黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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61話 進路の時間

「進路相談?」

 

「ええ。皆さん中学3年生。そろそろ将来の事について考えなければいけない時期です。

 

もし誰かが、先生を暗殺して地球を救えた場合ですが。

 

ま、殺せないから多分無駄になりますけどねえ。」

 

…腹立つ。

 

「勿論、相談中の暗殺もアリですよ。」

 

そう言って職員室へ消える殺せんせー。

 

「進路相談なー、地球を滅ぼすモンスターに相談してもなあ。」

 

「手厚いんだか舐めてるんだか。」

 

…確かにそうだ。でも進路はいつか決めなければいけない。

 

俺の場合は…、なんだろう。

 

(進路、僕は…)

 

思い悩む渚。ふと紙を見つめると、

 

志望校 女子校

 

第一志望 ナース

 

第二志望 メイド

 

なんて書かれていた。

 

「人の進路を歪めないでよ中村さん!」

 

「渚君、君に男の仕事は似合わんよ。」

 

…酷いな。

 

「渚君、卒業したらタイかモロッコ旅行行こうよ。今はモロッコが主流らしいよ。」

 

カルマが持ち出したのは怪しげなポスター。

 

「カルマ君は何で僕からとろうとするの⁉︎」

 

…渚、気の毒に。

 

 

さて肝心の進路相談。

 

まずは磯貝から。

 

「俺は公立いきます。中学の時とは経済事情が違うんで。」

 

ナイフを振るいながら言う磯貝。

 

「ええ、磯貝君ならかなりの難関公立へ進めるでしょう。その際の環境、

 

バイトの可不可や奨学金制度の有無、交通費などもじっくり考えましょう。」

 

「はい。」

 

続いて杉野。

 

「俺は今はとにかく野球!でも勉強からも逃げないよ。2本目の刃も大事って殺せんせーも言ってたしな。」

 

「ええ。」

 

そして岡野。

 

「私は杉野みたくはっきり出来ないなー。私は体動かすの好きだけど、

 

今それで生計立てるの難しいじゃん。」

 

「よく分かります。先生とじっくり相談していきましょう。」

 

一方教室では。

 

「私はやっぱり研究の道に進みたいです!ついでにこの毒コーラ言葉巧みに盛れたらいいな。」

 

奥田さんはそう言った。その才能なら立派な研究者にはなれるだろうけど…

 

「茅野さんは?」

 

「うーんまだ未定。多分、この教室で殺る事殺れたら、初めて答えが出る人もいると思うよ。」

 

…そうかも知れない。暗殺が終わってから考えるのもアリだな。

 

そして奥田さんに入れ知恵するカルマと中村。

 

「ゴキブリの卵粉末にした奴入れてやろうよ。あのタコの反応楽しみ。」

 

「じゃあカマキリの卵もブレンドしよ。昆虫の中でも近縁種だから相性良いんじゃ無い?」

 

…こいつらはその優れた頭脳を良くない方向に利用しそうだ。

 

そして原さんの番

 

殺せんせーの顔が膨らんでいた。

 

「どうしたのその顔?」

 

「奥田さんの濃硫酸を飲んでこうなりました。酸っぱい上に苦虫を噛み潰した味がします。」

 

そりゃそうだ、本当に虫の卵を噛み潰してるんだから。

 

「私はね、ちゃんとした主婦になりたい。共働きが当たり前の時代だけどさ、

 

背中を完璧に任せられる戦友を必要とする人はいると思う。」

 

そう言って殺せんせーに弁当を差し出す原さん。

 

「そのためにもっと勉強しなきゃね。」

 

「原さんならきっとなれるでしょう。優れた主婦には職人のような価値がありますから。」

 

それで狭間の番だが…

 

「話聞く気あんの?」

 

思い切り顔がむくんでいる殺せんせー。

 

「原さんが塩分多めの弁当で殺しに来ました。顔がむくんでいますが相談はできます。

 

それで狭間さんの進路は?」

 

「私は、活字が好きだから、本に囲まれていれば幸せかな。

 

大きな図書館の司書とかになれればそれで良いわ。

 

そうそう、この前興味深い呪術の本ゲットしたから、呪い殺してやろうかしら。」

 

「やめてー!先生気分だけで体調崩すタイプなんです!」

 

挙句の果て菅谷の番では…

 

「髪が生えました。呪いで。」

 

トゲを頭から生やす殺せんせー。

 

「相変わらずふざけた造形してんな殺せんせー。なんか描き足したくなっちまうぜ。」

 

そう言って殺せんせーの顔を塗る菅谷。

 

「俺はやっぱ美大行くわ。勉強で全部決まる世界は性に合わねー。」

 

「そうですか、しかし美大でも一流どころはそれ相応の学力を必要としますよ。

 

残りの個人授業で、高3までの範囲を終わらせましょう。

 

そうすれば高校は芸術に多くの時間を使えるでしょう。」

 

