は倒れ伏す、
「殺し屋になって初めて磨いたスキルは、正面戦闘。
99%の標的には必要無いが、これが無いと残り1%の標的を仕留め損ねる。
世界一の殺し屋になるには不可欠だ。」
そして物凄い速さで移動する死神。
「烏間先生より、速い!」
あっという間に茅野の所へ辿り着く。そして、強烈な膝蹴りをした。
バキバキと骨の砕ける音がする。
「っと、流石にアバラ折っちゃったか。女子は脆いなあ。これ以上傷つけると人質として支障が出る。」
それを聞いて、俺と渚の目の色が変わる。
「僕が殺る」
「俺が倒す」
そして死神との、殺し合いが始まる。