黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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64話 学園祭の時間

「椚ヶ丘中学校学園祭!秋、椚ヶ丘の最大の行事だ!

 

準備期間、中学校では、あるクラス同士の対決に注目が集まっていた!」

 

学園祭シーズン。本校舎では着々と準備が進められていた。

 

その姿は活気に満ちていた。

 

「本校舎の皆、気合入ってるねー。」

 

それを見て茅野が呟く。そうか、茅野は転校生だから行事とか細かく知らないのか。

 

ここは説明しよう。

 

「ああ、この椚ヶ丘学園の文化祭は、中高合同で行われる。

 

そしてこの文化祭。本気の商業合戦で有名なんだ。

 

売り上げは学校に寄付するんだが、収益の順位が堂々と校内に掲示される。

 

商業系の会社なら、ここでトップを取れば就活でも有利になる。

 

だから皆本気を出して取り組んでいる。社会人顔負けの店も多いぞ。」

 

「なるほど。それであんなに気合入ってるのか。」

 

「そういう事。」

 

茅野は納得したようだが、珍しいものを見ているような目だ。

 

当然だろう、文化祭でここまでする学校は少ない。たとえ私立でも。

 

するとふと準備中のクラスの数人がこんな会話をしていた。

 

「E組またなんかやるのかな。」

 

俺らの話か。そういえば今年は何かとE組が活躍したからな。

 

「体育祭見たいに今回もさあ、学園祭の売り上げ、トップ取ったりするかもな。」

 

「ないない、だってよお。E組ってあの山の上で出店するんだぜ。

 

あんな所に誰が飯食いに行くかよ。

 

それにA組の浅野君。また超中学級の店出すぜ。」

 

「ああー。」

 

そういえば去年もA組が優勝したな。その時は俺もいたな。

 

確かイベントを…

 

「中間テストでE組惨敗したろ、あれが地力だよ。」

 

「いやいや、わかんないぜ。」

 

全く知らぬ所で、俺らは期待をかけられていた

 

今度のE組はどう出るか、を。

 

一方理事長室。

 

「という具合で、今回もA組とE組に注目が集まっています。どうしましょう。

 

体育祭のようになってはまずい。火消しを行いますか…?」

 

「いえ、その必要はありません。浅野君にはね、

 

私の教育の体現者として、ずいぶんチャンスを与えてきました。

 

この有利な条件で圧勝出来ないようなら、彼に体現者としての資格はない。

 

その時は、私が直接現場で指導しますよ。」

 

理事長、彼は息子ですら教育の道具としか見ていない。

 

これが、教育の鬼、浅野學峯だ。

 

***

 

「という訳で、勝手にA組対E組の対決になってさ、

 

こっちがどう出るか注目されちゃって。どうする?殺せんせー。」

 

すると、殺せんせーは振り向いてこう言った。

 

「勝ちに行くしかないでしょう。

 

今までも、君たちはA組というライバルがいたから成長出来た。

 

この対決。暗殺と勉強以外の集大成になりそうです。

 

思い出して下さい、君たちが今までしてきた事を。

 

そうすれば、必ず勝機は見えてくる。」

 

そう殺せんせーは語る。E組なら、きっと勝つチャンスがあると。

 

けれど…

 

「つってもねえ、食品系は300円まで。イベント系は600円までって単価が決められてる。

 

材料費300円のチープな飯食いに、誰が1km山道を登る?」

 

狭間がそういった。それが現実だ。圧倒的な条件の不利。それは覆せない。

 

「それによ、聞いた話じゃ…」

 

 

「喜んで提供するよ浅野君。椚ヶ丘の学園祭は全国的に有名。知名度も上がる。」

 

「ご支援、ありがとうございます。」

 

飲食店とスポンサー契約を結ぶ浅野。

 

(中学生がスポンサー契約を結ぶかよ!)

