「椚ヶ丘中学校学園祭!秋、椚ヶ丘の最大の行事だ!
準備期間、中学校では、あるクラス同士の対決に注目が集まっていた!」
学園祭シーズン。本校舎では着々と準備が進められていた。
その姿は活気に満ちていた。
「本校舎の皆、気合入ってるねー。」
それを見て茅野が呟く。そうか、茅野は転校生だから行事とか細かく知らないのか。
ここは説明しよう。
「ああ、この椚ヶ丘学園の文化祭は、中高合同で行われる。
そしてこの文化祭。本気の商業合戦で有名なんだ。
売り上げは学校に寄付するんだが、収益の順位が堂々と校内に掲示される。
商業系の会社なら、ここでトップを取れば就活でも有利になる。
だから皆本気を出して取り組んでいる。社会人顔負けの店も多いぞ。」
「なるほど。それであんなに気合入ってるのか。」
「そういう事。」
茅野は納得したようだが、珍しいものを見ているような目だ。
当然だろう、文化祭でここまでする学校は少ない。たとえ私立でも。
するとふと準備中のクラスの数人がこんな会話をしていた。
「E組またなんかやるのかな。」
俺らの話か。そういえば今年は何かとE組が活躍したからな。
「体育祭見たいに今回もさあ、学園祭の売り上げ、トップ取ったりするかもな。」
「ないない、だってよお。E組ってあの山の上で出店するんだぜ。
あんな所に誰が飯食いに行くかよ。
それにA組の浅野君。また超中学級の店出すぜ。」
「ああー。」
そういえば去年もA組が優勝したな。その時は俺もいたな。
確かイベントを…
「中間テストでE組惨敗したろ、あれが地力だよ。」
「いやいや、わかんないぜ。」
全く知らぬ所で、俺らは期待をかけられていた
今度のE組はどう出るか、を。
一方理事長室。
「という具合で、今回もA組とE組に注目が集まっています。どうしましょう。
体育祭のようになってはまずい。火消しを行いますか…?」
「いえ、その必要はありません。浅野君にはね、
私の教育の体現者として、ずいぶんチャンスを与えてきました。
この有利な条件で圧勝出来ないようなら、彼に体現者としての資格はない。
その時は、私が直接現場で指導しますよ。」
理事長、彼は息子ですら教育の道具としか見ていない。
これが、教育の鬼、浅野學峯だ。
***
「という訳で、勝手にA組対E組の対決になってさ、
こっちがどう出るか注目されちゃって。どうする?殺せんせー。」
すると、殺せんせーは振り向いてこう言った。
「勝ちに行くしかないでしょう。
今までも、君たちはA組というライバルがいたから成長出来た。
この対決。暗殺と勉強以外の集大成になりそうです。
思い出して下さい、君たちが今までしてきた事を。
そうすれば、必ず勝機は見えてくる。」
そう殺せんせーは語る。E組なら、きっと勝つチャンスがあると。
けれど…
「つってもねえ、食品系は300円まで。イベント系は600円までって単価が決められてる。
材料費300円のチープな飯食いに、誰が1km山道を登る?」
狭間がそういった。それが現実だ。圧倒的な条件の不利。それは覆せない。
「それによ、聞いた話じゃ…」
…
「喜んで提供するよ浅野君。椚ヶ丘の学園祭は全国的に有名。知名度も上がる。」
「ご支援、ありがとうございます。」
飲食店とスポンサー契約を結ぶ浅野。
(中学生がスポンサー契約を結ぶかよ!)
五英傑も驚愕する。
「…これでよし。飲食はタダで提供される。客単価の高いイベント系で集客すれば、
飲み食い無料に加え僕の運営力と集客力。負けるわけが無い。」
そう断言する浅野。彼の目はどこまでも冷静に勝利を見据えていた。
これが支配者の顔だった。
「浅野君、その勝算に、僕らを加えてくれないか?」
「お前ほどじゃ無いが顔の広さには自信がある。」
「記憶を辿れば呼べる客が1000人はいるぜ。」
「体育祭では君に負担をかけすぎた。今度は僕らが一丸となってあの雪辱を果たそう。」
そう言って団結する五英傑。E組が殺意の絆で結ばれた仲間なら、
こちらも、結束の強い仲間なんだろう。
「勿論だ。死角はない!E組など当然のように蹴散らしてやる!」
…
「…浅野君は正しい。必要なのはお得感。安い値段でどれだけいい食材が出せるか。
E組におけるそれとは…、例えばこれ。」
それは…ドングリ?