そう言って教科書を取り出す殺せんせー。

 

「うげ、有難いけど嬉しくはねえ。」

 

次はカルマ。

 

「カルマ君の志望は…、官僚ですか。国家運営のいわば裏方。君にとってはやや地味な気もしますが。」

 

「震災の時、民◯党の政治家はどいつも役立たずで、むしろ事態悪化させてたよね。

 

それが政権交代にも繋がったわけじゃん。」

 

「…否定は出来ませんね。」

 

「それでも日本はなんとか滅びたりはしなかったし、国のシステムは割と正常に回ってた。

 

あの非常時に政治家抜きで回るって事は、それって裏で官僚が仕切ってアイデア出してた訳じゃん。

 

それってスゲーなって思ってさ。だから俺はそれになりたい。文句ある?」

 

「いいえ、君らしい選択肢ですねえ。」

 

次の番の寺坂にこう告げるカルマ。

 

「寺坂さあ、政治家なりなよ。お前みたいな単純バカが表に出てくれると、

 

俺が裏から操りやすいんだ〜。」

 

「ケッ、裏で操るとか厨二くせえ。他に特にやりてーこともないけどよ。」

 

そして…

 

「中村さんは外交官ですか。君が真面目な目標を持ってくれるとは…」

 

そう感慨深く言う殺せんせー。

 

「あはは。私元々チョー真面目だったんだよ。

 

小学生の頃さ、天才小学生とか言われて、小1で、小6のテストで満点取ったり。

 

ただ点の取り方が上手かっただけなのにね。とにかく勉強に関する事じゃ全部1番。

 

でも、普通になりたかった。解けた問題より、解けなかった問題の話で盛り上がりたかった。

 

やっぱ普通じゃないズバ抜けた才能持ってるとさ、浮いちゃうから。

 

そんで頭悪くなりたくてバカな事やってたら、本当にバカになっちゃって。

 

素行不良でE組行き。失望した親の涙見て、失ったものに気づいた。

 

頭良くなりたい、けどみんなと馬鹿騒ぎしたかった。このE組で両方出来た。

 

ありがとね、殺せんせー。」

 

そういって微笑む中村。殺せんせーも嬉しそうな顔をしていた。

 

(皆しっかり考えてる、僕は…)

 

慌てて女子高とか書かれた文字を消す渚。

 

すると、

 

「何よガキ共、進路相談やってんの?」

 

ビッチ先生が現れた。しかも、その服装。

 

露出の控えめな落ち着いた服である。人違いか?

 

皆目を丸くして驚いている。

 

「フツーの安物よ。あんた達の世界に合わせてやったわ。何よ、もっと露出が欲しい訳?」

 

そう言って照れるビッチ。

 

(いや、隠した事でエロに凄みが出た。あの人はある意味成長したな。)

 

興奮する三村と岡島。

 

お前らは一周回ってある意味凄いな…

 

ていうか、

 

「サイズシール付きっぱなしじゃない?」

 

「安物慣れしてないな、まあ当たり前か。」

 

。「どうする?それとなく伝えるか?」

 

「いや、僕が取るよ。」

 

渚が立ち上がる。そしてビッチ先生の意識の波長を読み、気付かせずにシールを取る。

 

なんて才能だ…、また一段と磨きがかかったな。

 

そして職員室に入る渚。

 

「先生、僕には、たぶん人を殺す才能があります。僕の進む道を教えて下さい。」

 

そう告げる渚、彼は思い悩んでいた。自分の、進むべき道を

 

「僕の中で、なんとなく、他人の顔が明るく見えたり、暗く見えたりします。

 

明るいときは安全、暗いときは危険。

 

鷹岡先生とやるときも、暗いときは避けて攻撃してました。

 

それは無意識で、なんでそうなるかとか、深く考えずにいたけれど、

 

死神のクラップスタナーを喰らい、全身に電流が走って視界が変わりました。

 

死神の言う意識の波長。僕が明暗で感じていたのはそれだって。

 

人の呼吸とか、そう言うのが読み取れるんです。だから僕は、

 

多分死神と同じ事ができます。

 

大した長所も無い僕には、この先これ以上は望めないような才能。

 

殺せんせー、僕は…

 

 

 

ー殺し屋になるべきでしょうか。」

 

「……、君ほどの聡明な生徒だ。殺し屋になるリスクも考慮の上でしょう。

 

それを含めて、先生から一つアドバイス。

 

渚君、君に暗殺の才能があるのは、否定できません。

 

君なら、殺し屋としてその才能を如何なく発揮し、優れた殺し屋になれる。

 

君の持つ、波長を見抜く観察力や、どんな強敵にも臆さない勇気なら。

 

でもね、君の勇気は、自棄を含んでいる。

 

自分なんかどうなってしまってもいい。と、君自身の安全を軽く考えている。

 