 

五英傑も驚愕する。

 

「…これでよし。飲食はタダで提供される。客単価の高いイベント系で集客すれば、

 

飲み食い無料に加え僕の運営力と集客力。負けるわけが無い。」

 

そう断言する浅野。彼の目はどこまでも冷静に勝利を見据えていた。

 

これが支配者の顔だった。

 

「浅野君、その勝算に、僕らを加えてくれないか?」

 

「お前ほどじゃ無いが顔の広さには自信がある。」

 

「記憶を辿れば呼べる客が1000人はいるぜ。」

 

「体育祭では君に負担をかけすぎた。今度は僕らが一丸となってあの雪辱を果たそう。」

 

そう言って団結する五英傑。E組が殺意の絆で結ばれた仲間なら、

 

こちらも、結束の強い仲間なんだろう。

 

「勿論だ。死角はない!E組など当然のように蹴散らしてやる!」

 

 

「…浅野君は正しい。必要なのはお得感。安い値段でどれだけいい食材が出せるか。

 

E組におけるそれとは…、例えばこれ。」

 

それは…ドングリ?

 

「山の中ならいくらでも落ちています。そうですね、実も大きく、アクの少ないマテバシイが最適。

 

君達の機動力なら1時間で取ってこれるでしょう。」

 

そして山の中でドングリを皆で探す。1時間後、大量に袋詰めされたドングリの山がそこにあった。

 

「水につけ、浮いたものは捨てます。あとは皮をすり潰し、ミキサーで荒く粉末状にします。

 

1週間ほど川の水にさらしアクを抜き、3日ほど天日干しして完成。

 

これを小麦粉代わりに、ラーメンなんてどうでしょう。」

 

その殺せんせーの提案に対し、村松は

 

「味も香りも悪くねえ。ただ一つ心配なのは、粘りが足りねえ。

 

だから大量のつなぎが必要になる。その分単価も上がるぜ。」

 

「そんな時に、この自然署。とろろ芋と呼ばれますね。

 

天然のものは数千円しますが、山ならどこでも生えている。

 

とろろにすればつなぎとして最適です。」

 

それに対し目が眩む少年が1人。

 

「すげえ!俺中学出たら自然署掘りになろうかな!」

 

高級食材に目が眩み正常な判断が出来なくなっている。

 

「おーい磯貝、元の世界に戻って来い。」

 

「標的を探すような目で見つけましょう。」

 

 

そして集まる材料。

 

「これで麺は完成。後の値段をスープに注ぎ込めます。どうですか?村松君。」

 

「…面白え。だったらラーメンよりつけ麺が良いな。この野性的な味が良く出る。

 

スープの量も少ないから値段も減らせる。」

 

こうして村松主導のラーメン作りは着々と進む。

 

「でも具はどうすんだ?メニューもラーメン一品だけじゃ物足りない。」

 

確かに。すると後ろから声がした。

 

「プールにわんさか住み着いてたぜ。」

 

そこにあったのはエビや魚。どれも食材に使えるものばかりだ。

 

「サイドメニューには十分な量だね。」

 

「適当に木の実取ってきたけど、こんなん食えるの?」

 

矢田と木村は木の実の入った籠を持っていた。

 

「そうですね、これはヤマブドウ。甘酸っぱくて、絞れば美味しいジュースが出来ます。」

 

こんな風に、一見ただの植物でも、実は意外な食材になったりするのだ。

 

それとカルマが毒キノコ持ってきて悪用しようとしてたが、

 

「これなんかいかにも毒キノコだよね。」

 

「いえ、このキノコは実は…」

 

なんと食える物があるらしい。しかもその中に…

 

マツタケがあった。

 

「これらの食材。高級料亭で食えば数千円を超えます。それがこの裏山ではタダで手に入る。

 

いわば君達と同じで、誰もこの良さに気付いていない。」

 

なるほどと皆は感心する。確かにこれなら、A組と戦えるかもしれない。

 

「…隠し武器で客を攻撃、殺し屋的な店だな。」

 

「殺すつもりで売りましょう、君達の数々の刃!」

 

こうして、2日の学園祭戦争が始まった。

 

***

 

「学園祭か、クククチャンス到来だぜ。あのE組、離れ校舎で店やってるらしいぜ。

 