「山の中ならいくらでも落ちています。そうですね、実も大きく、アクの少ないマテバシイが最適。
君達の機動力なら1時間で取ってこれるでしょう。」
そして山の中でドングリを皆で探す。1時間後、大量に袋詰めされたドングリの山がそこにあった。
「水につけ、浮いたものは捨てます。あとは皮をすり潰し、ミキサーで荒く粉末状にします。
1週間ほど川の水にさらしアクを抜き、3日ほど天日干しして完成。
これを小麦粉代わりに、ラーメンなんてどうでしょう。」
その殺せんせーの提案に対し、村松は
「味も香りも悪くねえ。ただ一つ心配なのは、粘りが足りねえ。
だから大量のつなぎが必要になる。その分単価も上がるぜ。」
「そんな時に、この自然署。とろろ芋と呼ばれますね。
天然のものは数千円しますが、山ならどこでも生えている。
とろろにすればつなぎとして最適です。」
それに対し目が眩む少年が1人。
「すげえ!俺中学出たら自然署掘りになろうかな!」
高級食材に目が眩み正常な判断が出来なくなっている。
「おーい磯貝、元の世界に戻って来い。」
「標的を探すような目で見つけましょう。」
…
そして集まる材料。
「これで麺は完成。後の値段をスープに注ぎ込めます。どうですか?村松君。」
「…面白え。だったらラーメンよりつけ麺が良いな。この野性的な味が良く出る。
スープの量も少ないから値段も減らせる。」
こうして村松主導のラーメン作りは着々と進む。
「でも具はどうすんだ?メニューもラーメン一品だけじゃ物足りない。」
確かに。すると後ろから声がした。
「プールにわんさか住み着いてたぜ。」
そこにあったのはエビや魚。どれも食材に使えるものばかりだ。
「サイドメニューには十分な量だね。」
「適当に木の実取ってきたけど、こんなん食えるの?」
矢田と木村は木の実の入った籠を持っていた。
「そうですね、これはヤマブドウ。甘酸っぱくて、絞れば美味しいジュースが出来ます。」
こんな風に、一見ただの植物でも、実は意外な食材になったりするのだ。
それとカルマが毒キノコ持ってきて悪用しようとしてたが、
「これなんかいかにも毒キノコだよね。」
「いえ、このキノコは実は…」
なんと食える物があるらしい。しかもその中に…
マツタケがあった。
「これらの食材。高級料亭で食えば数千円を超えます。それがこの裏山ではタダで手に入る。
いわば君達と同じで、誰もこの良さに気付いていない。」
なるほどと皆は感心する。確かにこれなら、A組と戦えるかもしれない。
「…隠し武器で客を攻撃、殺し屋的な店だな。」
「殺すつもりで売りましょう、君達の数々の刃!」
こうして、2日の学園祭戦争が始まった。
***
「学園祭か、クククチャンス到来だぜ。あのE組、離れ校舎で店やってるらしいぜ。
化け物先公に手出しされちゃかなわんが、間接的にでも嫌がらせは出来る。
修学旅行の恨み、今こそ京都で晴らしてやる。」
そう言って椚ヶ丘に着く男達。それは、修学旅行の時の不良達だった。
不良達が立っているのは看板の前。
「この先かよE組の店。ドングリつけ麺なんて初めて聞くぞ。」
「名前の通り、ドングリを麺につかっています。」
矢田が看板の前で解説する。なかなか話術が上手い。
食事はもっと美味いが。
「山の素材をふんだんに使った新食感なの。これが食べられるのは日本中探しても
この学園祭だけ!お兄さん達みたいな価値を知ってる人でも楽しめる一品よ。」
そう言ってウインクする矢田。その解説に対し、
「お、美味そうだな。サイドメニューもいっぱいあるぞ。」
「聞いてて腹減って来た。」
涎を垂らす不良。
「おい、本来の目的忘れんじゃねえよ!」
「足腰の弱い人には送迎も用意してるけど、お兄さん達強そうだから大丈夫だよね。」
…
「ハア、ハアー。タバコ…止めようかな。」
大丈夫では無かったらしい。不良って大抵パワーはあっても体力は無いものだ。
そして不良達の目の前にはE組の店が。
ドングリつけ麺の看板と、校庭に設置されたテーブル。
「なんだ、意外とちゃんとしてんじゃねえか。」
それを見上げながら不良が言う。彼等に取ってこれは意外だったようだ。
「なんであそこにシャチホコ乗ってんだ?」
それはツッコんではいけないものだ。殺せんせーなんだから。
「さあ、なんか腹立つ上見覚えあるぞ。」
そりゃそうだろうな。
そして不良にいち早く気づいた杉野。
「あー!修学旅行の高校生!何しに来たんだよ!」
「何?また女子でも拉致するつもり?」
「もうやってねえよ。化け物先公に出てこられちゃたまらねえ。
だがよ、間接的に潰すことは出来るぜ。この飯がクソマズいと叫びまくったり、
ネットで少し呟いたり。さあ、早く出せよ。」
不良が挑発的に言い、皆は息を呑む。
「看板メニューの、ドングリつけ麺です!」
運ばれた食事に、不良達は…