だから、命を惜しまず笑顔で突撃出来る。殺し屋という危険な職業を進路の一つとして入れる。

 

観察と自棄、殺し屋には重要な才能ですが、君がどうしてその才能を身に付けたか、

 

誰のために、どうやって才能を使いたいか、もう一度見つめ直して下さい。

 

その時なお、君が殺し屋になりなりたければ、先生も全力でサポートしますよ。」

 

こうして渚の面談は終了した。

 

よほど思い悩んでいたようだ。

 

「さて最後は、黒崎君でしたね。」

 

今度は俺の番だ。

 

「失礼します。」

 

そう言って部屋に入り、俺はマシンガンで連射する。

 

勿論殺せんせーは平然と避ける。

 

「さて黒崎君、君の進路は?」

 

俺は紙を出す。

 

「行きたい高校はもう考えてあります。勿論自分の学力に合った所に。

 

それから校風や校則、色々な要素を考えてしっかりと決めました。」

 

「君らしいですね。しっかりと将来の事まで考えている。ですが…、

 

将来就きたい職業が決まって無いようですねえ。」

 

そう、俺は職業の欄は空欄だった。

 

「…俺は、気付いたら苦手な物はなかった。どんな事でも上手く出来る。

 

さして苦労せずに上達する。そんな感じがします。

 

でもどんな事でも、一芸に秀でた人間には敵わない。俺自身、特別優れた物は無い。そんな中途半端な、

 

いわば器用貧乏とも言える俺に、進むべき道とは…」

 

そう俺は聞いた。

 

「そうですねえ、君の言っている事は多くの面で的を得ている。

 

的確な自己分析が出来ているようですが…、ひとつだけ間違っている。」

 

そう言って殺せんせーは顔を×印にした。

 

「君は器用貧乏では決して無い。どんな事でも良い。一つの才能を丁寧に磨けば、

 

君は素晴らしい能力を持った人間になれる。君にはどんな才能が適しているか。

 

良く考えてみてください。」

 

「そうですか。」

 

帰り際、ナイフを投げつけて俺は出て行った。

 

(俺に適した才能か…)

 

それは一体なんだろうか。俺には、まだ分からなかった。

 

***

 

「ただいま。」

 

渚は帰宅した。

 

「おかえり渚。ちょっとそこ座りなさい。」

 

「何?母さん。」

 

渚の母親、潮田広海だ。

 

「あなたの成績、2学期中間54位で、本校舎復帰に届いてなかったわよね。

 

それで母さん絶望してたんだけど、田中君のお兄さん、60位でも復帰できたらしいの。

 

寄付金積んだら特例ってことで。だから渚、あなたも復帰させてもらうわ。

 

D組の先生に頼み込んで。」

 

そう一方的に告げる渚の母。勿論それを止める渚。

 

「待ってよ母さん!僕はE組のままがいい!成績だって上がったし、何より楽しいんだよ…」

 

しかし、

 

(やばい、暗い時に逆らっちゃった。)

 

渚の母の顔が次第に歪んでいく。

 

「なんでそんな向上心がないの?挫折の傷は人を一生苦しめる、母さんがそうなの!

 

同じ苦しみを味わせたく無い母さんの気持ちが分からないの?

 

大体あんたの成績が悪いから出費までしてあげるのに、何様のつもりよ。」

 

(明るい時に話さなかった僕のミスだ。こうなると手が付けられない。

 

争いの嫌いな父さんは嫌気がさして出て行った。)

 

そして渚の髪留めを外す母。

 

「渚、あなたは子供なんだから、人生の上手い渡り方とか分からないの。

 

でも母さんは全部知ってる。私みたいにならないように教えてあげてるの。

 

蛍大に入れっていってるのは、単に学力だけじゃない。

 

学閥って言ってね、就職する時に有利になるの。

 

(蛍大…、母さんが入れなかった名門大学だ。)

 

そして学閥の強い菱丸に入って、世界中を飛び回るの。

 

(菱丸…、母さんが落ちた名門商社。)

 

あーあ、理想を言えば女の子が欲しかったわ。

 

(これも口癖だ。)

 

私の親は勉強ばかりさせて、女らしさを磨く時間が無かった。だからルックス重視の菱丸に落ちた。

 

この服も、おしゃれを自分の子にさせるために買ったのに…

 

ほら、長髪にしてるからやっぱり似合う。

 

女の子だったらどんなに可愛かったことか。」

 

(知りたくもない、女じゃないし。殺気にも似たこの人の執念に、僕は一生逆らえない。

 

僕の人生の主人公はは僕じゃない、僕は所詮母さんの二周目だ。)

 

渚を縛る鎖は強過ぎた。だからこそ、抜け出せる術はないように思えた。




中村の気持ちは良くわかります。周囲と壁を感じるんですよね、何かずば抜けてると。

後渚の母親怖いですね。自分の母親はもっと優しいので良かった。
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