化け物先公に手出しされちゃかなわんが、間接的にでも嫌がらせは出来る。

 

修学旅行の恨み、今こそ京都で晴らしてやる。」

 

そう言って椚ヶ丘に着く男達。それは、修学旅行の時の不良達だった。

 

不良達が立っているのは看板の前。

 

「この先かよE組の店。ドングリつけ麺なんて初めて聞くぞ。」

 

「名前の通り、ドングリを麺につかっています。」

 

矢田が看板の前で解説する。なかなか話術が上手い。

 

食事はもっと美味いが。

 

「山の素材をふんだんに使った新食感なの。これが食べられるのは日本中探しても

 

この学園祭だけ!お兄さん達みたいな価値を知ってる人でも楽しめる一品よ。」

 

そう言ってウインクする矢田。その解説に対し、

 

「お、美味そうだな。サイドメニューもいっぱいあるぞ。」

 

「聞いてて腹減って来た。」

 

涎を垂らす不良。

 

「おい、本来の目的忘れんじゃねえよ!」

 

「足腰の弱い人には送迎も用意してるけど、お兄さん達強そうだから大丈夫だよね。」

 

 

「ハア、ハアー。タバコ…止めようかな。」

 

大丈夫では無かったらしい。不良って大抵パワーはあっても体力は無いものだ。

 

そして不良達の目の前にはE組の店が。

 

ドングリつけ麺の看板と、校庭に設置されたテーブル。

 

「なんだ、意外とちゃんとしてんじゃねえか。」

 

それを見上げながら不良が言う。彼等に取ってこれは意外だったようだ。

 

「なんであそこにシャチホコ乗ってんだ?」

 

それはツッコんではいけないものだ。殺せんせーなんだから。

 

「さあ、なんか腹立つ上見覚えあるぞ。」

 

そりゃそうだろうな。

 

そして不良にいち早く気づいた杉野。

 

「あー!修学旅行の高校生!何しに来たんだよ!」

 

「何?また女子でも拉致するつもり?」

 

「もうやってねえよ。化け物先公に出てこられちゃたまらねえ。

 

だがよ、間接的に潰すことは出来るぜ。この飯がクソマズいと叫びまくったり、

 

ネットで少し呟いたり。さあ、早く出せよ。」

 

不良が挑発的に言い、皆は息を呑む。

 

「看板メニューの、ドングリつけ麺です!」

 

運ばれた食事に、不良達は…

 

 

「おおこれ美味そう!サイドメニュー頼んでもいいリュウキ君!」

 

思い切り興奮していた。

 

「はしゃぐな!バカがばれるだろうが!」

 

思わず突っ込むリュウキ。もはや滑稽だ。

 

「フン、こんなの中学生の思いつきだ。

 

一口食ったら吐いてやる…」

 

そう言って麺を口に運ぶ。

 

しかし…

 

「う、うめえ。この独特のクセのある食感、アクはしっかり抜かれてて、

 

このつけ汁が上手く味を引き出してる。豚骨と醤油、斬新な組み合わせだな…」

 

その味に感嘆するリュウキ。

 

「うーん、作者の文章力じゃこれが限界か。200文字くらい書かせたかったのに。」

 

「不破さん何言ってんの?」

 

「確かにラーメンだけど、こんな味食った事ねえ。」

 

「どうだ?美味いだろ?みっちり1週間研究したからよ。

 

究極のバランスを考えた末の豚骨醤油ラーメンだ。」

 

「村松にしちゃ奇跡の味だな。不味さが売りのキャラが崩れる。」

 

余計な一言を言うのがイトナだ。

 

「なあなあ、他のも食っていいか?このタマゴタケってなんだ聞いた事ねえ!」

 

完全に興奮している不良達。

 

「うるっせ!マズいって言えマズいって。」

 

しかし、その言葉を聞きつけたのは…

 

「あら、うちの生徒の料理、お口に合わなかった?」

 

ビッチだ。

 

「いえ、そんな事ないっす、めっちゃ美味いっすよ。」

 

その毒牙にかかる哀れな男ども。

 

「なんなら、全メニュー食べてくれたら先生嬉しいなあ。」

 