「おおこれ美味そう!サイドメニュー頼んでもいいリュウキ君!」
思い切り興奮していた。
「はしゃぐな!バカがばれるだろうが!」
思わず突っ込むリュウキ。もはや滑稽だ。
「フン、こんなの中学生の思いつきだ。
一口食ったら吐いてやる…」
そう言って麺を口に運ぶ。
しかし…
「う、うめえ。この独特のクセのある食感、アクはしっかり抜かれてて、
このつけ汁が上手く味を引き出してる。豚骨と醤油、斬新な組み合わせだな…」
その味に感嘆するリュウキ。
「うーん、作者の文章力じゃこれが限界か。200文字くらい書かせたかったのに。」
「不破さん何言ってんの?」
「確かにラーメンだけど、こんな味食った事ねえ。」
「どうだ?美味いだろ?みっちり1週間研究したからよ。
究極のバランスを考えた末の豚骨醤油ラーメンだ。」
「村松にしちゃ奇跡の味だな。不味さが売りのキャラが崩れる。」
余計な一言を言うのがイトナだ。
「なあなあ、他のも食っていいか?このタマゴタケってなんだ聞いた事ねえ!」
完全に興奮している不良達。
「うるっせ!マズいって言えマズいって。」
しかし、その言葉を聞きつけたのは…
「あら、うちの生徒の料理、お口に合わなかった?」
ビッチだ。
「いえ、そんな事ないっす、めっちゃ美味いっすよ。」
その毒牙にかかる哀れな男ども。
「なんなら、全メニュー食べてくれたら先生嬉しいなあ。」
「いや、でもお金が…」
「あら、駅前にあるわよ。A、T、M。」
そう囁くように言うビッチ。完全に不良達はやられたようだ。
「はい、下ろしてくるっす!」
「貢ぎコース確定だな。」
「矢田がふもとで客引き。頂上にはビッチ先生。師弟コンビ恐るべしだな。」
確かに。でも、一つだけ問題があった。
「やっぱり客足伸びないね。立地の割にはよくやってると思うけど。」
そう評価する竹林。確かに見てみると客足はそこまで多くはない。
でも…
「勝負はこれからです。菅谷君のポスター、岡島君の食品写真、狭間さんの解説文。
三村君の特設ウェブサイト。武器は揃っていますよ。」
しかし、A組を偵察していたイトナによると、
「客の興味を引くのはA組の方が上だ。」
…
「A組のイベントカフェ。よく来てくれたね。楽しんでくれると嬉しいよ。
1時間単位でイベントが盛り沢山。友人のアイドルやお笑い芸人が無償で出演してくれてる。」
ライブを見る例のモブ2人。
「うわー、あっちのお笑い盛り上がってるなあ。みてえ。
仕方ねえ。500円払って再入場しよう。」
「こうやってエンドレスで搾取されるのな。」
つまり、
「一方のステージが終わると、仕切りを閉じて客を出す。
すぐさま向こうのステージが開く。そうやって、飲み食いタダなら庶民は無計画に食う。
何度もリピート入場するなら尚更だ。
一通り楽しんだ頃には、満腹でE組の店など行く気にもなれないだろう。」
浅野はギターを用意する。
「さあ、僕の出番と行こうか。軽く2,3曲弾いてくるから準備しててくれ。」
ステージに浅野は立つ。すると客席から歓声が湧き上がる。
浅野の演奏はかなりの盛り上がりを見せていた。
楽屋から眺める五英傑がこう漏らす
「本当あいつ何でも出来るよな。」
「正直出来すぎて気持ち悪いわ。」
それほど浅野は優れた素質を持っていた。全てにおいて。
「でも、そんな彼にも敗北はある。」
「もう相手がエンドだの何だの言ってられねえな。」
「どんだけ腹黒かろうが、俺らのリーダーが負ける姿は見たくねえ。」
「僕らも選ばれし者。楽器の一つくらい勉強の合間に出来る。」
「いっちょ支えてやりますか。」
楽器を持ちステージに向かう五英傑。そこには、確固たる彼らの絆があった。
…
「バンド演奏クオリティ高いな。こんな奴等に勝てるのか?」
そう木村が言い、ため息をつく。確かに中学生のレベルじゃない。
すると…
「おーい渚、来てやったぞ。」
わかばパークの皆が来た。
「さくらちゃん!来てくれたんだね!」
「へえ、付き合い続いてたんだ。渚。」
「うん、時々勉強教えに。」
「私専属のカテキョにお願いされたら来るしかないっしょ。」
彼女は頬を染めそう言った。もっと別の理由がありそうだが。
「でかした渚。とりあえず頭数は稼げたな。」
前原が褒める。
「金持ち客じゃなくて悪かったな。」
「おお、これは絶品だな。」
「うん、美味しいね!こんだけの味なら売れるでしょ。」
だと良いのだが…
「うーん、あんまり多くの人に伝わらなくてさ。」
渚が頭を掻く。
「きっと、伝わると思うよ。」
「え?」
「だって、渚達不思議な力持ってるじゃん。きっと報われるよ。」
そう言って微笑む彼女を見て、渚は本当にそうかもしれないと思った。
「日頃の行いが良ければ成果は必ず出てくる。お前達ならな。」
女装?それは次に。今回文字数増えすぎたので。