「いや、でもお金が…」

 

「あら、駅前にあるわよ。A、T、M。」

 

そう囁くように言うビッチ。完全に不良達はやられたようだ。

 

「はい、下ろしてくるっす!」

 

「貢ぎコース確定だな。」

 

「矢田がふもとで客引き。頂上にはビッチ先生。師弟コンビ恐るべしだな。」

 

確かに。でも、一つだけ問題があった。

 

「やっぱり客足伸びないね。立地の割にはよくやってると思うけど。」

 

そう評価する竹林。確かに見てみると客足はそこまで多くはない。

 

でも…

 

「勝負はこれからです。菅谷君のポスター、岡島君の食品写真、狭間さんの解説文。

 

三村君の特設ウェブサイト。武器は揃っていますよ。」

 

しかし、A組を偵察していたイトナによると、

 

「客の興味を引くのはA組の方が上だ。」

 

 

「A組のイベントカフェ。よく来てくれたね。楽しんでくれると嬉しいよ。

 

1時間単位でイベントが盛り沢山。友人のアイドルやお笑い芸人が無償で出演してくれてる。」

 

ライブを見る例のモブ2人。

 

「うわー、あっちのお笑い盛り上がってるなあ。みてえ。

 

仕方ねえ。500円払って再入場しよう。」

 

「こうやってエンドレスで搾取されるのな。」

 

つまり、

 

「一方のステージが終わると、仕切りを閉じて客を出す。

 

すぐさま向こうのステージが開く。そうやって、飲み食いタダなら庶民は無計画に食う。

 

何度もリピート入場するなら尚更だ。

 

一通り楽しんだ頃には、満腹でE組の店など行く気にもなれないだろう。」

 

浅野はギターを用意する。

 

「さあ、僕の出番と行こうか。軽く2,3曲弾いてくるから準備しててくれ。」

 

ステージに浅野は立つ。すると客席から歓声が湧き上がる。

 

浅野の演奏はかなりの盛り上がりを見せていた。

 

楽屋から眺める五英傑がこう漏らす

 

「本当あいつ何でも出来るよな。」

 

「正直出来すぎて気持ち悪いわ。」

 

それほど浅野は優れた素質を持っていた。全てにおいて。

 

「でも、そんな彼にも敗北はある。」

 

「もう相手がエンドだの何だの言ってられねえな。」

 

「どんだけ腹黒かろうが、俺らのリーダーが負ける姿は見たくねえ。」

 

「僕らも選ばれし者。楽器の一つくらい勉強の合間に出来る。」

 

「いっちょ支えてやりますか。」

 

楽器を持ちステージに向かう五英傑。そこには、確固たる彼らの絆があった。

 

 

「バンド演奏クオリティ高いな。こんな奴等に勝てるのか?」

 

そう木村が言い、ため息をつく。確かに中学生のレベルじゃない。

 

すると…

 

「おーい渚、来てやったぞ。」

 

わかばパークの皆が来た。

 

「さくらちゃん!来てくれたんだね!」

 

「へえ、付き合い続いてたんだ。渚。」

 

「うん、時々勉強教えに。」

 

「私専属のカテキョにお願いされたら来るしかないっしょ。」

 

彼女は頬を染めそう言った。もっと別の理由がありそうだが。

 

「でかした渚。とりあえず頭数は稼げたな。」

 

前原が褒める。

 

「金持ち客じゃなくて悪かったな。」

 

「おお、これは絶品だな。」

 

「うん、美味しいね!こんだけの味なら売れるでしょ。」

 

だと良いのだが…

 

「うーん、あんまり多くの人に伝わらなくてさ。」

 

渚が頭を掻く。

 

「きっと、伝わると思うよ。」

 

「え?」

 

「だって、渚達不思議な力持ってるじゃん。きっと報われるよ。」

 

そう言って微笑む彼女を見て、渚は本当にそうかもしれないと思った。

 

「日頃の行いが良ければ成果は必ず出てくる。お前達ならな。」

 




女装?それは次に。今回文字数増えすぎたので。
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